いまさら聞けないSF用語をわかりやすく解説!【ポストアポカリプスって何?】
よく目にするけど、そもそもSFとは?
「SF」という言葉はよく目にするけれど、意外と何のことか知らない人も多いのではないでしょうか。SFはサイエンス・フィクションの略で、科学(サイエンス)を取り扱った創作(フィクション)を指します。ですが、厳密に科学である必要はなく、例えばSF映画に類する『スターウォーズ』シリーズや『マトリックス』を科学的だと思う人は少ないでしょう。 定義としては非常にあいまいですが、現在では「科学っぽい」題材を扱う作品をSFと呼んでいます。SF作家の大家アイザック・アシモフこの曖昧さを「センスオブワンダー」という言葉で表現しました。現在の価値観を覆す驚きのある何かがあれば、SFたりうると定義しています。 では、そんなSF作品によく登場する用語を作品とともに紹介していきます。
◎世界観・設定に関する用語◎
まずは、作品の方向性を大きく決める世界そのものや、扱うテーマに関する用語をご紹介していきます。SFというジャンルの中にあるサブジャンルとして使われることも多い用語です。
ハードSF
曖昧なSFの定義の中で特に「科学(サイエンス)」を重視した作品はハードSFと呼ばれます。科学としての整合性と飛躍のないアイデアが求められます。一方で、ドラマ性や人間描写の比重は軽くなりがちです。 1940年代に生まれたハードSFのジャンルには、アーサー・C・クラークやアイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインラインといったSFファンの間ではお馴染みの有名作家たちの作品が名を連ねています。 このジャンルの映画としては、ウィル・スミス主演の『アイ・ロボット』や、キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』が有名で、それぞれアシモフ、クラークの小説を原作としています。
スペースオペラ
スペースオペラはアメリカで1920年代に生まれた、宇宙を舞台とした冒険活劇SFのことです。ヒーローや海賊などが活躍するこのジャンルは科学よりも娯楽性を重視する点で、上述のハードSFとは対照的です。 この言葉が生まれた当初は、アメリカにおいてはいい意味では使われていなかったのですが、日本では1977年の『スター・ウォーズ』以降、エンターテインメントの人気ジャンルとして定着します。今では『銀河英雄伝説』のような壮大な宇宙戦争ものが主にスペースオペラと呼ばれます。
サイバーパンク・スチームパンク
サイバーパンク
1980年代に流行したサイバーパンクはウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』に端を発したジャンルです。特徴としては高度に情報化が進み、人々がネットワークと接続された退廃的な社会が描かれます。また、そうした社会・政治に対する反発(パンク)を軸に物語が展開していくジャンルです。 サイバーパンクの映画ではフィリップス・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を題材にしたリドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』があまりにも有名。その影響力は絶大で『ブレードランナー』っぽいイメージを持つものをサイバーパンクとみなすこともあります。
スチームパンク
サイバーパンクと混同しそうなジャンルとしてスチームパンクがあります。それもそのはず、語源としてはサイバーパンクをもじって1980年代ごろに派生したジャンルです。スチームパンクでは蒸気機関によって発展した「if」の世界が描かれています。 特にビジュアルは重要視され、19世紀英国のヴィクトリア朝やエドワード朝を思わせる文化・服装が登場します。場合によってはスチーム(蒸気機関)が登場しなくても、このころをモチーフにした技術社会を描くものをスチームパンクと呼ぶ場合もあります。 このジャンルの映像作品はあまり多くありませんが、日本のものでいうと『スチームボーイ』、またジブリの『天空の城ラピュタ』もスチームパンク的な世界観です。
ディストピア・ユートピア
「ユートピア」とは現実には存在しない理想的な社会の事であり、イギリスの思想家トマス・モアが1516年に出版した著作『ユートピア』を語源としています。ただしモアの定義したユートピアは現代人が想像する「理想郷」とはかけ離れており、共産主義的な管理社会を指しています。 しかし、19世紀に資本主義が勃興し、社会主義国家が失敗に終わったことで、アンチユートピアな世界観を強調した「ディストピア」(逆ユートピア)と呼ばれるジャンルが生まれました。 ディストピアの特徴としては、恐怖を伴った徹底的な管理社会、制限された自由が描かれます。ディストピアを扱った作品は数も多く、最近の映画を挙げると『リベリオン』や『マイノリティ・リポート』がこのジャンルにあたります。
ハルマゲドン(黙示録)
新約聖書の「ヨハネの黙示録」に登場するハルマゲドンは人類の最終戦争を意味しています。北欧神話における神々の最後の戦い「ラグナロク」も非常に近い意味を持っています。こうした神話の時代から存在する、終末論に基づいた人類の最後の戦争がハルマゲドンであり、SFでも扱われるモチーフです。 ハルマゲドンを扱った映画としては『インディペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』などが該当すると言えるでしょう。映画における人類の最終戦争の相手は、圧倒的な力で侵略してくる宇宙人である作品が多数存在しています。
ポストアポカリプス
前述のハルマゲドンと非常に近いところにポストアポカリプスと呼ばれるジャンルがあります。アポカリプスとは「ヨハネの黙示録」のことであり、つまり終末論に基づく最終戦争や大規模な災害で滅んだ後(ポスト)の世界を描くジャンルです。 滅んだ後の世界という自由度の高さのためか、このジャンルの作品は多く、特にアニメ・ゲームでは様々な作品で描かれています。2017年にアニメが放送され話題になった『けものフレンズ』やベセスダの人気ゲーム「FallOut」シリーズ、映画でいうと『マッドマックス』などがポストアポカリプスの作品です。
◎SFに登場する科学技術・用語◎
ここからはサブジャンルになるほど大きい設定ではないものの、SF作品によく登場する科学技術や用語を説明していきます。
アンドロイド・サイボーグ
アンドロイドとサイボーグはSF作品にしばしば登場する用語で、混同しがちですが語源からして全く違います。アンドロイドはギリシア語の「人間(アンドロ)」と「似たもの(オイド)」を組み合わせた造語で、人間を模した人工生命体のことを指します。 一方、サイボーグはサイバネティクス(人工頭脳学)と呼ばれる学問のジャンルとオーガニズム(有機体)という英語を組み合わせた造語で、人間の身体を機械化したものを指します。 世界一有名なアンドロイドはおそらくターミネーターでしょう。一方で、ロボコップや士郎正宗の漫画を原作とする『攻殻機動隊』の主人公草薙素子はサイボーグです。
クローン
こちらもよく登場するクローンは同じ遺伝情報を持った生物のことです。作品に登場する際には、人間の存在価値やアイデンティティに絡ませてドラマを展開することが多いです。クローンを扱った映画としては、マイケル・ベイ監督の『アイランド』、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『シックス・デイ』などがあります。
ミュータント
ミュータントは英語で突然変異体を意味する言葉で、SFの世界においては科学技術によって人類を超越する能力を手にした存在や、環境的な要因でモンスター化した動物を指します。設定によってはあくまでイレギュラーなものであり、人為的なものはミュータントに含まない場合もあります。 ミュータントを扱った映画としてはやはり、ミュータント側の葛藤や人間社会での差別なども描いた『X-MEN』が挙げられます。その他にもMARVEL関連作品には数多くのミュータントが登場します。
ワープ
スペースオペラのような大宇宙を舞台にしたSFを描くとき、現代の科学技術をベースにすると障害になるのはその移動手段です。相対性理論によれば、単純に加速するだけでは光速には達することも超えることもできません。そこで登場するのがこのワープ航法です。 一言にワープと言っても、宇宙空間を離れて亜空間を進んだり、ゲートで繫いだりとさまざまな方法が考案されています。こういった実現不可能な技術にどんな理屈をつけるのかもSF作品の醍醐味の一つでしょう。
異次元・亜空間
ワープ航法でもふれたように、SF的な理由付けでよく使われるのは、異次元や亜空間といった言葉です。現実世界とは次元が異なる異次元と、隔絶されている亜空間、意味は違いますがどちらも現実の物理法則を無視するために使われる便利な言葉で、あらゆるSF作品に登場します。 日本ではお馴染みの「ドラえもん」シリーズの四次元ポケットも異次元の一種といえます。一方で、使いすぎると一気に陳腐になるので、注意が必要です。
テラフォーミング
テラフォーミングとは、宇宙に存在する地球に近い惑星を人類が移住可能な環境に改造するプロセスのことです。実際に学問の分野や、NASAが研究を進めていることもあり、SFでは割と一般的な用語です。 地球に近い太陽系の中で、テラフォーミング可能な惑星は火星・金星・月などが挙げられます。中でも、レイ・ブラッドペリの名作SF小説『火星年代記』に代表されるように、自転周期や赤道傾射角が地球と近い火星をテラフォーミングするケースが多いです。最近では実写映画化された『テラフォーマーズ』ではその名の通り、火星のテラフォーミングに挑む人類が描かれています。
コールドスリープ
こちらもよく耳にするであろう、コールドスリープは人体を低温状態にして長時間の老化を防ぐ技術のことです。長い年月が必要な宇宙移民や惑星間移動に人類が耐えるために使われることが多いです。また、コールドスリープ状態で未来へ行くタイムトラベルとして使われることもあります。 最近のSF映画では、『ダークナイト』が大ヒットしたクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』、2017年3月に公開された『パッセンジャー』で登場しています。
ダークマター
宇宙の空間に理論上は存在するに違いないですが、今の科学技術では観測できない物質がダークマターと呼ばれています。NASAによれば、実際に宇宙の物質の中で人類が認識できているのはわずか5%ほどと言われています。ダークマターに関するニュースは定期的に話題になっており、SFの世界だけでなく実際に使われている用語です。 実際にダークマター自体が作品に登場することはほとんどありませんが、敵キャラクターや兵器の名前として使われることも。ゲーム『星のカービィ2』のラスボス、ゲーム『クロノトリガー』の魔王が使用する魔法、と脅威となるキャラクターに関連して名付けられることが多くあります。
ブラックホール
宇宙に関する最大のロマンといえばブラックホールではないでしょうか。ブラックホールからは光すら脱出できないために暗黒で、観測も困難なために謎だらけです。真っ暗な宇宙の中でひときわ暗いブラックホールはまさしくロマンの塊です。計算では太陽の30倍以上の質量を持つ恒星が超新星爆発を起こした際に生まれるとされています。 SFの世界では、謎の多い現象としてタイムトラベルやワープ航法に使われることが多く、『インターステラー』でも重要な設定として登場しています。
タイムパラドックス
SFの定番の一つにタイムトラベルものがありますが、そこで登場するのがこのタイムパラドックスです。その1例として有名なものに親殺しのパラドックスがあります。これは過去にタイムトラベルして自分を産む前の父母を殺害した場合、父母を殺した自分が生まれていないという矛盾が発生してしまいます。タイムパラドックスはこうした時間移動が可能になることで生じる矛盾を指す言葉です。 タイムトラベルを題材とした作品においては、名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から日本のアニメ映画『時をかける少女』に至るまで頻繁に出てくる言葉です。
バタフライ効果
バタフライ効果は、蝶の羽ばたきのようなわずかなことが、とんでもない大きな現象を引き起こすということを示す言葉です。アメリカの気象学者エドワード・ローレンツの「予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」という講演に由来しています。日本でいうところの「風が吹けば桶屋が儲かる」に近い考えかたです。 SFにおいては、過去における些細な行動が未来を大きく変えてしまうという文脈で使われることが多く、タイトルにもなっている『バタフライ・エフェクト』はまさにそういったストーリーが展開します。日本のアニメではよく似た設定を持つ作品として『STEINS;GATE』があります。
超古代文明
歴史に関するフィクションとしては、アトランティスのような伝説の超古代文明があります。これはエジプト文明に代表される四大文明以前の先史時代に、超高度な文明が存在し、天変地異や人類同士の戦争などの原因によって滅んでしまったという説です。SFの中ではどちらかといえばオカルトに近い概念です。 マイケル・ベイ監督の人気映画『トランスフォーマー』シリーズも、人類ではありませんが有史以前から存在する超文明の一種に属するかもしれません。
アトランティス大陸
先述の超古代文明の最たるものがアトランティスです。ギリシアの哲学者プラトンの著書によれば、大西洋に浮かぶ島アトランティスは極めて高度な文明を持っていましたが、ゼウスの怒りに触れて沈められたとされています。現在ではさまざまな学問がその存在を否定していますが、オカルトと結びついて一時期人気がありました。 影響を受けた作品としては、日本ではディズニーアトラクションで有名なジュール・ヴェルヌの小説『海底二万里』、さらにそれを原案とした日本のアニメ『ふしぎの海のナディア』などがあります。
ムー大陸
もうひとつ有名な古代文明としてはムー大陸があります。こちらはアメリカの作家ジェームズ・チャーチワードの著作による説で、約1万2000年前に太平洋のど真ん中に大陸と文明があったとしています。こちらも科学的根拠はありませんが、日本においてはオカルト誌のタイトルになっていたり、意外と知名度があります。 ムー大陸を扱った海外の作品があまりないことを考えると、日本での方が認知されているかもしれません。1975年に放送されたロボットアニメ『勇者ライディーン』にはムー帝国として登場しています。
オーパーツ
オーパーツは英語の「out-of-place artifacts」を略した語で、「場違いな工芸品」という意味です。有名なナスカの地上絵や、アンティキラ島の機械のような製造年代からは技術上製造不可能なものを指す言葉です。 SFとも相性が良く、アトランティスのような超古代文明や、その時代にやってきた宇宙人、未来から来たタイムトラベラーなどを証明するものとして使われることが多いです。映画『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国』にはオーパーツとされている水晶髑髏が登場しています。
U・F・O
ご存知UFOこと「unidentified flying object」はその名の通り未確認飛行物体のことです。正式な軍事用語の言葉ですが、一般的には異星人が乗る飛行物体として広く認知されており、日本では1970年代に一大ブームとなりました。当時国民的アイドルユニットであったピンクレディーの楽曲「UFO」も、日清食品の「日清焼きそばU.F.O.」もこの時代のブームによるものです。 UFOとの遭遇をメインに扱った映画としては、スティーヴン・スピルバーグの『未知との遭遇』や、 2008年に公開された『地球が静止する日』などがあります。また、UFO墜落事件として有名な「ロズウェル事件」を題材にしたアメリカのドラマ『ロズウェル -星の恋人たち』といった作品もあります。
錬金術
日本では大ヒットした漫画『鋼の錬金術師』の影響で、圧倒的な知名度がある錬金術ですが、元々は古代における非金属から黄金を練成しようという試みでした。後に化学に取って代わられた錬金術は世界各地に歴史的な資料が残っています。 錬金術を扱った映像作品はアニメが多く、『鋼の錬金術師』のほかには『武装錬金』や『とある魔術の禁書目録』などがあります。各作品とも化学ではなく魔術の扱いになっている点も面白いポイントではないでしょうか。
メビウスの輪
メビウスの輪とは長方形のリボンなどを一度ねじってから端をを貼り合わせることで誰でも簡単に作ることができる、裏も表もない図形のこと。この名前はドイツの数学者アウグスト・フェルディナント・メビウスが発見したことに由来しています。 メビウスの輪が実際に登場する作品は少ないですが、「いつの間にか表が裏になっている表裏一体性」「始まりと終わりがない様子」などの状態を比喩的に表現するために、作品内でタイトルや兵器の名前などに使用されることがあります。