2017年9月21日更新

仲間由紀恵主演『そして誰もいなくなった』ネタバレ解説【アガサ・クリスティ原作】

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アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』を仲間由紀恵主演でドラマ化

1939年に刊行された『そして誰もいなくなった』は、全世界で累計1億部以上を売り上げているアガサ・クリスティの長編ミステリー推理小説です。『オリエント急行殺人事件』と並ぶアガサの代表作の一つと言えるでしょう。 本作品のプロットやトリックは後世に多大な影響を与えており、日本でも横溝正史の『悪魔の手毬歌』やアニメ『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』などで使われています。 そして2017年3月、2夜連続放送スペシャルドラマとしてついに日本初映像化されました。脚本を執筆するのはサスペンスドラマを多く手掛けてきた江戸川乱歩賞作家・長坂秀佳氏。そして監督は、テレビ朝日「相棒」シリーズの和泉聖治氏。 日本を代表する2人の脚本家と監督を迎え、12人の豪華なキャスティングでドラマ化された本作のあらすじネタバレと、ドラマがもっと面白くなるトリビアをご紹介します。

『そして誰もいなくなった』のあらすじ解説【ネタバレ注意】

ドラマ1日目。「兵隊島」という孤島の別荘に10人の男女が「七尾審」と名乗る人物の手紙によって招待され、島へ渡るところから物語はスタートします。しかし、別荘に主人の姿はなく、使用人夫婦が彼らを出迎えます。 その後、集められた10人はそれぞれ過去に殺人を犯したことがあることが判明。そして、向井理演じる五明卓が服毒死したのを皮切りに殺人ゲームがスタートします。 原作ではマザーグースの「10人のインディアン」が、ドラマオリジナルの「小さな兵隊さんの唄」に変更され、歌の歌詞通りに次々と登場人物が殺されていきます。それと同時に、屋敷に置かれた10体の兵隊の人形も1体ずつ減っていきます。 「喉をつまらせ」=毒殺、「寝過ごした」=睡眠薬により死亡など、童謡の歌詞になぞらえて殺されていくのが、なんとも恐ろしくその不気味さは増していきます。 一人、そしてまた一人と殺されていき、最終的に残ったのが、元水泳選手の白峰涼(仲間由紀恵)と元傭兵・ケン石動(柳葉敏郎)。二人は当然相手を疑い、探り合い、牽制し合います。そんな中、犯人が仕組んだ巧妙な殺人トリックが2人を襲います。 最後に1人残った白峰涼(仲間由紀恵)。ふと部屋の前方を見ると、首つり用の紐が下がっています。 白峰は、教え子をプールで溺死させた過去を思い出し、それにさいなまれて生きてきた人生を振り返ります。そして、吸い込まれるように首つり紐の輪っかの中に首を入れ、自ら命を絶つのでした。 最終的にタイトル通り、10人全員が殺され、本当に「誰もいなくなった」状態になってしまうわけです。しかし、実は犯人はこの10の招待客の中にいたのです。 真犯人は殺されたふりをして姿を消し、9人全員を殺した後、自ら命を絶った元判事の磐村兵庫だったのです。 ドラマ二日目。10人全てが亡くなった後に、原作にはいない刑事コンビ、沢村一樹&荒川良々が登場し、残された遺留物を手掛かりに不可解な連続殺人の謎を解いていきます。

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仲間由紀恵主演!10人の豪華キャストが勢ぞろい!【ネタバレあり】

白峰涼 (しらみねりょう) /仲間由紀恵

元水泳選手で、現在は家庭教師をしている本作の主人公。アガサ・クリスティ原作の小説では、ヴェラ役にあたり、5年前に教え子をプールで溺死させた罪で10人の招待客の中の1人として兵隊島へやってきます。 過去、白峰にはお金がなくて結婚を渋っていた恋人がいました。そして、遺産相続人だった教え子をわざと水深の深いプールで泳がせて溺死させます。その後、後悔に苛まれる苦しい日々を送っていました。 物語では、10人うちの最後に残った1人でしたが、自殺したと見せかけ実は生きていた元判事磐村に首つり自殺のとどめを刺されます。

磐村兵庫 (いわむらひょうご) / 渡瀬恒彦

元東京地方裁判所裁判長として名声を馳せていた裁判のスペシャリスト。謎の声により、「7年前、担当裁判の被告人を私怨で死刑を言い渡した」とされています。 原作におけるウォーグレイヴ判事にあたり、9人の殺人の真犯人。末期がんに侵されていた磐村は、以前は抑えられていた人を裁き死という罰を与えたいという願望を叶えるため、この殺人トリックを考案します。 そして、全ての罪の告白を、謎を解いたものにだけ見れるビデオメッセ―ジに残した後、自らの命を絶ちます。メッセージを受け取った相国寺は、「犯罪は芸術じゃない」と呟き、島を去ります。

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ケン石動 (けんいしるぎ) / 柳葉敏郎

元傭兵で、現在は軍事評論家のケン石動。13年前、娘の命を優先し兵士5人を殺した罪で招待されます。10人の中で唯一銃を携帯。ドラマでは主人公白峰涼と共に終盤まで残りましたが、彼女に怖いと抱き着かれた際、拳銃を取られ射殺されます。

五明卓 (ごみょうたく) / 向井理

元アマチュアボクサーで今は人気新進ミステリー作家。5年前にサラリーマンを殺したことで招待されます。 原作では、マーストンにあたり、原作同様1番目に殺された人物。死因は、「喉をつまらせて~」という唄の歌詞に沿って、青酸カリが混入した酒を飲んで毒殺されます。

星空綾子 (ほしぞらあやこ) / 大地真央

原作では、ミス・ブレントにあたる役。元舞台女優。芸能界を引退していましたが、夫に先立たれ復帰していました。実の娘のようにかわいがっていたお手伝いさんが行きずりの男と子どもを作ると彼女を騙し、中絶させ、自殺に追い込んだ過去があります。 3日目にめまいがすると部屋で休んでいたら、「兵隊さんの唄」の「ハチに刺されて~」になぞらえ、毒物を注射され死亡。執事に続き5人目の犠牲者となります。

久間部堅吉 (くまべけんきち) / 國村隼

元警視庁捜査一課の警部で、DV被害に苦しむ女性を暴力夫から助ける為、嘘の証言をして暴力夫を死刑に追い込んだ過去があります。 ドラマでは、間食を取りにホテルへ戻る最中、他殺体となり発見されます。8番目の唄「クマさんに負けて二人になった」になぞらえて、部屋にあったクマの置物で撲殺されていました。

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翠川つね美 (みどりかわつねみ) / 藤真利子

夫の殺人を目撃したものの、黙殺してしまった罪で招待されます。原作同様、歌詞の「ねぼすけ小僧がねぼうしてねむったままで8人になった」に沿って、そのまま目をさまさず死亡し、2人目の犠牲者となります。

神波江利香 (こうなみえりか) / 余貴美子

救急センターの外科医。原作におけるアームストロング医師ですが、性別が変更されています。酔った状態で手術し、患者を死なせた罪で招待されます。 元検事で真犯人の磐村に犯人はケンであると吹聴され、磐村の偽装の自殺を手伝った後、磐村に殺されます。唄になぞらえ、浜辺で溺死体で発見されることに。

翠川信夫 (みどりかわしのぶ) / 橋爪功

元国会議員。謎の声によると「15年前に妻と不倫した秘書をわざとテロに巻き込ませ死なせた」とされています。 唄になぞらえ、浜辺で撲殺死体となって発見されます。3人目の犠牲者。

門殿宣明 (もんでんせんめい) / 津川雅彦

ホテルオーナーである「七尾審」に雇われて島にやってきた使用人。「10年前、当時使えていた主人を殺した」とされています。 唄になぞらえ、薪割り中に斧で頭をかち割られて殺害されます。4人目の犠牲者。

原作にはないオリジナルキャラクター:二人の警察官

相国寺竜也 (しょうこくじりゅうや)/ 沢村一樹

警視庁捜査一課の警部。緻密な性格で、事件に関する下調べには定評があり、どんな些細な証拠も見逃さない調査力を持っています。しかし、その一方で、ゴシック好きでちょっと風変わりな一面も持っています。

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多々良伴平 (たたらばんぺい) / 荒川良々

兵隊島の管轄。八丈島東署の警部補。警視庁からやってきた相国寺に振り回されながらも事件解決を目指します。ネズミが嫌いな一面も。 ドラマの構成としては、事件内容を前半に、そして後半にはこの二人の警察による謎解き、事件の概要解説という作りになっており、わかりやすく構成されています。相国寺×多々良の軽妙なかけあいが重厚で暗くなりがちなストーリー明るくする役割も担っているといえるでしょう。

「兵隊島」の名前の由来

原作では童謡「10人のインディアン」ですが、本作ではオリジナルの童謡「小さな兵隊さんの唄」に変更されていました。なぜ、「兵隊」という言葉が使われたのでしょうか? それは「インディアン」という言葉が現代では差別的用語で不適切とみなされることがあるからで、海外では「ソルジャー」と改変されることがあるそうです。本作では、それを訳して「兵隊さん」にしたのではないかと推測されています。 この「兵隊」という言葉は物語の重要なキーワードの一つとして、島の名前、歌、人形にと作品の要所要所に使われています。

姿なきオーナー「七尾審」とその弁護人「井伊弁吾」の名前をローマ字にすると?

実は、七尾審の名前は「あきら」とドラマでは呼びますが、この名前を「しん」に変え、「井伊弁吾」を(イー=E)と「BENGO」にして並べると「NANAOSHIN E BENGO」。 これを少し並べ替えると「NANASI NO GONBEE」つまり「名無しのごんべえ」となります。 また原作のU.N.オーエンですが、英文字に直してくっつけると「UNOWEN」。実はこれも少し並び替えると「UNKNOWN」(何者ともわからぬ者)とかけられていると言われてます。 名前に隠された意味まで忠実に再現していますね。 いかがでしたでしょうか?ドラマをすでに観終わった方でもこれらを知るとまた違った角度から本作品をより深く理解できるのではないでしょうか。

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『そして誰もいなくなった』は真犯人判事役・渡瀬恒彦の最後の遺作

朝日テレビ2夜連続スペシャルドラマ『そして誰もいなくなった』はくしくも俳優・渡瀬恒彦の最後の出演作品となりました。 渡瀬演じる元判事の自殺のトリックを明かす衝撃のラストシーンのセリフ「私は末期の肺ガンだ。余命幾ばくもない。」。この時、すでに余命宣告を受けていた渡瀬が痛み止めの薬を飲み本当に苦しそうに切れ切れの声で演じていたそうです。 この演技か現実かわからない迫真の演技に視聴者からツイッター等SNSに多くの反響が寄せられました。