伊丹十三監督おすすめ映画【『マルサの女』他名作ばかり!】

2017年10月24日更新

マルチな才能を発揮し、確かな足跡を残して1997年に亡くなった伊丹十三。50代になってスタートした映画監督としても独特の作風の傑作を残しました。全監督作を一挙にご紹介します。

伊丹十三が映画監督として遺した数々の名作たち

俳優・エッセイスト・商業デザイナーなどマルチな才能で活躍した伊丹十三は、映画監督としても邦画史に残る数々の傑作を残しました。 1933年5月15日、戦前に活躍した映画監督・伊丹万作の長男として京都市に生まれた伊丹は高校卒業後に上京し、新東宝編集部でキャリアをスタートさせます。商業デザイナーから俳優・マルチタレントとして活躍したあと、51歳になった1984年に映画監督としてデビューしました。 妻で女優の宮本信子と組んで数々の大ヒット作、話題作を発表し続けましたが、1997年12月20日に事務所マンション下で遺体となって発見され、64年の生涯を閉じました。遺書があり、公式には投身自殺と結論づけられましたが、今なおその死因については様々な憶測を呼んでいます。 ここでは伊丹十三が映画監督として遺した全10作品を公開日順にすべてご紹介します。

1.映画賞を独占して大ヒットした記念すべき監督デビュー作【1984年】

俳優やエッセイストなどマルチな才能を発揮していた伊丹十三がいよいよ監督と脚本を手掛けたデビュー作が『お葬式』です。ある葬儀の場に集う人々の人間模様をユーモラスに描いて大ヒットを記録したばかりか、キネマ旬報第1位や日本アカデミー賞など主たる賞を独占しました。 CM撮影中だった佗助・千鶴子の俳優夫婦のもとに妻の父の訃報が飛び込みます。早速父の暮した伊豆に向かい葬儀の段取りを始めますが、初めてのことでわからないことばかり。戸惑う親族たち、そして参列する個性的な人々が巻き起こす騒動を独特のコメディ感覚で綴りました。 宮本信子の父のお葬式で実際に喪主を務めた伊丹十三が、その体験をもとにたった1週間で脚本を書き上げたことは有名です。夫婦を山崎努と宮本信子、その他菅井きん、津川雅彦、大滝秀治らその後の伊丹作品の常連となる役者がすでに勢揃いしています。

2.さびれたラーメン屋を人気店にするまでを描いた監督2作目【1985年】

『お葬式』大ヒットの熱が冷めやらぬまま、すぐ翌年に発表された待望の2作目が『タンポポ』です。一軒のラーメン店を舞台に、様々な食にまつわるエピソードを絡めつつ店主や客たちが巻き起こす騒動をコミカルに描きました。 タンクローリーの運転手ゴローが、ひょんなきっかけでさびれたラーメン店の店主である未亡人タンポポに惹かれて手を貸し、行列ができるような人気店にするべく奮闘します。 宮本信子と山崎努が『お葬式』に続き、ヒロインのタンポポと元ボクサーの経歴を持つゴローを演じました。またゴローの相棒ガンに渡辺謙が扮したほか、役所広司や岡田茉莉子ら豪華キャストが個性あふれるキャラクターを演じています。

3.マルサと脱税者の熾烈な闘いを描いて社会現象を巻き起こす!【1987年】

「マルサ」と呼ばれて恐れられる国税局査察部で働く敏腕捜査官の女性が、巨額脱税者に執拗な闘いを挑む姿をコミカルかつテンポよく描いた傑作です。第11回日本アカデミー賞では最優秀作品賞・主演男優賞・主演女優賞・助演男優賞などを独占し、社会現象を巻き起こしました。 マルサとして不屈の精神で捜査を続ける女捜査官・板倉亮子を宮本信子、対する脱税にいそしむラブホテルの経営者・権藤英樹を山崎努が演じ、みたびの名コンビぶりを披露しています。また亮子の直属の上司・花村には津川雅彦が扮しました。 「女」シリーズの最初の作品であり、また暴力団や政治家、さらに銀行までが絡む壮大な社会の闇に切り込む内容となり、その後伊丹が社会派へと傾倒するきっかけになった作品とも言えます。

4.マルサ・板倉亮子が新たな巨額脱税摘発に挑む!大ヒット作の第2弾【1988年】

大ヒットした『マルサの女』の翌年に公開され、伊丹十三監督作品としては唯一の続編となったのが本作です。バブルに沸く東京を舞台に、脱税摘発のターゲットはさらにスケールアップし、地上げ屋や宗教法人に捜査の矛先が向けられます。 独特のおかっぱ頭とそばかすがチャームポイントの女捜査官・板倉亮子を引き続き宮本信子が魅力的に演じ、本役柄で名実ともに大女優の地位に上り詰めました。 亮子が捜査の目を向ける「天の道教団」の官長・鬼沢鉄平を三國連太郎、教祖で鬼沢の妻には加藤治子が扮しました。また国税局査察部の上司役を津川雅彦が続投しているほか、管理課長役で丹波哲郎が登場するなど新しい豪華キャストも話題になりました。

5.あげまんの女に振り回される男たちをコミカルに描いて流行語に!【1990年】

男にツキと強運をもたらす「あげまん」の女ナヨコと彼女に関わる男たちの関係をユーモアと皮肉交じりに描いたコメディ作品です。もちろんヒロインのナヨコには宮本信子が扮しました。 捨て子として里親に育てられ芸者になったナヨコ。結婚した僧侶の多聞院はどんどん位を上げ、多聞院の死後関わった銀行員・鈴木主水もすぐ出世するという「あげまん」ぶりをいかんなく発揮します。それに目を付けたのが政界のドンでした。 鈴木主水を津川雅彦、総理大臣を東野英治郎が演じています。映画は大ヒットし、「あげまん」は流行語にもなりました。

6.ホテルを舞台に繰り広げられるヤクザVS女弁護士の全面対決【1992年】

ヤクザによる民事介入暴力、通称ミンボーに焦点をあて、老舗ホテルで繰り広げられるヤクザ対ミンボー専門女弁護士の闘いを描いた社会派コメディです。「暴力団対策法」が施行された直後の公開でもあり、大きな話題をよんで大ヒットしました。 ヤクザにゆすられ食い物にされてきた老舗の「ホテル・ヨーロッパ」が、ついにミンボー専門の弁護士を雇い、ヤクザ排除に乗り出す決意をします。タフで知識も豊富な井上まひるが、あくどいヤクザたちに果敢に闘いを挑む姿を描きました。 まひるを宮本信子、総支配人を宝田明が演じたほか、気弱なホテルマンを演じた大地康雄と村田雄浩のコミカルな掛け合いも見どころの一つです。

7.死をテーマにした意欲作!伊丹十三監督作では初のVFXも駆使【1993年】

『ミンボーの女』製作がきっかけとなった襲撃事件による伊丹十三監督自身の入院体験をもとに、死に向きあう一人の男の生きざまをコミカルかつ真摯に描いた意欲作です。 ガンで余命宣告された映画監督兼俳優の向井が、離婚間際だった妻の万里子や医師・入院患者らとの関わりの中で死と向き合い、混乱する姿を描きます。向井を演じた三國連太郎は日本アカデミー賞の主演男優賞に輝きました。 万里子を宮本信子、医師の緒方には津川雅彦が扮しました。また、伊丹作品としては初となる最新のデジタル技術で死後の世界を描き、他作品とは異なる趣を醸し出しています。

8.大江健三郎の長編小説を映画化した異色作【1995年】

義兄にあたるノーベル文学賞作家・大江健三郎の連作長編小説を映画化した、伊丹十三監督作の中では異色の作品です。主人公となる妹と障害者の兄を佐伯日菜子と渡部篤郎が熱演し、渡部はアカデミー賞新人俳優賞に輝きました。 作家の父と母が仕事で海外に渡航してしまったあとの留守を過ごす、障害者の兄イーヨーと妹マーちゃんの日常を描きます。マーちゃんがイーヨーの面倒を見ることになるのですが、様々な騒動が起こり……。 イーヨーのモデルであり、実際に知的障害を抱えながら作曲家として活動する大江の息子・大江光の音楽を起用しています。

9.スーパーマーケットを舞台に原点回帰した大ヒット作【1996年】

『大病人』と『静かな生活』が興行的には今一つだった結果を受け、再び伊丹作品の原点と作風に戻ったのが本作です。久しぶりにタイトルに「女」を使用し、おなじみのスピーディーでコミカルなテイストも受けて大ヒットを記録しました。 激安のライバル店におされ、経営危機に陥ったスーパーマーケット「正直屋」の小林専務が、知り合いのスーパー主婦・井上花子の手を借りて再建に乗り出します。小林専務を津川雅彦、花子を宮本信子が演じるという最強コンビが復活しました。 スーパーマーケットにまつわる様々なうんちくや内輪ネタが全編に散りばめられ、伊丹作品らしいユーモアと皮肉が楽しめる娯楽傑作です。

10.公開数ヶ月後に他界した伊丹十三監督の遺作となった10作目【1997年】

殺人事件の目撃者が警察による身辺保護を受けつつ法廷に立つ姿を描いた伊丹らしい社会派コメディです。「マルタイ」とは護衛対象者を指す警察用語であり、『ミンボーの女』に関わる襲撃事件により実際にマルタイとなった経験に基づいています。 カルト教団の殺人事件現場を目撃した女優のビワコ。マルタイに指定されて2人の刑事から護衛を受けますが、教団側からの嫌がらせや脅迫に次第に追い詰められていきます。これまでの役柄とはやや趣の異なるビワコを宮本信子、2人の刑事を西村雅彦と村田雄浩が演じました。 映画は伊丹十三監督による記念すべき10作目として1997年9月に公開されましたが、わずか数ヶ月後の同年12月の伊丹の急逝により残念ながら遺作となってしまいました。