【この漫画、実写化するかも】『幽麗塔』、『医龍』原作者が古典小説に挑んだ傑作とは?

2018年5月6日更新

今回「実写化するかも」な漫画として紹介するのは、ビックコミックスペリオールで2014年まで連載されたサスペンス漫画『幽麗塔』。作者は『医龍』のドラマ化で成功を収めた乃木坂太郎で、実写化期待の声も多く上がっている1作です。

次に実写化されるのはこの作品!乃木坂太郎のサスペンス漫画『幽麗塔』を徹底紹介

今回紹介するのは、『医龍』で知られる乃木坂太郎が、2011年から2014年までビックコミックスペリオールにて連載していたサスペンス漫画『幽麗塔』。 本作では、明治時代に黒岩涙香が書き上げた探偵小説『幽霊塔』の設定をもとに、推理小説好きの冴えない青年タイチと、頭脳明晰な男装の麗人テツオの二人が、幽麗塔と呼ばれる時計塔に隠された謎に迫っていくさまが描かれていきます。 小説をベースにした本格的な謎解きに加え、乃木坂太郎の美しく猟奇的な作画、昭和初期のレトロな雰囲気を漂わせながらも、古臭さを感じさせない秀逸なアレンジと読み応え十分。いつ実写化されてもおかしくない傑作漫画です。

「幽麗塔」の謎を解き明かし、隠された財宝を手にするのは誰か!?

すべての始まりは昭和27年に「幽麗塔」で起こった一つの事件

一連の騒動のきっかけとなっているのは、幽麗塔で起こった一つの殺人事件です。 時代は昭和27年の神戸。百数十年もの間止まっていた時計塔が、とある殺人事件とともに動き出します。殺されたのは藤宮たつという一人の老女。時計塔にはりつけにされ、長針と短針の動きによって体を折り曲げられた凄惨な姿で発見されました。 さらに犯人と目されていた被害者の養女・藤宮麗子は、数週間後に神戸港で死体が上がり、事件は解決を見ないままに迷宮入り。それから2年が過ぎた昭和29年、時計塔は殺された老婆の幽霊が徘徊する「幽麗塔」として恐れられ、財宝が眠っているという噂まで流れ始めていました。

推理小説好きの無職の青年・天野太一(あまのたいち)

主人公の天野太一(タイチ)は眼鏡姿の冴えない青年。推理小説とカストリ雑誌(エロとグロを扱った娯楽誌)を読み耽り、職も持たずに下宿先で自堕落な生活を送っていました。 そんなある日、タイチが街中で偶然再会したのは高等学校時代のマドンナ・花園恵でした。タイチは婚約者を連れていた彼女に見栄を張って嘘を重ね、引くに引けなくなっていたところを、沢村鉄雄(テツオ)と名乗る謎の美青年に救われます。 恵たちと別れたあと、あまりの情けなさにうなだれていたタイチは、テツオから幽麗塔に眠る数十億の財宝探しの相棒を探していると持ち掛けられ、協力することを決意。幽麗塔をめぐる陰謀の渦に巻き込まれていきます。

幽麗塔をよく知る謎多き男装の麗人・沢村鉄雄(さわむらてつお)

沢村鉄雄と名乗る美青年は、いわゆる男装の麗人で、中身は見目麗しい女性。加えて頭脳明晰で、運動能力も男性顔負けと、タイチとは対照的な人物です。 テツオは幽麗塔をめぐる事情に明るく、タイチを相棒にするとすぐに、幽麗塔の持ち主である丸部道九郎のもとへ管理人として送り込むなど、手際よく幽麗塔の謎に迫っていきます。 当初はタイチに女性であることを隠していましたが、中が迷宮になっている幽麗塔に閉じ込められたときに、やむを得ず秘密を明かし、性別を超えた友人になって欲しいと告白しました。二人の関係がそれからどんな展開を見せるのかも注目です。

財宝を狙い、幽麗塔を買い取った元検事・丸部道九郎(まるべどうくろう)

幽麗塔の持ち主である丸部道九郎は元検事の男。検事時代に、藤宮たつ殺害事件を担当したことで幽麗塔の秘密を知り、それからはあらゆる手を使って財宝を手に入れようと画策します。 娘の沙都子に対して異常な愛情を向ける変態ですが、推理力に優れ、同じく財宝を狙うテツオとは頭脳戦を繰り広げていきます。 また、丸部道九郎という名前は、黒岩涙香版『幽霊塔』の主人公と同姓同名で、本作においても物語のカギを握る人物です。

ストーリーのベースは明治の小説家・黒岩涙香の『幽霊塔』

江戸川乱歩がリライトを施すなど、探偵小説として評価も高い

漫画『幽麗塔』の下地になっているのは、『モンテ・クリスト伯』を『巌窟王』に翻案したことでも有名な黒岩涙香が1899年に発表した探偵小説『幽霊塔』。 『巌窟王』と同様に、こちらの小説もアメリカの女流作家アリス・マリエル・ウィリアムソンが執筆した『灰色の女』を、黒岩涙香が日本向けに翻案したもので、いずれも財宝の眠る時計塔を舞台にしたサスペンス、という点で共通しています。 1937年には、推理小説の大家・江戸川乱歩によってリライトが施されていることからも、『幽霊塔』の探偵小説としての完成度の高さがうかがえます。

『カリオストロの城』制作時、宮崎駿も影響を受けた!?

近年では、ジブリの宮崎駿が『カリオストロの城』を作る上で影響を受けたとも語っており、2015年に再版された『幽霊塔』の単行本の表紙も宮崎駿が手掛けました。 そんな黒岩版『幽霊塔』の設定を踏襲しつつ、現代風なアレンジを加えたのが乃木坂太郎版『幽麗塔』で、原作小説顔負けの本格的な謎解きストーリーは見どころの一つと言えるでしょう。

古典的な探偵小説に現代的なトランスジェンダー問題を持ち込んで大胆にアレンジ!

原作小説『幽霊塔』の上質なサスペンスに、わざわざ『幽“麗”塔』と銘打ってまで乃木坂太郎が持ち込んだのは、現代的なトランスジェンダー要素です。 家柄、知性、美貌、どれをとっても完璧に見えるテツオは、実は「男装の“麗”人」で、現代でいうところの性同一障害を抱えた女性であることが、読者には早々に明かされます。それからは、手に汗握るようなサスペンスの裏で、彼女のマイノリティとしての葛藤が、昭和20年代という未成熟な時代の中で、より鮮明に描かれていきます。 そういったセクシャルマイノリティをテーマにした切り口が評価され、本作は、連載が終了した2014年にジェンダーに関するテーマを持つ作品に贈られるセンス・オブ・ジェンダーの大賞を受賞しました。

『幽麗塔』を実写化するならどうなる!?

映画向き?ドラマ向き?

『幽麗塔』は、どちらかと言えば「映画向き」の作品と言えます。原作漫画では殺害シーンをはじめ、中々ショッキングなシーンも多く、全年齢対象のテレビでは描写が難しい部分も出てくるでしょう。その点、映画ならば年齢制限を設けられるので、原作の良さをスポイルせずに済みます。 原作漫画は全9巻と映画1本でまとめるには少し長いですが、元をたどれば『幽霊塔』という1冊の小説であることを考えれば、十分に可能な長さではないでしょうか。

男装姿も絵になりそうなテツオのイメージキャストは?

実写化の際、それぞれのキャラクターを誰が演じるのかというのは、原作ファンならば気になるところです。一見すると絶世の美青年ですが、中身は女性という難しい役どころのテツオは、まず男装が似合うことが絶対条件。 そんなテツオ役に推したいのが女優の高月彩良です。彼女はドラマ『GTO』(2012年)や『地獄先生ぬ~べ~』(2014年)で活躍を見せた若手女優で、少女漫画『オトメン(乙男)』のドラマ化では、岡田将生演じる主人公・正宗飛鳥の少年時代を演じた実績もあり。 現在(2018年4月)名古屋のメ~テレやABCで放送されているシットコムドラマ『ミューブ♪〜秘密の歌園〜』でも男役が得意な女子校生を好演しています。 そのほか、実写化を希望する読者からはボーイッシュなイメージがある元AKB48の光宗薫の名前なども挙がっています。

昭和初期の雰囲気を再現するならあの監督!

『幽麗塔』で描かれている時代は昭和初期。原作の乃木坂太郎はレトロな雰囲気を見事に表現していましたが、実写でもぜひその世界観を再現して欲しいところです。 そこで監督には『ALWAYS 三丁目の夕日』で、セットとVFXを巧みに組み合わせて昭和30年代の世界を作り上げた山崎貴監督でいかがでしょうか。あるいは大河ドラマ『龍馬伝』を手掛けた大友啓史監督でもいいですね! 今回は【実写化するかも】な漫画として乃木坂太郎の『幽麗塔』を紹介しました。乃木坂太郎の漫画は『医龍』のドラマ化で成功を収めていますので、こちらも実写化に大いに期待できそうです。実写化前にぜひチェックしてみてください。