2021年3月24日更新

「エヴァンゲリオン」碇ユイは黒幕なのか?真の目的や名言を紹介【シン・エヴァでの登場は?】

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碇ユイは結局何者?全ての元凶と言われる理由とは

エヴァ ユイ

碇ユイは主人公・碇シンジの母親であり、碇ゲンドウの妻です。またエヴァンゲリオンの開発初期から携わっていましたが、実験によってその肉体は消失してしまいます。 魂だけが残って初号機のコアと融合し、息子のシンジはサードチルドレンとして選ばれました。つまりシンジがパイロットに選ばれたのは家系としての宿命だったのです。努力で這い上がってきたアスカが「親の七光り」と思うのも無理はないでしょう。 この設定自体はテレビシリーズから語られていましたが、最終作となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で遂に物語の中核となります。 この記事では性格やゲンドウとの馴れ初め、また綾波レイやマリとの関係など1から掘り起こしていきます。もしかすると、新たな発見があるかもしれません。 最新作を含む「エヴァンゲリオン」シリーズのネタバレについて触れるため、未見の人は注意して読み進めてください。

碇ユイの性格は?ゲンドウとの馴れ初めも

エヴァ ユイ

碇ユイは原作における「母性」の象徴として描かれています。研究者でありながら尖ったところはなく、とても優しく温かい包容力のある人物でした。 しかも科学者としても超一流の天才と、非の打ち所がありません。プライベートと仕事の双方において隙のない完璧超人です。 大学時代に碇ゲンドウや冬月コウゾウと出会っており、その時の縁でゲンドウと結婚しシンジという子供を授かります。 その様子については漫画版で詳細に掘り下げられており、昔のゲンドウはユイ同様とても優しい人でした。似た者同士だからこそ惹かれ合っていったのではないでしょうか。 そんなユイの母性は死後もなおゲンドウとシンジに大きな影響を与え続け、また「エヴァ」独自の作風にもつながっているのです。正に「原点にして頂点」という言葉が似合う人だったと推測されます。

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碇ユイの最期を解説!エヴァ初号機に残った目的は?

エヴァ ユイ

初号機と一体化?碇ユイの最期が周囲に与えた影響

碇ユイは自らが設計したエヴァ初号機へのダイレクトエントリーの実験に被験者として参加しました。その際の事故で肉体が完全消滅してしまい、その魂だけがエヴァ初号機の中に残ったのです。シンジがサードチルドレンとして選ばれたのはもはや宿命といっても過言ではありません。 この設定自体はロボアニメの王道設定ともいえます。『マジンガーZ』の兜甲児や『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイなどは肉親が開発したロボットのパイロットです。大きな違いでいえば、甲児とアムロが「父(祖父)」だったのに対してシンジが「母」だったことでしょう。 即ち従来のロボットアニメが「父性」の物語だったのに対して、「エヴァ」は「母性」の物語であるといえます。つまり「力」から「心」の物語へスライドしたといえるでしょう。ユイの提示した「母性」の前にゲンドウは無力です。 ユイの最期は物語全体を支配する程に大きな遺恨を残したのではないでしょうか。

なぜ碇ユイはエヴァ初号機の中に残った?

碇ユイがエヴァ初号機に残ったことは決して不慮の事故ではなく、ユイの自由意思に基づく前向きな決断でした。 このことはテレビシリーズ後半と旧劇場版で明らかにされています。冬月コウゾウが「それが自らエヴァに残った彼女の願いだからな」と語っていることがその証拠です。 ユイは人間の命が決して永遠ではない有限のものだということを悟っていました。しかしエヴァは永久機関として無限に生きられると結論づけます。自分が生きたという証をエヴァの中に魂として残したのではないでしょうか。ある意味でとても哲学的な答えです。 殉教者とでもいうべき人ですが、そういう超越的な俯瞰の視点がゲンドウやシンジには理解できません。そのため彼らはユイが目の前から消えた喪失感から抜け出せないでいるのです。 一見複雑かつ難解といわれる「エヴァ」の本質がとても分かりやすく見えるのではないでしょうか。

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綾波レイやマリとの関係は?旧姓の秘密も紹介

碇ユイと綾波レイの関係

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイ
©ADV Films/Photofest/Zeta Image

碇ユイと綾波レイの関係は一言で言えば「碇ユイの忘れ形見」です。初号機からサルベージしたユイのデータから作られたのが綾波レイであり、レイの見た目がユイと瓜二つなのもそのせいでしょう。 その為ユイのクローンと思われがちですが、レイの魂はリリスでありユイではないのです。後述するマリから「無愛想」と評されるのも、決してクールだからではないのです。人間らしい情緒が備わっていないのも、ユイとはアイデンティティーが異なるからでしょう。 つまり渚カヲル同様「使徒」であるため、レイはユイの暗黒面といえるかもしれません。少なくともユイがエヴァと一体化しなければ、レイは誕生しなかったでしょう。配偶者の死という非常な現実と向き合えないゲンドウが生み出した悲しき産物です。

新劇場版での旧姓は……?

実はユイの旧姓は旧作版と新作版で異なっています。旧作では結婚前も結婚後も「碇ユイ」のままであり、旧姓が異なったのは寧ろゲンドウの方でした。結婚前は六分儀ゲンドウだったのがユイの家系に婿入りして「碇ゲンドウ」になっています。 この設定が新劇場版では逆の形に変更されていて、ゲンドウが結婚前も結婚後も「碇」で統一されています。対するユイは旧姓が「綾波」であり、結婚後に「碇」となりました。設定変更の意図はレイがユイの忘れ形見というニュアンスを強調するためでしょう。

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碇ユイとマリの関係

エヴァ ユイ

新劇場版で新キャラとして登場したのが真希波・マリ・イラストリアスでした。アスカ以上の勝気な性格と攻めの姿勢で一見すると作品の世界観にはそぐわないようです。しかし、漫画版で遂にその正体とユイの関係性が明らかにされました。 マリはユイの大学時代の学友であり、16という若さで飛び級して入学した大学で出会いました。文武両道を地で行くマリにとって、ユイは「超えられない壁」だったのです。どれだけマリが努力してもユイは常に一歩先を行く天才でした。 そんな埋めがたい才能の壁にコンプレックスを抱きつつ、同時にユイの人間性に惹かれます。劇中でマリがかけているメガネはユイが気を利かせてプレゼントしたものでした。関係性としては「天才と秀才」、すなわちNo.1のユイとNo.2のマリだったのではないでしょうか。 マリはユイをライバル視していた部分もありましたが、ユイはそんなマリの心に気づきつつもライバル視はしていませんでした。

碇ユイが黒幕と考えられる理由を徹底考察

秘密組織ゼーレとの関係

ゼーレ

秘密組織ゼーレとの関係は直接的に描かれていませんが、描写から判断するとゼーレの意図に気づいていたのではないでしょうか。ゼーレの意図は来るべきサードインパクトに備えて人類補完計画を進めることです。その意図をいち早く察していたのでしょう。 その破滅の後に世界を再生させるためには、永久機関であるエヴァの力が必要です。その為のコアとなることを自ら選び、自分の息子に託したのではないでしょうか。天才過ぎるが故に自分がなすべきことや辿る運命がわかっていたのです。 ゼーレの目論見を的確に看破し、最短距離でその答えに辿り着いたユイは人類に僅かしかいない本物の天才でしょう。組織に利用されるどころか、逆に利用してみせたのです。「エヴァ」で最も恐ろしいのは実はユイなのかもしれません。

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ゲンドウの目的

しかし、そんな壮大なユイの目論見に余計な横槍を入れたのが他ならぬゲンドウです。彼は人類補完計画を私物化して、亡き妻・ユイとの再会を果たそうと固執します。そのことがシンジの人格にも大きな影を落とすことになるのです。 誤解を恐れずいえば、ゲンドウは上司としても父親としても最低だったといえます。組織の壮大な計画を私利私欲に使い、更に息子であるシンジを育児放棄。指導者としての適性は皆無に等しいでしょう。 新劇場版ではそんなゲンドウの目論見を見抜いたミサトたちが反ネルフ組織ヴィレを設立します。シンジもまた身勝手な父に振り回され、母の愛情にも飢えている不安定な性格になったのです。 こうして見ると、碇ユイが決して事件の黒幕だったわけではありません。しかし、結果的にはユイの消失はゲンドウが狂う元凶になっています。 天才過ぎたが故に細かい人間関係にまで気が回らなかったのかもしれません。

「シン・エヴァ」で発覚?碇ユイの存在場所とは

そんなユイの存在場所が遂に「シン・エヴァ」で発覚します。「そこにいたのか、ユイ」というゲンドウの台詞が象徴的です。まるでずっと探し求めていたものがやっと見つかったように聞こえます。 ユイの存在場所はずっと初号機に乗り続けたシンジの心の中でした。そう、ずっと遠くに行ったと思われた亡き妻は皮肉にも息子の心という近いところにいたのです。「そこにいたのか」という言葉は近くにいたという意外性を意味しています。 そのことに気付いた時、シンジとゲンドウの力学関係は逆転しました。自分の心の弱さを認められなかったゲンドウは成長して独り立ちしたシンジをまともに見ることができません。シンジはユイが持っていた「母性」というしなやかな強さを手にしていたのです。 それは正にユイがシンジに望んでいたことであり、同時に「母性」が「父性」を超えた歴史的瞬間といえます。

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碇ユイの名言を紹介!最期の言葉は……?

「この子には明るい未来を見せておきたいんです」

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ
©ADV Films/Photofest/Zeta Image

この台詞はユイが最期に残した名台詞です。とてもシンプルですが、これまでの考察を踏まえると意味深い名台詞になっています。 ユイのいう「明るい未来」とは決して「苦しみや悲しみのない世界」ではありません。サードインパクトを乗り越えた先にシンジが手にする新しく明るい未来です。ユイはいずれ人同士のつながりや組織というつながりがなくなることを見抜いていました。 その上でなお生きていくためには個人の意思で他者とつながる道を選ぶことです。そしてそれを成し遂げるためにはエヴァが必要になります。ユイは息子が自分の手でそういう未来を志向し掴み取ることを希望していました。 「シン・エヴァ」の結末は正にユイがシンジに託した世界だったのではないでしょうか。「明るい未来」とはエヴァが必要なくなる世界、即ち「シンジがユイの愛情を必要とせずに生きていける世界」です。 その真意に気づいたのがシンジであり、気づけなかったのがゲンドウだったということでしょう。

「生きて行こうと思えばどこだって天国になるわよ」

エヴァ ユイ

この台詞にこそユイの芯の強さが込められています。生前にゲンドウと交わした台詞ですが、ユイには全く悲壮感の影がなく常に前向きです。世界を生きることに対して、その苦しみも悲しみも素直に受け入れています。 人間の潜在意識は常に自らが望む現実を引き寄せるものです。即ち潜在意識が後ろ向きだと現実も暗くなり、前向きだと明るくなります。ユイは本能的にそのことに気づいていたのではないでしょうか。 実際ユイがなくなってからゲンドウの潜在意識は一気に暗くなり、世界は後ろ向きになります。ユイが発した言葉の真意を理解できなかったのです。そして皮肉にも真意を理解して実践してみせたのが息子のシンジでした。 世界を明るくするのも暗くするのも全ては自分次第だという、とても普遍的かつ哲学的な言葉ではないでしょうか。

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碇ユイの声優を務めたのは林原めぐみ

エヴァ ユイ

碇ユイの声優を務めたのは林原めぐみ、「名探偵コナン」の灰原哀が有名です。本作では綾波レイとの演じ分けが凄く、ユイの時には自立した大人の女性を、そしてレイの時には無垢な女の子を演じています。 ユイやレイのキャラは内面の描写が希薄になりがちなキャラクター設定です。ユイのキャラクターに立体感を持たせられたのは林原めぐみさんの名演が大きいでしょう。

「エヴァンゲリオン」碇ユイは黒幕?真の正体は謎のまま……

今回は改めて25年の歳月を経ての完結編である「シン・エヴァ」の碇ユイについて考察してきました。黒幕であったかどうかはわかりませんし、真の正体は謎のままです。これからもファンの間で色んな論争が生まれるでしょう。 しかし、ユイは遥かをシンジに託し、それを彼が見事に実現したという事実は明らかです。絶望的なサードインパクトを悲観せず、大局を見据えた決断でシンジに世界の運命を託しました。そしてシンジは父も母も必要としない世界を実現したのです。 それは同時に本作をもって「母性」が「父性」を上回った瞬間だったのではないでしょうか。アニメ史上に残る名ヒロインとなるかもしれません。