映画『サマーウォーズ』×「デジモンアドベンチャー」を徹底比較!設定からキャラまで似ている?細田守監督の意図とは?

日本映画史に残る名作アニメ映画『サマーウォーズ』。実は一部界隈でこの作品が、映画版「デジモンアドベンチャー」のパクりではないかと言われているんです。 確かに似ているところも多い両作ですが、それはある意味当然のこと。実はどちらも細田守が監督を務めている作品なんです。この記事では、そんな2作の共通点について徹底解説!どんなところが似ているのか、他の細田作品との繋がりはあるのか。気になるポイントをまとめて紹介していきます。 ※この記事は『サマーウォーズ』・「ぼくらのウォーゲーム」の重要なネタバレを含みます。 ※ciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。
『サマーウォーズ』と「デジモンアドベンチャー」のあらすじを比較!
『サマーウォーズ』

世界中の人々が仮想空間「OZ」を利用している世界。高校生の小磯健二(こいそけんじ)は先輩の夏希(なつき)にバイトに誘われ、彼女の一族・陣内家が住む田舎で夏休みを過ごすことに。そんななかOZは人工知能に乗っ取られてしまい、世界中が大混乱に陥ります。 ひょんなことから濡れ衣を着せられた健二は、事件解決に乗り出しました。引っ込み思案だった彼が、陣内家の面々と共に世界の危機に立ち向かっていく様子が描かれていきます。
『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
デジタルワールドでの冒険を終えた太一たちは2000年の春休みを迎えていました。ある日ネット上に凶悪な新種デジモンが現れます。このデジモンはネットに繋がる機器のデータを食い荒らしながら、加速度的に進化していきました。 異変に気がついた太一は再び選ばれし子ども達に声を掛け、この新種デジモンを倒すことを決意。太一たちが住むお台場と、ヤマトたちの帰省先だった島根、そしてネットを舞台に子どもたちが勇気と友情で敵に立ち向かっていきます。
共通点①インターネットを舞台に戦いを繰り広げている設定

両作品とも自然豊かな日本の原風景とも言える場所と、インターネット世界を舞台に戦いを繰り広げています。さらに、「主人公たちが協力してネット上に現れた敵を倒す」、「時間制限があるなかで爆弾などの解除を目指す」という物語の流れもほぼ同じ。 また、世界中の人々がネットを介して戦いを観戦している、電話で多くの人に助けを呼びかけるなど、細かなシーンにも類似点が見られます。舞台設定・あらすじ・作中描写、『サマーウォーズ』と「ぼくらのウォーゲーム」には驚くほど共通点が多いのです。 ただ、公開した時期が違うため、ネット環境の違いは顕著。同じネットを舞台にした戦いでも、その印象は大きく違っています。
インターネットはぐんと身近に

「ぼくらのウォーゲーム」公開時の2000年、パソコンの一般家庭普及率は40%程度。一方で『サマーウォーズ』が公開された2009年当時は普及率が70%を越えていました。 「ぼくらのウォーゲーム」で島根に帰省中だったヤマトが発した「島根にパソコンなんてあるわけないじゃん」というセリフからも、当時のIT環境が窺えます。ヤマトたちは田舎でネットに繋がったパソコンを見つけるのに苦戦していました。 『サマーウォーズ』公開時はSNSも普及しており、ネットは身近な存在に。OZ内でできることもよりリアルな印象を受けます。 ネットを舞台にすることの意味合いが、この9年間で飛躍的に変化したため、同じ設定でも作品から受け取る印象は大きく違っているのです。
共通点②キャラクターの作画・線の色

両作品に描かれたネット上の仮想空間には、大きな共通点が存在します。実はどちらも仮想空間内のキャラクターが赤色の線でふち取られているのです。現実世界にいるキャラは黒の線でふち取られているため、仮想と現実、その違いが感覚的にわかるよう意識的に色を変えているのでしょう。 また、仮想空間の背景が白を基調としており、そこにビビッドな色のキャラや造形物を配置している点もよく似ています。もしかしたら「僕らのウォーゲーム」のネット世界が進化した先に、『サマーウォーズ』のネット世界があるのかもしれません。
なぜ似ている映画をつくった?細田守監督の意図を考察

『サマーウォーズ』と「ぼくらのウォーゲーム」両作品を観た人であれば、その類似性には誰でも気づくだろうと思います。それではなぜ似た構図、背景の作品を作ったのでしょうか。 細田監督は上映時間40分の「ぼくらのウォーゲーム」では表現しきれなかったことを、『サマーウォーズ』で表現しようとしたのではないかと考えられます。 40分という短い時間だったこともあり、前者はネット内での戦いに終始しており、オフラインでの戦いを描く余裕はなかったのでしょう。 さらにデジモンという既存コンテンツを壊すことなく、コンテンツファンの低年齢層に向けた作品にしなくてはならなかったはずです。 時間や既存コンテンツ、対象年齢といった制限を取っ払って、よりオリジナルな形で表現したかった。その結果生まれたのが『サマーウォーズ』ではないかと思います。
『竜とそばかすの姫』にも複数の共通点が⋯!

細田守監督が新たに手掛けた『竜とそばかすの姫』(2021年)は、再びインターネット世界を描く作品です。 現実世界で最愛の母を亡くし、大好きな歌を歌うことができなくなっていた少女すず。そんなすずが唯一歌うことができたのが、仮想世界「U(ユー)」の中でした。 彼女の歌声はまたたく間に世界に広がり、すずは数億人が熱狂するネット界の歌姫ベルになります。やがてベルは、ネットの秩序を壊す「竜」と呼ばれる謎の存在に出会うのでした。 誰もが気軽に世界に発信して、一躍インフルエンサーになれる時代。同時に人格と強く結びついたネット世界には、嫉妬や誹謗中傷が蔓延しているのも事実です。本作ではベルと竜を通して、そんなネットの光と影が描かれていきます。
【キャラクター】「OZ」のアバターが「U」にも登場?

『竜とそばかすの姫』の主な舞台となる「U」。こちらは50億人以上が利用しているインターネット上の仮想空間で、この設定だけ聞いてもOZとそっくりなことが伝わると思います。 さらに、UとOZには「巨大なクジラ型のキャラ」がいるうえ、UにはOZにもいたアバターが存在。この2つの電脳空間には、思った以上に多くの共通点があるのです。 ちなみに、『竜とそばかすの姫』に登場するYouTuber・ぐっとこらえ丸&ひとかわむい太郎のデザインは、『サマーウォーズ』のキングカズマや仮ケンジ(リス型アバター)を手掛けた岡崎能士と岡崎みなが担当。各キャラのルックスにも、どことなく似た雰囲気が漂っています。
【ストーリー】高校生が謎の存在に立ち向かう

『サマーウォーズ』と『竜とそばかすの姫』はどちらも高校生が主人公に据えられています。彼らがネット上に現れた謎多き存在と対立し、仮想空間と現実世界、その両方で起きる事件に立ち向かっていく。そのあらすじも非常に似通っています。 さらに、「家族」がテーマになっているところも共通点のひとつ。細田監督は『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』でも家族を扱っていたため、こちらは監督が手掛ける作品の多くに共通しているテーマなのかもしれません。
細田守監督作『サマーウォーズ』と「デジモンアドベンチャー」は似ている!
細田守監督作品の『サマーウォーズ』と『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の共通点について紹介しました。インターネット世界という共通テーマを扱っているため、似ているところも多い両作品。 一方でネットというのは進化スピードが速いジャンルなので、時代の変化による違いも見て取れました。 同じくネット世界をテーマにした最新作『竜とそばかすの姫』も含め3作品を比較してみると、時代ごとのネットの在り方が見えてきて面白いのではないでしょうか。