2021年7月16日更新

映画『サマーウォーズ』×「デジモンアドベンチャー」を徹底比較!細田守監督の意図とは?

『サマーウォーズ』(2009年)

細田守監督作『サマーウォーズ』と「デジモンアドベンチャー」を比較!

次々と劇場アニメのヒット作を生み出している細田守監督。そんな細田守作品の中でも、特に共通点が多いのが『サマーウォーズ』(2009年)と『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)です。 監督いわく「ぼくらのウォーゲーム」は、『サマーウォーズ』の原点。では具体的にどんな共通点があるのでしょうか。 この記事では2作品を比較しながら、細田守監督が作品を通して伝えたかったものを考察していきます。

それぞれのあらすじをおさらい!

『サマーウォーズ』

『サマーウォーズ』
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

世界中の人々が仮想空間「OZ」を利用している世界。高校生の小磯健二(こいそけんじ)は先輩の夏希(なつき)にバイトに誘われ、彼女の一族・陣内家が住む田舎で夏休みを過ごすことに。そんななかOZは人工知能に乗っ取られてしまい、世界中が大混乱に陥ります。 ひょんなことから濡れ衣を着せられた健二は、事件解決に乗り出しました。引っ込み思案だった彼が、陣内家の面々と共に世界の危機に立ち向かっていく様子が描かれていきます。

『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』

デジタルワールドでの冒険を終えた太一たちは2000年の春休みを迎えていました。ある日ネット上に凶悪な新種デジモンが現れます。このデジモンはネットに繋がる機器のデータを食い荒らしながら、加速度的に進化していきました。 異変に気がついた太一は再び選ばれし子ども達に声を掛け、この新種デジモンを倒すことを決意。太一たちが住むお台場と、ヤマトたちの帰省先だった島根、そしてネットを舞台に子どもたちが勇気と友情で敵に立ち向かっていきます。

共通点は“インターネットを舞台に戦いを繰り広げる”という設定

『サマーウォーズ』

両作品とも日本の田園風景の中で、インターネットを舞台に戦う物語。ネット上に現れた敵を主人公たちが協力して倒すというメインの流れもほぼ同じです。また世界中の人々がネットを通じてその戦いを観戦及び応援しているというのも似ています。 いずれも主戦場がネットならではの描写ですが、ネット環境の違いは顕著同じネットを舞台とした戦いでも、その印象は大きく違っています。

インターネットはぐんと身近に

「ぼくらのウォーゲーム」公開時の2000年、パソコンの一般家庭普及率は40%程度。一方で『サマーウォーズ』が公開された2009年当時は普及率が70%を越えていました。 「ぼくらのウォーゲーム」で島根に帰省中だったヤマトが発した「島根にパソコンなんてあるわけないじゃん」というセリフからも、当時のIT環境が窺えます。ヤマトたちは田舎でネットに繋がったパソコンを見つけるのに苦戦していました。 『サマーウォーズ』公開時はSNSも普及しており、ネットは身近な存在に。OZ内でできることもよりリアルな印象を受けます。 ネットを舞台にすることの意味合いが、この9年間で飛躍的に変化したため、同じ設定でも作品から受け取る印象は大きく違っているのです。

なぜ似ている映画をつくった?細田守監督の意図を考察

『サマーウォーズ』(2009年)

『サマーウォーズ』と「ぼくらのウォーゲーム」両作品を観た人であれば、その類似性には誰でも気づくだろうと思います。それではなぜ似た構図、背景の作品を作ったのでしょうか。 細田監督は上映時間40分の「ぼくらのウォーゲーム」では表現しきれなかったことを、『サマーウォーズ』で表現しようとしたのではないかと考えられます。 40分という短い時間だったこともあり、前者はネット内での戦いに終始しており、オフラインでの戦いを描く余裕はなかったのでしょう。 さらにデジモンという既存コンテンツを壊すことなく、コンテンツファンの低年齢層に向けた作品にしなくてはならなかったはずです。 時間や既存コンテンツ、対象年齢といった制限を取っ払って、よりオリジナルな形で表現したかった。その結果生まれたのが『サマーウォーズ』ではないかと思います。

最新作『竜とそばかすの姫』で再びインターネット世界が描かれる

竜とそばかすの姫 場面写真
(C)2021 スタジオ地図

細田守監督が新たに手掛けた『竜とそばかすの姫』(2021年)は、再びインターネット世界を描く作品です。 現実世界で最愛の母を亡くし、大好きな歌を歌うことができなくなっていた少女すず。そんなすずが唯一歌うことができたのが、仮想世界「U(ユー)」の中でした。 彼女の歌声はまたたく間に世界に広がり、すずは数億人が熱狂するネット界の歌姫ベルになります。やがてベルは、ネットの秩序を壊す「竜」と呼ばれる謎の存在に出会うのでした。 誰もが気軽に世界に発信して、一躍インフルエンサーになれる時代。同時に人格と強く結びついたネット世界には、嫉妬や誹謗中傷が蔓延しているのも事実です。本作ではベルと竜を通して、そんなネットの光と影が描かれていきます。

映画『サマーウォーズ』と「デジモンアドベンチャー」は似ている!

細田守監督作品の『サマーウォーズ』と『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の共通点について紹介しました。インターネット世界という共通テーマを扱っているため、似ているところも多い両作品。 一方でネットというのは進化スピードが速いジャンルなので、時代の変化による違いも見て取れました。 同じくネット世界をテーマにした最新作『竜とそばかすの姫』も含め3作品を比較してみると、時代ごとのネットの在り方が見えてきて面白いのではないでしょうか。