2023年6月16日更新

『時をかける少女』ネタバレあらすじを解説&考察!その後再会できたのか伏線から読み解く

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『時をかける少女』作品概要・登場人物

時をかける少女
公開年 2006年
監督 細田守
原作 筒井康隆『時をかける少女』

原作小説もコミカライズも読める

(画像中央) 紺野真琴/cv.仲里依紗

紺野真琴は、活発な性格の高校2年生。朝に弱く遅刻しがちで、学校の成績は中の下。千昭や功介とは仲の良い男友達で、恋愛感情は持っていません。そんな真琴はある日突然、不思議な能力を使えるようになります。

(画像左) 間宮千昭/cv.石田卓也

間宮千昭(ちあき)は、真琴の男友達の1人。春に真琴のクラスに転校して来ました。オレンジ色の髪で制服も着崩しているので目立っており、女生徒から人気があります。

(画像右) 津田功介/cv.板倉光隆

津田功介は、真琴のクラスメイトで男友達。真琴とは中学時代から仲が良く、千昭が転校してきてからはよく3人でつるむようになりました。親が医者で実家が病院のため、功介も医者を目指しており、成績優秀です。

『時をかける少女』結末までのネタバレあらすじ

【あらすじ①】死んだと思ったら……タイムリープ?

『時をかける少女』
©「時をかける少⼥」製作委員会2006

高校2年生の紺野真琴は医学部志望の津田功介、春に転校してきた間宮千昭と親友になり、ありふれた高校生活を謳歌していました。 そんなある日、真琴が日直の用事で理科実験室に入ると、謎の英文と人影を発見。バランスを崩して転んだ瞬間、異空間に飛び込むような体験をします。さらに帰り道では坂を下る途中で自転車のブレーキが故障し、電車と衝突しかける事態に! 死を覚悟した彼女がふと目を開けると、事故の少し前まで時間が巻き戻っていました。

【あらすじ②】俺と……付き合えば?

時をかける少女

美術館で働く魔女おばさんが言うには、こうした現象を「タイムリープ(時間跳躍)」と呼び、真琴の年代の少女によくあることなのだとか。真琴はこの力を使い、自分の思い通りにならなければ過去をやり直し、小さな欲望を叶えるようになりました。 しかし功介が後輩に告白されたのを機に、それまでの3人の関係に変化が訪れます。真琴が不安を感じていると突然、千昭から「俺と……付き合えば?」と持ちかけられたのです。衝撃のあまり真琴はタイムリープで告白を無かったことにしてしまいました。 都合の良い力の代償として、未来が少しずつ狂っていると気付き、初めてタイムリープした日からやり直していくのです。

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【あらすじ③】お前……タイムリープしてね?

『時をかける少女』
©「時をかける少⼥」製作委員会2006

やり直した結果腕に書かれた数字(=タイムリープの残り回数)は減る一方でも、功介と後輩の仲を取り持つこともでき、3人の関係も元に落ち着いて彼女自身は満足でした。 しかし突然千昭から携帯に電話があり、「お前……タイムリープしてね?」と思わぬ質問をされます。 実は千昭の正体は未来人で、真琴が突然タイムリープの力を得たのも、彼が理科室に隠していた未来の機械に触れてしまったからでした。

【結末・ラスト】未来で待ってる

事故死した功介と後輩を救うため、自分の最後の1回分のタイムリープを消費した千昭。さらに過去の人間に真実を教えた彼は、ルール上どの時代にも存在できなくなります。しかし千昭が時間を戻したことで真琴は1回だけタイムリープできるようになり、1番最初の日まで戻りました。 真琴は千昭の残り回数が復活したのを確認し、彼の“見たいと願う絵”を未来に残すと誓います。 千昭は未来へ戻ることになり、別れた後で泣きじゃくってしまう真琴。そんな彼女のもとへ千昭が駆けつけて、「未来で待ってる」と言い残しました。その言葉を聞いた真琴も微笑み、「うん。すぐ行く、走っていく」と返事をします。 その後、真琴は学校のグラウンドでいつものように功介とキャッチボールをしながら、「やりたいことが決まった」と言って青空を見上げるのでした。

原作小説の結末はどうなる?

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【考察1】未来で2人は再会できるのか?

さてここからは『時をかける少女』で考察の的になっている謎について取り上げます。まずは千昭と真琴はその後再会できたのか?2人の未来や千昭の発言の意図を探っていきましょう。

千昭は何年後から来たのか?

時をかける少女

千昭は未来人でしたが、何年後から来たのかは劇中で明かされませんでした。もし千昭が戻った先が近い未来であれば、真琴が生きているうちに再会できる可能性もあります。 しかし千昭が「川が地面を流れているのをはじめてみた」、「こんなに人が沢山居るところをはじめて見た」などと話していることから、実際に真琴と再会できる可能性は低そうです。今とは地球の様子が大きく異なるほど遠い未来、数百年以上は後から来たのだと考えられます。 しかし、だとしたら「未来で待ってる」というセリフはどういう意味だったのでしょうか?

解釈①:「絵」を通して会える

時をかける少女

千昭が未来からわざわざ真琴の時代にやってきたのは、この時代のこのタイミングでしか所在が確認できていない絵画「白梅二椿菊図」を実際にその目で観るためでした。 さらに別れの前、真琴はこの絵が千昭の時代まで失われないように残していくと宣言しています。この言葉通り、真琴が絵の修繕や保存に尽力して、後世に残すことができたとしますれば、千昭の帰っていった未来に絵を届けることができるのです。 そして、後世に受け継がれた絵を目にした千昭は、この絵画の向こう側に真琴の存在を感じることができます。実際に会えなくても、絵画を通じてお互いの存在を感じ合って「再会」することができるのです。

解釈②:千昭なりの優しさだった?

『時をかける少女』
©「時をかける少⼥」製作委員会2006

千昭は未来からやってきた人物です。それだけに、簡単に人が未来に行けないことや、真琴の住む世界と自分がいた世界の違いなどもよく理解していたはず。 しかしそう頭で理解していても、「必ず会える未来がある」と信じる真琴を前にはっきりと「無理だ」ということはできなかったのでしょう。そして千昭は強く真琴に惹かれていました。なおさら、真琴を突き放すようなことは言えなかったはずです。 結果として、千昭は「待ってる」と彼女に伝えました。真琴に何かを望む言葉ではなく、ただ自分が「待っている」存在だということを伝えたのです。これは、これから自分のいない未来を歩むことになる真琴を元気づける、千昭なりの優しさだったのかもしれません。

原作小説の結末はどうなる?

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【考察2】魔女おばさんの正体は?原作とのつながりも

魔女おばさんの正体は?

時をかける少女

魔女おばさん”こと真琴の叔母・芳山和子は、真琴のタイムリープを見抜きさりげなく忠告やアドバイスをくれる不思議な人物。 なぜ彼女はタイムリープのことを知っていたのでしょうか。それは「魔女おばさん」が原作『時をかける少女』の主人公だからです。 魔女おばさんの本名「芳山和子」は原作小説の主人公と全く同じです。さらにアニメ映画版には原作の20年後の世界を描いているという舞台設定があります。アニメ映画版の和子が30代後半という年齢設定からも、彼女はかつてヒロインだったあの和子だと考えられるのです。

原作小説を読む

原作での芳山和子

原作で和子は、真琴と同じようにタイムリープを体験し、その原因も未来からきた同級生の実験でした。やがて2人は惹かれ合いますが、未来のルールに従い和子は記憶を消され、同級生は未来へと戻っていってしまいました。 記憶を消された和子が20年の間にどうやって記憶を取り戻したのか、といった詳細は明かされていません。しかし彼女はかつてのヒロインだったと思って本編を見返すと、また違った見方ができるかもしれません。

原作小説の結末はどうなる?

【考察3】込められたメッセージと3つの伏線を読み解く

①真琴の性格

時をかける少女

時代による変化

原作小説や1983年公開の実写映画『時をかける時少女』での主人公・和子は、真琴よりもおしとやかな性格でした。しかし2006年に公開されたアニメ映画の真琴は、“ボーイッシュ”とも言える活発な性格で、タイムリープの能力も喜んで自分から使っています。 小説や実写映画版は1980年代までの価値観で描かれていますが、2006年のアニメ版は現代の女性が共感しやすいようにアップデートされているのです。現代の女性へのエールと受け取ることもできますね。

それでも変わらないもの

時代が変わり性格が大きく変わっても、変わらず描かれているヒロインの姿があります。それは「大切な人のために行動する」ということ。 原作でもアニメ映画版でも、ヒロインは大人と子供の間にいる女子高生です。将来が決まっていない少女は優柔不断に、気まぐれな行動を繰り返します。しかし大切な存在に気づくことで、責任を学び、大きな決断を迫られるのです。 誰もが通る青春の痛みと成長を描いているからこそ、世代を超えて人々の心に残る作品になったのではないでしょうか。

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②黒板の落書き“Time waits for no one”

時をかける少女

千昭と真琴にとって鍵となる理科室。その黒板に書かれていた落書きが「Time waits for no one」と「 (゚Д゚) ハァ?」です。 前者は直訳すると「時は誰も待ってくれない」という意味になります。英文の内容は、まさしくこの作品で描かれているテーマそのもの。 本作は時間を戻して変えられる主人公が、その力を使い切ってしまうことによって、逆説的に今という時間の大切さに気付く物語です。冒頭に出てきたこの落書きは、まさに物語全体の伏線になっていました。 実はこの英文はカラオケのシーンでも登場しています。千昭が「Time waits for no one」というフレーズが出てくる曲を歌っているのです。 千昭には、未来に帰らなくてはならないというタイムリミットがありました。しかし日常の心地よさから帰りがたい気持ちが生まれていたのでしょう。そんな自分への自戒も込めて、千昭は歌を歌い、黒板に走り書きをしたのではないかと考えられます。 そして横に書いてある「 (゚Д゚) ハァ?」は、まだまだ青春に終わってほしくない真琴が書いたのかもしれません。

③白梅二椿菊図

千昭がタイムトラベルをしてまで観に来た絵画「白梅二椿菊図」。劇中では、魔女おばさんこと芳山和子が務める博物館で修復されている絵画です。この絵は、実際には存在していません。 和子によって、大きな戦争や大飢饉が起きた時代に描かれた絵であること、観ていると心温まる絵であることが説明されています。それ以外の説明がなく不明な点も多い絵ですが、千昭がこの絵に大きな意味を見出していたことは確かです。 千昭は空の広さや川の様子を、現代で初めて見たと言っていました。この発言から彼の時代にはまったく違った風景が広がっていることが想像できます。心温まる絵を求めたくなるような悲惨な戦争や飢饉があるのかもしれません。 今は当たり前にあるものが未来にはないというこの描写は、取り返しのつかない破壊を繰り返す、人類全体に対しての危惧や啓発とも読み取れますね。

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『時をかける少女』の関連作

「時かけ」にも前身があった!?

細田守監督の大人気アニメ映画『サマーウォーズ』は、監督が過去に手がけたアニメ映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』と似ている部分が多く、前身・原型的な作品ではないかと言われいています。 実は『時をかける少女』にも前身と思われる作品が。アニメ『おジャ魔女どれみ ドッカ~ン!』の第40話「どれみと魔女をやめた魔女」です。 東映アニメーション在籍時代に細田守が手がけたこのエピソードでは、将来のビジョンが見えずに焦る魔女見習いのどれみが、元魔女の女性に出会い、そしてある選択を迫られます。大切な“時間”についても描かれており、シリーズの中でも傑作だと高く評価されているアニメーションです。

他の「時かけ」作品との比較

『時をかける少女』の映像化作品は、2022年現在までに、細田守監督の本作をのぞいて全8作品が製作されています。各作品については以下の記事で紹介しているので、ぜひチェックしてください!

考察要素だらけの映画『時をかける少女』をネタバレ解説でおさらい

『時をかける少女』
©「時をかける少⼥」製作委員会2006

今回は、公開から時を経てなお愛される名作『時をかける少女』について、あらすじとともに、作中に散りばめられた謎や伏線をネタバレありで考察してきました。 この作品は観た際の年齢や環境によって、様々な感じ方ができる作品です。とくに大人になってから観る「時かけ」は、まさに「Time waits for no one」を感じさせてくれるでしょう。ぜひ何度も繰り返し観てほしい作品です。