日本の3DCGアニメの最先端を走る、ふたりの名監督がタッグ
「月刊ヒーローズ」の創刊に合わせて『ULTRAMAN』連載が始まったのは2011年のこと。斬新な設定やマスクドヒーロー風にデフォルメされた「ウルトラマン像」、ダイナミックなアクションシーンなどが、世代を超えて注目されています。 そんな人気漫画が、いよいよアニメ化。2019年春にNetflixで公開される予定です。監督はCGアニメに対する造詣が深い神山健治と荒牧伸志がタッグを組み、やはり日本を代表する3DCGアニメのプロフェッショナル、Production I.GとSOLA DIGITAL ARTS Inc.共同製作でプロジェクトが進められています。 まさに「ウルトラ」ドリームチームが作り上げる『ULTRAMAN』は、果たしてどんな作品になるのでしょうか。これまで彼らが手がけてきた傑作たちを観れば、その魅力がきっと理解できるハズ。それぞれの見どころをご紹介しながら、アニメ『ULTRAMAN』への期待感を盛り上げていきたいと思います。
3DCGになるために生まれた!?漫画『ULTRAMAN』あらすじ
舞台は、「光の巨人 ウルトラマン」が地球を去ってから40年後の日本。地球侵略を狙う宇宙人も狂暴な怪獣もいない、平和な時代が訪れていました。 しかしそれは、仮初めの平和。かつて科学特捜隊の隊員だった早田の息子・進次郎はある日、自分がウルトラマンの遺伝子を受け継ぐ者であることを知らされます。そして地球にはすでに数多くの異星人たちが暮らしていることや、今なお世界に危機が訪れようとしていることも。 進次郎は新たなヒーローとして、「ウルトラマンスーツ」を身につけて戦うことを決意。人々を襲う凶悪な異星人に立ち向かいます。しかし一方でさまざまな事件の背後には、さらに恐るべき陰謀が隠されていたのでした。 クールなアーマードスーツといいダイナミックなバトルシーンといい、映像化されれば間違いなく『アイアンマン』を凌ぐド迫力な「映像」が展開されるハズ。まさに3DCG化されるために生まれたSFヒーローアクションが、この『ULTRAMAN』なのです。
「W監督」超絶プロフィール その1:神山健治の傑作たち
神山健治は1996年にProduction I.Gに入社。2002年に製作したテレビシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で一躍注目を浴びました。彼の作品世界に共通するのは、重層的なテーマ性。物語の裏側に秘められた謎が厚みのある物語性を生み出します。 一方で、新しい映像表現にも大胆にチャレンジしています。2011年に公開された『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』では、当時としては先進の3DCG表現に挑戦。大人気となり、上映館が急遽、3倍に増やされるという逸話を作りました。 代表作としてはほかに、上橋菜穂子の大河ファンタジー小説をテレビアニメ化した『精霊の守り人』や劇場公開された『ひるね姫 〜知らないワタシの物語』など。オリジナル作品としてはテレビシリーズから劇場版まで制作された『東のエデン』も、ファンに人気のある作品です。
「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」シリーズ(2002〜2011年)
原作は士郎正宗。「電脳化」によって情報ネットワークを使った悪質な犯罪が連続する時代。それに立ち向かう草薙素子以下「公安9課」の活躍を描いたこのシリーズは、2002年から2011年にかけてテレビアニメ、劇場版およびそのバージョン違いを含めて4作品が制作されています。すべて監督は神山健治、アニメーション制作はProduction I.Gが手がけました。
『精霊の守り人』(2007年)
全12巻に渡る上橋菜穂子の小説の第1巻を原作として、忠実にアニメ化。ぶっきらぼうだけれど人間味あふれる単槍使いの女用心棒バルサが、精霊の力を身に宿した王子チャグムを守るために奮闘します。
「東のエデン」シリーズ(2009〜2010年)
主人公は、100億円を使って「日本を救う」ゲームに巻き込まれた記憶消失の少年、滝沢 朗。偶然彼に関わることになってしまった女子大生・森美 咲と仲間たちが力を合わせて、日本を揺るがせる大事件の謎に挑みます。 テレビ版が2009年に放送された後、続編として『東のエデン 劇場版Ⅰ The King of Eden』と『東のエデン 劇場版Ⅱ Paradise Lost』が公開されました。
『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』(2017年)
神山健治が原作から手がけたファンタジーアニメ。昼寝を愛する高校3年生、森川心羽(ココネ)が、夢の中の魔法世界と現実世界を行き交いながら、秘められていた両親の秘密や自らの生い立ちの謎に向き合っていきます。不思議な冒険を通してすべての謎が解けた時、ココネは新しい人生を踏み出すことを決心します。
「W監督」超絶プロフィール その2:荒牧伸志の傑作たち
「宇宙の戦士」原作小説のパワードスーツデザインを手掛けた宮武一貴、荒牧監督版スーツを絶賛! - シネマトゥデイ http://t.co/Cb5DT7mU @cinematodayさんから
— Shinji Aramaki (@snjaramaki) July 17, 2012
メカニック、プロダクションなどのデザイナーとしても数多くの作品に関わっている荒巻だけに、緻密なメカニック設定を生かしたハードSF系の作品が得意。劇場版『APPLESEED』と続編『EX MACHINA』は、セルルック調の味わいにモーションキャプチャー技術などを絡めた「フル3Dライブアニメ」として制作、ヒットに導きました。 SOLA DIGITAL ARTS Inc.の発起人のひとりであり、CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を務めています。 『ULTRAMAN』にもさまざまなタイプのアーマードスーツが登場しますが、ずば抜けた映像センスと完成度の高いCGを駆使して、リアルで迫力たっぷりのバトルシーンを演出してくれそうです。
『スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット』(2017年)
凶暴な昆虫型宇宙生命体「バグ」と人類の壮絶な死闘を描いた「スターシップ・トゥルーパーズ」シリーズは、1997年公開の第1作から2008年の第3作まで実写のSF映画として制作されました。第4作『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(2012年)からはフルCG化。これに続く『スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット』(2018年)も含めて、荒牧伸志が2本連続で監督を務めています。
「APPLESEED」シリーズ(2004〜2014年)
原作は、攻殻機動隊と同じく士郎正宗。世界大戦終結後、人類が管理する理想都市で警察官として犯罪に立ち向かうデュナンと、同僚であり恋人でもあるサイボーグ、ブリアレオスの活躍を描いた物語は、2004年に第1作が劇場公開されました。以来、第2作『EX MACHINA −APPLESEED SAGA−』(2007年)、リブート作品『APPLESEED ALPHA』(2014年)を、荒牧伸志監督が手がけています。
『キャプテンハーロック−SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK−』(2013年)
松本零士原作の人気SFアクション漫画をリブート、フルCGアニメとして2013年に公開されました。人類が破滅の影に怯えながら地球への帰還を願う時代、宇宙海賊キャプテンハーロックとその仲間たち、そしてその輪に加わった若者ヤマの戦いを描いています。宇宙海賊船アルカディア号など、メカの存在感は圧巻です。
制作はProduction I.GとSOLA DIGITAL ARTSの強力タッグ
「Production I.G」は1990年代半ば、前身である「I.G.タツノコ」時代に手掛けた押井守監督の『機動警察パトレイバー』劇場版がヒット。日本だけでなく世界でも名を知られることになりました。現在ではいくつかのプロダクションを傘下に置き、日本を代表するアニメ関連のグループ企業に成長しています。 一方、共同製作を務める「SOLA DIGITAL ARTS Inc」は、荒牧伸志監督が2010年に立ち上げた組織。『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』の企画が決まったことをきっかけに、仲間と設立したのだそうです。以来、最新のモーションキャプチャー技術を採り入れたフル3DCGアニメの制作技術などで、注目される存在となりました。 今回のコラボレーションに対するSOLA DIGITAL ARTS Inc.のこだわりには、並々ならないものがあります。2017年には新規スタッフ募集を行うとともに、それまで歌舞伎町にあった社屋を武蔵野市中町に移転。実はこちら、Production I.Gまで歩いて行ける距離なのだとか。
『攻殻機動隊 新劇場版』(2015年)
『攻殻機動隊』誕生25周年を記念して制作された、スケールの大きな作品。他のシリーズ作品同様、Production I.Gが手がけました。物語の流れとしては、2013年から2014年にかけて劇場版として政策された『攻殻機動隊 ARISE』を受け継いだもの。公安9課専属・攻殻機動隊が誕生するきっかけとなった、ウィルスをめぐる事件を描いています。
『百日紅〜Miss HOKUSAI〜』(2015年)
原作は杉浦日向子の人気漫画。江戸の下町を舞台に、変人・葛飾北斎と彼を取り巻く人々の日常が生き生きと描かれています。劇場版『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』などで注目された原恵一がメガホンをとり、Producion I.Gが制作を担当。北斎の実の娘、お栄をヒロインに、鮮やかな江戸の街並みとそこに生きる人々の息遣いまで見事に表現しました。
『APPLESEED ALPHA』(2015年)
デュナンとブリアレオス、ふたりの活躍を描いた劇場版シリーズの第3作。同じ3DCGでありながら、SOLA DIGITAL ARTS Inc.によって写実的なフォトリアル調に仕上げられています。「アルファ」は、単なる続編ではなく新しいステージに立つことを意味するもの。理想都市オリュンポスにたどり着く以前の、元SWAT隊員としてのデュナンたちの日々が描かれています。
『evangelion: Another Impact』(2015年)
スタジオカラー・ドワンゴがシリーズ化している「日本アニメ(ーター)見本市」の第12話として2015年に公開された、短編映像作品です。『パシフィック・リム』に刺激を受けた荒牧伸志監督が、庵野秀明に許可をもらって「エヴァ」の世界観をリアルに映像化。SOLA DIGITAL ARTS Inc. の本領発揮!な、衝撃的完成度には目を見張るものがあります。
2019年春、『ULTRAMAN』はNetflixにて全世界に同時配信!
CGアニメの名作大全集的なラインナップをご紹介してきましたが、いかがでしたか。どの作品も個性的なストーリー展開と、一瞬たりとも目を離せないような迫力あふれる映像を楽しむことができます。 これらの作品ひとつひとつに感じられるアニメーションの新たな可能性は、『ULTRAMAN』への期待値を、否応なしに盛り上げてくれるハズ。 ここはひとつ、ふたりの監督とふたつのプロダクションが手がけた傑作アニメを楽しみながら、2019年春にNetflixで独占公開されるアニメ『ULTRAMAN』の完成をのんびり待つことにしましょうか。