トム・リドルのあふれる才能と深い闇の人生をたどる【ヴォルデモートに成り果てるまで】
「ハリー・ポッター」シリーズで最も恐れられた魔法使いといえば、「例のあの人」とも知られるヴォルデモート卿ですよね。 実はヴォルデモート卿は、トム・リドルという半純血の魔法使いが闇の魔術に傾倒した結果なのです。本記事では、そんなトム・リドルがどうしてヴォルデモート卿に成り果てたのかを解説していきます。
トム・リドルの悲しい少年時代、そして魔法使いになるまで
トム・リドルは孤児として育ちました。父親であるトム・リドル・シニアからは生まれる前から捨てられており、母であるメローピーも彼を産んですぐ亡くなってしまったのです。 そのため、トムは孤児院で生まれ育ちますが、そこでは十分な愛情を受けられませんでした。産まれる前に父に捨てられ、母にも「見捨てられた」と感じていた彼は、悲しい少年時代を過ごします。 そんなトムでしたが、11歳のときに大きな転機が訪れました。孤児院を訪れたダンブルドアから、自身が魔法使いであることを知らされたのです。 そして彼はホグワーツ魔法魔術学校に入学し、スリザリン寮生となったのでした。
ホグワーツ歴代最高の秀才?トム・リドルの仄暗い青春
トムは生まれつき魔法の才能に恵まれており、ホグワーツ在学中の成績は常にトップで、ダンブルドアに「ホグワーツ始まって以来の秀才」といわれるほどでした。 成績が大変優秀なうえに、その巧みな話術と父親譲りの美しい容姿で、教授陣から絶対的な信頼を集める優等生だったのです。
優等生だったトム・リドルの裏の顔とは?
しかしそんな優等生なトムにも裏の顔がありました。 トムはホグワーツの創始者の1人であるサラザール・スリザリンが作り、封印した「秘密の部屋」を開いたのです。そこに住む怪物・バジリスクを解放したところ、当時レイブンクロー生だったマートル・エリザベス・ウォーレンがバジリスクを目撃してしまい、彼女は死亡しました。 マートルの突然の死にホグワーツは大混乱。犯人だとバレて孤児院に戻されてしまうことを恐れたトムは、ハグリッドに濡れ衣を着せて退学に追い込みました。トムは犯人を捕らえたとして、特別功労賞を授与されます。 このエピソードは、映画『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で触れられていましたね。
トムがマートルを殺した目的
実は、トムがマートルを殺したのにも、ある目的がありました。 その頃トムは分霊箱の存在を知り、それを作ろうとしていました。分霊箱には自身の魂を引き裂いたものを入れておくことができて、それがある限り死ぬことはないのです。 しかし分霊箱を作るためには生贄が必要だったので、トムはバジリスクをけしかけてマートルを殺したのでした。そして自分の日記を分霊箱とし、魂を封じ込めます。 その後マートルはゴーストとなり、「嘆きのマートル」というあだ名で知られるようになります。彼女は「ハリー・ポッター」シリーズ本編にも登場しており、ハリーたちとも友好的な関係を築いていました。
リドルの日記に込めたもう1つの狙い
トムがマートルを殺してまで分霊箱=日記を作ろうとしたのは、魂を分割して不死の体を手に入れるためだけでなく、それを用いてある恐ろしい計画を実行するためでした。 秘密の部屋は、サラザール・スリザリンの意思を受け継いだ不思議な力を持っています。それは、“魔法を学ぶのにふさわしくない者を追放する力”です。スリザリンとトムにとって、それは純血でない者のことを指します。 秘密の部屋を開放したトムには、それができると思われました。しかしトムがマートルを殺しその罪をハグリッドに着せたことをきっかけに、ダンブルドアがトムへの警戒を強めたので、トムは再び秘密の部屋を開くことは危険だと判断します。 そのためにトムは自分の日記を分霊箱にすることで記憶をとどめ、いつかその日記を手にした誰かが再び秘密の部屋を開放することを狙ったのです。 シリーズ2作目の「秘密の部屋」で、彼は日記を手にしたジニーを操って秘密の部屋を開放しようとしますが、ハリーたちによってそれは止められました。
トム・リドルのスペルに隠された秘密とは?名前を捨てたわけ
そんな中、彼は自分の出生を探し当てます。それまでは父親の魔法能力が自分に受け継がれたと思っていた彼は、実は父親がマグルで、母親がサラザール・スリザリンの末裔でもある魔法使いであり、“凡庸なマグルである父が特別な魔法使いである母を捨てて”いたのです。 純血主義に傾倒し、父の血筋が自分にはふさわしくないと考えた彼は、母を捨てた復讐の意味も込めて、父から受け継いだ名前を捨てます。この頃から、本名を並び替えた「ヴォルデモート」を密かに使い始めたのです。 実は、「Tom Marvolo Riddle(トム・マールヴォロ・リドル)」の綴りを並び替えると、「I am Lord Voldemort(私がヴォルデモート卿だ)」になるのです。表向きは優等生だったトムのそんな邪悪な面を見抜き、警戒していたのはダンブルドアだけでした。
ホグワーツを卒業 闇の魔法使いとして強い力を手に入れる
ヴォルデモートは卒業後の進路として「闇の魔術に対する防衛術」の教授を志願します。しかし彼を警戒していたダンブルドアがそれを拒否したため、「夜の闇横丁」にあるボージン・アンド・バークスの店員となりました。 そしてそこで自分の目的に合った魔法具を発見すると、持ち主を殺害し、それらを持って失踪してしまいます。 失踪から10年後、再度「闇の魔術に対する防衛術」の教授に志願しましたが、またもダンブルドアが拒否。その後活動を本格化したヴォルデモートは、手下の死喰い人とともに純血でない魔法使いの粛清に乗り出しました。ヴォルデモートは大変強く、魔法界を混乱に陥れます。
ポッター家の襲撃、そして衰退へ
そんな中、手下のセブルス・スネイプの報告によって、自らを滅ぼす可能性を持つ者がポッター家に産まれるという予言を知ります。 ヴォルデモートはポッター家の居場所を突き止め、ジェームズ・ポッターとリリー・ポッター夫妻を殺害しました。しかし当時1歳だったハリー・ポッターに放った「死の呪い」がリリーの遺した「守りの魔法」ではね返り、彼は自滅してしまいます。 分霊箱に魂を保存していたことで完全な死こそ免れたものの、非常に弱い生命体になったヴォルデモートは逃亡します。この事件で魔法界はヴォルデモートが「消滅」したと考え、ハリーの名が英雄として広まったのです。 配下であった死喰い人は裁判の末アズカバンに投獄されたり、立場を翻すなどして組織は解体されました。
ヴォルデモートの復活と戦いの始まり
「消滅」してから10年以上経ち、イギリスに帰国した彼は儀式のおかげで復活を遂げます。そしてハリーと決闘したのですが、ヴォルデモートの杖とハリーの杖が「兄弟杖」であったため正常に働かず、結果ハリーを逃がしてしまいました。 それからは活動を活発化させ、魔法界に再び暗黒時代をもたらします。そして最大の敵であるダンブルドアがスネイプによって殺害され、ついに魔法界の実質的な支配者になりました。以後、純血主義に基づき、純血でない魔法使いの排除へと動きだします。 この部分は『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』と『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』、そして『ハリー・ポッターと謎のプリンス』で描かれました。
ハリーとの最後の戦い
ここからは『ハリー・ポッターと死の秘宝』で描かれています。 ヴォルデモートは宿敵ハリーを倒すため、手下を率いてホグワーツの面々と戦いますが、その中でほとんどの分霊箱を破壊されてしまい、彼の生命は非常に不安定なものとなってしまいました。 その後ハリーと対峙することになりましたが、ハリーは死を免れ、ハリーの魂の中に宿ったヴォルデモート自身の魂の一部だけが破壊されました。そしてハリーに死の呪文を放つも杖が作動せず、呪文が自らにはね返り、完全に死亡してしまうのです。
トム・リドルが力を求め続けたのはなぜ?
ヴォルデモートは常に力に固執し、魔法界を支配するほどの強大な力を手に入れてもそれは変わりませんでした。なぜだったのでしょうか? ヴォルデモートの原動力となっていたのは、自分の「出生に対するコンプレックス」だったと考えられます。純血主義にとらわれていた彼は、特別な能力を持っている自分に限ってマグルの血が入っているということが許せなかったのでしょう。 彼にとって、ただ1つの拠り所でかつ信じられたのが、自らの力でした。より大きな力を手に入れ、自分の理想とする世界を作ることでしか、父親やダンブルドアなど周囲の人々への憎しみを晴らせなかったのです。
ヴォルデモートとハリー、因縁の2人の違いは?
そんなヴォルデモートと対極に描かれていたのがハリーでした。マグルの血が入っているという点では彼もヴォルデモートと同じです(ハリーの母であるリリーはマグルの家系出身)。しかし彼が赤ん坊の頃ヴォルデモートに倒されなかったのは、母からの護りの魔法があったから。 ホグワーツに入ってから負けなかったのは、ロンやハーマイオニーとの友情が強い力を発揮したことと、彼らを大切に思うハリーの魂を、ヴォルデモートが乗っ取れなかったことが理由として挙げられます。 対してヴォルデモートは、愛情を受けずに父を憎んで育ち、自らを魔法の世界へと引き入れたダンブルドアにも拒絶された過去を持ちます。子どもの頃から愛情を受けることのできなかった彼は、より大きな力を手に入れ、魔法界を支配することで他者からの承認を得たかったのかもしれませんね。
トム・リドルが送った哀しい生涯!知ると見方も変わってくるかも?
「ハリー・ポッター」シリーズ全編を通じて悪役として描かれ続けたヴォルデモートでしたが、今回紹介したトム・リドルとしての過去を知らない人も多かったのではないでしょうか? 闇の帝王として恐れられる彼ですが、その過去を知った上で作品を振り返ってみると、今までとは違う見方もできるはずです。ストーリー全体に伏線が張り巡らされた「ハリー・ポッター」シリーズだからこそ、まったく違った解釈にも気づけますね。 これを機に、ぜひ作品を見返してみてはいかがでしょうか。