2018年12月22日更新

ヒットメーカー中島哲也の全キャリア 『来る』監督に至るまでを追ってみた

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中島哲也(映画「来る」プレス画像)
©2019「来る」製作委員会

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現代日本を代表するヒットメーカーのひとり、中島哲也

話題のホラー映画『来る』の監督として話題!

中島哲也は1959年9月2日生まれ、福岡県出身のCMディレクター、映画監督です。独特の世界観を持つ映像美に定評があり、日本映画界で今、最も注目を集める監督の一人です。 2018年12月公開の最新作『来る』は、岡田准一のホラー映画初挑戦作として大きく取り上げられ、中島監督にもスポットが当たっています。監督の名前に馴染みがない人も、『渇き。』や『告白』など代表作のタイトルは聞き覚えがあると思うのですが……。 実は中島監督、CM界でも有名人で、巨匠と呼ばれているのは知っていますか? 映画監督としては口が悪い鬼監督で出演俳優への当たりがキツイという話も有名ですが、彼の経歴や人柄はあまり知られていません。 この記事では、中島哲也のフィルモグラフィを振り返り、作風や人物像に迫ります!

大学卒業後、CMディレクターからキャリアをスタート

映画 カチンコ フリー画像

中島哲也は当初、映画界ではなくCM界でキャリアをスタートさせました。 明治大学卒業後、CM制作会社「日本天然色映画(現:ニッテンアルティ)」を経て、1987年よりフリーのCMディレクターに。転向後、デビュー作の『フジッコ漬物百選』では、山口美江の「しば漬食べたい」というセリフが反響を呼びました。 その他に、サントリー『モルツ球団』(1995年)、「第40回 ACC CM FESTIVAL」でテレビ部門のグランプリを獲得した『サッポロ黒ラベル 温泉卓球篇』(2000年)など印象的なCMを制作。 「温泉卓球篇」は、山崎努と豊川悦司の卓球バトルを、当時まだ開発されたばかりのハイスピードカメラで撮影し、全く新しい映像体験が視聴者の心をわし掴みに! 日本中が卓球ブームに沸く社会現象となり、ダイナミックな演出が業界でも高く評価され、一躍CM界の巨匠となりました。

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あの有名シリーズも手がけた巨匠だった!

1997年に稲垣吾郎出演の『フジカラー 写ルンです』、1999年に木村拓哉出演の『JRA'99年間キャンペーン』CMを手がけたのを機に、SMAPの映像作品を数多く担当。 SMAPが2014年に「27時間テレビ」で総合司会を努めた際のCMも演出し、スキンヘッドの特殊メイク(企画はCMプランナーの権八成裕)を施したSMAPが、テレビという武器を手にしたヒーロー「TELEVIMAN」に扮したCMが話題でした。 新しいものでは、ソフトバンク『白戸家 ギガ物語』(2016年)、ゆうちょ銀行『ゆうちゃん。』(2016年)など有名シリーズも手がけました。

『はの字わすれて』で映画監督デビュー、評価を高めていく

映画にも造詣が深く、大学在学中に制作した『はの字わすれて』(1982年)が、自主制作映画の登竜門「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)」で入選しました。 1988年には、『バカヤロー! 私、怒ってます 第二話 遠くてフラれるなんて』で劇場映画監督デビューするも、しばらく映画界から遠ざかることに。80年代後半は、「異業種監督」への風当たりが強かった時期とされ、その影響を受けたのかもしれません。 21世紀を迎え、デジタル技術の進化と共に多様な分野のクリエイターが映画界に参入する中、中島も初のメジャー作品『下妻物語』を発表します。映像技術と独特のセンスが光る『下妻物語』の誕生で、中島の評価は一気に高まりました。 CMディレクターとしての功績にも改めて光が当たるという逆転現象を生んだのです!

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中島哲也は口が悪い?出演俳優との因縁の噂も……

CMディレクターとして、映画監督として話題もヒットもさらう中島哲也ですが、人柄に関してはあまり良い噂が聞こえません……。 『パコと魔法の絵本』のアヤカ・ウィルソンが撮影中の思い出を聞かれ、「良い映画を作るために、監督がずーっと怖い顔でスタッフを怒鳴っていたところが忘れられないです」と笑いを誘ったように、長年一緒に仕事する中島組にも非常に厳しいのだとか。 『下妻物語』に出演した深田恭子は、土屋アンナと中島が「台本覚えろ!」「覚えない!」などと常に怒っていて、大変だったと明かしました。その他の作品でも、たびたび「鬼監督」エピソードが語られていますが、なぜこんなに口が悪いといわれているのでしょうか? おそらく、一番の理由は『嫌われ松子の一生』での中谷美紀との因縁だと思われます。

最も有名な中谷美紀との因縁のエピソード

主演を務めた中谷は、撮影終了後にインドへ一人旅した様子を旅行記として綴っているのですが、その旅のきっかけの一つが中島だったのです。 撮影中、中島から毎日のように「女優を辞めろ!」「殺してやる!」と罵倒され続け、精神的に参ってしまったという中谷。最初は素直に受け止めていましたが、体力的な限界も重なって、一度職場放棄したと語っています。 中島は仕草一つまで細かく指導するそうなので、ノイローゼ気味になったのかもしれません。 しかし、後の『渇き。』では中谷が"口撃"で中島をたじろがせる場面も。番宣で『王様のブランチ』に出演した際には、「本当は愛情がある監督だと気が付いた」と語りました。

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実は鬼監督ではなく優しい熊さん??

女優泣かせの鬼監督なのかと思えば、小松菜奈は「緊張しないように気を遣ってくれて、優しい熊さんみたい」と、意外な監督像を明かしました。 中島は『告白』辺りから、"自由な演技を活かした方が面白くなる"と気付いたそうで、初期の作品ほど細かい演技指導はしなくなったそうです。ただし、若手や子役には「次に何かに出るときに、俳優としてちゃんとやってもらいたい」と、厳しくすることもあるとのこと。 中谷の時も同じような思いがあったでしょうし、どうすれば作品が良くなるか、俳優の一番良い部分を引き出せるかを考え、指導しているのかもしれません。 中島が"口が悪い"のは事実のようですが、『告白』で泳ぎが苦手な松のためにプールの水深を浅くしたり、2018年の『来る』プレミア試写会では岡田が、「小松との親子のような信頼関係に嫉妬した」と明かすなど、鬼監督エピソードと同じくらいのキャストへの気遣いと愛情も伺えました。

オムニバス映画『バカヤロー!私、怒ってます 第二話 遠くてフラれるなんて』で知名度を上げる

中島監督の人物像について掘り下げていきましたが、ここからは作風の変遷や当時の評価などを追ってみましょう。 処女作『はの字わすれて』の後、森田芳光が総指揮と脚本を務め、オムニバス形式で描かれる『バカヤロー!私、怒ってます』(1988年)の一作を監督した中島。 「第二話 遠くてフラれるなんて」の主人公は、遠距離恋愛や妻に先立たれた父親の過干渉にストレスを溜めるOLの佐恵(安田成美)。ホテルで恋人に別れ話をされた上に、別室に佐恵がいると知りながら彼が女性を連れ込んだことに怒りを爆発させるストーリーでした。 本作ではオムニバス映画ということもあってか、まだ"中島色"は薄かったようです。しかし90年代に入ると、彼独特の作風が見られるようになります。

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中島ワールドを感じる長編劇場デビュー作『夏時間の大人たち』

長編劇場デビュー作『夏の時間の大人たち』(1997年)は、逆上がりができないせいでダメ人間の烙印を押されそうな少年が主人公のノスタルジックコメディです。脚本も中島が執筆し、夏休み前に少年の周りで起こる出来事をスケッチ風に綴りました。 「C.C.ガールズ」時代の青田典子、楳図かずおの漫画『へび少女』を登場させるなど、時代も反映させたアイディアと映像が秀逸。テレビのメロドラマで心情を表現したり、少年が大人の階段を上っていく過程に両親の子供時代の回想がシンクロする流れも印象的でした。 本作は後の『下妻物語』や、「嫌われ松子」の片鱗が感じられる作品といわれています。

何気ない日常の中で起こる珍騒動を描いた『Beautiful Sunday』

永瀬正敏と映画初出演の尾藤桃子を主演に迎え、中島が監督と脚本を、『夏時間の大人たち』の阿藤正一が撮影を担当した『Beautiful Sunday』(1998年)。 東京郊外のとあるマンションを舞台に、会話の減った若夫婦、ストーカーに狙われる自分に酔う女、毎日決まった時間に叫ぶ老女などなど一風変わった住人たちと、それぞれの日曜日の情景を切り取り、シニカルな笑いを交えて描かれました。 淡々としがちな日常の描写をスタイリッシュな映像に置き換え、クセの強いキャラクターと映像テンポで独自の世界観を作る、中島監督の手腕が光ります。

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短篇映画特集の一作『LUCKY STRIKE』で監修を担当

『LUCKY STRIKE』(2002年)は、アートスクールENBU[演劇&映画]ゼミナールの生徒と、講師の映画監督やCMディレクターが共同で製作した短篇映画の特集『ENBUゼミムービーセレクション2002 ドロップ・シネマ・パーティー/Aプログラム』で上映されました。 本作の舞台は、巨大隕石の接近で世紀末を迎えた世界。ひとりの若者と不治の病に侵された少女が逃避行の先で見た、一瞬の夢を描く短篇ドラマでした。 監督と脚本は山下佳子で、中島自身は監修で参加しました。 映画と並行して、『世にも奇妙な物語/ママ新発売』(2001年)などTVドラマの演出を務めつつ、後のメジャー作品の発表へ繋がっていきます。

独特の世界観を持つ中島作品の作風の特徴って?

中島作品の一番の特徴といえば、スローモーションやCG、アニメーションなどを用いた様々な映像技術から生まれるスタイリッシュな映像美でしょう。 映像のポップな色彩に反して脚本はユーモアの中に毒を含んでいたり、暴力的なシーンにおいての対位法、ミュージカルやMVのような演出の挿入も多い様子。対位法とは、(例として)キャラクターが泣く場面にあえて明るい音楽を付け、悲しみをより際立たせる手法です。 また、作品にはほぼ必ず、無分別な行動をする子供が多く登場してきました。 そうした演出や暴力的な描写が多い理由は、ルールや常識を謳って悪意的なモノや暴力的なモノを見せないとする風潮に苦言を呈し、「そういうものを見て、いろんな免疫をつけてほしい。若い人は、これからヘビーな人生を強く生き抜いていかなきゃいけないんだから」と語る中島の言葉にも表れているのかもしれません。 その他に、空のみを映すカット、写真のフラッシュを連発する映像をよく入れています。 ゴスロリ、ヤンキー、アダルトビデオなど日本特有のサブカルチャーや、舞台となる時代に実在したアイドルや歌手に関する小ネタも見受けられました。

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中島哲也の名を世に知らしめた初メジャー作品『下妻物語』

乙女派作家・嶽本野ばらの同名小説を映画化した『下妻物語』(2004年)。中島哲也の6年ぶりの長編監督作にして、出世作となりました。 茨城県ののどかな田舎町・下妻を舞台に、自己中なロリータ娘と人情に厚いヤンキー娘の、奇妙な友情を描く痛快な青春映画です。可愛い青春モノかと思いきや、冒頭から深田恭子演じるロリータ娘・竜ヶ崎桃子が空を舞い、いきなりの交通事故シーン! 中島監督ならではの劇画のようなカット割りは名場面の連続で、コミックのアニメーションを挿入したポップな映像と、リズム感あふれる語り口に一気に引き込まれます。 土屋アンナは本作で衝撃的な女優デビューを飾り、W主演を務めた深田と共に同年度の主な映画祭で各分野の賞を総なめに。中島もヨコハマ映画祭作品賞監督賞を受賞し、フランスほか7ヶ国で上映されるなど、海外からも大きな注目を浴びました。

ミュージカルという新しい境地に達した『嫌われ松子の一生』

山田宗樹の同名ベストセラー小説を、中島がCGやアニメーションなどを盛り込んで映画化した、異色のシンデレラストーリー『嫌われ松子の一生』(2006年)。 53才で殺害された川尻松子の半生を甥の視点でたどり、「愛されたい」という一心から、人生の歯車を壊していく女性の生き様が描かれました。中学校の教師からソープ嬢、果ては殺人まで犯す松子を演じたのは、今や実力派大女優となった中谷美紀です。 瑛太や伊勢谷友介、荒川良々ら当時旬だった若手〜中堅俳優からお笑い芸人まで、30人を超える豪華有名人をキャストに迎え、救いのない原作をレトロでポップな世界に変身!壮絶な不幸の中で奮闘する松子の姿を、音と映像をシンクロさせたミュージカル風に仕上げており、どこか希望すら感じさせました。 興行収入は13.1億円を記録し、中島は第57回文化庁芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。主演の中谷は、日本アカデミー賞など数々の映画賞で主演女優賞を獲得しました。

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絵本から飛び出した極彩色の世界が魅力の『パコと魔法の絵本』

『パコと魔法の絵本』(2008年)では、2004年に全国8都市で公演された後藤ひろひと原作の舞台『MIDSUMMER CAROL ガマ王子 vs ザリガニ魔人』を、長編日本映画としては初となる3DのフルCGと実写を駆使して映画化しました。 本作は記憶が一日しか持たない少女のために、病院一の嫌われ者爺さんが変わり者たちをまとめあげ、思い出を作ろうと奮闘するハートフル・ファンタジー。 役所広司、妻夫木聡、土屋アンナなど豪華キャストを、中島曰く「キャリアを台無しにするような」奇抜なメイクや衣裳で飾り、極彩色の世界を作り出しました。最初はハイテンションな言い回しとツッコミで引っ張りつつ、最後はしっかりと涙腺を刺激する憎い構成です。 ラストで3DのフルCGキャラクターと実写の演技とを連動させる演出が話題を呼び、興行収入は23.6億円を記録。国内外で多くの賞を獲得しました。

弟子・宮野雅之監督の長編デビュー作で脚本を努めた『ララピポ』

人気作家・奥田英朗の同名ベストセラーを、長編デビューとなる宮野雅之がメガホンを取り、中島哲也の脚本で映画化した『ララピポ』(2009年)。 東京・渋谷を舞台に怪しい風俗スカウトマン、デブ専AV女優、対人恐怖症のフリーライターなど、"負け犬"たちの人生が交錯する群像コメディです。宮野監督は、重くダークな題材をポップに描いた原作を尊重したそうで、明るく希望のある描き方をしています。 中島の「暗い話を暗く描いてどうするんだ」という言葉の影響もあったそうで、実際の脚本も中島らしい奇抜さや、観客を一番に考える視点があったとのこと。中島組で助監督を務めた愛弟子のデビューとあって、中島も脚本を快く引き受けてくれたと語りました。 撮影、音楽、編集を全て中島組が担当し、成宮寛貴のほかAV女優に扮した「森三中」の村上知子や清純派の中村ゆりらが強烈なキャラクターを熱演しました。

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小説の実写化はするけどマンガはやらない?

心の闇や弱さを深く見つめた観察眼と人間描写が光る『告白』

『告白』(2010年)は、「イヤミスの女王」湊かなえのベストセラー小説を原作に、生徒に愛娘を殺された中学校教師・森口悠子の復讐劇を描くミステリー映画。 松たか子演じる森口の「娘はこのクラスの生徒に殺された」という告白で始まり、殺人事件の関係者たちの内面に迫りながら、命の尊さや愛を問う衝撃作です。中島は華美な演出を封印し、必要最低限のモノ以外を排除した殺風景な画面と、ダークな色調を作りました。 その理由は、自身が原作を読んで感銘を受けた時のように観客が登場人物を見つめ、考えることで、心に重いものが残る作品を目指したからなのだとか。 過去の作品とは一線を画する本作ですが、一枚絵になるような曇天に覆われた校舎、ハイスピード撮影で捉えた暴力の描写は健在でした。国内の評価は賛否が分かれましたが、興行収入は38.5億円を記録し、第34回日本アカデミー賞では最優秀作品賞ほか4冠を達成しました。

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の監督を降板していた!?

中島哲也の監督作は、初期のものを除けば基本的に原作モノを制作してきました。 中島はできるだけ短いスパンで、多くの作品を観客に届けたいという気持ちがあり、膨大な時間を費やすオリジナルよりも原作モノを選んでいるとのこと。しかし、原作に選ぶのは小説が多く、マンガは一度も実写化したことがありません。 実は『告白』の次に、諫山創の人気マンガ『進撃の巨人』を監督する予定で2011年の年末に正式発表もされていました。映画化は中島からのオファーで、諫山とも綿密な打ち合わせを行っているとされていましたが、2012年12月に中島と複数キャストの降板が発表。 中止の噂も聞こえつつ、樋口真嗣監督が後を引き継ぎ、2015年に前後編で公開されました。 降板の理由は、「配給との衝突」や「原作側との食い違い」など様々な推測が飛び交いましたが、詳細については明かされませんでした。

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小松菜奈が鮮烈な女優デビューを飾った問題作『渇き。』

降板劇から少しして、深町秋生の小説『果てしなき渇き』を、「パコ」に出演した役所広司の主演で実写映画化した『渇き。』(2014年)を発表しました。 主人公の元刑事・藤島昭和(役所)が、失踪した娘・加奈子(小松菜奈)の足取りを調べる中で驚愕の真実を知り、思わぬ事態に直面するサスペンスミステリーです。父娘の心温まる話に思えますが、藤島はアル中で性格も破綻しており、彼の言動が家庭崩壊の原因になったという最低の父親。 そんな藤島や彼と同じ"壊れた"男たちが追う存在が、常にミステリアスな笑みを浮かべ、「バケモノ」と称される魔性の女・加奈子なのです。 重苦しくなりがちな展開を軽やかに表現する劇画調アニメや暴力的なシーンで対位法を使う中島の演出が光る一方で、本作の一番の魅力は小松菜奈でしょう。詳しくはネタバレになりますが、共感できる=面白いではない、新しい価値観を与えてくれる作品でした。

2018年公開の最新作『来る』は岡田准一主演のホラー映画

2018年12月7日には、澤村伊智の「第22回日本ホラー小説大賞」受賞作『ぼぎわんが、来る』を、岡田准一主演で実写映画化した『来る』が公開されました。 本作は、オカルトライター・野崎(岡田)が、謎の怪奇現象に悩む田原(妻夫木聡)の相談を受け、彼の家に憑く「あれ」の正体に迫る最恐エンターテインメントです。予告編には野崎らの意味深なセリフや、田原家の幸せな家庭の描写に差し込まれる、血みどろのシーンの数々が! 中島監督ならではの、スタイリッシュな映像で登場人物の鬼気迫る様を映し出し、顔に血を浴びた野崎が「あれ」を凝視する姿で最後か、と思いきや……。 その他のキャストには黒木華や『渇き。』以降も話題作に出演中の小松菜奈、『告白』に続いての出演となる松たか子ら実力派が名を連ねます。 中島のこだわりと口の悪さは相変わらずのようで、岡田は制作報告会で「中島監督との初タッグが嬉しい」と述べつつ「噛んだときに『君は賞を獲ってんだからさぁ』みたいに、遠回しにディスられた感じがあった」などとぶっちゃけ、会場の笑いを誘いました。

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映画界を革新する鬼才・中島哲也の今後に注目!!

中島哲也の作品はビジュアルのインパクトに目が行きがちで、感情移入しやすいキャラクターも少ないことから、評価は賛否両輪を巻き起こすことも……。 中島自身、わからないモノや欠点しかない人間に惹かれるといい、観客がそういった存在と出会って新しい価値観を持ってほしいと考えているのだとか。確かに、新しい作品になるほどその要素は強くなっていき、より人間の内面を掘り下げた内容になっていますね。 フィルモグラフィを振り返ると、CMでどうすれば商品の良さが視聴者に届けられるか考えるのと同じように、原作で描かれたものを尊重した上で、映画化するのに一番いい演出を見極め、俳優の良さを生かす監督だということが伺えました。 人間への強い好奇心や鋭い観察眼、CMディレクター出身としての圧倒的な映像センスで映画界を革新する、鬼才・中島哲也の今後の活躍から目が離せません!