映画『月の満ち欠け』あらすじをわかりやすくネタバレ解説!相関図で瑠璃の転生をひもとく
佐藤正午の恋愛小説『月の満ち欠け』が、大泉洋と有村架純主演で映画化!田中圭、柴咲コウ、目黒蓮(Snow Man)など豪華キャストが共演しています。 原作『月の満ち欠け』は直木賞を受賞した小説で、ファンタジックながらもたしかに人の心を掴む展開でベストセラーとなりました。 この記事では、映画のあらすじやキャスト情報の他、原作との違いもネタバレありで紹介します。 ※本記事は映画『月の満ち欠け』の結末までのネタバレを含みます。未鑑賞の場合は注意してください。
タイトル | 『月の満ち欠け』 |
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キャスト | 大泉洋、有村架純、目黒蓮、田中圭 |
公開日 | 2022年12月2日 |
上映時間 | 128分 |
実写映画『月の満ち欠け』のあらすじ
ある日突然、事故で妻の梢と娘の瑠璃を同時に失ってしまった小山内堅。生きる気力を失っていた小山内のもとに、「三角哲彦」と名乗る男が訪ねてきます。事故の日に、瑠璃は面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたと、三角は語りました。 そして三角は、小山内の娘と同じ「瑠璃」という名を持つ、かつて愛した女性について語り始めます。それは数十年前のこと、2人の許されぬ恋が発端となる、壮大な愛の軌跡を示していました。 一見、何の関係もない小山内家と三角、そしてかつての恋人の「瑠璃」。彼らの関係とは、一体どんなものなのでしょうか。
時系列にわかりやすく解説
本作の主人公「瑠璃」は、作中で3度の人生を歩んでいました。彼女の命がどう移り変わっていったか、順を追って解説していきましょう。
1度目の人生「正木瑠璃」
正木と結婚し、三角哲彦と出会う
正木瑠璃は、ある雨の日レコード店の軒先で雨宿りしていました。そこへその店でアルバイトをしている三角哲彦がやって来ました。 雨で濡れた瑠璃に、彼はタオルの代わりにTシャツを差し出し、それで体を拭くように言います。瑠璃と哲彦は同郷であることがわかり、話が弾む2人。しかし瑠璃はもう2度と会うことはないと言って去ってしまいました。 ところが後日、瑠璃が映画館で映画を観ていると、そこに哲彦が現れます。何度かそうして待ち合わせもせずに映画館で会っていた2人は、次第に親密な仲になっていきました。瑠璃は人妻であり、一線を越えるつもりはありませんでしたが、あるとき2人はともに一夜を過ごします。 実は瑠璃は、夫の竜之介からDVを受けていました。さらに彼の浮気も発覚し、離婚を決意します。荷物をまとめて家を出た彼女を追う竜之介。彼に追いつかれまいと焦った瑠璃は、踏切で電車に轢かれてしまいました。
2度目の人生「小山内瑠璃」
小山内夫妻のもとに生まれる
東北に住む小山内夫妻に、娘が生まれます。母・梢は「夢のなかでこの子に、名前は瑠璃にしてほしいと言われた」と、娘を瑠璃と名づけました。 仲睦まじい両親のもと、瑠璃は愛されて育ちます。しかし7歳のとき、彼女は1週間ほど高熱で寝込んでしまいました。それ以降、クマのぬいぐるみを「アキラ君」と呼ぶようになったり、生まれる前の流行歌を口ずさんだり、これまでとは違う言動を繰り返す瑠璃。 そんななか、ある日彼女が行方不明になってしまいました。小山内が必死に探すと、彼女はたった1人、高田馬場のレコード店にいました。 そこで小山内は瑠璃と「高校を卒業するまでは遠くに行かない」と約束をします。それから瑠璃の奇妙な言動も減り、小山内は安心しきっていました。
正木竜之介との再会
妻が亡くなって酒浸りになり、すっかり落ちぶれてしまった正木竜之介。やがて地元の工務店に拾われ、なんとか生活を立て直していました。 働きが評価され、正木は他の会社とのプロジェクトに参加することになります。そこで一緒に仕事をすることになったのはなんと小山内です。 瑠璃が高校生のとき、小山内は正木を自宅に招き瑠璃と引き合わせてしまいます。小山内は正木に、瑠璃の名前に関する話もしました。 さらに正木は、妻が好きだった歌「リメンバー・ラヴ」を小山内瑠璃が歌っているところを目撃します。瑠璃が生まれ変わったと確信し、とうとう高校の前で待ち伏せするのです。 なんとか正木から逃げた瑠璃ですが、三角にも危険が及ぶかもしれないと、急遽母とともに三角に会いに行くことに。 車に乗り込んだ瑠璃と梢でしたが、正木に追われ、カーチェイスの末事故で亡くなってしまうのでした。
3度目の人生「緑坂るり」
かつての親友・緑坂ゆいの子として生まれる
小山内は瑠璃の友人・緑坂ゆいに娘の遺品を渡すため、東京のホテルで待ち合わせます。彼が到着すると、そこにはゆいと彼女の娘・るりがいました。るりは、自分は小山内の娘・瑠璃の生まれ変わりだと言います。 はじめは小山内もそんな話は信じませんでした。しかし妻と娘が死んだ経緯や、家にあった瑠璃が描いた絵(三角哲彦の肖像画)の説明をされ、徐々に生まれ変わりを信じざるを得なくなっていきます。 さらに「生まれ変わりは私だけとは限らない」と言い、彼の妻・梢もまた、生まれ変わっていることをほのめかします。 小山内への挨拶を終え、母・緑坂ゆいの許しを得て、るりは高田馬場駅の広場へ三角哲彦に会いに行きます。三角は「瑠璃さん、ずっと待ってたんだよ」と声をかけ、るりを抱き締めました。
映画『月の満ち欠け』の感想・評価
世界観、音楽全てが美しくて、優しい気持ちになった。もう一度逢いたいという気持ちが繋がって起こる奇跡に涙が止まらなかった。ストーリー的にファンタジー要素が強くなりそうだが、全てを肯定しないストーリー展開が非現実感を薄めていて、抵抗なく作品を受け止めることができるようになっていてよかった。
中盤までは甘酸っぱい回想劇で進むのだが、やがて不気味な物語へと転がり、大泉洋演じる超現実を信じない男がそれを信じて停滞した時を再び動かそうとする。美しくも停滞を引き起こす過去を乗り越えていく物語として傑作に仕上がっていた。エンディングの歌も良かったな。
映画『月の満ち欠けの』見どころは?
①会えない人を想い続ける男たち
大泉洋演じる小山内は、妻と娘の死から数年経ってもまだ立ち直れずにいます。彼は2人の遺品を片付けることもままならず、なんとか生活を維持しているような状態でした。そこへ今は亡き正木瑠璃を想いつづける三角が訪ねてくるのです。彼もまた大切な人の死を乗り越えられず、彼女が小山内の娘に生まれ変わったと信じてやって来ました。 2人は生まれ変わりを信じるかどうかの違いはありますが、亡くなった大切な人を想い続けています。できるなら、もう1度会いたいと強く願っているのです。 彼らの願いは、小山内にとっては思いがけない、三角にとっては信じ続けた通りに叶いました。
②後半の怒涛のスリラー展開
中盤以降、田中圭演じる正木竜之介の本性が明らかになり、ファンタジックなラブストーリーだと思っていた本作の雰囲気はガラッと変わります。 正木は瑠璃と結婚後、彼女が子どもができない体だと知り、ほぼサイコパスとも思えるモラハラ・DV夫に豹変!挙句の果てには、瑠璃が命を落とすきっかけにもなります。 生まれ変わって小山内瑠璃となった彼女と再会してからも相変わらずで、高校生の瑠璃に詰め寄るなど異常な行動も。特に説明がないにも関わらず、生まれ変わりを信じているらしいところも、ヤバさを増幅させています。 田中圭にしては珍しいサイコパスな役柄で、ロマンチックで甘いストーリーに刺激的すぎるスパイスを足す素晴らしい狂演を披露していました。
原作小説『月の満ち欠け』との違いは?
原作小説『月の満ち欠け』の相関図
- 原作ではもう1度生まれ変わる
=三角がもっと年をとってから再会する - 正木と希美(瑠璃)は2人で三角に会いに行こうとして途中で事故に遭う
- 緑坂ゆいは簡単に説得できない。るりは最後、母の目を盗んで三角の会社に乗り込む
原作では「瑠璃」はもう一度生まれ変わります。小山内瑠璃から緑坂るりになる前に、工務店の娘に「希美」として生まれてくるのです。 そのときちょうど工務店に正木が務めており、2人はともに三角を探しに行く途中で事故に遭い、正木は女児誘拐の容疑で逮捕され、刑務所内で自殺します。 そして4度目の人生で緑坂るりとなり、ようやく50代の三角が務める大手ゼネコンに単身乗り込むかたちで再会するのでした。
原作小説のあらすじ
初老の男性と、若い母娘がカフェで向き合って座っています。男性は小山内堅といい、この親子に娘の遺品を手渡しにわざわざ東北からやって来たのです。小山内の娘の名は瑠璃、そして初めて会ったこの少女の名も「るり」といいました。 緑坂るりはまだ7歳の少女ですが、瑠璃の生まれ変わりだと言い、瑠璃が描いた1枚の肖像画を受け取りに来たのです。しかし小山内は、生まれ変わりなど信じてはいませんでした。 瑠璃は高校を卒業したばかりの時、母の梢とともに事故で亡くなりました。小山内は瑠璃が7歳の時、高熱を出してから奇妙な言動をするようになったと梢が言い出したことを思い出します。生まれる前の流行歌を口ずさんだり、知るはずのない知識を持っていると。 同じ頃、瑠璃は家出して高田馬場まで行っていたこともありました。一連の奇妙な行動は、緑坂るりが主張する生まれ変わりと関係があるのでしょうか。
瑠璃が描いた肖像画の人物は、三角哲彦といいました。物語はさらに昔に遡ります。三角は高田馬場のレンタルビデオ店でアルバイトをしていた大学生。そこで運命の相手、正木瑠璃に出会います。 瑠璃は人妻でしたが、2人の絆は固いものでした。瑠璃はある時、もし彼の愛が冷めたら「月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す」と三角に言い、何度でも彼の前に現れると約束します。瑠璃はその2週間後に事故で亡くなり、この言葉通り、瑠璃は小山内瑠璃として生まれ変わったのです。 三角に会いたい一心で生まれ変わりを繰り返した瑠璃。しかし小山内瑠璃の時も、その次の小沼希美の時も事故に遭い、想いを遂げることができませんでした。そして3度目の生まれ変わりを果たし、緑坂るりとしてついに三角との再会を果たします。 るりは別れ際に小山内に、「生まれ変わりは、あたしだけとは限らないよ」と告げ、梢の生まれ変わりがそばにいるかもしれないと伝えるのでした。
登場人物/メインキャスト
小山内堅役/大泉洋
主人公・小山内堅を演じるのは、大泉洋。愛する妻と娘を同時に亡くし、順風満帆な人生から一転して数奇な運命に巻き込まれる小山内を、28歳から55歳まで演じています。 大泉洋は2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主演を務める他、フジテレビ系ドラマ『元彼の遺言状』にも出演。2021年は映画『騙し絵の牙』やNetflixオリジナル作品『浅草キッド』といった話題作にも出演しました。2年連続でNHK紅白歌合戦の司会も務めるなど、国民的な人気を博しています。
正木瑠璃役/有村架純
小山内の娘と同じ名前を持つ、三角のかつての恋人・正木瑠璃を演じるのは、有村架純。映画『花束みたいな恋をした』(2021年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞し、名実ともに若手女優の代表格の1人となっています。 2021年は「るろうに剣心最終章」やドラマ『コントが始まる』など次々に注目作に出演し、WOWOWドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』に主演。2022年には映画『前科者』も公開し、2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』への出演も決定しています。
三角哲彦役/目黒蓮(Snow Man)
正木瑠璃と許されぬ恋に落ちた大学生・三角哲彦を演じるのは、Snow Manの目黒蓮。2022年にグループとして『おそ松さん』で映画デビューを果たし、今作で単独での映画初出演を飾ります。一途に瑠璃を愛する三角を、39歳の大人になった姿でも演じるようです。 2021年はドラマ『消えた初恋』で井田浩介役を演じ、なにわ男子の道枝駿佑とW主演を務めて話題に。映画初主演作となる『わたしの幸せな結婚』が、2023年春に公開を控えています。
小山内梢役/柴咲コウ
小山内堅の最愛の妻・梢を演じるのは、歌手・事業家としても活動する女優・柴咲コウ。深い愛で家族を支えていましたが、娘とともに事故で帰らぬ人となってしまいます。 2022年は4月期のTBSドラマ『インビジブル』で犯罪コーディネーター・キリコ役を務め、高橋一生と共演。4月29日に『ホリック xxxHOLiC』が公開する他、ヒロインを務める「ガリレオ」シリーズ最新作『沈黙のパレード』も9月に公開予定です。
正木⻯之介役/田中圭
小山内の娘である瑠璃の夫・正木竜之介は、妻を愛していますが、ときに暴走することもある人物。彼は「ものすごく嫌な奴」だとか。 正木を演じる田中圭は、「おっさんずラブ」シリーズや「あなたの番です」シリーズ、映画『ハウ』や実写版『耳をすませば』など数多くの作品に出演し、人気を博しています。本作での正木について、「是非劇場で目撃して、皆様怒ってください」とコメントしています。
緑坂ゆい役/伊藤沙莉
瑠璃の親友だった緑坂ゆい。瑠璃の死後母となった彼女は、小山内にある頼み事をします。 ゆいを演じるのは伊藤沙莉。「いいね!光源氏くん」シリーズや2022年の『ミステリと言う勿れ』などに出演するほか、アニメ『映像研には手を出すな!』で声優を務めるなど、幅広く活躍しています。 近年では、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021年)や『ちょっと思い出しただけ』(2022年)でメインキャストを務めました。
小山内瑠璃役/菊池日菜子
小山内の娘・瑠璃の高校時代を演じるのは、CMやバラエティ番組などでも活躍している菊池日菜子です。2021年には映画『私はいったい、何と闘っているのか』に出演するなど、女優として今後の活躍も期待されています。 菊池は、撮影が始まる半年前に観た『彼女』に魅了され、廣木監督の作品に出演することを密かに目標にしていたそうです。
監督はラブストーリーを多く手掛ける廣木隆一
映画『月の満ち欠け』の監督を務めるのは、『余命1ヶ月の花嫁』(2009年)や『ストロボ・エッジ』(2015年)などで知られる廣木隆一。『オオカミ少女と黒王子』(2016年)や『ママレード・ボーイ』(2018年)など少女漫画原作の実写化作品も多く、「恋愛映画の名手」と称されることも。 2021年はNetflixオリジナル映画『彼女』を手がけ、2022年1月には松山ケンイチと藤原竜也がW主演したサスペンス映画『ノイズ』が公開されています。 公式コメントで、「日本映画で憧れの曲が流れる映画」と語っている廣木隆一監督。「憧れの曲」とはどの曲のことなのかが気になるところですが、壮大な愛の軌跡を辿る鍵となっているのかもしれません。
名曲ジョン・レノンの「Woman」が劇中に登場!
本作では、ジョン・レノンの名曲「Woman」が劇中歌として使用されます。 劇中では、ジョン・レノンが死亡した1980年12月8日が重要な意味を持っています。「Woman」は彼の理想の女性像と、それを賛美するような曲ですが、終盤の「愛しているよ、今もこれからもずっと」という歌詞は、本作の哲彦や小山内の気持ちを代弁しているようでもあります。 また劇伴はゲスの極み乙女のメンバー・ちゃんMARIとしても知られるFUKUSHIGE MARIが担当。彼女が劇伴を手掛けるのは、今回が初めてとのこと。作品の世界観に寄り添った音楽に期待したいですね。
映画『月の満ち欠け』は心に染み渡る感動のラブストーリー!
本作は「生まれ変わり」をテーマにした数十年に及ぶ壮大なラブストーリーです。何度も生まれ変わる瑠璃の壮絶な人生を、2時間にぎゅっとまとめた感動の展開に、きっと心を掴まれるはず。 佐藤正午原作、大泉洋主演の映画『月の満ち欠け』は日本アカデミー賞作品賞にもノミネートされています。未鑑賞ならぜひ観てみてください!