2018年4月19日更新

世界に誇る美術監督・種田陽平を徹底紹介!【タランティーノ、ジョン・ウー作品も担当】

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『思い出のマーニー』

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世界で活躍する種田陽平に迫る!美術監督の仕事とは?

種田陽平は日本映画界を代表する美術監督の一人で、プロダクション・デザイナーとしても著名です。いまや日本だけでなく海外にも広く活躍の場を移しています。 プロダクション・デザイナーとは、映画監督やプロデューサー、複数のアートディレクターの意見を取りまとめ、作品の世界観を設計し、背景をデザインしていく仕事を担う責任者です。(こうした仕事は、日本では美術監督とクレジットされることも多いです) ここでは種田陽平が手がけた映画美術監督の代表作をメインに振り返り、その他のジャンルでの活動も紹介していきます。

【プロフィール】多岐に渡る仕事ぶりがすごい!

展覧会、イベント、舞台美術、CM、テレビ番組、ミュージック・ビデオ、グラフィック、イラストやエッセイなどの著作と、多岐に渡るジャンルで活躍している種田陽平。 1960年大阪府生まれで、武蔵野美術大学油絵学科を卒業しています。寺山修司や相米慎二監督の美術助手を務め、1988年に榎戸耕史監督の『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』で美術監督としての本格的な活動を始めます。 1996年の『スワロウテイル』で初めて日本アカデミー賞優秀美術賞を受賞し、その後何度も同賞を受賞する常連に。2008年の『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ』で日本アカデミー賞最優秀美術賞受賞しています。 これまでの国内外における活動が評価され、2010年には芸術選奨文部大臣賞を受賞、2011年には紫綬褒章を受けています。

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岩井俊二監督の『スワロウテイル』で初の日本アカデミー賞

岩井俊二監督、CHARA主演の『スワロウテイル』は、1996年当時まだ珍しかった日本発の多言語映画で、日本語の他に中国語や英語も飛び交っています。作中でCHARAがボーカルを務めたバンド「YEN TOWN BAND」名義でサントラ『MONTAGE』も発売され、大きな話題になりました。 舞台となった「円都(イェンタウン)」と呼ばれる架空都市は、無国籍な移民の街として東京お台場にセットが組まれました。種田陽平によるアジアンテイスト漂う居住空間は、本当にこんな場所があるような説得力を持たせています。 岩井監督作品では2004年の『花とアリス』に再び美術監督として参加し、繊細な岩井ワールドの造形に務めました。

リー・チーガイ監督の『不夜城』で香港進出!

1998年公開の『不夜城』では、香港出身のリー・チーガイ監督のもと新宿・歌舞伎町の大規模なセットを構築しました。実際に歌舞伎町でもロケ撮影が行われ、ダークな眠らない街をリアルに描き出しました。中国系マフィアの抗争を描いた本作には、ネオン輝く多国籍な歌舞伎町がピッタリ! この『不夜城』での仕事で、第18回香港電影金像奨で最優秀美術監督賞を受賞し、第22回日本アカデミー賞の優秀美術賞にも選ばれています。 その後リー・チーガイ監督とは、2009年に日中韓シンガポール合作映画『昴-スバル-』でも再度組んでおり、キャバレー「パレ・ガルニエ」の外観や舞台の造形を手がけました。

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押井守監督『イノセンス』でアニメ映画に挑戦

プロダクション・デザイナーとして参加した『イノセンス』では、初めてアニメーション映画での美術デザインを担当。作品にアジア的世界観と実写のようなリアリティをもたらしました。 『イノセンス』の重厚な世界を構築するそれぞれの舞台を緻密なデザインで描き上げ、美術監督の平田秀一によって美しいアニメーションに仕上げられています。

『KILL BILL Vol.1』でタランティーノ監督と初遭遇

2002年にはクエンティン・タランティーノ監督から『キル・ビル Vol.1』の美術監督のオファーが!ハリウッドでの映画製作に初めて携わりました。2部作となった本作は2003年に前編、2004年に後編が公開されています。 日本が舞台となった前編で美術監督を務め、ユマ・サーマン演じる主人公ザ・ブライドの戦いの舞台となる日本料理店「青葉屋」の大規模なセットをデザインしました。本作では米国美術監督協会の最優秀美術賞にノミネートされています。 タランティーノ監督作品では再度、2015年に『ヘイトフル・エイト』で美術を担当し、密室劇の舞台となる山小屋の内部までディテールをこだわって作り上げました。

『THE 有頂天ホテル』で三谷幸喜組の仲間入り

2006年には「グランド・ホテル形式」の群像劇『THE 有頂天ホテル』に美術監督として参加し、これ以後にも三谷監督作品で美術を担当するようになります。 物語の舞台となる「ホテルアバンティ」は、東宝スタジオ第8ステージいっぱいに、ホテル1階部分まるごと建設したとか!脚本作りの段階から三谷監督とディスカッションを重ねて、ストーリーを練りながらホテル全体のデザインや設計図を完成させたそうです。 三谷組ではその後も2008年『ザ・マジックアワー』、2011年『ステキな金縛り』、2013年『清須会議』と続いて美術監督を務めています。2011年の舞台『ベッジ・パードン』で美術、2015年の『ギャラクシー街道』ではコンセプトデザインを手がけました。

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李相日監督とのコラボも!『フラガール』『悪人』『69 sixty nine』

李相日監督とは、2004年『69 sixty nine』、2006年『フラガール』、2010年『悪人』と3作品でタッグを組んでいます。『フラガール』では、福島県いわき市の町興しとなった「常磐ハワイアンセンター」のフラの舞台や炭坑街などのセットをデザインしました。 2007年には同年公開だった『THE 有頂天ホテル』とともに、第30回日本アカデミー賞優秀美術賞と第61回毎日映画コンクール美術賞をW受賞。 『69 sixty nine』は1969年の佐世保を舞台にした作品で、レトロでサイケな背景を造形して60年代の雰囲気を表現する一方で、現代のポップさも取り入れています。

大ヒット作『セデック・バレ』で台湾でも活躍!

2006年にはスー・チャオピン監督作『シルク』で台湾映画にも進出。そして2011年、ウェイ・ダーション監督の歴史大作『セデック・バレ』で美術を担当しました。 日本統治下の台湾を舞台にした2部作で、台湾の先住民族セデック族の抗日暴動を描いた作品です。山岳の狩猟民族であるセデック族の集落や、日本統治下の台湾の街を細部までリアルに再現しています。 本作の仕事によって台湾で高い評価を受け、第6回アジアン・フィルム・アワーズの最優秀美術監督に、第48回台北金馬影展でも最優秀美術賞にノミネートされました。

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米林宏昌監督『思い出のマーニー』でジブリ映画に参戦

2014年の『思い出のマーニー』でジブリ映画に美術監督として初参戦!それまでにも『小さなルーヴル美術館展』や『借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展』と、三鷹の森ジブリ美術館で美術監督を務めた経験もあります。 物語の舞台である北海道の湿地帯や、そこにひっそりと建つ「湿っ地屋敷」のデザインを手がけ、数あるジブリ作品の中でもひときわ美しい背景を誇る1作となりました。

映画公開を記念した『思い出のマーニー×種田陽平展』もジブリ美術館で開かれ、背景画やスケッチなどを展示し、『思い出のマーニー』の世界観を追体験できる空間を作りました。

ジョン・ウー監督の『マンハント』に参加!近年は中国映画にも進出

2016年にはジョン・ウー監督からオファーを受け、日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイク作『マンハント』に美術監督として参加。福山雅治とチャン・ハンユーのW主演作で、大阪を中心に全編日本でロケが行われました。 実は、福山雅治とジョン・ウー監督とは、テレビCM「アサヒスーパードライ CRANK UP篇」で2013年に一度仕事をした間柄。その仕事ぶりをジョン・ウー監督も絶賛しています。 また近年は中国映画界での仕事も増え、2013年にラマン・ホイ監督の『モンスター・ハント』(2016年公開)、2011年にチャオ・リンシャン監督の『曹操暗殺 三国志外伝』(2014年公開)、チャン・イーモウ監督の『金陵十三釵(原題)』(日本未公開)と続いて美術監督を務めています。

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CMやミュージック・ビデオも手がける多才ぶり!

J-POPアーティストのミュージック・ビデオやテレビCMでの美術も数多く担当してきています。これまで手がけてきたアーティストは、DREAMS COME TRUE、ユニコーン、東京スカパラダイスオーケストラ、ポルノグラフィティ、松たか子、perfumeなど実に様々。 代表的なCMには「ハウス ジャワカレー」や「のどごし生」シリーズがあります。それぞれの監督やアーティストが求める独特の世界観を作り上げることができる稀有な才能は、これらジャンルでも存分に活かされています。

書籍も多数刊行!児童文学にもチャレンジ

1998年に初めてアートブック『TOWN for the FILMS ARTWORKS from “Swallowtail Butterfly” to “Sleepless Town”』を出版。『スワロウテイル』から『不夜城』の写真やスケッチを収録した美術作品集となっています。これ以降、手がけた作品のアートブックを定期的に刊行しています。 映画『冷静と情熱のあいだ』や『千年旅人』『ほとけ』『フィラメント』など、辻仁成とのタッグを綴った共著『辻仁成+種田陽平 映画づくりの旅』も2002年に出版しました。 ジブリ作品とのコラボ体験から『ジブリの世界を創る』を著し、自らが聞き手となったインタビューを集めた『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』も刊行。映画美術の歴史と未来を語る興味深い内容となっています。 また2015年には初の児童書となる『ステラと未来』で原案と絵を手がけ、新しいジャンルへの挑戦を続けています。

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世界から請われる美術監督という仕事

福山雅治『三度目の殺人』
(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

是枝裕和監督と『空気人形』以来2度目のタッグを組んだ『三度目の殺人』では、作中重要となる法廷のセットを手がけた美術監督・種田陽平。2018年も海外での仕事に就いているようで、今後の活躍も楽しみなところです。 映画だけでなく様々なジャンルの美術を監督する美術監督や、デザイン、コンセプトや設計図を決めていくプロダクション・デザイナーという仕事は、作品を形造る上で本当に重要なもの!これからさらに注目度を高めていくのでないでしょうか。