『崖の上のポニョ』ポニョのお母さん・グランマンマーレの正体はアンコウ?謎多きフジモトの妻を解説

スタジオジブリの人気作品『崖の上のポニョ』。多くの噂がささやかれる本作のなかで、もっとも謎に包まれた存在が、ポニョの母、グランマンマーレです。彼女の正体とはいったい何なのでしょうか? この記事では、彼女の基本情報をおさらいするとともに、その登場シーンから彼女の正体、そして謎に迫っていきます。
『崖の上のポニョ』グランマンマーレはポニョのお母さん
グランマンマーレは人間?
グランマンマーレは人間ではなく、「母なる海」と呼ばれる海の女神です。また海全体に関わるものすべてを司る、強力な魔力を持つ魔法使いでもあります。 海のなかに住み、自由自在に体の大きさを変えることができるのも、彼女が人間ではない証拠です。 また、彼女の見た目のモデルはシェイクスピアによる戯曲『ハムレット』に登場するヒロイン、オフィーリアだと言われています。劇中で悲劇の最期を遂げる彼女。生きているとも死んでいるともつかない表情を浮かべ、川に漂う姿を描いたジョン・エヴァレット・ミレーによる絵画「オフィーリア」が有名です。
【正体】グランマンマーレはチョウチンアンコウって本当?
デボン紀から生きている海の母ってどういうこと?
劇中、グランマンマーレが「デボン紀のような美しい海」と言うシーンがあります。デボン紀とは古生代の中ごろ、今から約4世紀から3世紀前のことです。 デボン紀は別名「魚類の時代」と呼ばれるほど、世界中のあらゆる水域に魚類が進出し、水の中の生物が発達した時期でした。後期には肺呼吸をする魚類も現れ、両生類が出現します。 先述のセリフから、グランマンマーレはこの時代にはすでに海の女神であり、当時の海の様子を知っているということになりますね。
真の姿はアンコウで足が見える描写がない?
宮崎駿の著書『続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか』によると、グランマンマーレの正体は巨大なチョウチンアンコウだとか。チョウチンアンコウは、頭部にある「誘引突起」と呼ばれる光る疑似餌でほかの魚をおびき寄せ、鋭い牙で捕食する深海魚です。 劇中で見えているグランマンマーレの姿は、この光る疑似餌の部分だと言われています。だから誰をも惹きつける美しい姿をしているのですね。 しかしその足は、1kmを超える巨大なチョウチンアンコウの本体につながっているのです。劇中で彼女の足が写るシーンは1度もありません。
【考察】グランマンマーレの夫はフジモト以外にもいた!?
実はフジモト以外にも夫がいた?

グランマンマーレには、フジモト以外にも複数の夫がいたといわれています。そして彼女が複数の夫を持ったのは、多くの子どもを残すため、異種交配のためだと宮崎駿は語っています。 海の女神であるグランマンマーレは、強い母性の象徴でもあります。彼女を「母」たらしめるのは、やはり「子ども」の存在ではないでしょうか。ポニョには数え切れないくらいの姉妹がいました。彼女たちはおそらくフジモトとの間にできた子どもと思われます。
他の夫はどこへ行ったの……?
グランマンマーレの正体はチョウチンアンコウだと先述しました。チョウチンアンコウの繁殖方法は特殊で、簡単に言えば、オスの体がメスの体に吸収され、「精子を出すためだけの器官」に変化するのが特徴です。 グランマンマーレにはフジモト以外にも複数の夫がいましたが、チョウチンアンコウの繁殖方法を考えると、彼らはすでに彼女の体に吸収されてしまったと考えられます。 グランマンマーレはチョウチンアンコウの触手の先が美しい女性に変化したもので、それで男たちをおびき寄せ、異種交配のチャンスをうかがっているのです。
フジモトだけが生きている理由とは?

ではなぜ、複数の夫のうちフジモトだけが生き残っているのでしょうか。 その理由は、彼が「生命の水」を精製できるからだと考えられます。フジモトは『海底2万マイル』というジュール・ヴェルヌの小説に登場する沈没船ノーチラス号の生き残りという設定になっています。船が沈没した際にグランマンマーレに助けられた彼は、彼女に魅せられたのでしょう。 その後、彼は魔法で海水を浄化・精製し「生命の水」を作り出す技術を習得しました。彼はそれを使って人間の時代を終わらせ、カンブリア紀のような「海の時代」の再来を夢見ています。 これについてグランマンマーレがどう考えていたのかはわかりませんが、フジモトが老齢などで「生命の水」が精製できなくなれば、彼もまた彼女の体に吸収されてしまうのかもしれません。
【解説】グランマンマーレが怖いと言われている?
先ほども解説したように、母なる海そのものであるかのようなグランマンマーレですが、その正体はチョウチンアンコウのバケモノです。美しい女性の姿で男たちを惑わせ、異種交配のチャンスを狙っています。 また子どもを生むためには、男を体内に吸収し、自分の「器官」の1つにしてしまいます。 おだやかでおおらかな性格の彼女ですが、繁殖することにはかなり貪欲と考えられ、そのために多くの男たちがその身を差し出したことを考えると恐ろしいですね。
【活躍】グランマンマーレの劇中での主な登場シーンまとめ
初登場は海の中から

グランマンマーレの初登場は、海の中の彼女が宗介の父・耕一が乗る船「小金井丸」の下を通るシーンです。耕一は海の彼方から光る波が迫ってくるを見つけ、ほかの船員に注目するように促しました。 その波を起こしたのがグランマンマーレの巨大な体です。波のなかに赤い宝石のようなものが見え、彼女が仰向けで移動していることがわかります。 その後、彼女は海から顔を出し、別の船に乗っていた夫のフジモトと会話をします。
リサと母同士の対話

嵐の影響で、宗介の母・リサが勤めているデイケアセンター「ひまわりの家」は海に沈んでしまいます。嵐が収まってからポニョと宗介が園の様子を見に行くと、グランマンマーレとリサが2人を待っていました。 グランマンマーレはポニョを連れてきた宗介にあいさつをした後、リサと2人きりでなにかを話し合っています。母親同士、子どもたちの将来について話し合っていたのでしょうか。 この会話の内容は明らかになっていませんが、後で考察していきましょう。
グランマンマーレとリサは何を話していた?
グランマンマーレとリサの会話は劇中では明らかになっていませんが、映画評論家・岡田斗司夫氏は「夫・耕一は生きて返す代わりに、宗介を差し出しなさい」と取引をしているのではないかとと考察しています。ポニョと一緒にいたいそうすけ、そして大好きな夫に会いたいリサ。二人にとっては悪くない提案だったのではないでしょうか? また、宮崎駿は「女は強くて怖くて美しい」というメッセージを込めて『崖の上のポニョ』の制作をしていたとも言われています。このシーンもまた、二人の女性の密会の様子が描かれていたのかもしれません。
グランマンマーレの声優は天海祐希

グランマンマーレの声優は、元宝塚歌劇団の月組トップスターの天海祐希です。数多くのテレビドラマや映画に出演している彼女は、本作で初めてアニメ映画の声優を務めました。 大河ドラマ『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』や『離婚弁護士』、『女王の教室』などのドラマをはじめ、『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』や『老後の資金がありません!』などの映画で存在感のある役柄を演じています。 本作のほかには、海外アニメ映画『ミニオンズ』のスカーレット・オーバーキル役や『マイティ・ソー:バトルロイヤル』のヘラ役の吹替、『メアリと魔女の花』のマダム・マンブルチューク役などで声の演技を披露しています。
グランマンマーレはミステリアスな魅力を持つキャラクターだった!
ポニョの母で、海全体を司る女神であるグランマンマーレ。魅力的なキャラクターが多い『崖の上のポニョ』のなかでもっとも謎に満ちていながら、作品のテーマに深く関わる存在です。 ジブリ作品には都市伝説がつきものですが、彼女は宮崎駿本人が劇中では語られない設定の多くを明らかにしているキャラクターだといえるでしょう。 そんな彼女に注目して『崖の上のポニョ』を観てみると、また違った印象を受けるかもしれませんね!