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『となりのトトロ』の都市伝説の真実と、本当の魅力について知りたいあなたへ

2018年11月6日更新

不朽の名作といわれるジブリ映画『となりのトトロ』。近年では、いくつかの都市伝説があるという噂でも大変注目を浴びる作品になりました。この記事では都市伝説の真実と、本作の本当の魅力について迫っていきます。

『となりのトトロ』の都市伝説はデマ?

永遠のロングヒット作品である『となりのトトロ』。昔懐かしい山奥の田舎にて小さな姉妹が体験する不思議な出来事を描いた作品ですが、長い間に渡って都市伝説が噂されています。それは作中にて姉妹が死亡している、サツキとメイが幽霊なのではないかというもの。 噂によると、メイは池で溺れて死んでしまい、妹を探したサツキも森の中で死後の世界をさまようのだそう。そして、結局は結核に侵されていた母も死亡し、残るのは父のみになってしまうのです。 この都市伝説では、トトロは死期が近い者の前にのみ現れる死神だと解釈されています。サツキとメイにだけトトロが見えていたのは、姉妹に死期が近づいていたからなのではないか、というものなのです。 しかし、ciatr編集部はこのような都市伝説を否定します。『となりのトトロ』を観たことのある全人類に告げたい。本作は、オカルトではく心温まるハートフルな作品だということを! というわけで、今回は都市伝説の検証に加え、本作の真の魅力について徹底解説していきます。

『となりのトトロ』は何を前提に作られたのか?

となりのトトロ
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そもそも『となりのトトロ』はどのような意図のもと制作された作品なのでしょうか?そのことは、以下のスタジオジブリ公式の企画書から読み解くことができます。 「中編アニメーション作品『となりのトトロ』の目指すものは、幸せな心暖まる映画です。楽しい、清々した心で家路をたどれる映画。恋人たちはいとおしさを募らせ、親たちはしみじみと子ども時代を想い出し、子供たちはトトロに会いたくて、神社の裏の探検や樹のぼりを始める。そんな映画をつくりたいのです」 上記から、鑑賞者に幸福な余韻を与えることを目的とした作品だということがわかります。『となりのトトロ』が、人々に恐怖をもたらす作品だと受け取られるようになったのは、制作者側からすると思いもよらぬ結果だったかもしれません。

サツキとメイのそもそもの設定って?

都市伝説では、死んだとされているサツキとメイ。 しかし、各作品の企画内容が記載されている宮崎駿著の『出発点 1979~1996』では、以下のようなキャラクター解説がなされていました。

ハツラツとした少女、サツキ

「お陽さまをいっぱい浴びて育ったような、はちきれそうな活力のある少女」と著書で紹介されているサツキ。 実際の本編からも妹の面倒をみる姿や学校に数日で馴染む様子が描かれており、天真爛漫でしっかりとした性格であることがわかります。しかし、母を前にすると子供らしさを垣間見せることも。メイのようにしがみついて甘えることはないものの、母に髪の毛をといてもらっているサツキは、心の底から嬉しそうな表情を浮かべています。 著書では「サツキにとって、お母さんは一寸まぶしい存在である。(中略)クセッ毛をお母さんになぜつけてもらうのが好きだし、母の感謝といたわりが、サツキを支えてくれている」と書かれており、愛情溢れた関係を築いていることがはっきりとわかります。 つまり、トトロと子供達の交流だけでなく、このような家族関係も作品を語る上で大きなポイントになっているのです。

頑固な妹、メイ

自由奔放で頑固な妹として設定されているメイ。 著書の解説には「何故かお化け達を少しもこわがらず、いつの間にかお化け達に心をひらかせてしまうのは、この子の世界が大人の常識に侵されていない為だが、一方、彼女のさみしさのせいかもしれない」と、異世界との関わりや彼女自身の深層心理について触れられています。 猪突猛進な行動を起こすメイはいつも周囲を困らせますが、それは母のいない寂しさがひとつの要因として作用している、ということなのです。

都市伝説を検証してみた!

となりのトトロ
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ciatr編集部は、全精力をかけて7つの都市伝説を検証しました。これでオカルト疑惑は解消するはず……?

都市伝説その1:サツキとメイの影がない?

となりのトトロ
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実は映画後半になるとサツキとメイの影が急に消えてしまうのです。 これは二人が死んで幽霊になったためではないかといわれています。

【検証!都市伝説1】影をつけなかったのは背景で時間経過を表す画期的な試みのため!

メイとサツキの影がところどころなくなっているのは、意図的に影を描いていないからだそうです。 美術監督である男鹿和雄は、今作において特に背景描写にこだわったのです。それというのは、影を用いて時間の経過を表すということ。 実はサツキとメイの影がないのは、彼女たちが太陽の真下にいる、つまり正午の時だったからなのです。影が長めに出ているのは、日が落ちて影が伸びている様子を描いています。 このように影の長さ・色合いなどで時間を表現していたのだとか……!細部までこだわった演出だったんですね。西日の強さも色合いで表現していたそうです!

都市伝説その2:サツキとメイは両親には見えない?

となりのトトロ
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サツキとメイはトトロとともに病床の母親を訪れますが、トウモロコシを置いて母親に会わずに帰ってしまいます。母親に会いたくて行ったのに、会わずに帰るなんて不自然ですよね。 これは、実は姉妹は死んでしまっていたため、母親には見えない・会えないということを示唆しているといわれています。 また、母親が病院の窓の外の木を見つめ、「今……サツキとメイが笑ったような気がしたの」とつぶやくシーンがありますが、実際その木の枝に二人は座っていたので、二人の姿は見えない=死んでいるということではないか、という憶測も飛び交っています!

【検証!都市伝説2】お母さんに会わなかったのは二人の成長の証かも!?

病床のお母さんに直接会わずに帰ったのは確かに不思議かもしれませんが、ネコバスに乗って病院まで行った二人はそこでお母さんの元気そうな姿を見て安心し、“きっとまた帰ってくる”と思うことができたので、トウモロコシを置いて帰りました。 これを、甘えん坊の二人がちょっぴり大人に成長した場面だと捉える人も多いようです。 また、「メイとサツキが笑っていたような気がしたの」とお母さんが言ったときには、もう二人はネコバスに乗っていたと考えられるため、“見えなかった”という説もデタラメのよう……。

都市伝説その3:エンディングはサツキとメイの生前回想シーン?

エンディングでは登場人物のその後が描かれていますが、よく見るとお父さんとお母さんが若返っているといわれています。 そのため、これはサツキとメイ、そしてお母さんが死んでしまった後でのお父さんの回想シーンだと言われています……。

【検証!都市伝説3】エンディングはちゃんとその後を描いてた!

サツキとメイが着ている服にはトトロの刺繍が施されていることや、背景に枯葉が舞っている(=秋)ということから、ちゃんと物語の時系列通りに進んでいることがわかります。なので、二人の生前回想シーンというわけではありません。

都市伝説その4:恐怖の原作小説『隣のととろ』が存在した?

原作小説『隣のトトロ』はサツキとメイの「地獄めぐり」がテーマ。そこではトトロは映画で描かれているような愛らしい姿とは相反し、グロテスクで恐ろしい化け物として描かれているそうです。 また、サツキがネコバスに乗るシーンは、彼女らが巨大なネコに食べられて、胃で肉体を溶かされ魂だけになる……というホラーな展開なのだといわれています。

【検証!都市伝説4】そもそも原作なんてなかった!

トトロには原作はないので、恐怖の原作小説があるというのは全くのデマ! ただし、参考資料として絵本『あさえとちいさいいもうと』、『とんことり』などが用いられたそうです。

都市伝説その5:「狭山事件」という実際の誘拐事件をもとに作られた?

となりのトトロ
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実は『となりのトトロ』のストーリー設定と、1963年に埼玉県狭山市で起こった誘拐事件「狭山事件」には、通じる部分があるといわれています。 ・トトロの舞台は埼玉県所沢市で狭山市に隣接している。 ・事件後に姉が行方不明になった妹を捜索している姿が目撃されている。 ・サツキ(皐月)とメイ(May)はどちらも5月を表す名前で、事件が起こったのも5月。 などなど……。

【検証!都市伝説5】事件との関連性はなし!

そもそも製作当初、主人公は女の子一人の予定だったそうです。姉妹にしたのは“二人いれば上映時間を延ばせるだろう”という宮崎駿監督の考えからでした。 しかも実際に起きた狭山事件の被害者はサツキとメイのような子供ではなく、16歳と23歳の姉妹でした。 また、狭山事件において、姉が妹を探していたという事実はありません。

都市伝説その6:メイのサンダルが川に落ちている?

これは『となりのトトロ』ファンの間でも有名な都市伝説ですね。サツキとの喧嘩をきっかけに行方不明になったメイを探している際、サツキは村人から子供のサンダルが池で見つかったという知らせを受けます。 このサンダルが、まさにメイの履いていたサンダルと酷似している事から「メイは池に落ちて溺死してしまったのではないか」という都市伝説が生まれたのです。

【検証!都市伝説6】池に落ちていたサンダルはメイのものではない!

これは実はよく見ればわかるものなのですが、メイのサンダルと池に落ちていたサンダルではデザインが異なっています。 メイのものがフロント部分が一線のシンプルなデザインであるのに対して、池に落ちていたものはフロントが二線でクロスしているようなデザインなのです。さらに色も違っており、メイのものは薄いピンク、池に落ちていたものは白となっています。 また作中では、サツキがサンダルに対して「メイのじゃない。」と発言しているため、持ち主が別人であることは明らかでしょう。

都市伝説その7:お地蔵さんに「メイ」の名前が刻まれている?

鑑賞者の間では、ある恐ろしい噂が広まっています。それは、メイが既に死んでいることを裏付けるような都市伝説。 つまり、劇中でサツキが記憶を思い起こす際に一瞬映るお地蔵さんに「メイ」の名が刻まれているというものなのです。これはそのシーンをコマ送りした時に確認できたといわれています。 もし本当にそうであれば、本当にメイは亡くなってしまっているのかもしれませんね。

【検証!都市伝説7】お地蔵にはメイの名前は刻まれていない!

さて、こちらも実証すればわかるのですが、地蔵が並んでいるシーンはあるもののその中にメイと刻まれた地蔵はありません。 たとえそのシーンをコマ送りで再生しても、該当する地蔵は一切見当たらなかったため、この都市伝説もデマだということが明確になったでしょう。

真の魅力はここにあり!『となりのトトロ』が伝えたかったこと

『となりのトトロ』の良さは、キュートな物語の裏側に制作者側の伝えたい想いが込められているところ。 宮崎駿は、かつて日本に存在した豊かな自然が消失しつつあることを危惧しました。そして、その消失から目を背け、他国の世界観にあやかる我々日本人の姿勢に問題意識を抱えていたのです。 そこで「テレビのなかった時代」をモチーフに、人間と自然界の親和性をエンターテインメントとして表現したのが、『となりのトトロ』。 子供たちが、人間界とは異なる世界に純粋に関わっていく姿は微笑ましさを与えるだけでなく、人間界と異世界(自然界も含む)との共存を回顧させることで、日本社会の課題感を示唆したのです。 このような社会的メッセージを内包した作品でありながらも、子供から大人までほっこりとした気持ちにさせることのできる『となりのトトロ』は、まさに名作なのではないでしょうか。

『となりのトトロ』の面白さは都市伝説ではない!

子どもから大人にまで広く愛され続けている『となりのトトロ』だけに、様々な噂や憶測が広がり、多くの都市伝説が生まれました。全シーンが緻密に描かれている上、作中で全てが語られていないため、都市伝説が生まれやすくなっているともいえるのかもしれません。 しかし、この記事を読んだあなたは、都市伝説がデマだということが分かったはず。制作意図を知ったうえでもう一度鑑賞すると、あなただけの『となりのトトロ』の魅力が見えてくるでしょう!