【解説】ネイモアは「ブラックパンサー2」のヴィラン!原作との違い・タロカンとは?
ネイモアのプロフィール
本名 | ネイモア・マッケンジー |
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出身 | アトランティス(MCU版ではタロカン) |
性格 | プライドが高く短気だが、誇り高き戦士 |
目的 | 7つの海とアトランティスの守護 |
「ブラックパンサー2」のネイモアはこんなキャラ
ネイモアの目的
タロカンの王であるネイモアの最も大きな目的は、タロカンとその民を守ることです。また、地上世界の支配も目論んでおり、その理由は彼のオリジンにあります。 タロカンの先祖たちは、16世紀ごろスペイン植民地下に置かれ、迫害を受けていました。そんななか1人のシャーマンの導きによって、人々はヴィブラニウムの影響を受けた海藻を食べることに。 タロカンの人々は、海藻を直接摂取したために、水の中でしか生活できなくなりました。しかし母の胎内で海藻の影響を受けたネイモアは、地上でも呼吸でき、長寿や飛行能力を持つミュータントになったのです。 母の死後、彼女を故郷で弔いたいと地上に上がったネイモア。しかしそこでは先住民が迫害を受け、彼らの文化が否定されていました。これに怒りを覚えた彼は、いつか地上を自分たちの支配下に置くと心に誓います。
ネイモアの活躍
本作では、通常の探査機では検知不可能なはずのヴィブラニウムが海底から検知されたことで、タロカンの存在が明らかに。タロカンの王であるネイモアは、ヴィブラニウムを狙う地上の国々から自国を守るため、探査機を作った科学者を差し出すようシュリたちに迫りました。 その後、ヴィブラニウム探知機を作ったリリ・ウィリアムズとシュリを捕らえたネイモアは、シュリにタロカンを案内し、彼らの起源を語ります。そして地上を支配するためにワカンダの協力を仰ぐのでした。しかしシュリが救出される際に、タロカンの警備兵が1人命を落としてしまいます。 これに怒った彼はワカンダに攻撃を仕掛けます。一時はワカンダとの全面戦争に入りますが、シュリとの死闘の末、タロカンが他国から攻撃を受けた際には、ワカンダがともに戦うという提案を受け入れ、ネイモアは降伏しました。 こうしてタロカンとワカンダには平和が戻りましたが、彼はまだなにか企んでいるようです。
ネイモアのヴィランとしての魅力は?
MCUのヴィランたちは、それぞれ自分の正義を信じ、信念に基づいて行動するキャラクターが多いため、観客の支持を集めることも少なくありません。 ネイモアの第一の目的は王として、国と民を守ることです。その為、彼は国を守るための自らの行動を正義と信じて疑いません。タロカンの人々からすれば、彼は頼もしく尊敬される王であることは間違いないでしょう。彼がワカンダを攻撃した理由も、自国民を殺されたからでした。 ネイモアは自分のためではなく国のために行動する、利他的な人物ともいえます。ブラックパンサーというヒーローと敵対していても、完全な悪役ではない点がネイモアの魅力ではないでしょうか。
ネイモアが支配する国タロカンを深掘り
現実の歴史の反映としてのタロカン
前作で初登場した国ワカンダは、現実にはヨーロッパからの植民地支配を受け独自の文化を失ってしまったアフリカ諸国が、もし支配されずに発展していたら?という「if」の設定を持つ国です。タロカンも同じく、中南米の国々が植民地化されず、独自の発展をとげた「if」の姿として描かれています。 ネイモアは、タロカンではマヤ神話の最高神で羽を持つ蛇「ククルカン」の名で呼ばれています。また、衣装デザイナーのルース・カーターによるとタロカンのコンセプトは、歴史学者たちと何度も会議を重ねて作り上げていったものだとか。 特にネイモアが王座で身につける頭の羽飾りやマントは、後古典期のマヤの文化を参考にしています。これはマヤ文明では非常に重要な意味を持つ、蛇をモチーフにしたものです。
ヴィブラニウムという力はどう使うべきなのか
前作で開国したワカンダに対して、世界の国々はヴィブラニウムを輸出するように迫っていました。しかしラモンダ女王は、「大国はヴィブラニウムを軍事利用する危険性がある」として、これを毅然とした態度で拒否します。 ヴィブラニウムはワカンダに高い技術力と豊かさをもたらしましたが、軍事利用は避けるべきと考えているのです。実際にCIA長官のヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌは、アメリカにヴィブラニウムがあれば兵器に利用できるとの発言もしており、これはまさにラモンダが危惧していたことです。 一方ネイモアは、ヴィブラニウムがもたらした高度な技術を使って、自らが世界を支配すべきと考えます。強大な力をどう使うべきかという違いが、2つの国の間で争いの火種となってしまいました。
MCUと原作コミックのネイモアの違いは?
アクアマンを意識?出身国が変更
コミックではネイモアはアトランティスの王という設定ですが、「ブラックパンサー2/ワカンダフォーエバー」では、彼の国の名前はタロカンに変更されています。 これはどうやらアステカの神トラロックの楽園、トラロカンからきているようです。予告編でエムバクが口にしている「ククルカン」もマヤ神話の最高神であり、MCUでのネイモアのバックグラウンドは、中南米の古代文明をベースに再構築されているのではないでしょうか。 これらの変更はDCコミックのヒーロー、アクアマンを意識したものと思われます。2018年に公開され大ヒットとなった映画『アクアマン』の主人公も、アトランティスの王という設定でした。
ネイモアの能力・強さにも違いが!
MCU・原作共通の能力
MCU版とコミックとで共通するネイモアの能力は怪力と飛行能力です。 ネイモアは、100トンの重さを持ち上げたり、80kmのスピードで泳げたりと超人的な怪力を誇ります。ただし水中から長時間出ると弱体化してしまい、MCU版ではこの弱点をシュリに利用されていました。また、ネイモアの足には小さい羽があり飛行も可能です。羽とミュータントの能力で高速飛行していると考えられています。 さらに、映画ではタロカンがヴィブラニウム産出国であることもあり、彼や兵士たちのアーマー、武器にもヴィブラニウムが使われていました。
原作コミックのみの能力
一方、コミックのネイモアの能力で映画では描かれなかったものもありました。コミックのネイモアは、電気ウナギのごとく体から電撃を放つ電撃能力や海中生物とのテレパシー能力を持っていましたが、MCU版ではその描写は見られません。 またコミックでは、彼が扱うアトランティスの武器として水を操作し、水圧を使って嵐や地震を起こす「金のトライデント(三叉の槍)」と海中生物を呼び寄せる「プロテウスの角笛」などが登場します。 しかし映画では、これらの能力も武器も登場しませんでした。これは彼の国がアトランティスからタロカンに変更されたことと関係しているかもしれませんね。
ネイモアの俳優はテノッチ・ウエルタ
ネイモアを演じるテノッチ・ウエルタは『フォーエバー・パージ』(2022年)や『ザ・マミー』(2019年)などスリラー映画に多数出演しているメキシコ出身の俳優です。 彼はネイモアのオーディションで泳げるか聞かれた際、泳げないにもかかわらず「溺れたことはない」と答えて合格しました。浮き袋を付けるところからスタートした水泳練習のおかげで、クランクインまでには泳げるようになったといいます。実は、シュリ、ラモンダ、ナキアを演じた女優達も泳ぎがあまり得意ではなく、撮影前にトレーニングを積んだそうです。 メキシコ出身のウエルタは、ラテンアメリカの俳優としてMCUで主要な役を演じることについて、「このようなキャラクターを演じることは、世界の多くの子どもたち、特にラテンアメリカの先住民をルーツに持つ子どもたちにとって、非常に大事なレプリゼンテーションの機会になることを願っています」とコメントしています。
MCUでのネイモア登場の伏線3つ
①『アイアンマン2』
実は、ネイモアの故郷アトランティスの存在は『アイアンマン2』(2010)のポストクレジットシーンで既に示唆されています。 ニック・フューリーとトニー・スタークがアベンジャーズ計画について話し合う1:54:29のシーン。後ろの地図には、アトランティスがあるとされる大西洋に丸印がされています。 このシーンではワカンダがあるアフリカにも丸印がされており、MCUの開始当初から2つの国の伏線を張っていたとしたら驚きですね。
②『アベンジャーズ/エンドゲーム』
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でもネイモア登場の伏線があります。 ナターシャを中心に各地のメンバーとホログラムで通信会議を行っている冒頭のシーン。アフリカプレートの地殻変動について尋ねられたオコエは「地震は海底で起きた。対処法は何もしないこと。」と答えています。 脚本家のクリストファー・マーカスは、このシーンが伏線かと質問があった際に「種をまけば芽が出ることもあるよね。」とネイモア登場が発表される前から意味深な発言をしていました。
③『エターナルズ』
『エターナルズ』のラスト、セレスティアルズである「ティアマット」が地球を滅ばし誕生しようとするも、セルシによって阻止された一連のシーンも間接的に関係していると噂されています。 地球の滅亡は防げたもののティアマットの頭と手が地中から出現し、島を飲み込むほどの大きな津波を引き起こしました。この地球規模の災害によってアトランティスの怒りを買ったのではないかとファンの間で憶測が出ています。
「ブラックパンサー2」のネイモアの注目点2つ
MCUにおけるミュータントの立ち位置が分かる?
これまでMCUには、X-MENを代表するミュータントたちは登場してきませんでした。しかしデッドプールがMCUに加わったり、「デッドプール3」にウルヴァリンが登場することが発表されたりと、今後のMCUではミュータントも多数活躍することになりそうです。 そんな中でMCU初のミュータントとして登場したネイモア。「ブラックパンサー2」ではシュリがネイモアから彼がミュータントであることを聞かされますが、あまり驚いた様子ではありません。これは、ミュータントの存在を以前から知っていたことの伏線とも考えられます。
コミック登場から実写化まで80年!
マーベル最初のヒーローである彼がこれまでMCUに登場しなかった理由は、ネイモアが主人公となる映画の配給権をユニバーサル・ピクチャーズが持っていたから。マーベル・スタジオは、たとえ映画を製作したとしても、公開できない状況だったのです。 しかし2020年に配給権が完全にマーベルに戻ったそうで、今回の「ブラックパンサー2/ワカンダフォーエバー」への登場が実現しました。
ネイモアのマーベルコミックでの活躍
ブラックパンサーとの対決
原作コミックでは、2012年に出版された『アベンジャーズ vs. X-MEN』でネイモアがワカンダを襲撃しています。 ネイモアはスカーレット・ウィッチとの戦いに敗れたことで怒り狂い、ワカンダにアトランティス軍を連れて攻め入りました。力の源「フェニックス・フォース」の力を得たネイモアのパワーで、ワカンダは壊滅的な状況に追いやられてしまうのです。
アメコミのゴールデンエイジ
ゴールデンエイジとは、1930年代後期から1950年初期のアメコミ黄金期を指します。ネイモアはこの時代、海を汚す人類と敵対関係にあるアンチヒーローとして登場しました。 第2次世界大戦が始まると、ネイモアはヒューマン・トーチ、キャプテン・アメリカとともにアメリカから見た敵国(枢軸国)であるドイツや日本と戦う純粋なヒーローとしての描写が多くなり、戦争を背景に人気を博します。 しかし第二次世界大戦が終わるとスーパーヒーロージャンルの人気は低迷していき、ネイモアも徐々に出番がなくなっていきました。
アメコミのシルバーエイジ
シルバーエイジとは人気低迷後、1950年代中期から60年代にスーパーマンのTVシリーズ放映などでヒーロー人気が復活した時代を指します。 DCが始めたヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」が人気になったため、マーベルは「ファンタスティック・フォー」を結成。『ファンタスティック・フォー』4号で、ネイモアは記憶喪失でホームレスになっているところをヒューマン・トーチに助けられ、マーベルに再登場します。 記憶を取り戻した彼は不在の間に着任したアトランティスの王から王位を奪還し、完全復活しました。
マーベルのネイモアとDCのアクアマンは似ている?
実はマーベルのネイモアに対抗してDCに誕生したキャラクターがアクアマンです。マーベルとDCはそれぞれ人気が出たライバル社のキャラクターを元に、類似したキャラクターを多数生み出しています。 アトランティス王であり人間とのハーフという境遇の他に、水中での怪力・武器のトライデント・海中生物とコミュニケーションが取れる能力など類似点が多数あります。 1996年にマーベルとDCのクロスオーバーが実現し、両者は直接対決しています。結果はアクアマンがクジラを誘導し、ネイモアの身動きを封じて勝利しました。(勝敗は読者投票によって事前に決定していました。)
ネイモアのMCU参戦で、陸VS海の闘いに期待したい!
予告ではワカンダとアトランティスが敵対関係にある描写がありましたね。「陸のワカンダvs海のアトランティス」の迫力ある勝負が楽しみです。 敵と味方の両方で描かれてきたネイモアが、MCUで今後どちらの立ち位置に着くのか要注目です!