『シン・仮面ライダー』ショッカー(SHOCKER)の意味は?漫画「真の安らぎはこの世になく」とともに考察
『シン・仮面ライダー』(2023)に登場する秘密結社「SHOCKER(ショッカー)」。原作とは異なる野望やその組織の中身が、公式発表やスピンオフ漫画『真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―』から徐々に分かってきました。 本記事では「ショッカー」の目的や意味、またショッカーサイドの漫画とのつながりについて考察していきます! この記事は映画本編およびスピンオフ漫画のネタバレを含みます。未鑑賞の場合は注意してください。
『シン・仮面ライダー』の結社SHOCKER(ショッカー)
「仮面ライダー」シリーズを通して悪役として暗躍し続けている秘密結社ショッカー。 そのショッカーが映画『シン・仮面ライダー』では、「悪の秘密結社」ではなく「幸福へ導く愛の秘密結社」となって登場します。
そもそもショッカーって?
ショッカーとは特撮版『仮面ライダー』(1971)で初登場した悪の組織。その目的は世界征服です。ショッカーが本郷猛をさらって人体実験した結果、仮面ライダーが生まれました。
シン版「SHOCKER」の意味
S | Sustainable(持続可能な) |
---|---|
H | Happiness(幸福) |
O | Organization(組織) |
C | Computational(計算的な) |
K | Knowledge (知識・認識) |
E | Embedded(埋め込まれた) |
R | Remodeling(改造) |
『シン・仮面ライダー』でショッカーは、カタカナの「ショッカー」から「SHOCKER」という英語表記に変更され、頭文字にはそれぞれ意味が込められました。 「Sustainable Happiness Organization Computational Knowledge Embedded Remodeling」和訳すると「計算機知識を組み込んだ再造形による持続可能な幸福組織」という意味です。自律型人工知能ケイは「人類を持続可能な幸福へと導く愛の秘密結社」だと語っていました。
SHOCKER誕生の歴史
映画で明らかになった通り、SHOCKERはある1人の富豪が作り上げた組織です。彼が俗に言う「ショッカー首領」です。 社会に絶望した富豪はまずAI(人工知能)の「アイ」を作り、続いて外の世界を観測する専用の「ジェイ」を作りました。やがてジェイを進化させて「ケイ」を完成させます。 この人工知能を中心として秘密結社SHOCKERは出来上がっていきました。だから「Computional Knowledge Enbedded」(計算的知識を組み込んだ)「Sustainable Happiness Organisation」(持続可能な幸福組織)なのです。 しかし富豪はなぜか銃で自殺してしまいます。死に際にはアイとケイに「人類を幸福へ導く絶対的な命令」を遺していきました。アイとケイはこの命令を実行するために、人々を絶望から救うべく活動を続けています。
SHOCKERが目指す「幸福」とは
アイは計算によって、人類を幸福へ導くには「最大多数の最大幸福」よりも「深い絶望からの救済」こそ重要だと結論づけました。深い絶望に陥った人間にオーグメントを施すことで力を与え、この理念を実行しようとしています。 最大多数の最大幸福は民主主義の大原則です。政府の男たちはこれを否定されたためにSHOCKERという組織を抹消しようと動き出したのかもしれませんね。
ショッカーの漫画「真の安らぎはこの世になく」を考察
初代『仮面ライダー』シリーズは、敵怪人や組織にもそれぞれ深いストーリーがあることも人気の理由でしたが、今回映画ではSHOCKERの背景があまり深ぼられていません。 彼らの背景や真意は、現在「ヤングジャンプ」で連載されている漫画『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』で明らかになっています。以下ではその内容を紹介していきましょう。
『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』あらすじ
緑川イチローは学校でいじめを受けており、母親に精神的に支えられて生きてきました。しかしあるとき母が亡くなってしまいます。 残されたイチローは、父・緑川弘とともに父の仕事相手・秘密結社SHOCKERのもとに身を寄せます。人間離れした身体能力を持つ2人の男女クモとサソリがイチローの世話役になりました。 一方組織内では内部分裂が起こり、研究成果を狙って弘とイチローがクラークという人物に拉致されてしまいます。サソリとクモが2人の奪還に成功するものの、イチローは胸を撃たれ重症に。 弘は研究していた「プラーナ」を息子に投与し、見事蘇生に成功します。しかし回復後のイチローは肉体が強靭化、さらに精神も蝕まれていく感覚を覚え始めました。
映画につながる重要ポイント4つ
①イチローの願いをケイが受理
前述した通り今回のSHOCKERはもともと悪ではなく、幸福の追求のための組織です。しかし理念を唱えた創設者は亡くなってしまい、ケイとアイが使命を果たすべく組織を直そうと暗躍しています。 幸福追求のためにケイとアイが目をつけたのが漫画の主人公である緑川イチロー。イチローは深い絶望のため暴力を嫌い、「みんながお互いの心を理解しあって暴力が無くなる」世界を作りたいと願望を口にしました。 これを聞いたケイは「その願い受理しましょう」と返答します。緑川イチロー/チョウオーグ/仮面ライダー第0号の「ハビタット計画」を手助けしたのは、ケイとアイであるようです。 もっと言えば、深い絶望を背負った現在のSHOCKER上級構成員は皆ケイとアイに選ばれた存在なのかもしれません。
②クモとサソリの人生
映画では一瞬で出番が終わったクモオーグとサソリオーグですが、スピンオフ漫画ではイチローと関係が深いこともあり、かなりスポットが当てられています。 クモはもともと、ゲイであることを告白したが故にいじめにあった親友を助けられず自殺に追い込んでしまった罪悪感を抱えて生きています。人間を皆醜い生き物だと嫌悪し、自らは人間でない存在になろうと人外融合型オーグメントを受けて「クモオーグ」となりました。 サソリの過去はまだ明らかになっていませんが、「親に裏切られたこともってすごく辛いのよねぇ」と口にしていたり、「エクスタシー」を感じる瞬間が異常であることから、虐待を受けていた可能性があります。 彼らの背景を知って映画を見ると、敵怪人のキャラクターにも感情移入できて、より深く映画を楽しめるでしょう。
③創設者の後継をめぐる派閥争い
創設者であるショッカー首領が死んだあと、漫画では上級幹部の会議で物事を決定しているようです。しかしSHOCKER内では組織の再編成を求める声が高まり、派閥争いが始まっています。 最初に対立しているのはイワン一派とクラーク一派。生態実験を得意とするイワン(死神博士)と武器ビジネスを得意とするクラークとの戦いで、結果クラークはイワン一派のクモによって殺されました。 映画を見るにその後イワン一派は「死神グループ」となり、K.Kオーグなどオーグを増やして勢力を拡大するようですが、その過程でどうやら内部分裂を起こしたようです。漫画の時点では緑川弘もイワン一派に属していましたが、映画では彼を裏切ったようでした。 今後の漫画では、その過程や派閥争いにケイとアイがどう関わってくるのかにも注目です。
④「オーグメント」の段階と危険性
オーグメントとは他の生物のプラーナ(生命力)を圧縮して、人体に埋め込んでいく人体強化手術のことです。人の命を救うことができる技術である一方で、普通の人間は強い力に耐えきれず精神を破壊されてしまうという危険も孕んでいます。イチローも精神が破壊されそうな前兆を見せていました。 オーグメントは大きく分けて3段階あります。1つ目はSHOCKER下級構成員に施される簡易的なオーグメント。人格を破壊せずに洗脳することができます。 2つ目は昆虫合成型オーグメント。仮面ライダーのようにプラーナを体内から強制排除すれば人間に戻ることができます。ハチオーグやチョウオーグのように「羽化」という現象が起こると力が最大化するようです。 3つ目は人外融合型オーグメント。クモオーグのように、これをされると人間に戻ることはできません。精神を破壊されないよう制御するにはかなりの精神力が必要となります。
SHOCKER(ショッカー)の組織図・クレスト
①ショッカー首領→人工知能アイ?
SHOCKERの創始者・ショッカー首領はスピンオフ漫画が始まる前にすでに自殺しています。現在組織は上級幹部の合議制で運営されているようですが、実際は創設者の意志を継いだケイやアイがすべてを裏から操っています。 実質的な首領はケイはアイのための観測装置でしかないので、実質アイが「首領」であると言っても過言ではないかもしれません。
②上級構成員
オーグメンテーションによって人間離れした能力を授かったオーグが所属しています。 第1・第2バッタオーグは、原作と同じであればショッカーによって拉致され、人体改造を受けるものの脱出、ショッカー側と対峙すると予想されます。
③下級構成員
簡易的なオーグメンテーションを受けており、下級構成員も人間離れした能力を持っています。武器として通称「ショッカー棒」とファンに呼ばれる長い棒を持った姿も公開されました。 下級構成員の元ネタは「仮面ライダー」に登場するショッカー戦闘員です。怪人の部下として戦ったり、作戦を遂行する役割があります。黒タイツ姿が有名ですが登場回によって様々な姿をしており、本作の下級戦闘員は特撮版初期に登場したベレー帽戦闘員に寄せた姿をしています。
④博士・研究員
具体的な階級の高さはわかりませんが、技術力を売りにしているSHOCKERには大勢の博士や研究員がいます。以下には漫画で登場した研究員をまとめました。
緑川弘 | プラーナの研究者。脳・神経系の仕組みに精通しており精神を崩壊させずに強化手術を施す方法を開発。 |
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死神博士 | 本名イワン。ケイに招かれ、緑川博士を引き入れる。クモとサソリのボス。下級構成員の強化手術を完成させる。 |
綾小路 | イワンの仲間。綾小路律子が元ネタだと思われる。名前のみの登場。 |
クラーク | 機械化技術の研究を進め兵器売買のビジネスをしていた男。クモに殺された。 |
緑川イチロー | 現段階では博士ではないが父を継ぎたいと勉学に勤しんでいる。 |
『シン・仮面ライダー』秘密結社ショッカーの行末やいかに……
映画『シン・仮面ライダー』が公開され、SHOCKERの組織像は徐々に明らかになってきました。しかし派閥争いを繰り広げていたショッカーの上下関係や組織図が、なぜあのような形におさまったのかは未だ明らかになっていません。 今後も漫画「真の安らぎはこの世になく」を追って、組織の変化を見守っていきましょう!