2017年12月26日更新

ジブリ新作『レッドタートル』全編台詞無しの感動作に拍手が鳴り止まない!

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レッドタートル
©SONY PICTURES CLASSICS/zetaimage

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ジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』

第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、5分間を超えるスタンディングオベーションを巻き起こし、さらに特別賞を受賞したスタジオジブリの最新作『レッドタートル ある島の物語』。ジブリ発の海外共同製作・カンヌ出品作品という、新たな挑戦に注目が集まっています。

『レッドタートル ある島の物語』のあらすじ

ある無人島に、荒れた海に放り出された男が流れ着きました。その無人島はウミガメやカニ、鳥たちが住まう不気味な島で、男はいかだを造って脱出を試みます。 しかし何者かにいかだを壊され、男は再び島へと戻らされます。もう一度いかだを造って海へ出ますが再び何者かにいかだを壊されたのです。 そして、もう一度巨大ないかだを造って脱出を試みると、赤いウミガメがいかだを壊したのです。これまでのいかだを壊したのがそのウミガメかはわかりませんが、男の激しい怒りは赤いウミガメへと向けられます。 その怒りのままに男は浜辺でみつけた赤いウミガメをひっくり返しました。そのまま数日放置していると赤いウミガメは死に、男は後悔するのでした。 するとある日に、赤いウミガメが消え、甲羅の中に1人の女が現れます。男はその謎の女を必死に看病するのでした。

全編セリフなしの80分で描く普遍的な物語

「どこから来たのか どこへ行くのか いのちは…?」というキャッチコピーの本作。実はこの作品、セリフが一切無いんです。 セリフを無くすという事は、余計な情報を削ぎ落とし、音と画に観客を集中させるという事でもあります。それは元々、今回監督を勤めたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットの得意とするところ。 今作で描かれる主人公の人生、直面する危機や感情、そして愛は、誰しもの経験に置き換える事が出来ます。言葉が無くても、国境を超えてメッセージを汲み取ることが出来るのは、とても普遍的なテーマを描いているからでしょう。

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構想に費やした10年の歳月

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督の代表作『海辺のふたり』に深く感動した鈴木敏夫プロデューサーは、マイケル監督に長編製作の話を持ちかけました。 監督は、尊敬する高畑勲監督をアーティスティック・プロデューサーに迎えることで製作をスタート。スタジオジブリと海を跨いでの打ち合わせを重ね、構想10年、製作8年にしてついに公開となりました。 ジブリヒット作の裏に鈴木敏夫あり。彼のアンテナが反応したとあれば、今作も間違いないでしょう。

スタジオジブリ初の海外共同製作作品

スタジオジブリが海外との共同製作をするのは本作が初めて。マイケル監督はオランダ出身で、監督との共同脚本は、フランス出身の映画監督・脚本家であるパスカル・フェラン。音楽もフランス出身のローラン・ペレズ・デル・マール、その他にもずらりと海外アーティストの名前が並びます。 アニメーション制作の実作業は主にフランスで行われたそうで、今までと一味違う画を楽しめそうですね。

監督は『岸辺のふたり』のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

マイケル監督は1953年オランダ生まれ。スイスでエッチング、イギリスでアニメーションを学び、大学卒業後初めての映画となる『インタビュー』を1978年に発表。しばらくはテレビ番組やコマーシャルのためにアニメーションを作っていました。

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『お坊さんと魚』でセザール賞を受賞

その後、1994年『お坊さんと魚』でセザール賞を始めとする多数の賞を獲得し、注目を集めます。こちらは僧院の近くの貯水池で泳いでいる魚を見つけたお坊さんが、なんとかしてそれを捕まえようと奮闘する約6分の物語。 単純な線と美しい色合いが織りなす世界で、音楽に合わせて動くお坊さんの姿がなんとも愛らしく、夢の様なラストが魅力的な作品です。

『岸辺のふたり』でアカデミー賞に

続く2000年の作品『岸辺のふたり』で第73回アカデミー賞の短編アニメ賞を受賞。デジタルセルアニメーション製作システム「ANIMO」を用いて製作された、光と影で綴る絵本の様なアニメーションです。 幼い娘を置いてボートに乗り込み、戻ってくることの無かった父。その面影を求めて岸辺に通い続ける娘。移り変わる季節と自然、そして彼女の想いがラストに起こす奇跡を短い時間で描ききり、世界中を感動に包みました。

高まる期待と裏腹に、蓋を開けてみれば興行収入・動員数は大爆死

その内容から公開前から映画ファンの間では話題となっていた本作ですが、興行収入・動員数は映画作品の中では大爆死といっても過言ではありませんでした。その原因として考えられるものを何点か挙げていきましょう。 まず挙げられるのが「宣伝不足」。テレビやインターネット上で宣伝がほとんどみかけられませんでした。 次に、「大衆性が欠けていた」という点。本作は無声映画であり、多少気にはなるものの万人受けするとは考えられません。またテーマが抽象的で難解な作品に感じられます。 次に、「ジブリを見る層を動かせなかった」という点。従来のジブリ作品と大きくかけ離れているため、ジブリが関わっていると気付かなかった人が多くいます。 最後に、「同時上映されていた他作品が強すぎた」という点。時期的に「君の名は。」や「聲の形」といった強力な作品に挟まれ、影が薄まってしまいました。

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しかしながらプロからは高評価、アニー賞を受賞

上記の通り、興行的には大爆死であった『レッドタートル』ですが、プロからは高評価を得ています。爆発的にヒットした『君の名は。』を抑え、アニメ業界のアカデミー賞ともいえるアニー賞を見事に受賞しました。 日本ではそれほど話題にならなかった本作ですが、海外では高評価を得ているようなのです。シンプルで純粋、美しい、言葉を書かずとも伝わってくる、などの肯定的な評や感想が多くみられます。 日本と海外との感性の違いか、はたまた注目されていなかっただけで順当な評価であるのか。これを機に自らの目で見て評価するべきではないでしょうか。

『レッドタートル ある島の物語』はジブリファンチェック必須!

公開前の期待とは裏側にあまり日本での興行は振るわなかった本作ですが、とはいえ世界的には評価されているのも事実です。ぜひジブリファンのみならず、映画好きの方もDVDなどでチェックしてみてはいかがでしょうか。