名女優!フランシス・マクドーマンドがアカデミー賞受賞!『スリービルボード』
オスカー2冠!名女優フランシス・マクドーマンドの輝かしいキャリア!
フランシス・ルイーズ・マクドーマンドは、1957年6月23日生まれ、シカゴ出身のアメリカ人女優です。父は牧師、母は看護師のカナダ人夫婦の養子となり、ピッツバーグで育ちました。 べサニー・カレッジでは演劇を学び、イェール大学では美術学修士号を取得し、卒業後はまず舞台でのキャリアを築き始めます。ほどなくしてコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』で1984年に映画デビューしました。以降映画界だけでなく、テレビや舞台でも活躍しています。 実はこれまでにいわゆる「演劇の三冠」を手にしている、すごいキャリアの持ち主です。しかもすべて主演女優賞!アカデミー賞では1996年に『ファーゴ』で、トニー賞では2011年に『Good People』で、エミー賞では2015年に『オリーヴ・キタリッジ』で受賞しました。
夫はジョエル・コーエン!子供は養子?
コーエン兄弟にとっても映画処女作だった『ブラッド・シンプル』が縁となり、兄のジョエル・コーエンと1984年に結婚しています。 そもそもの縁は大学時代のルームメイトだったホリー・ハンターが、コーエン兄弟と同じアパートに住んでいたからだそうです。デビュー以来、コーエン兄弟作品には欠かせない存在になっていきました。 自らも養子だったマクドーマンドですが、1994年にパラグアイから養子縁組したペドロ・マクドーマンド・コーエンを一人息子としています。家族でニューヨークに住んでいます。
フランシス・マクドーマンドの出演映画をすべて紹介!
『ブラッド・シンプル』にアビー役で主演した後、『死霊のはらわた』のサム・ライミ監督作『XYZマーダーズ』に出演。サム・ライミもコーエン兄弟と同じアパートに住んでいたキャリア初期からの盟友です。1987年にはコーエン兄弟監督、ホリー・ハンター主演の『赤ちゃん泥棒』にも出演しています。 1990年代前半には、1990年のサム・ライミ監督作『ダークマン』や1991年の『夢の降る街』に出演。1994年にはゴールデングローブ賞特別賞を受賞した群像劇『ショート・カッツ』で、アンサンブル・キャストの1人としてベティ役を演じました。 『ファーゴ』で主演を務めた1996年には、リチャード・ギア主演の『真実の行方』で精神分析医のモリー役を演じています。2001年にはコーエン兄弟初のモノクロ作品『バーバー』に出演、2002年の『容疑者』ではロバート・デ・ニーロと共演しました。 またアニメの声優にもチャレンジしており、2012年の『マダガスカル3』ではデュボア警部役、2015年の『アーロと少年』ではアーロのママ役の声を担当しました。2018年5月公開予定のウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメ『犬ヶ島』でも声優として出演しています。
コーエン兄弟のデビュー作『ブラッド・シンプル』で映画デビュー
ジョエル&イーサン・コーエンが監督・脚本・製作を務めた『ブラッド・シンプル』は、南部の田舎町を舞台としたクライム・サスペンス。酒場を経営するジュリアンとその妻アビー、そして従業員のレイの三角関係から起こる殺人事件を描いています。 コーエン兄弟はこの作品を後にディレクターズ・カット版として再編集しています。日本では2000年に『ブラッド・シンプル/ザ・スリラー』として公開されました。
社会派サスペンス『ミシシッピー・バーニング』で重要な役どころとなるペル夫人役に!
アラン・パーカー監督の『ミシシッピー・バーニング』は、アメリカで公民権運動が最高潮を迎えた1964年のミシシッピー州での黒人差別問題を扱った作品。ミシシッピー州で実際に起きた公民権運動家失踪事件を元にしています。ジーン・ハックマンが事件を捜査するFBIのベテラン捜査官アンダーソンを演じました。 マクドーマンドは事件について重要な証言をする勇敢なペル夫人で出演しています。ペル夫人は町の美容師で、捜査に非協力的なペル保安官補の妻。南部の黒人差別に対する嫌悪と生まれ育った町への愛着との間で葛藤するペル夫人を真摯に演じ、1989年アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。
コーエン兄弟の『ファーゴ』で初のアカデミー賞主演女優賞を受賞!
コーエン兄弟が監督・脚本・製作を手がけた『ファーゴ』は、ミネソタ州で起こる偽装誘拐事件の顛末を描いたクライム・サスペンス。マクドーマンドは主演の警察署長マージ・ガンダーソンを演じました。 妊娠中ながら事件を追うマージ・ガンダーソンという勇ましいキャラクターが非常に印象的で、作品同様高い人気を博しました。国内外の映画賞を総なめにし、1997年アカデミー賞では初の主演女優賞を受賞、コーエン兄弟も同脚本賞を受賞しています。
『ワンダー・ボーイズ』でマイケル・ダグラスと共演
2000年にはマイケル・ダグラス主演の『ワンダー・ボーイズ』に、主人公の愛人サラ役で出演します。「ワンダー・ボーイ」とは神童の意で、主人公の天才作家グラディのこと。天才と呼ばれたのは昔で、スランプに陥った元ワンダー・ボーイのグラディの苦悩を描いています。 監督は『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソン。本作では新世代の「ワンダー・ボーイ」ジェームズ役のトビー・マグワイア、編集者テリー役のロバート・ダウニー・Jr.とも共演しました。
『あの頃ペニー・レインと』の主人公の母親役で初の助演女優賞ノミネート!
『あの頃ペニー・レインと』はキャメロン・クロウ監督の「ローリング・ストーン」誌の記者だったころの体験を元にした青春音楽映画で、アカデミー賞脚本賞を受賞しました。本作でエレイン・ミラー役を演じたマクドーマンドも、各映画賞に助演女優賞でノミネートされています。 エレインは主人公ウィリアムの厳格な母親。まだ15歳という若さのウィリアムが音楽ライターとして、ロックバンドのツアーに同行することを心配しつつも送り出します。ウィリアムが恋心を抱くバンドのグルーピー少女「ペニー・レイン」をケイト・ハドソンが魅力的に演じ、マクドーマンド同様アカデミー賞とゴールデングローブ賞助演女優賞に同時ノミネートされました。
ダイアン・キートンの妹役を演じた『恋愛適齢期』
ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン主演の『恋愛適齢期』では、キートン演じるエリカの妹ゾーイ役を演じました。ゾーイはエリカの良き理解者で、彼女の恋を見守っているという役柄。製作は2003年でしたが、日本公開は2007年の作品です。 ニコルソンが演じたのは60代なのに30歳以下の女性が恋愛対象のハリー・サンボーン。エリカの娘マリンと付き合うハリーですが、エリカとハリーの大人の恋愛がテーマになっています。マリン役にはアマンダ・ピート、エリカに好意を寄せる医師マーサー役にはキアヌ・リーブスがキャスティングされました。
『イーオン・フラックス』では反政府組織の司令塔役
2005年のSF映画『イーオン・フラックス』はシャーリーズ・セロンの出世作。『アニマトリックス』で有名なピーター・チョンが製作した、MTV放映の同名アニメの主人公イーオン・フラックスがモチーフとなっています。 イーオンは外界から隔離された都市「ブレーニャ」で、独裁政権と戦う反政府組織「モニカン」の戦士。マクドーマンドは本作では、モニカンの司令塔ハンドラー役を演じています。
『スタンドアップ』で再び助演女優賞にノミネート!
『イーオン・フラックス』と同年に製作された『スタンドアップ』では、再度シャーリーズ・セロンと共演。ともにアカデミー賞とゴールデングローブ賞で、それぞれ主演女優賞と助演女優賞にノミネートされました。 世界初のセクシャルハラスメントの集団訴訟を起こした実話を、クララ・ビンガムとローラ・リーディの著書に基づいて描いた社会派ドラマです。シャーリーズ・セロンが炭鉱で働くシングルマザーのジョージーを、マクドーマンドはジョージーの古い友人で同僚のグローリーを演じました。ウディ・ハレルソンがジョージーが起こした集団訴訟を勝訴に導く弁護士のビル役で出演しています。
日本では劇場未公開だった『ラングーンを越えて』と『セックス・アンド・マネー』
海外では高い評価を受けたものの日本では劇場未公開となった出演作が、1995年製作の『ラングーンを越えて』と2006年製作の『セックス・アンド・マネー』。 『ラングーンを越えて』はミャンマー民主化運動を体験したアメリカ人ローラ・ボーマンの実話が元になっており、マクドーマンドはローラの姉アンディを演じました。恋愛群像劇『セックス・アンド・マネー』では主人公オリビアの友人ジェーン役で出演しています。 『ラングーンを越えて』はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールにノミネートされ、『セックス・アンド・マネー』ではインディペンデント映画に贈られる「インディペンデント・スピリット賞」で助演女優賞を受賞しています。
コーエン兄弟組に復活!コミカルな演技を披露した『バーン・アフター・リーディング』
2008年には7年ぶりのコーエン兄弟作品『バーン・アフター・リーディング』に出演しました。出演者はジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジョン・マルコビッチ、ティルダ・スウィントンといった超豪華メンバー! ブラッド・ピット演じるフィットネスジム従業員チャドが、謎のCD-ROMを偶然拾ったことから思わぬ展開を見せるクライム・コメディ。マクドーマンドはそのデータをCIAの機密情報と思い込み、チャドと一緒に持ち主を脅迫するリンダ・リツキをコミカルに演じています。
意外!?な出演作『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』
2011年公開の「トランスフォーマー」シリーズ第3弾『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』には、シャーロット・メアリング役で出演しています。実はコーエン兄弟ファミリーのジョン・タトゥーロから勧められて出演したとか。 アポロ11号の月面着陸をきっかけにNASAや政府によって隠されていたトランスフォーマーの謎が明らかになっていくというストーリーで、メアリングは保守的なアメリカ国家情報長官という役柄。キャラクター上でもタトゥーロ演じるシーモア・シモンズと縁ある間柄という設定です。
ショーン・ペン扮するロックスターの妻を演じた『きっと ここが帰る場所』
ショーン・ペンが派手な風貌で引退したロックスターを演じた『きっと ここが帰る場所』。イタリア人監督パオロ・ソレンティーノとショーン・ペンが意気投合して生まれたという作品で、カンヌ国際映画祭でエキュメニカル審査員賞を受賞しています。 原題の『This Must Be the Place』はアメリカのロックバンド「トーキング・ヘッズ」の曲名から取られており、バンドのボーカルだったデビッド・バーンも本人役で出演しています。マクドーマンドはペン演じるシャイアンの妻ジェーンを演じました。
『ムーンライズ・キングダム』でウェス・アンダーソン組に参加!
『グランド・ブダペスト・ホテル』で有名なウェス・アンダーソン監督作『ムーンライズ・キングダム』には、主人公の少女スージーの母親役で出演。60年代のニューイングランド島を舞台にした物語で、12歳のスージーと少年サムの駆け落ち騒動を描いた作品です。 ウェス・アンダーソン監督作の常連であるビル・マーレイとジェイソン・シュワルツマンが出演し、ほかの共演者もエドワード・ノートン、ティルダ・スウィントン、ボブ・バラバンが名を連ねています。2018年のアニメ作品『犬ヶ島』にも声の出演をしている俳優たちばかり!
マット・デイモンと共演した社会派ドラマ『プロミスト・ランド』
ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン製作・主演の『プロミスト・ランド』では、主人公スティーヴ・バトラーの同僚スー・トマソン役で出演しました。 スティーヴはシェールガス採掘権を得るために、農場しかない土地を町ごと買収しようとする大手エネルギー会社の幹部候補。スーは彼のパートナーとして街へ一緒に乗り込みます。 次世代エネルギーのシェールガスをテーマとして、アメリカが抱えるエネルギー問題と生活格差を描いた社会派ドラマです。
コーエン兄弟ならではのブラック・コメディ『へイル、シーザー!』にも出演!
再びコーエン兄弟作品に登場した『ヘイル、シーザー!』では、ベテラン編集者のC・C・カルフーンを演じています。50年代黄金期のハリウッドを舞台に、超大作『ヘイル、シーザー!』撮影中に起きた主演俳優誘拐事件の顛末をコミカルに描いたブラック・ユーモア満載のコメディ映画です。 出演陣もまたもや豪華!主演俳優で大スターのベアード・ウィットロックをジョージ・クルーニー、誘拐事件を捜査するトラブル解決屋エディ・マニックスをジョシュ・ブローリンが演じています。美しい若手女優ディアナ役にスカーレット・ヨハンソン、ミュージカルスターのバート役にチャニング・テイタムもキャスティングされました。
『スリー・ビルボード』でゴールデングローブ賞&アカデミー賞主演女優賞受賞!
娘を殺された犯罪被害者家族の母親ミルドレッド・ヘイズを演じた『スリー・ビルボード』で、見事ゴールデングローブ賞主演女優賞を初受賞、オスカー2冠も果たしました!『スタンドアップ』で共演したウディ・ハレルソンが警察署長ビル・ウィロビー役で出演しています。 娘の事件の捜査がなかなか進まないことに腹を立て、警察を非難するメッセージを書いた看板を3枚も立てたことから思わぬ事態に陥っていきます。ミルドレッドはかなり意志の強い人物として描かれ、看板を快く思わない警察や住民ともトラブルを起こすほど。しかしこれこそ、今まで数々の母親役を演じてきたマクドーマンドの真骨頂ともいえる役柄!
“My mom and dad’s love of movies became my love of movies.”@TheAcademy Award winner for Best Supporting Actor – Sam Rockwell. #Oscars #ThreeBillboards pic.twitter.com/iJoV8Gc4Pn
— Three Billboards (@3Billboards) March 5, 2018
監督はイギリス・アイルランドの劇作家・脚本家のマーティン・マクドナー。本作でベネチア国際映画祭とゴールデングローブ賞脚本賞と作品賞を受賞しました。マクドナー監督はマクドーマンド主演を念頭において脚本を書いたといいます。 2018年の第90回アカデミー賞では、ディクソン巡査を演じたサム・ロックウェルが助演男優賞を受賞!『スリー・ビルボード』は主演女優賞と助演男優賞の2冠となりました。
フランシス・マクドーマンドの華麗なる受賞歴をおさらい!
2018年までに各国映画賞やテレビ関連の賞などを含めるとノミネートだけでも160以上、受賞した賞はなんと80を超えるマクドーマンド。これまでノミネート・受賞してきた各映画賞をおさらいしておきましょう!
アカデミー賞
“Look around ladies and gentlemen, because we all have stories to share.”@TheAcademy Award winner for Best Actress – Frances McDormand. #Oscars #ThreeBillboards pic.twitter.com/TzVVARAkS1
— Three Billboards (@3Billboards) March 5, 2018
最も権威のあるアメリカ国内の映画賞アカデミー賞には、1989年『ミシシッピー・バーニング』、2001年『あの頃ペニー・レインと』、2006年『スタンドアップ』と助演女優賞では3回のノミネート歴を誇ります。 1997年には『ファーゴ』で、そして2018年には『スリー・ビルボード』で主演女優賞を獲得!『スリー・ビルボード』受賞スピーチでは主演女優賞にノミネートされた女優たちに一緒に立つようにうながし、ともに受賞を喜びました。
ゴールデングローブ賞
最優秀助演女優賞では、2001年『あの頃ペニー・レインと』、2006年『スタンドアップ』でノミネートされています。また、1994年『ショート・カッツ』でのアンサンブル演技で特別賞を受賞しました。 コメディ・ミュージカル部門の最優秀主演女優賞では、1997年『ファーゴ』、2009年『バーン・アフター・リーディング』でノミネート。どちらも受賞は逃しています。ドラマ部門の最優秀主演女優賞には、2018年『スリー・ビルボード』で初受賞しました。
その他の主な映画賞
英国アカデミー賞では『スリー・ビルボード』で主演女優賞を受賞。全米映画俳優組合賞では『ファーゴ』『スリー・ビルボード』で主演女優賞、そして2015年テレビ映画『オリーヴ・キタリッジ』で女優賞を受賞しました。 放送映画批評家協会賞では主演女優賞3回、『あの頃ペニー・レインと』『ワンダー・ボーイズ』で助演女優賞を2回受賞しています。 特に多数の賞を受賞した役柄といえば『ファーゴ』のマージ・ガンダーソン役と『あの頃ペニー・レインと』のエレイン・ミラー役、そして『スリー・ビルボード』のミルドレッド・ヘイズ役。どれもマクドーマンドのキャリアを輝かしく彩る代表的なキャラクターとなりました。