映画『雲のむこう、約束の場所』のネタバレあらすじ&考察!舞台の聖地や結末のその後を徹底解説
『雲のむこう、約束の場所』は、2004年に公開された新海誠監督原作による長編アニメ映画です。その後も小説版の刊行やコミカライズも連載されています。 『ほしのこえ』でデビューした新海誠監督の第2作目となる『雲のむこう、約束の場所』は、新海監督が、原作、脚本、撮影まで自身で手がけたアニメ映画で、国内外で高い評価を得ています。 本記事ではそんな本作のあらすじ、登場人物、声優をはじめ、記事後半では気になるあのシーンの考察までを徹底的に紹介します! ※映画『雲のむこう、約束の場所』のネタバレを含みます。
映画『雲のむこう、約束の場所』のあらすじ【ネタバレなし】
戦争により南北に分断された日本。津軽海峡には国境線が引かれ、共産国家群のユニオンが蝦夷(北海道)を支配下におき、ユニオンの塔という白く高い塔を建設しました。塔は平行宇宙(パラレルワールド)の情報を受信するための量子塔で、兵器として利用するために建てられています。 青森県津軽市に住む主人公の藤沢浩紀(吉岡秀隆)と親友の白川拓也(萩原聖人)は、国境を飛び越え飛行機でユニオン塔まで行く計画を立てていました。しかし、ふたりの行為は犯罪にあたるため、ほんの一部の人間しか知りませんでした。 ふたりは塔まで飛ぶ飛行機(ヴェラシーラ)を、廃駅になった格納庫で密かに制作。浩紀は好意をもっている同級生の沢渡佐由理(南里侑香)に計画を話し、一緒に行こうと約束をしたのです。
映画『雲のむこう、約束の場所』をネタバレ徹底解説
浩紀と拓也の計画と沢渡への恋心

青森の中学に通う浩紀と拓也は、蝦夷にそびえ立つ「ユニオンの塔」を間近で見たいという思いで、飛行船・ヴェラシーラの建造を開始しました。長期休みには、岡部という人物が経営する蝦夷製作所で働き、パーツ購入の資金繰りに奔走しています。 そんなある日、浩紀が思いを寄せる佐由理に思わず計画を話してしまったのです。佐由理は感銘を受け、「3人でユニオンの塔へ行こう」と約束しました。 飛行船の整備に付き添いでやってきた佐由理は、整備場の隣りにある廃駅の2階部分へ。目を閉じると、現在とは異なる”戦時中の光景”が広がります。その後、床が崩落して転落しかける佐由理。 気付いた浩紀が手を差し出し救出しますが、その瞬間に佐由理が「前にもどこかで……」と、経験していない記憶が蘇りました。
佐由理が姿を消した理由が明らかに

その後、佐由理は突然姿を消してしまい、3年の月日が過ぎます。 高校生になった拓也は、軍の研究所で最年少の外部研究員に。拓也は、富澤室長とともに人間の予知や予感と関係し、"宇宙が見る夢"と称される「平行宇宙」に接続する実験を行っていました。この平行宇宙の情報を、ユニオンの塔は受信しているといいます。 一方、東京の高校に進学した浩紀は、佐由理がいなくなってから飛行機を作ることも諦め、目的のないままの生活を送っていました。そんなある日、佐由理が「3年前からずっと眠り続けている」と知ります。 実は、ユニオンの塔は佐由理の祖父エクスン・ツキノエが設計したもので、佐由理の脳と繋がっていました。佐由理が目覚めてしまうと、"世界は崩壊"してしまうのです。
浩紀が佐由理と夢の中で交わした約束とは

岡部からの手紙で佐由理の入院先を知った浩紀は、急ぎ彼女の病室へ駆けつけます。しかし、そこに佐由理の姿はなく、すでに拓也が働く研究施設へ移送された後でした。 もぬけの殻となった病室で、佐由理の気配に浩紀が手を伸ばすと、不思議なことに感触が伝わり、夢の世界へと引き込まれます。夢の中で佐由理との再会を果たした浩紀は、「沢渡を塔まで載せてヴェラシーラを飛ばすよ」「もう1人にはしない。僕はもう何も諦めない。ずっと沢渡を守るよ」と固く約束し、現実世界へと帰還しました。 その頃、拓也は研究を続ける裏で、岡部とともに塔へのテロ計画を進めていたのです。拓也は、非現実的な「夢」の話を信じ、眠っている佐由理をヴェラシーラに乗せようとする浩紀を止めるために説得。しかし、佐由理を救いたいと願う浩紀の覚悟に心を動かされ、最終的には協力を決意するのでした。
佐由理が目覚め塔が崩壊する

ユニオンの塔の危険性が増す中、連合側のアメリカがついに宣戦布告します。浩紀と佐由理を乗せたヴェラシーラは、津軽沖で戦う両軍の混乱に乗じて、低空飛行で塔へと接近。 戦場を抜けて雲のむこうへと上昇すると、ついに"約束の場所"ユニオンの塔が眼前にそびえ立っています。夢の中でヴェラシーラの姿を見た佐由理は、「夢が覚めてこれから何をなくすのか」を理解し、浩紀に誰もいない世界でどんなに求めていたか、好きだったかを伝えたいと願いました。 目覚めた佐由理は、何を話したかったのか忘れてしまったと涙を流します。そんな佐由理を見て、浩紀はただ「おかえり、佐由理」と優しく微笑みました。 佐由理の目覚めによって、蝦夷を飲み込んでいくユニオンの塔。浩紀は塔から離れ、ヴェラシーラに搭載した爆弾を発射します。爆発するユニオンの塔を背に、浩紀が操縦するヴェラシーラは拓也が待つ青森へと帰っていきました。
【ネタバレ注意】『雲のむこう、約束の場所』がより深まる考察を紹介!
考察1:ラストの後、佐由理はどうなったのか?
浩紀は眠っている佐由理を乗せて、ヴェラシーラで塔まで飛ぶことに成功しました。エンディングでは、塔は崩壊し佐由理は目覚めています。しかしオープニングでは、大人になった浩紀が「思い出の場所」に戻ってくるという場面で、目覚めたはずの佐由理の姿はありません。 塔と佐由理の脳は連動していましたが、塔が崩壊してしまったため、佐由理は亡くなってしまったのか、それとも再び眠りについたのかもしれませんね。 物語のなかでは研究所の人間が、佐由理が目覚めると世界が崩壊してしまうといった場面があります。それを防ぐ為に佐由理が、自分の身を犠牲にしたとも考えられるのではないでしょうか。
考察2:「ユニオンの塔」とはなんなのか?
ユニオンが建設している白い塔。物語のキーとなっている建造物ですが、その存在は謎に包まれています。色々な解釈が出来るような表現が散見され、ファンの考察を加速させています。 拓也が病気のことを調べているシーンで、「現在の世界」や「14の利用可能な世界」といったワードが出てきており、この事から塔が平行世界に関わっている、とする説が多いようです。塔と佐由里のリンクが外れることで世界が滅んでしまう、というのも未来の科学的要素が散りばめられた本作品の魅力を更に引き立てているのではないでしょうか。 またそれとは全く異なる説として、佐由里の見ている夢が多重化し、その中で観測出来る世界が「14」だという説もあります。この場合、直接的には世界は滅びませんが、3人だけの時間の「終わり」が訪れてしまう、という意味で拓也の真剣さに納得はいくと考えられます。
考察3:「忘却」が意味することとは
本作の大きなテーマが、夢の忘却です。どんなに良い内容だとしても、「夢」は目が覚めれば断片的にしか思い出せない、もしくはすぐ忘れてしまいます。同じことが、佐由理の身にも起きていました。 劇中で何度も登場した「いつも何かをなくす予感がする」という佐由理の言葉。その意味は終盤、夢から覚める佐由理の「夢が消えていく」に繋がるのです。夢の中で交わした大切な約束も、浩紀への切実な想いも、目覚めとともに消え去り、彼女には理由のわからない涙だけが残りました。 つまり、佐由理にとって夢を忘れることは、浩紀への想いを失うことそのもの。「夢」というテーマを通して「どれほど深く深く想っていても現実に成就しないことも、忘れてしまうこともある」ことを表現しているのではないでしょうか。
映画のその後を描いた小説版では意外な展開に……。
『雲のむこう、約束の場所』の小説版では、アニメ映画のその後の物語が描かれています。それは佐由理が、ひとりで生きていこうと決めて、浩紀から離れていったというものです。 理由は、佐由理が「浩紀と一緒にいると自分が頼りきりになってしまう」から。実は密かに拓也も佐由理のことが気になっていたため、どちらかを選んでしまうと大切にしていた3人の関係が壊れてしまうと思ったのではないでしょうか。 だから、どちらも選ばずにひとりで生きようと決めたのかもしれません。ハッピーエンドでもない本作ですが、素敵な終わり方ですね。
映画『雲のむこう、約束の場所』の登場キャラクター・声優
藤沢浩紀(ふじさわひろき)/cv.吉岡秀隆

主人公の藤沢浩紀は、同級生の沢渡佐由理(さわたりさゆり)に思いを寄せる中学3年生。 ユニオン塔に憧れを抱いており、塔まで行くための飛行機を製作しています。眠り続けてる佐由理と塔の関係に気がつき、犯罪だとしりつつも、佐由理を飛行機に乗せて塔まで飛び立ちます。
主人公・藤沢浩紀の声を担当したのは俳優として活躍する吉岡秀隆。吉岡は5歳の頃から演技を初め、国民的ドラマ『北の国から』シリーズの出演や『Dr.コトー診療所』で主演を務めるなど、俳優として精力的に活動してきました。 声優としての活動は多くはありませんが、2011年公開の映画『手塚治虫のブッダ -赤い砂漠よ!美しく-』ではシッダールタ役を演じています。また、2025年10月に公開された新海誠作品の実写化『秒速5センチメートル』では、オリジナルの登場人物・小川龍一を演じました。
白川拓也(しらかわたくや))/cv.萩原聖人

東京に行った浩紀とは別に青森に残った拓也は、軍の研究施設で平行宇宙との接続を実験していました。飛行機造りを投げ出した浩紀に怒りを覚えていましたが、佐由理と塔との関係を聞き、浩紀に手を貸すことにしました。
白川拓也役を演じた萩原聖人は俳優・声優として活躍する人物です。1987年の『あぶない刑事』に出演してから芸能界で活躍しますが、その活動は多岐にわたっており、ドラマや舞台での演技の他にはナレーションや声優を務めることも。 また麻雀の腕も確かで、麻雀愛好家の有名人としても知られています。
沢渡佐由理(さわたりさゆり)/cv.南里侑香

沢渡佐由理は、ふたりが造った飛行機で塔まで行くのを楽しみにしていました。しかし中学3年の夏から謎の睡眠障害に陥り、ふたりには何も伝えられぬまま姿を消してしまいます。その後、塔の製作者が佐由理の祖父であることから、塔と佐由理の関係も明らかになりました。
ヒロイン沢渡佐由理を演じた南里侑香は、日本の女優・声優・歌手です。幼少期から演技を学んでおり、1996年から子役としてメディアに露出していました。 2001年には『パワーパフガールズ』のバブルス役で声優デビューを果たし、以降声優としての活躍が目立ちます。
映画『雲のむこう、約束の場所』の舞台の聖地は?
新海誠展@青森会場開催に合わせて、青森県東青地域県民局のFacebookにて連載中の、『雲のむこう、約束の場所』に登場する舞台を写真で紹介するシリーズも、ついに最終回! 三厩駅周辺の紹介です↓
— 新海作品PRスタッフ (@shinkai_works) December 6, 2018
【「新海誠展」シリーズ第10弾(最終回)】https://t.co/UZH3IK6zrX pic.twitter.com/LsHx1tWlko
津軽海峡に国境があり、蝦夷にユニオンの塔が建てられていることから、北海道や青森にモチーフとなった「聖地」があると考えられます。 塔が建てられている室蘭市は、現実の第2次世界大戦時に軍関係の工場が多く存在したと言われています。そのほかにも「地球岬」や、測量の基準として使用されていた「測量山」など、室蘭市だけで多くのそれらしい土地を見ることができます。 青森県側では、電車・駅のシーンが多く出てきますが、青森駅を始めとして、蟹田駅・三厩駅など、実際の駅が多く使われており、東北観光と併せて巡ってみると一味違う本作の楽しみ方が出来そうです。
映画『雲のむこう、約束の場所』に欠かせない主題歌「きみのこえ」
本作の主題歌「きみのこえ」の川嶋あいは、とても透き通ってきれいな声をしており、映画の美しい風景と主人公たちの気持ちの動きを思い出させてくれます。 作詞は監督である新海誠自ら行っていることから、映画の内容にぴったりのちょっと切なくセンチメンタルな気分にさせてくれる優しい楽曲です。
映画『雲のむこう、約束の場所』の感想と評価を紹介!

空と光が綺麗。張りつめた空気感もよかった。
夢と現実、SFの世界なので好き嫌いがハッキリしそう。内容はあまり入り込めない感じだったけどそれぞれのキャラクターは味があるし新海誠ならではの風景描写が素晴らしい。光をうまく使っていて画に見惚れてしまう。
映画『雲のむこう、約束の場所』は難しすぎて意味不明?
本作の評価が分かれる一因として、その「難解なSF要素」が挙げられます。特に、物語の核となる平行世界の概念は作中で全てが説明されるわけではないため、1度の鑑賞で完全に理解するのは難しいかもしれません。 新海誠監督自身も、のちに本作を「物語面での手つきの危うさばかりが気になってしまう作品」と、雑誌『Febri Vol.37』で振り返っています。 しかし同時に、社会現象を巻き起こした『君の名は。』(2016)が本作の「語り直し」とも明かしており、この作品が監督の作風を確立する上で、いかに重要な礎であったかがうかがえます。
映画『雲のむこう、約束の場所』は新海誠初の長編アニメーション映画

映画『雲のむこう、約束の場所』のネタバレあらすじや考察、声優陣などを紹介しました! 新海誠監督の2作目であり、記念すべき初の長編アニメーションとなった本作。「平行世界」という、やや難解な要素もあるため、複数回観るのがおすすめです。あらすじや考察を読んで、ぜひ配信で『雲のむこう、約束の場所』を復習してみてください。






