『天気の子』陽菜(ひな)の謎を考察 晴れ女の能力と力の代償とは
2019年に公開され、大きな話題となった新海誠監督の『天気の子』。そのヒロインである天野陽菜は、祈るだけで天気を晴れにできる不思議な能力を持っています。 この記事では、陽菜が「晴れ女」になった経緯を振り返り、その能力を考察。また、凪をはじめ陽菜の家族や、陽菜の声を担当した声優についても詳しく紹介します。 ※本記事には映画『天気の子』に関するネタバレ情報を含みます。未鑑賞の場合は注意してください!
『天気の子』ヒロイン、天野陽菜(ひな)はどんな人?
名前 | 天野陽菜 |
---|---|
年齢 | 14歳〜15歳(劇中で誕生日を迎える) |
誕生日 | 2006年8月22日 |
声優 | 森七菜 |
天野陽菜(あまの ひな)は『天気の子』のヒロインで、8月22日生まれの中学3年生。物語の1年前に母を病気で亡くし、弟の凪(なぎ)と2人でJR田端駅周辺の高台にある2DKのアパートに住んでいます。 歌舞伎町のマクドナルドでバイトしている時に、主人公の森嶋帆高(もりしま ほだか)と出会うことに。そのとき実はまだ14歳でしたが、働くため年齢を偽っており、次の誕生日で18歳になると話していました。 弟の面倒をよく見るしっかりした性格で、アルバイトで生活費をまかなっています。部屋の装飾品を手作りしたり、ありあわせの食材だけでも美味しい料理を作ったりと器用な女の子です。
陽菜が晴れ女になった経緯とは?
陽菜が晴れ女になったのは、物語の冒頭とみられます。病院で母に付き添っていた陽菜が、雨降る曇天の中に一筋の光を見つけます。その筋を辿っていくと、廃ビルの屋上に小さな鳥居が。その鳥居を祈りながらくぐったことで、雨を止ませて晴れにする能力を手にしたようです。 つまり物語の1年以上前には、晴れ女の能力を手に入れていたのです。しかしその頃は「100%の晴れ女」という自覚はなく、帆高と出会ったことでその能力を開花させていきました。帆高と晴れ女ビジネスを始めると、次第に人の役に立つことが嬉しくなり、晴れ女が天職のように感じ始めます。
晴れ女と陽菜の能力を考察
陽菜の能力は、空に向かって祈ることで、局地的範囲を一時的に晴れにすること。彼女はこの能力を使って人々の依頼に応え、ビジネスにしていました。しかし彼女は晴れだけでなく、ほかの天気も操ることができると考えられるシーンが随所に登場します。 警察に追われる帆高や弟の凪と逃走中、東京では8月だというのに雪が降りました。これは、彼女の心が不安定になったためだと思われます。また帆高が警察に取り押さえられそうになったときも、彼女の願いに答えるように雷が落ちています。 陽菜は「私の体が空とつながった」と言っていますが、体だけでなく心もつながっていたのかもしれませんね。
晴れ女の代償
実は陽菜の能力には代償があり、力を使えば使うほど徐々に身体が透明になっていきます。ビジネスで力を使いすぎたため、中盤には陽菜の身体はかなり消えかけていました。 陽菜は気象神社に伝わる「天気の巫女伝承」について知らされ、変化する身体にも気づき始めて、自分の晴れ女としての役割は「人柱」であることを知ることになります。そして世界に晴れが戻るのなら、自分が人柱になることを選ぶのです。 天気の巫女とは、日本に古くから言い伝えのある「天候を自在に操ることができる」巫女。陽菜と同じく、力の代償は人柱となって天に召されることでした。
陽菜のその後は?
人柱になることをやめ、地上に戻ってきた陽菜は、晴れ女の能力を失くしていました。彼女が帆高に再会するまでの3年間、東京は雨が降りつづき、ついに水没してしまいます。しかし晴れ女の役割から解放された陽菜は、帆高とともに新しい人生を歩みはじめました。 『天気の子』のBlu-rayコレクターズ・エディションのデジパックに書かれているイラストは、作中の世界のその後を描いたものとのこと。それを見ると、天気は徐々に晴れてきていることがわかります。
父親については一切描かれず?
母親が病気で亡くなってからは、陽菜は弟の凪と2人で暮らしていたようです。凪はまだ小学5年生ながら、彼女や元カノにいつも囲まれている大人びたプレイボーイ。帆高よりも恋愛経験が豊富で、帆高には「センパイ」と呼ばれています。 映画でも小説でも、陽菜と凪の父親については一切触れられていません。元々母子家庭だったのか、陽菜がしっかりしていることも考えると父親とは早くに死別・離別していると考えられます。 未成年2人だけで暮らしていることで、施設に入れられることを頑なに拒んでいた陽菜。夜の仕事まで考えるほど切に自活を望んでいたのは、やはり残されたたった1人の家族である凪と離れ離れになりたくなかったのでしょう。
青いチョーカーにはどんな意味が込められている?
陽菜がいつも付けている青いチョーカーは、亡くなった母親の形見のブレスレットをチョーカーに作り変えたもの。冒頭の病院のシーンでも、母親の手に青い雫が付いたブレスレットが映っています。 しかし陽菜が天上の世界から戻った時には、このチョーカーの輪の部分が切れていました。これは、陽菜が天気の巫女の役目から解放されたことを意味しているそうです。 さらに考察すると、前作『君の名は。』の三葉のように「巫女」が遺伝的に伝承されるものならば、陽菜の晴れ女の能力も実は母親から受け継いだものなのかもしれませんね。
陽菜の声優を務めたのは森七菜
陽菜の声優を務めたのは、女優として活動している森七菜です。帆高役を務めた俳優の醍醐虎汰朗(だいご こたろう)と同じく、アニメ声優を務めるのは本作が初めて。しかしそんなことも忘れるほど、堂々とヒロインを演じていました。 森七菜は2001年8月31日生まれ、大分県出身の女優。陽菜と同じ中学3年生で大分県内でスカウトされ、ネスカフェのウェブCMで芸能界デビューしています。Amazonプライム・ビデオ配信のドラマ『東京ヴァンパイアホテル』(2017)のヒロイン役で女優デビューを果たし、それ以降映画・ドラマに次々と出演しています。 2020年には岩井俊二監督の映画『ラストレター』で、松たか子演じる遠野裕里の高校時代とその娘・颯香の二役を演じました。さらに主題歌「カエルノウタ」も担当し、少年とも少女ともいえない不思議で魅力的な歌声を披露しています。
過酷な運命を受け入れる陽菜と人柱という犠牲の上に成り立つ残酷な世界
『天気の子』のヒロイン・陽菜は、天候を操る100%の晴れ女ですが、実は能力と引き替えに自らの命を差し出さねばならない「人柱」でした。天気の巫女伝承によれば、これまでにもそういった巫女の人柱が存在していたということ。この世界は、陽菜のような人柱という犠牲の上に成り立ってきた残酷なものなのです。 父親は不在で、母親も亡くし、弟と2人で自力で生きていこうとしていた陽菜。そんな健気な陽菜を過酷な運命から断ち切ろうとしたのが、帆高でした。 帆高との出逢いが、陽菜の運命を大きく変え、世界をも変えてしまったのです。しかし変わってしまった世界でもなお、祈り続ける陽菜に帆高と同じく心を震わされるのかもしれません。