2021年1月13日更新

【地上波初放送】『天気の子』が賛否両論になった理由とは 新海誠監督はあえて「意見がわかれる映画」を作った?

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

2019年に公開され、大ヒットを記録したものの賛否両論となった新海誠監督の『天気の子』。なぜ“意見がわかれた”のか、本作への評価からその理由を考察していきます。

目次

新海誠監督の『天気の子』はなぜ賛否両論になったのか?【ネタバレあり】

2016年に記録的大ヒットを飛ばしたアニメ映画『君の名は。』の次作として、3年ぶりに新作『天気の子』を公開した新海誠監督。レビューは大きく賛否が分かれ、当の監督も「意見がわかれる映画になる」と発言しました。 『天気の子』は、高校1年生の帆高が家出先の東京で、働きながら幼い弟と2人で生活する少女・陽菜と出会う物語です。陽菜は、異常気象で雨が降り続く東京を一時的に晴れにすることができる「100%の晴れ女」。陽菜に惹かれていく帆高を主人公に、2人が運命に抗う様子を描いています。 本作の肝は「帆高の選択」であることは間違いありませんが、賛否が分かれたのもその部分。この記事では、レビューサイトやciatr編集部から出た賛否をもとに、その理由を解き明かしてみたいと思います。 ※本記事は『天気の子』鑑賞後の読者を想定しています。全体的にネタバレを含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。

実際『天気の子』は賛否両論だった

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

『天気の子』の公開後、「週プレNEWS」が独自のアンケートを行なっています。20〜40代の男性100人に肯定派か否定派か聞いたところ、肯定派は52%、否定派は48%と拮抗していました。 ciatr編集部でも、『天気の子』は「好きな作品に入る」「どちらかというと好きじゃない作品に入る」というアンケートを取ったところ、見事に半々の意見に分かれています。

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

大手レビューサイトの星評価では、『君の名は。』と比べると『天気の子』は若干ですが低い数値に。 ■映画.com『天気の子』3.7/『君の名は。』 4.0 ■filmarks『天気の子』3.7/『君の名は。』 3.8 興行収入も250億円を突破した『君の名は。』と比較すると、『天気の子』は141億円を超えたとはいえ大きな差が生まれました。

作品を好きな人の意見は?

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

では、『天気の子』を好きな人はどんなレビューを残しているのでしょうか?まずは肯定的な意見をまとめてみましょう。 多いのは映像の美しさを絶賛する感想。次にやはり帆高の選択についてですが、異常気象が続く雨模様の東京を閉塞感漂う現実と重ね、それをぶち破った帆高を支持するという意見が多くの人の共感を得ています。 若さゆえの無謀さをあえて支持するのは、もちろんこれが映画というフィクションだから!そこに自由と希望がなければ、現実のリアルに押しつぶされてしまいます。 『君の名は。』から続いてタッグを組んだRADWIMPSとの相性が抜群!という声も。中には『君の名は。』よりも『天気の子』の方が好きという人や、本作から新海誠監督に興味を持ったという人もあり、前作とは明らかに違う方向性で挑戦したことがうかがえます。

どちらかというと好きじゃないと感じる人の意見は?

続いて、否定的な意見を見ていきましょう。よく目にするキーワードは「自己中」や「厨二病」といった、帆高の若さゆえの行動に共感できないといった感想でした。キャラクターに共感が持てない、ストーリーが薄いといった意見は多々あるようです。 加えて、子ども向きに作られているという感想やご都合主義の展開を批判する声もあります。肯定派が支持する「若さ」を自己中な「幼さ」と取るかによって、ここまで意見が分かれるとは! 鑑賞者の年齢層で見方に違いはあるものの、おしなべて否定派が子ども・若者向けと感じる所以は、やはり帆高の行動と選択にあるようです。肯定派が絶賛したRADWIMPSの音楽も、本作自体が壮大なミュージックビデオと取られる傾向があります。

なぜ絶賛ではなく賛否両論となったのか?

君の名は。
(C)2016「君の名は。」製作委員会

ブームを巻き起こした前作『君の名は。』とは、どうしても比較対象になってしまう『天気の子』。とはいえ大多数の支持を得た『君の名は。』ですら、否定的な意見は存在します。そもそもどんな作品にも賛否はあるものです。 『君の名は。』以前の新海誠監督作はコアなファンが多く、作品ごとに意見も分かれるようなマイノリティ向けのものがほとんどだったよう。例えば初期の『秒速5センチメートル』(2007年)や『星を追う子ども』(2011年)も、結末や作風に対する賛否両論があった作品です。 『君の名は。』が公開された2016年、東日本大地震の記憶もまだ生々しく、作品の本筋である未曾有の大災害に感情が激しく揺さぶられた人も多かったと考えられます。主人公の2人も都会と田舎と住む場所こそ違いますが、普通の高校生であり、恋愛の展開もドラマチックで感情移入しやすかったのではないでしょうか。

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

つまり、『君の名は。』はマジョリティの共感を得られた作品であり、『天気の子』は家出少年や親のいない家庭といったキャラクターを主人公としたため、キャラ設定に共感できない人が前作に比べて多かったのだと思われます。 銃を手に社会を逸脱した犯罪者として追われる展開や、世界の救済より個人の幸せを選んだ帆高に感情移入できないのは無理もないことでしょう。

新海誠監督自身も「意見がわかれる映画になると思う」と語っていた

「MOVIE WALKER PRESS」による新海誠監督のインタビュー記事には、『天気の子』への批判を踏まえて、何が描きたかったのかが語られています。それは「帆高VS社会」という構図の中で、賛否両論を呼ぶほど“人の心を動かす”作品。 監督自身も、帆高の反社会的行動を“許せない”と感じ、感情移入できない人もたくさんいると思うと語っています。確かに帆高の言動はSNSだったら炎上するようなことかもしれないとした上で、エンターテインメント作品の中ならそんな“正しくないことを主張する”こともできると考えたそう。 これは、あえて批判を呼ぶような作品を放って問題を提起し、賛否を含めて意見を活発にするという逆説的な手法といえるでしょうか。ただし、結末には自分の作家性が“にじみ出た”とも告白しています。監督のものづくりへの情熱は、陽菜を救おうと走る帆高のひたむきさにつながるものだったのです。

賛否両論あってこその『天気の子』!あなたはどちら?

多くの共感を呼んだ大ヒット作『君の名は。』の次に、新海誠監督があえて描いたのは賛否両論を巻き起こす問題作『天気の子』。そこには監督のものづくりへの情熱とエンタメ作品の可能性への信頼がありました。 鑑賞済みの人はこれらのことを踏まえたうえで、ぜひもう一度『天気の子』を鑑賞してみてください。監督が意図した仕掛けに気づき、新しい発見があるかもしれません。