2023年6月22日更新

原作漫画『コクリコ坂から』とジブリ映画の違いを比較!原作の結末・その後はどうなる?

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『コクリコ坂から』

2011年に公開されたスタジオジブリの青春映画『コクリコ坂から』。宮崎吾朗がメガホンをとった本作は、学生運動を題材にしていることなど、ほかのジブリ映画とは一線を画す魅力があります。 そんな『コクリコ坂から』には、実は同タイトルの原作漫画があります。この記事では、ジブリ映画版と比較しながら、原作漫画の内容を紹介します。 ※記事にはジブリ映画と原作漫画の結末までのネタバレがあります。

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原作漫画『コクリコ坂から』のあらすじ

『コクリコ坂から』からの原作漫画は、1980年に少女漫画雑誌「なかよし」(講談社)で連載されました。 10年前に乗った船が遭難し行方不明になっている父と、仕事のためにアメリカに渡った母を持つ小松崎海は、両親の留守中、家事を切り盛りしていました。 海の通う港南学園では、新聞部部長の風間俊と生徒会長の水沼史郎が、たびたび衝突をくり返しています。海はそれを冷ややかに見ていましたが、あるとき制服廃止運動の失敗を一身に負わされる俊をみて、海は彼を擁護。やがてふたりは惹かれ合うようになっていきます。 そんななか、水沼が俊に、海と交際しないようにと言ってきます。実はふたりには、本人たちも知らないつながりがあり……。

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原作漫画との違い①時代設定

コクリコ坂から

ジブリ版と原作の大きな違いの1つは、時代設定と舞台の設定です。 ジブリ版では、物語の舞台は1963年の横浜と、具体的な設定になっています。一方原作は、港町であること以外は細かい場所・時代の設定はされていません。 また、朝鮮戦争がキャラクターのバックグラウンドに絡んでくるなど、社会的背景から時代設定をより強化しています。

原作漫画を読んで
ジブリ映画と比較!

原作漫画との違い②カルチェラタンの存在

コクリコ坂から

映画版で、重要な役割を果たしている文化部部活棟「カルチェラタン」。しかし原作には、これが全く登場しないというのは意外かもしれません。 カルチェラタンは、もともとはパリにある地区の名前で、学生が集まる街として有名なこの場所。学生運動の中心地ともなり、当時の反体制運動の象徴と言われています。 ジブリ版では部活棟がカルチェラタンと名付けられており、60年代の社会背景や思想を強く打ち出しています。生徒たちが学校側を相手にさまざまな問題提起をし、論争をする姿は、まさに学生運動そのものです。

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原作漫画との違い③海(メル)のキャラ設定

コクリコ坂から

映画化にあたって、キャラクターにも大きな変更が加えられました。 まず海の名字が「小松崎」から「松崎」に変更されています。また原作では、海の父親は10年前に海で遭難したということになっています。一方、映画版では、彼女の父は朝鮮戦争で命を落としたという設定に変更されました。 また原作・映画版ともに、海は家族や下宿人の世話をしていますが、原作では食費を節約するなど、ちゃっかりした一面も。さらに男子生徒に食ってかかったり、手を上げたりと、かなり強気な性格です。 そのほかにも、映画では正義感あふれる真面目な青年として描かれている俊は、原作では賭けマージャンで負けた分を払うため人を騙すなど、かなり印象の違うキャラクターに。 さらに海の母の職業はカメラマンから大学助教授に、下宿人・北見の性別は男性から女性に、職業は獣医師から医師に変更されるなど、細かな改変がされています。

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原作漫画との違い④海の恋愛事情

コクリコ坂から

原作は海の恋愛事情を中心に展開していきます。 原作の海は、当初下宿人で獣医師を目指す北見北斗に好意を寄せていました。しかし俊との距離が縮まるにつれて、北見への想いは兄を慕うようなものだと自覚します。 一方、俊とはお互いに惹かれ合い、想いが通じます。しかし自分たちが異母兄妹だと知った俊から、理由も聞かされず一方的に別れを告げられ、悲しみに暮れることに。 その反動で海は、やけになって広瀬真という不良と交際をはじめます。広瀬は俊のことを良く思っておらず、そのあてつけに海と付き合うことにしたのです。 映画版では、北見は医師としてすでに働いている女性に変更。広瀬の出番はありません。

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それぞれの結末・その後は?

コクリコ坂から

さまざまな変更が加えられた映画版ですが、その結末は原作と同じです。 兄妹疑惑のあった海と俊ですが、ふたりには血のつながりはありませんでした。ある日海の父は、事故で他界した親友の息子を引き取ってきました。その赤ん坊の母親は出産で命を落としており、身寄りのない彼は孤児院に引き取られる予定でした。しかし海の父はその赤ん坊を無理やり自分の戸籍に入れて、引き取ってきたです。その赤ん坊が俊です。 海の母は理解を示しますが、当時すでに海を身ごもっていた彼女に、俊の世話をする余裕はありませんでした。そこで当時赤ん坊を亡くして悲しんでいた風間夫妻に、俊を預けることにしたのです。 血のつながりがないことがわかった海と俊は、再び意識し合うようになるのでした。 原作では、映画の結末のその後が描かれています。 兄妹疑惑が解消してから1年後、俊は商船大学に入学します。海に関しては、その後の進路は不明ですが、俊と交際し、とにかくしあわせいっぱいであることがわかります。

ハッピーエンドな映画のその後を

ジブリ映画と原作漫画でこんなに違う理由は?

コクリコ坂から

ここまで紹介した通り映画『コクリコ坂から』には、原作の時代背景・キャラクター設定・ストーリー展開などさまざまな変更を加えられています。では、どうしてそのような変更がされたのでしょうか。 原作漫画は、少女漫画雑誌「なかよし」に連載されていたため、メイン読者層である思春期の女の子と同じキャラクターの想いや恋愛模様がじっくりと描かれています。一方、ジブリによる映画版は、より幅広い年齢層や性別の観客が見込めるため、恋愛だけではなく学生運動をメインとしたストーリー展開になっているのです。

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『コクリコ坂から』は原作漫画もジブリ映画も面白い!

原作漫画から大きな変更がされ、ほぼ別物のストーリーとなっている映画『コクリコ坂から』。原作は少女漫画ということで、王道のラブストーリーが展開されます。 大きな違いがあるからこそ、それぞれの良いところを楽しめるのではないでしょうか。映画は観たけど、原作は読んでいないという人は、この機会に原作を手にとってみてくださいね。