2019年7月31日更新

『天空の城ラピュタ』ムスカが愛され続ける理由を解説!名言や経歴から人物像をひも解く【ジブリ】

『天空の城ラピュタ』

1986年公開のジブリアニメ映画『天空の城ラピュタ』に登場するキャラクター、ムスカ。スタジオジブリ映画史上稀に見る悪役であり、その人気は凄まじいものです。なぜ彼がそんなに人気なのか、ムスカというキャラクターを徹底紹介します。

ムスカは時代を超えて愛される『天空の城ラピュタ』の悪役

1986年公開のジブリアニメ映画『天空の城ラピュタ』に登場する悪役ムスカ。 映画は、空に浮かぶ伝説の城「ラピュタ」を巡って少年パズーと、ある日空から彼の元に落ちてきた少女シータが繰り広げる冒険物語です。そのなかで登場するムスカ大佐もまた、ラピュタを狙っており、パズーとシータを利用しようとします。 敵役だけど実はいい人、という設定が多いジブリ作品において、徹底的に悪を貫くそのキャラクター性は時代を超えて今もなお愛されています。 そんなムスカ大佐の魅力を徹底解説したいと思います!

ムスカのプロフィールを紹介!「ラピュタ」を手に入れて何がしたかったのか?

空中要塞ラピュタの調査を行う政府の特務機関の所属で、階級は大佐。表面上は慇懃な紳士ですが、その本性は冷酷で、自らの野望のためには手段を選びません。 ムスカの目的とは、かつて全地上を支配したラピュタの王家の復権と、「ラピュタ」の強大な力を利用して世界を征服すること。そのために様々な教養と知識を身に付けており、旧約聖書やラーマーヤナなどの古典に通じ、暗号解読も習得しました。射撃の腕にも長け、まさに完璧な彼の弱点を挙げるとすれば視力が弱いことで、度入りのサングラスをかけています。 大佐の地位も納得の万能っぷりですが、実はムスカの年齢は28歳!資料によって32歳説もあるものの、大佐は軍隊で6番目に高い階級で、一般的に大卒の40~45歳程度の人間が就く地位のため異例の大出世には違いありません。

ムスカの正体は「ラピュタ帝国」王家の末裔

ムスカの本名は、ロムスカ・パロ・ウル・“ラピュタ”。シータと同じ古代王家ラピュタの末裔であり、シータが本家筋なのに対し、ムスカは分家の扱いになります。 シータの本名「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」のウルは王を、トエルは「真」を意味しますが、ムスカの本名にトエルの方は含まれていません。パロは「偽」を意味するため、シータが正統な王位継承者だとわかります。 ムスカ側の先祖は本家とは別の道を選び、産業革命とともにゴンドアの谷を出た後、天空の城への帰還を望んでいました。その悲願を継いだムスカは、分家に伝わる古文書をもとに、存在すらも怪しいラピュタを探し続けていたのです。幼い少年はただ純粋に、真実かどうかもわからない伝承を信じ、ワクワクしながら解読していたのかもしれません。 果てのない夢をたった一人で追い続ける孤独が、彼を変えてしまったのでしょうか。 夢と希望に溢れた少年時代から、すべてを犠牲にして、利用して現在に至ったムスカの過去を思うと、どこか憎みきれないですね。

バルスによって崩壊したラピュタ、ムスカの最後とは?

『天空の城ラピュタ』の終盤、ムスカはラピュタの機能を掌握し、自らの正体を明かします。ラピュタの復活と王の即位を宣言するも、彼の最期はあっけなく訪れました。 ムスカの拘束から逃れたシータは、自分を追ってきたパズーと無事に再会。彼らは再びムスカに捕まり、殺されかけますが、紳士なムスカは2人に3分間の猶予を与えるのです。直後、シータとパズーは滅びの呪文「バルス!」を唱え、シータの持つ飛行石から強烈な光が放たれました。 光を直に目に浴びたムスカは、「目が、目が〜!」と悲鳴をあげながらロボットや城のがれきと共に空中へ投げ出され、海に沈んでいくのでした。一瞬ではありますが、画像の中心部に描かれた建物の右上あたりにムスカの姿が! ラピュタの存在を信じ続け、一族の悲願ために生涯を捧げたムスカ。夢破れて……ではなく、一時でも実現したからこそ、より残酷で切ない結末と言えるでしょう。夢のために生き、多くの命を犠牲にした男は生きて償うことも、劇的に退場することも許されませんでした。

ムスカの名言・名シーンを紹介

来たまえ、ぜひ見てもらいたいものがあるんだ

2回目にシータを拘束したシーンで、彼女にラピュタから落下してきた壊れたロボット兵を見せ、帝国の真実を語ろうとする際の名言。 「~たまえ」と紳士的な口調ではあるものの、まるで宝物を見せびらかそうとする子どものようで、残忍なイメージとのギャップを感じます。研究者気質というか、これまで得てきた知識を他人に自慢気に話してしまう、オタクっぽい一面もあるのかもしれません。

手荒なことはしたくないが、あの少年の運命は君が握っているんだよ

ラピュタ探索の指揮官であるモウロ将軍が、シータを拷問にかけようとしたのに対し、紳士的に暗号を聞き出そうとした時の名言。 「手荒なことは~」には同じ王家の末裔に向けた情や、後のために生かしておかなければならないという打算もあったのかもしれませんが、端的に言えば脅しです。素直に暗号を教えたとしても、パズーが無事に逃してもらえたかは怪しいですし、手段を選ばない狡かつさが透けて見えます。

読める、読めるぞ!

古文書の伝承にあった「黒い石」に刻まれたラピュタ語を、自身の手帳と照らし合わせながら読んでいき、解読できた時のムスカの名言。 ムスカが愛すべき悪役となった理由のひとつが、この子どもっぽさ。残酷で冷淡なキャラクターではあるものの、小さい頃から探し続けてきたラピュタに関わる事実を前にすると、童心に返ったかのようにテンションが上がってしまうのです。 上ずったような声も印象的で、ムスカがどれだけ興奮しているかが伝わってきます。

見ろ、人がゴミのようだ

ロボット兵の総攻撃で空中戦艦「ゴリアテ」を撃沈した際、味方だった将軍や部下たちが次々と落下するのを見て、興奮気味に言った名言。 ゲームに熱中する子どものように笑い、「素晴らしい!最高のショーだと思わんかね」とも叫んでおり、命を命と思わない冷酷非情さが全面に出ていました。このすぐ後に、平然と裏切り嘲笑ったかつての味方たちと同じ運命を辿るとも知らずに……。

3分間待ってやる

「バルス!」直前、パズーがシータの元に駆けつけた際に、「シータと2人きりで話がしたい」と言ったパズーに向けて放った名言。 このシーンについて、2001年に発売された絵コンテ集の注釈には「ムスカ、このスキ装弾する。実はもう弾丸がなかったのです」とあります。ムスカが突然優しくなったのではなく、不利な状況をスマートに切り抜けようとする、一種の駆け引きだったのです。 実戦経験の豊富さが伺えますし、どこまでも紳士然としたムスカを象徴していますね。

目が~!

シータとパズーが「バルス!」を唱え、飛行石のペンダントから発せられた光で目を潰されたムスカが叫んだ言葉。ムスカとしては劇中最後の台詞でもある名言です。 これまで余裕に溢れていたムスカが、最後の最後というところで余裕がなくなって、かなりオーバー気味のリアクションもとっていました。悪役の断末魔だと鑑みると、あまりかっこいい台詞ではありませんが、人間味が垣間見えます。 一方で、なぜか笑ってしまうという声も多く、ネット上でネタ扱いされる要因の一つです。

声優・寺田農(てらだみのる)の名演技によって、どこか憎めない人物像が完成

ジブリの愛されキャラ・ムスカの声を演じたのは、俳優、声優の寺田農(てらだみのる)。1961年、文学座研究所に一期生として入所し、舞台や映画などで活躍してきました。 その傍らナレーター業にも携わり始め、『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐役の声優として一躍有名になるとともに、寺田最大の当たり役に。特撮作品にも縁が深く、「ウルトラマン」シリーズ、「仮面ライダー」シリーズにも出演しています。 渋みと威厳のある声質は、普段は紳士的なムスカにぴったり!名言でも触れましたが、声が上ずったり、裏返ったりする演技からラピュタに対する興奮が伝わり、子どものように夢中で夢を追いかける人間味が感じられました。 台詞のインパクトはもちろん、特徴的な笑い方も含め寺田の名演があったからこそ、多くの人にモノマネされる名言が誕生したと言えます。もしも、別の声優がムスカを担当していたら、こんなに長く愛される人気キャラにならなかったかもしれません。

ムスカが愛される理由は、ずばり「ラピュタ」という夢を追い続けた男の悲哀

ジブリ作品において、改心することなく徹底的に悪を貫いたキャラクターである一方、時代を超えて愛され続けるムスカ大佐。 彼が愛され続ける理由は、「ラピュタを探し出し、王になる夢」に生涯を捧げながら、あまりに切なすぎる最期を迎えた悲哀だと思います。シータやパズーらの視点で観るからムスカは悪なのであって、彼からすれば滅んだ帝国と王家の復活を願い、先祖の悲願を遂げるためにたった一人で夢を叶えようとしただけなのです。 軍に協力するふりをして、汚い手段に手を染めながら、ラピュタを語る際の純粋さは失わない。その真剣さと純粋さが裏目に出たり、大事なところでツメが甘かったりと、憎めない“人間臭さ”があるのも視聴者の心を掴む理由なのでしょう。 そして、もはやネタ扱いされている彼の印象的な最期。悪役として、もっと華々しい最期を与えられていたら、こんなにも心に残るキャラになったでしょうか?自業自得とは言え、夢を追い続けた男があっけなく死んでいく姿は、切なすぎるものがありました。