2021年8月6日更新

『風立ちぬ』カプローニは実在の人物!「悪魔」と呼ばれる理由や名言を紹介

風立ちぬ

この記事ではジブリ映画『風立ちぬ』に登場する飛行機開発者・カプローニについて解説・考察します。カプローニは実在したイタリア航空産業のパイオニアです。今回は宮崎駿がカプローニを「悪魔」と呼んだ理由や彼の名言、ラストの意味を取り上げます。

『風立ちぬ』二郎の夢に出演するカプローニって誰?【ネタバレ注意】

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ジブリ映画『風立ちぬ』のカプローニは、主人公・堀越二郎の夢に子どものときから何度も出てくる口ひげが特徴のイタリア人です。 航空産業黎明期に活躍した技術者・企業家で、劇中では生き方に迷う二郎に厳しいアドバイスをします。 この記事は、このようなカプローニの人物像を徹底的に解説・考察します。特に宮崎駿が彼を「悪魔」と呼んだ理由映画の名言ラストの意味などを詳しく解説していきます。 ※この記事は『風立ちぬ』のネタバレを含みます。本編を未鑑賞の方は注意してください。

カプローニは実在の人物!?『風立ちぬ』登場のきっかけは宮崎駿

ジブリ映画『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎と同じく、カプローニも実在の航空機開発者をモデルにしています。 しかし、実際の2人は面識や交流があったわけではなく、堀越二郎がカプローニを特別尊敬していた様子もありません。 『風立ちぬ』でカプローニが二郎の夢にたびたび登場するのは、宮崎駿がカプローニに思い入れがあったからなのです。

カプローニの元ネタはジョヴァンニ・バッティスタ・カプローニ

風立ちぬ

実在したカプローニの本名はジョヴァンニ・バッティスタ・カプローニ、愛称「ジャンニ」です。 1886年に生まれ、ドイツとフランスで土木と電気工学を学んだカプローニは、1908年にミラノで飛行機を製造するカプローニ社を設立しました。 彼はイタリア航空産業のパイオニア的存在で、1913年、27歳の若さで「100人以上の旅客を運べる飛行機がもうすぐ作れるようになる」と語って人びとの度肝を抜きました。 このヴィジョンを実現するために彼が試作したのが、映画にも登場する9枚の主翼を持つ巨人機・カプローニCa.60です。

カプローニが出演したきっかけは『紅の豚』

紅の豚

このようなカプローニを宮崎駿監督が『風立ちぬ』に登場させたのには、実は面白いきっかけがありました。 ジブリ映画『紅の豚』を観て感銘を受けたカプローニのひ孫に当たる人が、1936年に発行されたカプローニ社の社史を宮崎駿にプレゼントしたのです。 この本にCa.60の図面や製造過程の写真なども掲載されており、宮崎はカプローニという人物に一層惹かれるようになったそうです。

カプローニは「悪魔」?

宮崎駿はカプローニの声優を務める野村萬斎に、「カプローニは二郎にとってのメフィストフェレスだ」と説明しています。 「メフィストフェレス」は、16世紀ドイツのファウスト伝説やそれを題材にした文学、芸術作品に登場することで有名な悪魔です。 伝説では、ファウストに召喚されたメフィストフェレスは、ファウストの現世における欲望を満たす代償に彼の魂をもらう契約を結びます。 20世紀前半の航空機の世界では、自分の設計した飛行機に乗って命を落としたパイロットや技術者が少なくありませんでした。航空機そのものが、人類に夢と希望ばかりでなく残酷な死をもたらす可能性を持った悪魔の技術と言えなくもありません。 宮崎駿はそのような危険を孕んだ夢に取り憑かれた人物としてカプローニを悪魔・メフィストフェレスにたとえた、と言えるのではないでしょうか。

堀越二郎とカプローニのラストシーンの意味

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映画のラスト、戦争で破壊された無数の飛行機の残骸の山を抜けた二郎は、風が吹く青い草原でカプローニと再会します。 カプローニは2人が初めて出会った夢の世界で二郎が作った飛行機を褒めましたが、二郎は自分の飛行機は1機も戻ってこなかったと打ちひしがれていました。そんな二郎に、夢の中に現れた菜穂子が「生きて」と励まします。 このシーンは最初、二郎、菜穂子、カプローニの3人とも死んでいて、天国でも地獄でもない煉獄にいる、という構想だったそうです。菜穂子のセリフは二郎を天国に誘う「来て」というものだったとか。 しかし、この設定では辻褄が合わなくなることに宮崎駿も気づいてこの案はボツに。菜穂子のセリフを「生きて」に変えて映画のキャッチフレーズ「生きねば」に沿うことにしたそうです。

心に響く!カプローニの名セリフを紹介

風立ちぬ

私は、ピラミッドのある世界を選んだ。君はどちらを選ぶね?

飛行機の設計についての考え方を二郎と語り合ったときのカプローニのセリフ。 失敗したとはいえ、100人の乗客を運ぶための巨大飛行艇を自分の会社で作ってしまったカプローニらしい、夢のある言葉です

創造的人生の持ち時間は10年だ。

どんな天才でも創造的な仕事に打ち込むことができるのは10年が限界。その後は方向転換したりペースダウンしたりしないと続かない、という意味でしょう。 映画の世界では、1990年代に『タイタニック』など傑作を送り出し続けたジェームズ・キャメロンも、21世紀に監督を務めたのドキュメンタリーを除くと『アバター』1本だけです。

美しいな、いい仕事だ。

二郎は夢のなかでカプローニに、「自分は美しい飛行機を作りたい」と語っていました。ラストシーンでその二郎が設計した零戦を見たカプローニは、その美しさを褒め称えます。 同じく航空機開発に携わる先輩技術者からの最大の賛辞と言えるセリフです。

声優を務めるのは狂言師・野村萬斎

カプローニの声優を務めた野村萬斎は、1966年生まれの狂言方和泉流の能楽師、俳優、演出家です。 野村萬斎は伝統芸能に限らず、テレビ、映画、舞台にと幅広く活躍しています。実写映画では2017年公開の『花戦さ』の初代池坊専好役が印象的でした。 テレビドラマでは、アガサ・クリスティ・ミステリーを三谷幸喜が脚色した『死との約束』での、エルキュール・ポワロ=勝呂武尊役が大好評。2021年までに3本製作されました。

カプローニの人物像を知れば『風立ちぬ』がもっと面白くなる!

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この記事では、ジブリ映画『風立ちぬ』に登場するカプローニについて、彼のプロフィールや名言、ラストシーンの意味などを考察しました。 自分の創設した会社で、自分のヴィジョンを実現するための飛行機を完成させたカプローニ。同じ技術者でも、大企業に勤務して顧客の要求を満たす飛行機しか完成させられなかった二郎とは対照的です。 この2人を夢のなかで対話させることで、二郎の生き方が浮き彫りになったのではないでしょうか。