2019年4月12日更新

『風立ちぬ』あらすじ・声優一覧 なぜ庵野秀明が起用されたのか?

風立ちぬ

大人の心を打つ宮崎駿の引退作『風立ちぬ』。深みを持ったキャラクターたちを振り返りながら、作品を彩った個性あふれる声優陣を紹介します。人間の葛藤を美しくリアルに描いた『風立ちぬ』の魅力を引き出した名キャストたちです。

目次

大人のジブリ『風立ちぬ』のキャラクター・声優キャストを紹介

2013年に公開されたジブリ映画『風立ちぬ』。実在した同名の人物をモデルにした主人公・堀越二郎の、飛行機に憧れ続けた半生が描かれています。従来のジブリ作品とは異なり、戦争や生死についてのテーマをリアルに扱った点で「大人のジブリ」とも評されました。 この作品においてもう1つ特徴的な点が、声優陣のキャスティングです。一度映画を観た人であれば印象に残っているのではないでしょうか。主人公・堀越二郎の声優を務めたのはアニメ監督や『シン・ゴジラ』の総監督として知られる庵野秀明(あんのひであき)です。その他にも、『風立ちぬ』の声優には、豪華俳優陣が集結しました。 今回は登場キャラクターを振り返りながら、それぞれを演じた個性的な声優陣を紹介していきます。

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『風立ちぬ』のあらすじをおさらい

航空機の設計者になるという、子どもの頃からの夢を叶えた主人公・堀越二郎。彼が歴史に残る戦闘機を設計するまでのストーリーが、大正から昭和の日本を舞台に描かれています。 作中では現実と、重要な局面において堀越が見る夢とが織り交ざっており、堀越の半生が生き生きと描かれながらもどこかファンタジックな雰囲気も漂っています。

主人公、堀越二郎の夢とその苦悩

幼い頃から憧れ続けた戦闘機を作るという夢をつかんだ堀越。一方でそれは戦争に加担してしまうということにもなります。堀越は、飛行機づくりへの情熱と戦争に対しての苦悩の狭間で葛藤するのです。 さらに、病気と闘う恋人の菜穂子との焦がれるような恋愛と、航空機の設計者という仕事のどちらを取るのか悩みぬいて、愛と夢の狭間でも彼の心は揺れ動きます。 『風立ちぬ』は夢を抱きながら生きていくことの難しさと素晴らしさ、生きる中での愛することの難しさと素晴らしさを、切なく激しく描いています。

キャラクター&声優キャスト一覧

キャラクター 日本語声優 外国語声優
堀越二郎 庵野秀明 ジョセフ・ゴードン=レヴィット
里見菜穂子 瀧本美織 エミリー・ブラント
本庄 西島秀俊 ジョン・クラシンスキー
黒川 西村まさ彦 マーティン・ショート
カストルプ スティーブン・アルパート ヴェルナー・ヘルツォーク
里見 風間杜夫 ウィリアム・H・メイシー
二郎の母 竹下景子  
堀越加代 志田未来 メイ・ホイットマン
服部 國村隼 マンディ・パティンキン
黒川夫人 大竹しのぶ ジェニファー・グレイ
カプローニ 野村萬斎 スタンリー・トゥッチ

堀越二郎/庵野秀明

主人公の堀越二郎は幼い頃から飛行機づくりに憧れ続けた人物。子どもの頃、夢の中でイタリアの高名な航空技術者、カプローニに出会ったのがきっかけで飛行機の設計者を志すようになります。のちにその夢を叶えた堀越は非凡な才能を開花させ、ゼロ戦などの飛行機を生み出しました。 そんな堀越の声優を務めたのは、庵野秀明です。『新世紀エヴァンゲリオン』の監督として知られている庵野ですが、本作で声優としての初主演を果たしました。その話し方からは不慣れな印象も受けますが、かえって素朴な魅力が引き出されているようにも思えます。

なぜ庵野秀明が主演声優に抜擢されたのか?

アニメ監督としては有名ながらも、声優としての経験はない庵野秀明が主演声優に抜擢されたのはなぜなのでしょうか。 もともと庵野は、ゼロ戦が飛ぶシーンの作画をしたいとスタジオジブリ側に申し入れていました。しかし、本作の監督を務めた宮崎駿は、作画スタッフとしてではなく主人公の声優として出演するよう彼に要請したのでした。 庵野は困惑したといいますが、度重なる宮崎からの依頼を受け出演を決めたとのことです。主演に庵野を抜擢した理由は、その声ではなく大きな存在感であったと宮崎監督は公開前のインタビューで語っています。また、佇まいが凛としており早口な堀越のイメージに庵野秀明がよく合っていたようです。

里見菜穂子/瀧本美織

堀越の恋人であり、のちに妻となるのがヒロインの菜穂子です。関東大震災の際に、たまたま同じ電車に乗り合わせた堀越に助けられたことから、彼に想いを寄せるようになりました。結核を患っており、作品終盤では病状が悪化しているような描写もありますが、仕事に熱中する堀越を気丈に支えています。

菜穂子を演じたのは女優の瀧本美織。2010年、NHKの連続テレビ小説『てっぱん』での主演で人気女優となりました。過去にガールズバンド「LAGOON」のボーカルとして活躍していただけあり、透明感のある声が印象的です。

本庄/西島秀俊

堀越の大学時代からの親友の本庄。日本の技術力の低さを憂う、向上心の強い人物である一方で、素直な堀越とは反対にややひねくれた一面も持っています。堀越と共に社会人となったのち、設計者として頭角を現し堀越とはライバル同士となりましたが、その後も堀越を支え続ける存在です。

本庄を演じたのが、人気俳優の西島秀俊です。テレビドラマから始まった「MOZU」シリーズや映画『散り椿』など話題作に多数出演しています。2018年のアニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』でも声優を務めており、落ち着きのある穏やかな声が魅力的です。

黒川/西村まさ彦

堀越の上司である黒川。気難しい性格で、入社したばかりの堀越にいきなり難度の高い設計を任せるなど、仕事に対して厳しい人物です。一方で、菜穂子の病のことを知りつつも、彼女と堀越の気持ちを汲んで仲人を務め、特別高等警察に目をつけられた堀越を匿うなど、愛情深い人物でもあります。

そんな黒川は俳優の西村まさ彦が演じました。「古畑任三郎」シリーズで知名度を高め、三谷幸喜作品をはじめとするコミカルな作品に出演することの多い俳優です。その反面で高い実力を誇る俳優でもあり、渋みのある役を演じることも増えてきています。

カストルプ/スティーブン・アルパート

カストルプは堀越と菜穂子と同時期に軽井沢に滞在していたドイツ人。ナチス・ドイツの台頭に愚痴をこぼし、世界で孤立した日本の将来を憂いています。堀越と菜穂子が互いの想いを知り、カップルとなった場にたまたま立ち会っていました。 謎のドイツ人、カストルプを演じたスティーブン・アルバートとは、以前スタジオジブリ海外事業部取締役部長を務めていた人物です。アルパートと宮崎監督は仕事を超えた友人であり、本国へ戻ってしまったアルパートへの感謝の気持ちを込めて、彼をモデルとしたカストルプが登場したのでした。

里見/風間杜夫

菜穂子の父親、里見。菜穂子との交際を申し入れる堀越に対し、当初は菜穂子の病気のために考え直すように諭していましたが、二人の想いの深さを知り交際を認めるようになりました。遠方から菜穂子のお見舞いに来る堀越を心配するなど、思慮深く思いやりのある父親として描かれています。

里見を演じたのは俳優の風間杜夫。ドラマ『ごめんね青春!』や『先に生まれただけの僕』など人気作に出演する風間ですが、落語家としての経験で培われたのでしょうか、あたたかみのあふれる語り口が魅力的です。

二郎の母/竹下景子

設計者としての仕事に打ち込む堀越を優しく見守る母親。そんな彼女は女優の竹下景子が演じました。大女優として知られる竹下は1984年から女優として活躍しており、若い頃から現在に至るまで、高い演技力とその知的な美しさが支持されています。 近年では2016年に公開された『聖の青春』にも出演しました。難病と闘いながら棋士として活躍する主人公を優しく支える母親という、本作と似た優しい役柄を演じています。

堀越加代/志田未来

堀越の妹である加代。幼い頃から堀越を「二兄(にいにい)」と呼んで慕っています。医学の道を志しますが父に反対され、堀越の口添えのおかげで医学生となりました。菜穂子とも仲が良く、仕事に熱中するあまり普段の菜穂子の様子を気にかけない堀越を叱責するなど、心優しく正義感の強い人物です。

加代を演じたのは女優の志田未来。幼少期からキャリアを積んでおり、『女王の教室』などの人気ドラマで子役時代からその実力を発揮していました。ジブリ作品への出演はこれが初めてではなく、2010年に『借りぐらしのアリエッティ』で声優初挑戦にして初主演を果たしています。

服部/國村隼

堀越が所属する設計課の課長の服部。堀越の実力を高く評価しており、新型戦闘機の開発チーフを彼に任せるなど大きな信頼を寄せています。また、社員たちが研究に熱くなっている姿を見て感動したり、仕事で失敗して失意する堀越を励まし休暇を与えたりと、情に篤い一面が見られます。

國村隼

演じたのは俳優の國村隼。2006年のNHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』での好演が人気のきっかけとなり、数々の映画、ドラマに出演するベテラン俳優です。近年ではドラマ『BORDER 贖罪』や映画「ちはやふる」シリーズなどに出演しているほか、海外作品への出演歴もある実力派です。

黒川夫人/大竹しのぶ

堀越の上司、黒川の妻である黒川夫人。堀越と菜穂子の結婚に真っ先に賛成し、菜穂子のために結婚式の衣装を準備するなど献身的な優しさを見せています。病が悪化し、弱っている姿を見せまいと病院へと戻っていく菜穂子の気持ちを慮り、連れ戻そうとする加代を止めた場面もありました。

黒川夫人を演じたのは大竹しのぶでした。かわいらしい雰囲気だけでなく圧倒的な演技力で長年映画産業を支えてきた名女優です。 2011年のドラマ『それでも、生きてゆく』で見せたような、様々な思いを抱えながらも逞しく生きる大人の女性を演じることの多い女優です。

カプロー二/野村萬斎

堀越が少年時代から憧れていた航空技術者、カプローニ。実在の人物、ジャンニ・カプローニをモデルとしています。 堀越はいつも重要な局面において夢でカプローニと出会います。その夢は設計者を目指すきっかけとなったり、当時の日本の技術では実現不可能と思われた飛行機を作るうえでの独自性の重要性を知ることとなったり、彼の人生に影響を与えてきました。

カプローニを演じたのは野村萬斎です。高い実力を持つ能楽師でありながら、独特の存在感を持った演技で俳優としても活躍しています。『のぼうの城』『七つの会議』などの映画で主演を務めたほか、『シン・ゴジラ』ではモーションキャプチャによるゴジラ役を務めました。

名作アニメ『風立ちぬ』は個性派声優陣によって彩られていた

史実を基にした戦争や家族の死など、従来のジブリ作品には見られないようなテーマを扱った『風立ちぬ』。公開当初から戦争の描き方や堀越のキャラクターなど賛否両論を呼んだ作品ではありましたが、同時に様々な感情を巻き起こす作品でもありました。 今回は、そんな「大人のジブリ作品」を彩った趣深いキャラクターたちと個性豊かな声優陣を紹介しました。誰が演じているのかを考えながら作品を見直してみると、今までには気付けなかった魅力が見えてくるかもしれません。