『すずめの戸締まり』ダイジンの正体を徹底考察!かわいそうな最後の意味とは?サダイジンとの関係・猫の由来も解説
『すずめの戸締まり』喋る白猫ダイジン
ダイジンは左側が黒く囲われた大きな目と、昔の大臣みたいなおひげが超キュートな猫。機嫌が良い時はふっくらとしていますが、傷ついたり落ち込むとげっそり痩せてしまいます。 優しくしてくれたすずめのことは好きなようですが、草太を椅子に変えてしまうなど、彼のことはあまり好きでないようです。日本各地で開く「後ろ戸」の近くに現れ、すずめたちを翻弄していきます。 名前の「ダイジン」は、各地で目撃した人たちがSNSに写真を投稿するうちに、上向きにカールしたヒゲが昔の大臣を思わせるとして、自然とついた名前です。 >ダイジンと似た黒猫ササイジンとは何者?
ダイジンはどこから来た?正体は何者?
ダイジンの正体はすずめが宮崎県で抜いてしまった要石。常世(あの世)と繋がる扉の近くに刺さり、「ミミズ」と呼ばれる災いを封じていたのでした。 要石になる以前ダイジンは閉じ師の人間で、2016年の熊本地震を止めるため要石になったのではないかと考察されています。詳しくは記事後半で!
【出会い】ダイジンは何がしたかった?なぜ逃げたのか
要石の役割から解放されたダイジンはその後、日本各地を逃げ回り、すずめたちを翻弄します。行く先々で「後ろ戸」が開き、すずめが扉を閉めて災いを封じると「すずめ すごーい」と感心したり、顔を合わせると「げんきー?」「あそぼう!」と声をかけたりと、無邪気な様子。 一方、「ムリ だいじんはもう かなめいしじゃない」と戻る気はまったくない模様です。いったいダイジンの目的は何だったのでしょうか?
①草太を次の要石とするため
東に逃げた1つ目の理由は、要石の役目から逃げて草太を次の要石にするためだと考えられます。 ダイジンはもともと普通の生き物でしたが、とある理由で要石にされてしまいました。しかし宮崎県ですずめに引き抜いてもらったことで、要石の役割から解放され自由の身になります。 ダイジンが完全に役割から逃れるためには、草太に要石の役目を引き継がせる必要がありました。だから閉じ師である草太たちを、後ろ戸が開く土地へ案内し、草太が次の要石となるまで見守っているのです。 その背景には「元要石」、もしかすると「元閉じ師」の責任感もあったかもしれません。
②大好きなすずめを助けるため
ずっと要石としてミミズを抑え続けてきたダイジンにとって、引き抜いて自由にしてくれたすずめは恩人。すずめがダイジンにご飯をあげ「うちの子になる?」と聞いたとき、ダイジンはとても嬉しそうに「すずめ やさしい すき」と答えています。 だからダイジンは大好きなすずめの力になりたくて、2人の旅をサポートしていたのではないでしょうか。もしかするとダイジンは、すずめが常世に入ったことがあることや、トラウマを抱えていることも最初から知っていたのかもしれません。 だから母が作ってくれた椅子を、次の要石にしたのかもしれません。すずめも最後には「もしかしてずっと導いてくれてたの?」とダイジンの優しさに気づいています。
【最後】ダイジンはなぜ再び要石になったのか考察
草太を新たな要石にして、自分は自由の身になろうとしたダイジン。日本各地を逃げ回りつつ、実は「後ろ戸」が開いた場所にすずめたちを導いていました。 しかし東京で草太が要石になったことで、すずめはダイジンに「大っ嫌い」と言い放ち、「どっか行って。二度と話しかけないで」と拒絶します。それを聞いたダイジンはすっかり落ち込み、げっそり痩せてしまいました。 その後、かつてすずめが通った岩手県の「後ろ戸」を見つけると、ようやくすずめの役に立てると元気を取り戻し、ともに常世に飛び込みます。常世ですずめが要石となった草太を引き抜くと、ダイジンは再び要石に戻ることを決意しました。 要石に戻るつもりのなかったダイジンはなぜ再び要石に戻ったのでしょうか?
①すずめはダイジンよりも草太が好きだと悟ったから
物語後半、草太がいなくなってからすずめはダイジンに暴言を吐くようになり、ダイジンはとても寂しそうでした。すずめには自分よりも草太が必要なのだと悟って、ダイジンは再び要石の役割を引き受けることにします。 そうしてすずめを「すずめが入れるただ1つの扉」に導き、サダイジンと2人(2匹)、ドライブに同行するのです。 ラストシーン「だいじんはね──すずめの子にはなれなかった」「すずめのてで もとにもどして」というセリフからは、すずめへの切ない思いと覚悟が読み取れました。
②サダイジンの説得で役割を思い出した
ドライブに途中から乗り込んだサダイジン。ダイジンはサダイジンに見つかったとき、反射的に逃げようとしていました。 それはダイジンが、役目から逃げたことに罪悪感を感じていたからではないでしょうか。だからサダイジンに見つかってもとに戻されることを恐れ、反抗したのではないでしょうか。 サダイジンはダイジンよりはるかに大きく、成熟している猫でした。ダイジンより古くから要石の役目を全うしてきた「要石の先輩」ではないかと考えられます。 そんなサダイジンに諭された事も、ダイジンが再び要石となる運命を引き受けた理由かもしれません。
突然現れたサダイジンは何者?ダイジンとの関係は?
宮城県へ向かう道中で現れ環さんに憑依した黒猫サダイジンは、皇居の地下深くにあった要石です。 要石とは、大震災を防ぐため日本の東西でミミズの頭と尾を封じる2つの石で、西の要石であったダイジンと対になる存在です。サダイジンは100年前、関東一帯に大災害を起こしたミミズを鎮めました。 サダイジンは草太の祖父である宗像羊郎とどうやら知り合いのよう。病室の窓から顔を出したときには、「お久しゅうございます」「あの子を頼みます」と挨拶されていました。
【考察】ダイジンが『すずめの戸締まり』で担った役割
環さんがすずめのドライブに合流するとき、サダイジンが憑依したように見えました。そして、環さんはすずめを「うちの子」にした愚痴や後悔をすずめにぶつけています。 サダイジンがそんな恐ろしい登場の仕方をしたのは、環さんとのわだかまりを解くことで「すずめを前に進ませるため」だと『新海誠本2』で語られています。 さらにもう1つ、「うちの子になる?」というセリフをすずめも環さんも発していることから、裏の意味の考察もされています。ダイジンは幼い頃のすずめと重なる存在なのです。 震災で親を失った幼いすずめに、環さんは「うちの子になろう」と言いました。その後自分の人生を投げ打ってすずめを大切に育ててきた彼女。しかしサダイジンに憑依されたとき、すずめに人生を捧げてきた後悔や怒りを爆発させてしまいます。 一方、すずめは無責任にダイジンを「うちの子になる?」と誘いながら、草太を要石にされてしまったこともあり、東京でダイジンを「大っ嫌い」と捨てました。幼いすずめとダイジンは無意識に、そして無邪気に環さんやすずめの大切なものを奪っていったのです。 しかし無責任なすずめとは対照的に、環さんは「うちの子」としてすずめを引き取り、自分の人生を投げ打って大切に育ててきました。すずめはそんな環さんに対してもぞんざいな対応をしています。これまでたくさんの命を守ってきたサダイジンだからこそ、命を背負う重みをすずめに伝えたかったのかもしれません。
【正体】猫なのになぜ喋る?要石になる前を考察
①人間の閉じ師説
ダイジンが要石になる前の正体について、映画でも原作小説でも具体的な説明はありません。 しかし「黄色い瞳に、人間めいた意志がある」と表現されていたり、言葉を話せたり、後ろ戸の開く場所や草太の運命(要石になる過程)を知っていたりすることから、元は草太のような人間だった可能性も……。 何よりダイジンは、すずめに抜いてもらったらすぐに逃げましたし、好きになったすずめの「うちの子」になることも望んでいます。 草太の祖父である宗像羊郎は、サダイジンに「お久しぶりです」と声をかけていました。 これらから考えると、望んで要石になったのではなく、元々は自由の身であり、草太のような“役割を背負わされた”人間なのかもしれません。 ちなみに、新海作品には「巫女」や「人柱(人身御供)」といった神話の犠牲になる存在がこれまでも度々登場してきました。今回のダイジンももしかすると同じ存在かもしれませんね。
熊本地震のときに刺された?
『すずめの戸締まり』ですずめが回った舞台はすべて、過去に大きな震災の被害にあった地域でした。中でも最初にダイジンが刺さっていた宮崎県は、2016年に熊本地震で被災した地域。 大きなミミズは要石を刺さなければ止められないと草太が言っていたので、ダイジンは熊本地震を抑えるために刺された要石なのかもしれません。そしてミミズを止めるのは閉じ師の仕事。熊本地震を止めようとした閉じ師が、自ら要石となった可能性はおおいにありそうです。 物語の舞台は2023年なので、そうなるとダイジンは7歳の要石だと言うことになります。実は声優を務めている山根あんも収録当時7歳でした(2022年11月現在は8歳)。
②猫・猫神説
ミミズから引き抜かれた瞬間に草太が人間に戻ったことから、引き抜かれた要石は元の姿をとるのだと考えれば、ダイジンは猫の姿に変わったので、要石になる前は猫だったのかもしれません。 しかし普通の猫にしては、ダイジンは色々と特殊能力を持ちすぎですよね。そこで「猫神」が要石になり地域を災害から守ったという考察もあります。 一部の地域では、古来から猫を、穀物をネズミから守ってくれる神として古来から祀っていたそう。ちなみにすずめの故郷である宮城県には、猫神社が10ヶ所もあるそうです。
ダイジンはもとは震災遺児だった?
ダイジンは「神」だったのでしょうか?普通の生き物だったのでしょうか? ヒントになるのは草太の祖父の発言、「草太はこれから何十年もかけ、神を宿した要石になっていく」というもの。つまりダイジンも、ただの生き物から時間をかけて「神」になっていったのです。 このことから、人間にせよ猫にせよ、ダイジンは「元々自由な意志を持っていたはずの普通の存在だった。しかし要石という役割を背負わされて、その身に神を宿すことになった」と考えることができます。 また『月刊ニュータイプ』2023年1月号では、作中に登場する古文書のなかに、ダイジンの過去が書かれたものがある可能性が高いとしています。嘉永7年にかつての西の要石災いに敗れたことで、「寅の大変」と呼ばれる大地震が発生。被災地の三輪山(現在の奈良県)の震災遺児が閉じ師に要石の役割を申し出て、「白き右大臣」と呼ばれる新たな要石なったという逸話が遺されています。 神になったダイジンは、再び自由になりたいという欲求に誘惑されながらも、最後まで役割への責任感を忘れず要石に戻っていったのではないでしょうか。
【元ネタ】ダイジン・サダイジンの名前の由来は?なぜ猫なのか?
要石が抜かれたのち、すずめたちのもとから逃げ出し、全国各地に出没していたダイジン。作中では、かわいい猫の見た目をしたダイジンの画像がSNSで多くアップされ、「白いおひげが昔の大臣みたい」と話題に。ダイジンという名前の由来になっていました。 ダイジンの明確なひとつの元ネタ・モデルは明らかになっていません。そこで以下では、 ①「ダイジン」という名前の由来 と②猫というモチーフになった訳 を考察していきます。
①「ダイジン」という名前の意味
- 大臣 (物事を方向づける重要な役割を担う)
- 大神 (偉大な力を持つ神聖な存在)
1.「大臣」
「ダイジン」という名前には2つの意味が込められています。1つ目は「大臣」という意味。力が強く大事な役割を担っているところから大臣という名前になったとパンフレットで説明されています。 しかし劇中でも言われている通り、なんだか少し偉そうで人間にすら見間違われるような威厳、言動、雰囲気も、「大臣」たる所以かもしれませんね。
2.「大神」
パンフレットで説明されているもう1つの意味は「大神」。人間の力を超えた偉大な存在・神であることを示しています。 劇中ではダイジンが立ち寄ったところ(民宿とスナック)は片っ端から賑っており、招き猫的な力も持っているようです。 しかし宗像羊郎が話していたように、要石というのはひとつの役割。もともと神でない存在が、長い時間をかけて神になっていったのです。 そう考えると大きな神と書いて「ダイジン」というのは切なく感じられます。
②「猫」の由来
- 『魔女の宅急便』の影響
- 猫が神聖な動物だから
- 魚(ナマズ)の天敵だから
- 監督が猫好きだから
1.『魔女の宅急便』の影響
『すずめの戸締まり』は『魔女の宅急便』に強い影響を受けています。すずめの成長物語を描く上で、旅のお供に猫を選んだのには、ジジの影響も強くあるかもしれません。
2.猫が神聖な動物だから
公式パンフレッドでも「古来から猫は異世界への案内役というイメージがあり」と記述されているように、猫はミステリアスな存在。それゆえこの不思議で神聖な旅の案内役に選ばれました。 日本には猫を祀る神社が存在し、古くから神あるいは神の使いとされてきました。 奈良時代から平安時代、遣唐使船に乗せられて渡来したとされる猫(イエネコ)。仏教の教典を狙うネズミを追い払う目的で重宝されたようです。日本人の間でも、穀物や蚕、書物などをネズミの害から守る守り神として、富や豊かさの象徴として信仰を集めました。
3.猫が魚(ナマズ)の天敵だから
地震を起こす敵・ミミズや要石の元ネタとして、古来から日本では鯰(ナマズ)が地震を起こしていると考えられてきたという話があります。実際に安政の大地震後には、「鯰絵」という地震から身を守るお守りが流行しました。 また茨城県の鹿島神社には実際に要石があって、石が鯰の頭と尾を押さえているという俗信もあります。 要石を猫として描いたのは、猫が鯰(というより魚類全般)を捕食する天敵だからではないでしょうか。
4.監督が猫好きだから
今年の4月に、ご縁があって保護猫を2匹もらいうけました。『すずめの戸締まり』を作っている最中なので、スズメ(右)とツバメ(左)と名付けました。今は写真よりもすっかり大きくなりましたが、『すずめ』制作も猫たちの成長に負けないように進めていきたいなー。 pic.twitter.com/Zo5Njf5kQV
— 新海誠 (@shinkaimakoto) December 16, 2021
新海監督は大の猫好きでTwitterのアイコンも猫。自主制作時代の『彼女と彼女の猫』をはじめ、彼の作品にはたびたび猫が登場しています。実際に猫を飼っており、本作を制作中の2022年4月、新たに引き取った2匹の保護猫に「すずめ」と「つばめ」と名付けました。
【声優】8歳の子役・山根あん
【山根あん】情報解禁‼︎#新海誠監督 最新作 映画「すずめの戸締まり」#山根あん:ダイジン役で声の出演!!
— テアトルアカデミー (@theatreacademy) October 26, 2022
11月11日(金)全国ロードショー????
公開をお楽しみに!#すずめの戸締まり #ダイジン pic.twitter.com/0jyZWbhCM2
『すずめの戸締まり』喋る猫ダイジンの声優を務めるのは、子役の山根あんです。 テアトルアカデミーで本格デビューに向けてレッスンを受けている最中だという山根。ドラマや映画への出演経験はなく、CMやローカルチャンネルの子ども番組で活動してきました。 ダイジンというミステリアスな存在をどう演じるのか楽しみです!
『すずめの戸締まり』ダイジンの正体は要石の役割を背負った切ない猫
『すずめの戸締まり』でストーリーの鍵を握る白猫「ダイジン」を紹介しました。 優しくしてくれたすずめのために、要石の役割を全うしたダイジン。すずめのそばにいたいという思いよりも、すずめのために草太をもとに戻す手伝いをして、自分は要石に戻るという、なんとも切ない存在でした。 最後まで謎だらけの存在でしたが、その愛らしさの虜になった人は多いはず!次の要石が見つかって、ダイジンにも早く幸せが訪れることを願いましょう!