2025年2月19日更新

ジブリ映画『ゲド戦記』はひどいのか?よくわからないと言われる理由・「原作者激怒」の真相

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ジブリ公式画像 ゲド戦記

数あるジブリ作品のなかでも、酷評を受けている『ゲド戦記』。宮崎駿の息子である宮崎吾朗が初めてメガホンをとった本作は、原作からの改変も多く、ジブリファンからも厳しい評価を受ける事態になってしまいました。 この記事では、『ゲド戦記』のどこが批判されているのか、まとめて見ていきます。

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ジブリ映画『ゲド戦記』がひどいと言われる理由

ジブリ公式画像 ゲド戦記
製作年 2006年
原作 アーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記』
監督 宮崎吾朗

『ゲド戦記』は、アーシュラ・K・ル=グウィンの小説をもとに、宮崎吾朗がメガホンをとったアニメ映画です。 しかし、一部では原作改変がひどい、あらすじがよくわからない、キャラの心情がわかりにくいなど、批判的な意見も垣間見られます。 公開当時は『もののけ姫』(1997年)や『ハウルの動く城』(2004年)などで、すでに宮崎駿が世界的に高く評価されているタイミングだったため、その息子・宮崎吾朗のデビュー作ということで注目が集まりました。 しかし良くも悪くも注目されるなかで、父の作品と比較されてしまう傾向が強く現れ、厳しい評価を下されることにもなってしまったのです。

映画『ゲド戦記』は原作改変がひどい?

ジブリ公式画像 ゲド戦記
主人公 原作:ゲド(ハイタカ)→映画:アレン
アレンの剣の入手方法 原作:父王から継承→映画:父王を殺して強奪
ゲドとの出会い方 原作:ゲドに会いに行く→映画:放浪中に偶然出会う
物語の舞台 原作:世界中を旅する→映画:ホート・タウン
アレンとテルーの関係 原作:1回り以上歳が離れている、信頼関係→映画:同年代、恋愛関係

『ゲド戦記』の原作は、全6巻ある長編小説です。映画はその3巻にあたる「さいはての島へ」という物語がベースになっています。 そもそも原作は「“ゲド”戦記」というくらいですから、主人公はゲドという魔法使いで、彼が長い旅のなかで成長していく物語が描かれています。ゲドは「ハイタカ」という通り名で映画にも登場しますが、そのキャラクターもかなり変更されているのです。 長い物語のなかの途中のエピソードだけを抜き出し、主人公も変更した物語になっているので、原作ファンから反発があったのも無理はないかもしれません。 原作ファンにとっては、物語の根幹にかかわる部分が大きく変更されていることで、否定的な感想を持った人もいたのではないでしょうか。

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映画『ゲド戦記』はあらすじがよくわからない?

ゲド戦記

映画『ゲド戦記』は、先述のとおり第3巻「さいはての島へ」の物語を基本としています。しかし第1巻「影との戦い」の要素も取り入れているのも、ストーリー上外せないポイントです。こちらも原作ではゲドの彼の「影」との戦いと和解が描かれていますが、映画ではアレンの「影」との戦いが描かれ、「影」の正体は映画オリジナル要素となっています。 また映画は小説のほかに、宮崎駿の絵物語『シュナの旅』を原案として採用しており、キャラクターのイメージのもとになっています。 こうした原作のぶつ切り感と、別の「原案」との融合によって、物語のあらすじがわかりにくくなっているのではないでしょうか。バラバラの要素を1つのストーリーに盛り込んだことで、物語が混乱しているように見えます。 ストーリーが支離滅裂で意味不明と言われる理由は、ここにあるのかもしれません。

映画『ゲド戦記』はキャラに深みがなくてひどい?

ジブリ公式画像 ゲド戦記

『ゲド戦記』の主人公であるアレンは、常に受け身の態度だという指摘があります。彼は父を殺して国から逃げた後、偶然ハイタカに出会います。クモに襲われた後はテルーに命を救われました。さらにクモとの最終決戦では、竜に変身したテルーがクモを倒します。アレンが活躍したシーンは、あまりないと言わざるをえません。 また、ジブリ作品の悪役は『天空の城ラピュタ』のムスカやドーラ、『千と千尋の神隠し』 の湯婆婆やカオナシのように、単純に悪役とも言い切れない、魅力のあるキャラクターが多数います。しかし本作の悪役であるクモは悪事の動機は単純、見た目も不気味で愛嬌がなく、魅力を感じられないという声も多く聞かれます。 キャラクターの魅力は作品の良さを大きく左右するものなので、この点が弱いのは厳しいところですね。

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映画『ゲド戦記』に原作者が激怒?真相を解説

映画公開後、ル=グウィン氏は日本のファンからの質問に答えるかたちで公式ホームページに映画『ゲド戦記』の感想を記しました。 ル=グウィン氏は「本の著者に“どうしてあの映画は……”と質問してもむだです。著者も“どうして?”と思っているのですから」と失望をあらわにしています。「全体としては美しい映画です」としながらも、ジブリのほかの作品のような細密な正確さも、豊かなディテールもないとし、登場人物たちによる暴力も原作の精神に大きく背くものだと指摘しています。 さらにストーリーの統一性と一貫性のなさ、全体的な説教臭さ、「父殺し」の意味不明さ、物語の結末が単純すぎると批判しています。 ル=グウィン氏は原作と映画は違うことは承知しているとしながらも、「同じ名前を冠した40年にもわたって刊行のつづいている本を原作と称するからには、その登場人物や物語にある程度の忠実さを期待するのは当然ではないでしょうか」と記しています。

映画『ゲド戦記』がひどいかはあなたの目で確かめて

さまざまな批評がある『ゲド戦記』ですが、均衡が崩れた世界を少年が周囲の助けを得ながら救う物語は、コロナ禍を経た今の時代にこそ味わい深いものがあるのではないでしょうか。 観たことがない人はもちろん、すでに観たという人も、新たな視点で自分の目で確かめてみると面白いかもしれません。