『もののけ姫』のシシ神とは何だったのか?

2017年7月6日更新

ジブリ作品の中でも人間と動物の共存、人間同士の醜い争いなどを描いたシリアスな物語として話題となった『もののけ姫』ですが、人間の知り得ない「シン神」という存在が登場します。今回はこの「シン神」のヴェールに包まれた部分を考察します。

シシとは何か?

シシという言葉の音だけを聞くと、「獅子」を連想してしまいますがここでのシシとは一体どんなものを指すのでしょうか?

そのヒントとなるフレーズは、意外な人物からアシタカに投げかけられます。ジコ坊の一言「東の果てにアカシシにまたがり石の矢じりを使う」という表現です。これはアシタカの姿を見て、古い書に伝わる古の民を思い出したということから発せられる言葉でした。

アカシシにまたがり…ということは、アカシシが馬のように人間が跨ることのできる動物であると想像がつきます。

アカシシとはどんな動物だろうか?

アカシシ自体は、今は絶滅した偶蹄類(ぐうているい)の仲間ということになります。偶蹄類(ぐうているい)とは、牛やイノシシ、キリンなどを含みます。

この作品の中で指すシシとは、大きな角を持つヤックルという鹿のような生き物を言っているようです。鹿は、かのししと呼ばれることもあり、ここで使われるアカシシとは赤い体をした鹿とも取ることができます。そして、ここまでの考察からシシ神の姿がアカシシと呼ばれるものに非常に近いことは推測できるでしょう。

シシ神の存在と役割

『もののけ姫』サン・アシタカ・シシガミ

シシ神は、鹿、猫、ヤギ、イノシシ、カモシカ、犬、鳥などの特徴を掛け合わせたような姿をしています。表情は人間に近いようにも思えます。人間も含めた動物を司っていることを示しているのでしょう。

首には不老不死の力があると信じられていて、夜は半透明の体をしたデイダラボッチの姿になります。

神と崇められている絶対的な存在ですので、自然界を司る役割を果たしています。『もののけ姫』の中では、人間と動物やもののけと呼ばれるものたちとの共存が大きなテーマとなっています。そして、人間や動植物などの命を持つものが生きる世界の神が、シシ神ということになるのでしょう。

シシ神はなぜ神であるのにシシの姿なのか?

シシとは人間界では、人の食料にもなるものです。しかし、人間が生き延びるために、獣たちを殺していいかと言えば、一概にそれが正しいとは言い切れません。実際、現代はそのように人間のエゴだけで絶滅の危機に陥った生き物がたくさんいます。

そして、殺して食べるということだけを指しているのだけではなく、人間たちが自然を壊すことによっていなくなった生き物たちも少なくありません。

シシ神とは何だったのか?

シシ神とは、そのような人間たちと自然の共存のバランスを保つためにいる存在であり、バランスを崩すものを厳しく罰し、罪を悔い改めさせる役割を果たします。人間に食われることを前提としての存在、アカシシの姿を借りてそのことを訴えているのではないでしょうか。

人間だけを罰するのではない

シシ神は作品の中で、人間だけの命を奪い罰しているわけではありません。自然界に生きる、乙事主(おっことぬし)は森とシシ神を人間から守ろうとしているにも関わらず、その命を奪われました。

このことから、シシ神はもののけ達や自然界を守るだけの神というわけではなく、生きるものすべてに対しての神であるということがわかります。

シシ神に関して、明確な答えは本編内では語られず、観た人にゆだねられる形になっています。謎を含んだ不思議な存在であることが、今なお私たちを惹きつけているのかもしれません。