2022年10月17日更新

新海誠が手がけてきた映画作品を一挙紹介!『君の名は。』を手がけるまでの軌跡を振り返ろう

このページにはプロモーションが含まれています

AD

ノスタルジーと切なさを演出!天才監督・新海誠が手がけた作品一覧

新海誠といえば、アニメファンでは知らないものがいない人物です。 2002年に公開された『ほしのこえ』では監督から脚本、美術、演出、作画、編集、声優までを担当し、ほとんどひとりで映画を製作。同作は数々の賞を受賞し、個人制作のアニメーションとしては他に類を見ないと多くのアニメファンをうならせました。 2004年に発表した『雲のむこう、約束の場所』では、同年公開の『ハウルの動く城』をおさえ、毎日映画コンクールアニメーション映画賞を受賞します。 新海誠の評価を不動のものにしたのが、2007年公開の『秒速5センチメートル』。 洗練された映像美でノスタルジーを鮮やかに描き出した本作は半年に及ぶロングランを記録し、アジアパシフィック映画祭で最優秀アニメ賞、イタリアのフィーチャーフィルム映画祭でランチア・プラチナグランプリを受賞します。 その後も新海誠は2011年『星を追う子ども』、2013年『言の葉の庭』と作品をコンスタントに発表しています。

\新海誠のアニメーション作品を全作動画で観る方法はこちら!/

新海誠作品の特徴を解説!

切なくて泣ける映画ばかり

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

新海誠作品は感動を誘う映画ばかりで、「何度観ても泣ける」という人が多いです。その理由は、切なすぎる恋物語にあります。誰もが1度は経験するような切ない日々を切り取り、最後にはハッピーエンドとはいえない結末を迎えるのです。 しかし決してバッドエンドではない、というのも魅力。新海誠自身もインタビューで「バッドエンド作品を作ったことはない」と語っていました。 胸が苦しくなるけれど、暖かくもなる、なんともいえない切なさがあります。そしてそんな切なさを、透明感のある美しい映像で繊細に描写することにより、とにかく心を動かされる「泣ける作品」になっているのです。

AD

すれ違う男女の関係を描いている

新海誠作品の多くは、すれ違う男女の関係を描いています。 会いたいのに会えない、そこにあるのに気付けない、追いかけても追いつけない、伝えたいのに伝わらない、などといったもどかしくすれ違う関係。でもそれは見ていてイライラするようなものでなく、それが必然で運命なのだ、と思わせるような描き方です。 現実の世界には叶わない恋の方が多いですが、それでも人は前を向いて人生を歩んで行きます。だからこそどんな恋も叶うようなファンタジーではなく、「すれ違う運命の先の希望」に溢れた新海誠作品に魅了されるのかもしれません。

日本の古典がテーマに

中央大学文学部出身である彼の作品の背景には、いつも日本の古典文学があります。 例えば、『君の名は。』は、男女が入れ替わる「とりかへばや物語」や、小野小町の和歌「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」(訳:あの人のことを思いながら眠りについたから夢に出てきたのであろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかったものを)から着想を得たといいます。 ほかにも『星を追う子ども』(2011年)には古事記、『言の葉の庭』(2013年)には万葉集など、日本の古典の要素が取り入れられてきました。 新海誠曰く、日本の古典には人々を楽しませる物語のパターンやヒントが隠れているのだそうです。

AD

新海誠による圧倒的な世界観のアニメーション映画

全作で共通する魅力を持つ新海誠作品ですが、もちろんひとつひとつの作品にもそれぞれの魅力があります。毎回特徴的なモチーフや魅力的な登場人物、印象的なセリフが登場し、壮大で繊細な物語が紡がれていくのです。 ここからは、新海誠監督によるアニメ映画のあらすじや評判を紹介していきます。

『ほしのこえ -The Voices of a Distant Star-』(2002年)

脚本から作画、美術、編集までほとんど1人で担当して作り上げた、新海誠初の劇場公開作品です。 異生命体に抗うため集められた隊員に選抜された中学生の長峰美加子。クラスメイトの寺尾昇とお互いに淡い恋心を抱いていましたが、美加子は翌年、宇宙へ旅立ちます。 ふたりは携帯電話のメールで連絡を取り合いますが、距離が開くにつれてメールが届くまでにかかる時間が長くなっていきます。地上の昇はもどかしい気持ちを募らせながら、美加子の帰りを待つのですが……。 個人制作とは思えないクオリティで高く評価され、第1回新世紀東京国際アニメフェア21 公募部門優秀賞など複数の賞を受賞しました。

『雲のむこう、約束の場所』(2004年)

新海誠の劇場公開作品としては2作目の作品です。 舞台は日本が南北に分断された、もうひとつの戦後の世界。米軍統治下の青森で、中学生の藤沢浩紀と白川拓也は同級生の佐由理に憧れています。ふたりは津軽海峡に走る国境線を小型飛行機で飛び越え、北海道に見える巨大な塔へ飛ぶ約束をしていました。 しかし約束は果たされぬまま彼らは別々の道へ。3年後、浩紀はたまたま佐由理が原因不明の病によって眠り続けたままなのだということを知り……。 果たされなかった約束と「青春の喪失と再生」を描く作品。過去作を上回る作画の美しさと劇中音楽が高い評価を得ました。

AD

『秒速5センチメートル』(2007年)

『秒速5センチメートル』
(C)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

新海誠の評価を不動のものにしたヒット作です。前作までのSF映画から一変、現実の世界の1990年代前半ごろの東京の小学校を舞台に、物語はスタートします。 お互いに恋心を抱く遠野貴樹と篠原明里は、小学校の卒業と同時に引っ越しで離ればなれになってしまいました。手紙のやりとりをしていましたが、貴樹がさらに遠く鹿児島へ引っ越すことになり、その前に2人で会うことにします。 顔を合わせる最後の機会を予感する中、再開を邪魔するように大雪が降り……。 貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」、そして彼らの過去と現在が重なる表題作「秒速5センチメートル」という、3本の連作短編アニメーション作品です。

『星を追う子ども』(2011年)

山に囲まれた田舎に住む明日菜と、仲良しの動物(ミミ)が繰り広げるSFファンタジー作品。物語は主人公の明日菜がいつも遊ぶ秘密基地から始まります。 ある時、いつもの秘密基地へ行こうとした明日菜は、見たことのない怪獣に襲われ、シュンという少年に助けられるのです。 シュンは「アガルタ」と呼ばれる世界から来たといい明日菜と仲良くなりますが、後に遺体で発見されることになります。実はシュンは地上人ではなく地底の世界の住人でした。 真実を知った明日菜は、シュンの弟であるシンを捜しに地底の世界へ旅立ちます…….。

AD

『言の葉の庭』(2013年)

『言の葉の庭』
(C)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

新海誠監督5作目の劇場公開作品となったアニメーション映画です。 靴職人を目指す高校生の秋月孝雄は、雨の日は授業をサボって公園の日本庭園で靴のデザインを考えていました。ある日、孝雄はそこで昼間から缶ビールを飲む謎の大人の女性・雪野百香里に出会います。 彼女は万葉集の短歌「鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか きみを留めむ」をつぶやき、去っていくのでした。その後も2人は約束もないまま雨の日だけ会うようになり、心を通わせていきますが……。 万葉集の引用と雨の表現が印象的な作品。海外からも「史上最も美しい雨のアニメ」として称賛されました。

『君の名は。』(2016年)

『君の名は。』
(C)2016「君の名は。」製作委員会

新海誠待望の最新作『君の名は。』は公開当初から大ヒットを記録し世界中から大きな反響を呼びました。 東京に住む少年と田舎に住む少女が、それぞれお互いの夢を観ることから物語は始まります。夢に隠された秘密とは?名も知らぬ相手へのほのかでロマンティックな恋心を、新海誠が圧倒的な映像美で描き出します。 主題歌を含め、音楽を担当したのはRADWIMPS。メインキャラクターふたりの声優には神木隆之介、上白石萌音を迎え、これまでの新海作品で最もメジャー志向で大成功した作品といえます。

『天気の子』(2019年)

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

『君の名は。』の大ヒットを受けて時代の寵児となった新海誠による、7作目の劇場用アニメーション映画。3年の製作期間を経て公開となりました。 プロデューサー川村元気、キャラクターデザイン田中将賀、そして音楽RADWIMPSと前作と同じ布陣で製作されています。 家出して離島から東京にやってきた少年・森嶋帆高は、フェリーで知り合ったライターの元を尋ね、彼のもとで働き始めます。帆高はある事件で不思議な力を持つ天野陽菜と言う少女に出会うのです。彼女は祈るだけで晴れにできる「晴れ女」の力を持っていました。 彼のアニメ表現の魅力のひとつに美しい空の描写がありますが、本作はまさにその魅力を活かした「天気」がテーマ。 結末に対しては賛否両論でしたが、『君の名は。』で観られた映像と音楽の融合は健在。特にRADWIMPSの「愛にできることはまだあるかい」が流れるシーンの衝撃は凄まじいものがあります。

AD

『すずめの戸締まり』(2022年)

『天気の子』以降、約3年ぶりとなる新海誠の最新作は『すずめの戸締まり』。 日本各地の廃墟を舞台に、17歳の少女・すずめが“災いのもととなる扉”を閉めていくという開放と成長の冒険譚に仕上がっているとのこと。 2022年11月11日公開予定です。

ゲーム会社に勤めていた頃から手がけていた短編作品

ここからは新海誠が手がけた短編作品のあらすじなどを紹介します。 新海誠はゲーム会社に勤めていた頃から自主制作で短編アニメ作品を作り続けており、長編映画が上映されて話題になってからもたびたび短編を手がけています。 どれも短いながら、心を打たれる感動的な作品ばかりです。昔の作品を見てみると、当時から繊細な心理描写やノスタルジックな表現は変わらないことがわかります。

『遠い世界 OTHER WORLDS』(1999年)

新海誠が初めて製作した、自主作成の短編アニメーションです。1997年に約2週間で最初のバージョンを製作し、いくつかの変更を経て完成。eAT'98にて特別賞を受賞しました。 終始モノクロで、エリック・サティ作曲の「ジムノペディ」にのせた、1分半ほどの映像。セリフは全て文字で映像内に表示されています。 「そら とびたい?」という言葉から、短い物語は始まります。無機質な都会の風景、駅のホーム、人の少ない電車内、自由に空を飛ぶ鳥。世界は綺麗だけれど受け入れられないという女性は、遠い世界、他の世界へ行こうとしているようです。 当時はタブレットなどのツールがなかったためルーズリーフにイラストを描いていたそうで、カットによってはルーズリーフの横線が出ているのも味があります。

AD

『彼女と彼女の猫』(1999年)

1999年の初夏から初冬にかけて、新海誠がゲーム会社に勤めながら作ったという自主制作作品です。音楽は、その後長く新海誠作品を手掛ける天門が担当しています。 内容は、黒猫のチョビ目線で描かれる、5分弱のモノクロアニメーション。主役の黒猫チョビの声は、新海誠が自ら担当しています。 都会で一人暮らしをする女性に偶然彼女に拾われた1匹の猫。これといったストーリーはなく、猫目線なので女性の身に起きていることや彼女の感情はわかりません。しかしチョビは彼女のことをとてもよく見ていて、愛していることが伝わります。 日常にある暖かさや寂しさ、辛さと言った感情が映像と音で巧みに表現されているのが特徴です。2016年には、この作品をもとにしたテレビアニメが放送されています。

『笑顔』(2003年)

2003年1月から3月にかけて制作された作品で、4月からはNHK「みんなのうた」で放送されたアニメーションです。 病で失明した音楽家・永田雅紹作詞作曲の楽曲『笑顔』を、1975年にアイドルとしてデビューしたベテラン・岩崎宏美が歌唱しています。 新海誠による映像は、画面手前で女の子とハムスターが曲に合わせてリズムをとり、その後ろで、歌詞とリンクしたストーリー性のある女の子とハムスターの暮らしが映し出されているというもの。 「ハムスターは1日何キロも回し車を走るけど、立ち止まるたびに今日はどこまで来たんだろうと思いを馳せるの」という友人の言葉を聞いたのをきっかけに、このアニメーションにハムスターを登場させることにしたそうです。 辛いことがあっても、愛を持って前向きに生きていこうという歌のメッセージが、可愛らしいキャラクターと繊細な心理描写で表現されています。

AD

『猫の集会』(2007年)

2007年にNHKの短編テレビアニメ「アニ*クリ15」で放送された約1分間のアニメーション作品。「アニ*クリ15」は、15人のアニメーション監督がそれぞれ自由に1分の作品を手がけるというオムニバス形式の番組です。 4人家族に飼われている猫のチョビは、今日もしっぽを踏まれます。はじめは許していたチョビも、度重なる人間たちの無神経な振る舞いに、我慢の限界に。飼い猫仲間と猫の集会をひらいて人間への復讐計画を練りますが……。 新海誠は、原作・脚本・監督・撮影などを担当。素朴な雰囲気の映像で、猫を主人公にコミカルな展開を見せてくれます。普段あまりアニメーションを見ないような人にも気楽に楽しんでもらえるような作品を目指して作ったそうです。

『だれかのまなざし』(2013年)

2013年2月に行われた野村不動産グループによるイベント「プラウドボックス感謝祭」での公開のために制作された、約6分40秒間のショートムービーです。その後、映画『言の葉の庭』と同時上映されました。 「未来」「家族の絆」というテーマをもとに、就職を機に一人暮らしを始めた社会人2年生の岡村アヤの成長と、その家族・猫のミーさんの物語を描いています。 新海誠作品の中で1番泣けるという人も多い感動的な作品。新海誠が歌声に惚れ込んで抜擢したという、歌手の和紗が歌う主題歌も話題となりました。

AD

【考察】新海誠作品の世界観はつながっているの?

『天気の子』
(C)2019「天気の子」製作委員会

新海誠作品は、過去作のキャラクターが次回作に出演することが多いため、作品が繋がっている、もしくは世界線が同じであると考察されることが多々あります。 例えば、映画『君の名は。』にはその前作『言の葉の庭』のヒロイン・雪野百香里が、『天気の子』には、前作『君の名は。』の主人公・立花瀧とヒロイン・三葉、三葉の同級生や妹までが登場するのです。 また『天気の子』劇中で立花瀧の祖母・冨美が登場しますが、冨美の右手には組紐のブレスレットが付いています。新海誠監督は、このブレスレットは三葉に作ってもらった可能性があると言っていました。 こんな風に、『君の名は。』内では描かれなかったキャラ達のその後を少しだけ見ることができるのです。 ただし作品間の世界線に矛盾があることも多く、『天気の子』と『君の名は。』が繋がっているとすると、時間軸を考えると瀧と三葉が四谷の階段で再会できない可能性があることや、2022年4月の東京の天気などが矛盾しています。 繋がっているのか、もしくは新海誠の遊び心やファンへのサービスなのかもしれませんね。

新海誠作品の美しさと切なさに酔いしれる!今後の映画にも期待大

卓越した映像美と切ないストーリーに泣ける新海誠作品。天才監督の生み出す世界に夢中になっている人も多いことでしょう。 この記事ではこれまでの作品に共通する魅力と、『君の名は。』を手がけるまでの軌跡に迫りました。今後も想像を超えるアニメーションの世界を魅せてくれることでしょう。これからの新海誠作品からも目が離せません!