2023年6月23日更新

『風の谷のナウシカ』巨神兵は神か兵器か?その正体やなぜ腐ったのかを徹底解説

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『風の谷のナウシカ』

宮崎駿監督による名作アニメ『風の谷のナウシカ』に登場する最終兵器「巨神兵」。映画版ではただ巨体の恐ろしい兵器として描かれていますが、その正体は原作漫画で詳しく語られていました。 この記事では、巨神兵の概要やその正体と真の目的など、映画版と原作漫画を比較して詳しく解説していきます。 ※記事には『風の谷のナウシカ』の原作・映画の重要なネタバレを含みます。

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『風の谷のナウシカ』巨神兵の概要

名前 巨神兵(きょしんへい)
正体 人工生命体の兵器 , 紛争の調停・裁定者
キャラクター デザイン 庵野秀明

巨神兵ははるか昔に突然出現し、「火の七日間」と呼ばれる最終戦争で世界の大半を焼き尽くしたと伝えられている巨大な人工生命体です。 映画では工房都市「ペジテ市」の地下で巨神兵の胎児が発見され、その情報を掴んだトルメキア王国がペジテへ侵攻し、巨神兵の繭を強奪。ところが本国へ輸送中に船が風の谷付近に墜落してしまい、クシャナ率いるトルメキア軍は風の谷をも占領します。 冒頭で描かれる伝承の回想シーンに登場する巨神兵の群れと、終盤に復活する1体の巨神兵の凄まじい姿は、登場する時間こそ少ないものの強烈な印象を残しました。

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映画での巨神兵はどういう存在?

『風の谷のナウシカ』クシャナ

映画版に登場する巨神兵は、ペジテ市で発見された個体で未成熟なもの。ペジテ市の者たちが取り戻そうとして王蟲の大群を風の谷に向かわせたため、それを止めるためにクシャナがなぎ払うよう命令します。 しかしまだ自立歩行すらできないほど不完全な状態で、1発目のプロトンビームは威力を発揮しますが、2発目は自身の腐敗が進んでいたため効果がありませんでした。その際体内で大爆発を起こし、巨神兵の肉体は完全に腐り落ちてしまいます。 プロトンビームとは、巨神兵が口から発射する陽子弾のこと。完全体であれば、彼方の山も吹き飛ばすほどの威力を持つとされています。当初クシャナは巨神兵を利用して、腐海を焼き払う目的で行動していました。

腐り落ちながらビームを発する
異様な姿の巨神兵を

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巨神兵の本当の正体とは

映画版では「火の七日間」で群れを成して歩く、光る槍を持った茶色い人型の姿か、ペジテ市の未成熟な個体しか登場していません。しかし原作では完全体の個体として登場しています。 原作では化石化した遺構の存在が描かれ、そこには人が操縦するような巨大人型ロボットと思われる描写も。巨神兵は遺伝子工学と機械工学の結合によって生み出された人工生命体であり、超硬質セラミック製の内部骨格を持つサイボーグもあります。 その本当の正体は、旧世界の人類によって創られたあらゆる紛争に対処する「調停と裁定を行う神」。一説では、前文明の日系企業「東亜工廠」が紛争を解決するために作りだしたともいわれています。

最終兵器か紛争を鎮める神か?
巨神兵の正体を

オーマとは?母はナウシカ?

原作では「オーマ」という個体の巨神兵が登場し、ナウシカを「母」と認識します。というのも、巨神兵の骨格とつながった装置と「秘石」の存在をめぐり、「秘石」を持つナウシカを自分の親として認識する経緯が原作で描かれているのです。 ナウシカに「オーマ」という名を与えられたことで、映画版の個体とは違って高い知性を持つ「裁定者」たる知的生命体へと変わっていきます。 映画版よりもさらに、人工生命体の「神」としてのイメージが強くなるかもしれません。

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「火の七日間」とは何だったのか

『風の谷のナウシカ』巨神兵

ここからは、『風の谷のナウシカ』の原作漫画における世界観を詳しく解説していきます。ネタバレが多く含まれるので、未読の人は注意してください。

巨神兵の存在理由に関する説

旧世界の人工創造物である巨神兵は、かつての「火の七日間」の実行者。あらゆる紛争に対処するため、「調停と裁定の神」としての役割を持っていました。人類文明に壊滅的な打撃を与え、「黄昏の時代」を到来させた張本人です。 しかしなぜ「火の七日間」が実行されたのかは明確には描かれていません。 ここからは考察の域になりますが、巨神兵の「調停者」と「裁定者」としての性質を考えたとき、答えが見えてくるのではないでしょうか。

【考察】原作最終巻での「調停」と「裁定」の描写

原作の最終巻ではオーマがトルメキア王国の皇子2人をシュワの墓地へ運ぶ描写がありますが、そのシーンのやり取りを追ってみます。 巨神兵「お前達もいっしょに(シュワへ)行きたいのかね?どうした、行きたいのだろう?」 2人の皇子は巨神兵に怯えながらも、自らの保身のためどうしてもシュワへいきたいため、頷く。巨神兵は2人を掴んで宙吊りにする。 2人の皇子「ち、ちがう!!おろしてくれぇ。ひぃ。はなせ!!」 巨神兵「本当に離していいのか?」 2人の皇子「ハ…!!いき、いきます!!」 巨神兵「トルメキア兵に告ぐ!!合意の元に裁定が下った。2人の皇子は私と共にシュワへ行く。お前達がこれ以上前進する理由はなくなった。ただちに反転シ家に帰レ。自分の家で平和に暮らせ!!」 こうした流れがあり、オーマは戦闘の「調停」を行っていきます。 しかしこの後トルメキア軍が自らの意思で引き返そうとしなかったため、巨神兵はプロトンビームを放ち威嚇しました。強制力の行使、つまり「裁定」を行ったのでした。

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自分の論理を持ち、力を行使する神の如き兵

ここまでの内容をまとめると、巨神兵は人間の意思を聞き入れて整理し、双方の合意を重んじつつ円滑な遂行をガイドする存在と言えるでしょう。 一方で独自の思考や論理を持っており、従わない者や優柔不断な者には力を行使し、強引に従わせることもあるのです。 母(ナウシカ)の言葉を忠実に遂行し、従者のような存在としても描かれたオーマ。巨神兵の本質はそこではなく、「調停」と「裁定」を実行する者だったと考えられます。 旧人類は巨神兵を造ってはみたものの、解決すべき問題の終着地点が見えず、より良い世界にはなりようがない状況だったのかもしれません。 「火の七日間」は人間同士の単なる最終戦争ではなく、荒ぶる兵として全てに壊滅的な打撃を与えるという「裁定」を、巨神兵が選択した結果ではないでしょうか。 結果的に「火の七日間」の経て得をした人間が存在しなかったことも、それを裏付けているように思えます。

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巨神兵のキャラデザを務めたのは庵野秀明

エヴァンゲリオン 碇シンジ
©COLOPL, Inc. ©カラー

企画・庵野秀明、監督・樋口真嗣、製作・鈴木敏夫のタッグで製作された特撮映画『巨神兵東京に現わる』。なぜこんな企画が実現したかというと、実は『風の谷のナウシカ』で巨神兵のキャラクターデザインを担当したのが庵野秀明だったからです。 宮崎駿監督は突然訪ねてきた庵野の原画を見て、いきなり巨神兵の原画に抜擢しました。先述のプロトンビームの描写も含め、巨神兵のシーンはすべて庵野が手がけているのです。当時の様子を鈴木敏夫プロデューサーは、「道場破りのようだった」と語っています。 こうした経緯もあり、上手く3次元化できているのも当然といえば当然なのかもしれません。「エヴァンゲリオン」のエヴァ初号機にもかなり似ているのも納得です。

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巨神兵について知れば『風の谷のナウシカ』の世界を深く理解できる!

この記事では巨神兵について、原作との違いを比較しながら解説してきました。 『風の谷のナウシカ』において、大きなテーマを背負っている巨神兵。その謎を知れば知るほど、もう1度映画を観返したい気持ちが湧き上がってきますね!