2019年2月15日更新

リックは悪人か? ウォーキング・デッド主人公の性格の変化をシーズン毎に解説【ネタバレ】

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『ウォーキング・デッド』の主人公リックがどんどん嫌な奴になっていく?

2010年からアメリカで放送が開始された大人気海外ドラマ『ウォーキング・デッド』のアンドリュー・リンカーン演じる主人公リックはシーズンを重ね、修羅場をくぐり抜ける中で驚くほど変化を遂げてゆきました。 そこで、この主人公の軌跡をシーズンごとに追っていきたいと思います。

注意:本記事には「ウォーキング・デッド」シーズン9後半までのネタバレが記載されています。

『ウォーキング・デッド』の主人公リック・グライムズ

ジョージア州キング郡の保安官代理であるリックは勤務中に負傷し、昏睡状態に陥ってしまいます。病院で目を覚ますと、街はゾンビに侵略され、手に負えない状態になっていました。 妻子ある身の彼は妻ローリと息子カールを必死になって探します。彼には人生でもう一人とても大切な人物がいました。仕事上のパートナーであり、親友でもあるシェーンです。 最終的に彼は(奇跡的とも言えますが)3人とも無事に発見。お腹を空かせたウォーカーの群れに追われながら、まずは都会から生き残りを懸けた旅は始まり、舞台は田舎へと移っていきます。

保安官としての職業もあって、生存者グループの中でリーダーとみなされたリックは居心地のよくない役回りを担うこととなります。 まず第一に、彼は善悪の観念や個人的な規律を強く持っていて、それは人間が化け物の餌食となる世界にうまく適応できるとは限りません。彼は自分のリーダーとしての役割を受け入れるのかどうか、最終的に決心を迫られます。 そしてもしも受け入れるなら、“民主のリック”でいくか、“独裁のリック”でいくかスタイルをも決める必要がありました。

また緊張を高めるのはローリとシェーンが彼を死んだと思い、関係を持ったという事実です。 リックは全員を生きたまましっかりと守り続けようと努める一方でローリとの関係の修復をし、息子を恐ろしいゾンビたちのいる世界から守ります。

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演じたのは俳優アンドリュー・リンカーン

アンドリュー・リンカーン
© Everett/Photoshot

アンドリュー・リンカーンは1973年生まれの俳優。イギリスの人気ドラマ『ディス・ライフ』のエドガー・クック、通称エッグ役で一躍有名となり、その後チャンネル4の『ティーチャーズ』(2001)の教師サイモン・ケーシー、大ヒット映画『ラブ・アクチュアリー』(2004)のマーク役など数々の役をこなしてきました。 そして2010年からは漫画原作のアクションドラマ『ウォーキング・デッド』の主人公リック・グライムズで主演を務めています。演じ始めた当時は35歳でした。 彼はロックバンド「ジェスロ・タル」のイアン・アンダーソンの娘、ゲイル・アンダーソンと結婚しています。ゲイルは映画業界で働いており、アンドリューとは同業者のようです。

シーズン9でリックが死んだ!?ラストにはサプライズが待っていた【ネタバレ注意】

そんなアンドリュー・リンカーンですが、10年近く主人公を演じてきた「ウォーキング・デッド」を、シーズン9の5話で卒業してしまいました! 5話は、4話のラストで致命傷を負ったリックが一人、馬に乗りながらウォーカーの群れから逃げるとこから始まります。出血多量で、なんども意識を飛ばしてしまう彼は、その最中今は亡きかつての仲間と再会し、語り合うのです。 シェーンやハーシェル、サシャなどがこのリックの空想?のようなシーンに登場しました。そしてこの空想の中では最終的に、コミュニティに続く橋に差し掛かった時リックは仲間に危害が及ばぬよう、自分もろとも橋を爆破させてしまうのです。 自分がこれまで、この世界で追い求め続けた大事な家族。それを最後に「見つけた」と呟くリック。

その場に駆けつけた仲間は止めることができず、恋人であるミショーンや、兄弟のように仲の良かったダリルは大きなショックを受けます。 誰もがリックは爆発に巻き込まれて死んだと思っていましたが、なんとリックは生きていたのです!爆発時に川に落ちた彼は、そのまま流れていき、瀕死状態でジェイディスに偶然発見されます。 何度も裏切ったにも関わらず、自分をグループに迎えてくれたリックへの恩を忘れなかった彼女は、交信していたヘリコプターに助けを求め、リックを乗せて彼の命を救うのでした。 リック・グライムズの卒業=死ではなかったのです!!

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リック退場の理由はアンドリュー・リンカーンにあり

ウォーキング・デッド
© AMC

さて、そもそも何故リック・グライムズは退場しなければならなかったのでしょう。それは俳優のアンドリュー・リンカーンの降板が理由なのですが、決して制作側と問題を起こしたから、というわけではありません。 彼はEntertainment Weekly Radioのインタビューで、これについて以下のように答えています。 「僕は二人の子供がいて、違う国で暮らしている。(中略)理由はとてもシンプルで、僕がついに家に帰るべき時がきたってだけだよ」 確かに、彼は10年近くもの間イギリスを離れてアメリカのアトランタで、このドラマを撮影していました。その間、子供の成長を見守れないなど辛いことも多かったはず。今はキャリアよりも家族を優先したい、というのがアンドリュー・リンカーン降板の理由だったのです。

シーズン10の監督としてカムバックすることが決定!

シーズン9を以って同シリーズから離脱した彼ですが、なんと監督として「ウォーキング・デッド」シリーズにカムバックするとのこと。 Entertainment Weeklyによれば、アンドリュー・リンカーンはインタビューのなかで「ぼくは戻ってくるよ。監督をやるためにね。ぼくの意図としては、来年に『ウォーキング・デッド』シーズン10のエピソードを監督するつもりなんだ」と語りました。 「家族の元に帰る」という選択をしたアンドリュー・リンカーンですが、なぜこんなにも早く裏方として復帰することを決めたのでしょうか?そのことについて、アンドリューは「そんなにすぐに遠く離れるなんてことに耐えられないからだよ。それくらい、ぼくはこの物語に入れ込んでいたんだ」と笑って語っています。

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リックを支え続けた家族

ローリ・グライムズ

強い意志を持って息子カールを守り、ローリは夫リックが死んだものと思い、彼の親友シェーンの助けを借りて大惨事を生き抜いていきます。 彼女はその後夫と再会を果たすのですが、彼女はすでにリックの親友であり同僚だったシェーンと男女の関係になっていました。 ウォーカーたちが出現する前から、既にリックとの結婚生活には亀裂が入っていたため彼が自分のことをまだ愛しているのかどうか疑問に思っていたローリ。彼が死んだと信じた彼女は、シェーンに気持ちを委ねてしまいます。

生存者グループが生き残りを懸けた旅を続ける中、ローリはかつて愛し合ったリックか、始まったばかりのシェーンとの情事を受け入れるか、選択を強いられます。 事実上のリーダーとしての夫を支持しますが、彼女は常に彼のやり方や決定に賛成するわけではありませんでした。

カール・グライムズ

ローリ・グライムズとリック・グライムズの息子、カール。父親が勤務中に負傷し昏睡状態に陥ってしまった時、深く悲しみます。 ゾンビ化がはじまった時、カールはローリとシェーンと共に逃げます。3人ともリックは死んでしまったと信じるのですが、後に生きていると判明しカールはすぐに父親との再会を果たすのでした。

それから、鹿と間違えられて猟銃で撃たれて瀕死状態に一度なるカール。リックはこの時、息子の命を救うためにハーシェルに助けを求め、療養中も彼の側にずっと見守っていました。カールは、そんな父を慕い、いつか彼のように強くなりたいと思うのです。この頃から、リックはカールに自分の帽子を譲りました。 しかしその後、母親ローリを自分の手で殺したことが引き金となり、カールの中でもっと強くなりたいと思う気持ちが強まります。それから周りに反発し、父の言うこともあまり聞かないようになるのです。それでも彼の歳を考えると純粋な反抗期だったように思えます。

しかし、幾度も父と困難を乗り越え、反抗期も乗り越えるとリーダーの父親らしく周りの大人と同じぐらいの銃の腕前と判断力で、仲間を守っていくようになります。特に、自分の妹ジュディスができてからは責任感が増し、アレクサンドリアで父が不在の時は代わりに自分がグループを先導するなど、リーダーシップも発揮しました。

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ジュディス・グライムズ

ローリとシェーンもしくはリックとの子どもで、カールの異父兄妹。胎児の時にリックが養子にすると決め、何があっても守ると決めます。

リック・ジュニア

リック・ジュニアは、ニーガンとの戦争後ミショーンとリックの間にできた子供。残念ながら、リックがいなくなってしまったあと、誕生しました。

リックの新しい恋人たち

ローリ亡き後のリックの女性関係を見ていきましょう。

ジェシー・アンダーソン

ジェシーはリックがアレクサンドリアに到着した日に彼と出会います。彼女は彼が自分で洋服を洗った後きれいな服を持ってきてくれました。 そして髪を切ることを申し出ます。ジェシーは彼の髪を整えながら様々な話をし、お互いを知ることに。彼女にはサムとロンという息子がいて旦那さんのピートとコミュニティーに住んでいます。

旦那のピートがジェシーに暴力を振るうDV男であることがわかると、リックは彼に忠告します。しかし、彼がリックに掴みかかり、二人は喧嘩に。リックは結果的に彼を殺してしまうのです。 リックとジェシーはその後も愛を育ませようとしましたが、残念ながら二人は結ばれませんでした。アレクサンドリアにウォーカーの群れが押し寄せた際、彼女は死んでしまったのです。

ミショーン

『ウォーキング・デッド』の魅力はシーズン6になってもまだまだ視聴者を驚かせてくれます。驚きの多くは様々な死であったり、崩壊や爆破です。 彼らの世界はゾンビたちが引き起こす大惨事や衛生状態が悪いなど過酷な状況。しかし、一緒にいることさえ困難なのに、恋に陥ってしまう生存者がいるという事実に驚かされるということも少なからずあるわけです。 リックとミショーンはシーズン3で出会ってからときめき続け、シーズン6でついに全シリーズ中最大のロマンティックな関係を結びます。

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『ウォーキング・デッド』シリーズの今までの歩みとリックの性格の変化

主人公リックは初め人当たりがよく、これといって面白くもないキャラクターだったのですが、年月を重ね、善と悪を行き来するなど、より人間味のあるキャラクターへと変わっていきました。 転機となった出来事を中心に、彼の変化を見ていきましょう。

シーズン1でのリック・グライムズという男

ご存じの通り、リックは典型的なありふれた“いい人”としてスタートしましたよね。新たに降りかかる様々な出来事に面食らいながらも彼は徐々にそれに慣れていきました。 そんな状況の中、彼は他の登場人物たちと様々な対立を引き起こしていくことになります。シーズン1の間、リックは穏やかで決断力も意気地もありません。それはゾンビ騒動が起こる以前の本来の性格であり、彼そのもの。 彼の行動のほとんどの判断基準は、自身の欲望や正しいと感じた選択によるもので、客観的な事実やグループ内の他のメンバーにとっての切実さなどは度外視されていました。

『ウォーキング・デッド』シーズン2での変化

ハーシェルを追ってグレンとバーまでやってきてデイブとトニーに出会った時のこと。ここで変化と言える出来事が起こります。この時瞬時にリックは二人を疑うのです。二人は心を開いて話をし、新しく知り合いになろうとしたのに……。 なぜ?リックが今まで出会った人はみんな協力的な人たちでしたよね。モーガンとグレンは彼の命を救ってくれましたし、ハーシェルはグループ皆を迎え入れ、命を救ってくれました。 その時点までは、リックが出会ったメルル以外の見知らぬ人は、どの人も皆リックとグループを助けてくれていたのです。デイブとトニーは物資などを分け合うと申し出てくれたし、手を貸すと言ってくれました。

彼が二人を信頼しなかったのは、単にその時にハーシェルと口論をしていたから、といういたって個人的な理由でした。さらには、彼が単に「自分の望み通りに行動した」から。この時点では自分の感情のままの人ですね。 その後にローリやシェーンとのいざこざがあり、ここでまた変化ポイントがあります。 シェーンは一度リックに反抗して従わず「彼(リック)には家族を守ることなんてできやしない」とリックを殺害しようとする事件が起きました。 そんなことがあった後でさえ、「シェーンは悪人ではなく、性格がもう前とは変わってしまっただけ」ともう一度信じようとするリック。取り返しが付かなくなるとこまでいってようやく気がつくわけですが……。

後になってみればリックがこんな結果になることを防げたことは明らかですよね。シェーンの行動に気づき戦略を練るなりシェーンが脅威であることを認識し、もっと早く(ランダルを逃がしている間に)殺しておくべきだったのではないでしょうか。 シェーン殺害後ゾンビの群れに彼らの農場が襲われ、皆は彼の能力に疑問を持ち始めます。また彼はゾンビ感染のウイルスに関する真実を皆に隠すなど認識の甘さも見られ、そしてグループから信頼を失っていきました。 そしてついに、彼は現状を客観的に捉え、「本質的にはシェーンの言い分は正しかった」ということをなんとか理解するのです。今は“民主主義”の時ではなく、グループは厳しい選択をし、皆をサバイブさせる強いリーダーを必要としているのだということを。

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『ウォーキング・デッド』シーズン3での変化

シーズン3では外の世界で何が起きているかを知らない刑務所の囚人たちと合流することになります。リックたちに協力しようとする囚人たちもいますが、リックが彼らを危険で信頼できないと思っているせいで問題が起こります。 メルルの時と同じ過ちを彼は再び犯してしまったのです。しかし今回はメルルやシェーンの時とは違い、囚人にチャンスは与えず即座に殺してしまいました。 その他ウッドベリーという生存者たちの住む小さな街のリーダー、ガバナーと交渉する時も今までに無い性格の変化が徐々に顕れます。

『ウォーキング・デッド』シーズン4での変化

本シーズンではさらなるリックの変化が見られました。特にジョーとのやりとりに注目。 ジョーという悪党集団のボスが、リックに銃を突きつけ処刑のカウントダウンを始めました。 ダリルは無理矢理悪党集団に加えられてしまったのですが、グループを解放するようジョーの説得を試みます。そのせいでジョーはダリルを「嘘つき」と言い、手下たちに殴り殺すよう命じます。 その後リックを近くに連れてきて、頭に銃弾を撃ち込む前に、ミショーンと息子をどのようにレイプするのかリックに説明するのでした。

その後リックは、ジョーが威勢よく虚勢を張っている間に頭突きを食らわし一瞬優勢にまわりますが、頭のすぐ横で銃が発砲したことで方向感覚を失ってしまいます。 おかげでジョーはなんとかリックの体を取り押さえることができ、バカにするように「次は何して遊ぼうか?」と尋ねました。するとリックはジョーを動けなくして首に噛みつき、頸動脈を噛みちぎり、即死させます。 ダリルとミショーンは残りの悪党たちを取り押さえ、血まみれになった彼はナイフをつかむと息子をレイプしようとしていた悪党を激しくめった刺しにしました。

その後“終着駅”に向かう中でも彼が感情的になる場面が見られます。そして彼はグループというものは独裁者が入ればいいわけではなく、民主性を保ち、仲間の協力が必要だと再び気づくのでした。 シーズン4は「間違った奴らと一緒になって、あいつらはとんでもないことをしてると気づいた」というようなリックのセリフで締めくくられています。

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『ウォーキング・デッド』シーズン5での変化

シーズン5では教会に泊めてもらったにもかかわらず神父ゲイブリエルには裏があると疑うなど、リックの行動には一貫性が見られず、また感情的になる場面が多く見られます。錯乱状態か……。 人質の中に警察官のラムソンがいて、彼の「リックも元々警察だったんだろ」ということばをきっかけにリックの気持ちは善の感情へ揺らぎます。大切な人を失った気持ちなど、ラムソンとリックは共感し、うちとけたようにも見える一幕もありました。 しかしラムソンは逃走します。そしてリックは彼を取り押さえた後、苛立ったように威張った口調で「黙れ」と言いながらラムソンを射殺してしまいます。

加えて、自分たちをアレクサンドリアに迎えようとスカウトをしたアーロンに対しても、冷静さを失うリック。マギーとサーシャが仲間の避難する納屋にアーロンを連れて戻ってくると、彼はコミュニティの存在を証明するためにリックに写真を見せます。しかし、ここで突然リックはアーロンを殴るのです。 そして、彼のリュックの中身を探し、照明弾を持っていることや自分たちをつけてきたことに対してかなり懐疑的になります。一方で、ジュディスが空腹で泣いていると、アーロンはそんな仕打ちを受けているにも関わらずリックに自分のアップルソースを差し出すのです。 ところが反対に、リックはそれでも彼を信用することなく、アーロンにソースの毒味をさせました。そして、アレクサンドリアに向かう時もリックは「罠だったら仲間を皆殺しにする」と彼を脅す始末。

この頃のリックはすぐに感情を暴走させ、ウッドベリーや終点などで経験した「人の裏切り行為」によって、見知らぬ相手を信じることが難しくなっていました。結局アレクサンドリアのコミュニティに入るも、彼らを最初は信用しきることなく、自分が保安官という彼らをある程度管理できる立場になります。そして、このシーズン最後には、アレクサンドリアの人々に、忠告を無視するとどうなるかを示すのです。 しかし、自身のこの独裁的で暴力的な一面を一番見せたくなかった相手、モーガンの登場によってリックは幾分か動揺してしまうのでした。

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『ウォーキング・デッド』シーズン6での変化

シーズン6の変化の背景は以下の通りです。ヒルトップというコミュニティーに滞在中、イーサンというメンバーが突然グレゴリーを刺し、グレゴリーの頭を切り落とそうとしました。 リックはすぐにイーサンを止めに入ります。イーサンはリックの喉を切り裂いて殺そうとしますが、ほんの一瞬気を逸らした隙に、逆にリックはイーサンの喉にナイフを突きつけ激しく刺し殺しました。 ヒルトップの住民がショックを受ける一方で、彼は何事もなかったかのように立ち上がるのです。シーズン6も感情的な場面が多々ありますが、注目すべきはニーガンと出会うシーン。

ここでは、リックはなす術もなく見届けるしかありません。まさに残された道がない、という状況に追い込まれ、彼は再び精神的にやられてしまいます。 刑務所にガバナーが現れた時と同じように、リックはすすり泣き、ニーガンと話し、交渉したいと願うのですが……。

『ウォーキング・デッド』シーズン7での変化

シーズン7の冒頭で大切な仲間を無残にも殺され、完全にニーガンに心を折られたリック。これまでの暴走気味で凶暴なリックは消え、これまでにない不安に怯える様子をみせます。リーダーという立場も、ニーガンによって崩され、もう自分の仲間を引っ張っていく気力もありません。 しかし、ここでリックは原点に戻ることができます。それは、何よりも大事なのは「仲間の命を守る」というリーダーとして気づきです。これ以上大切な仲間を失うことができない彼は、その気持ちにがんじがらめになって、ニーガンや救世主の言いなりとなります。

しかし、それでも理不尽にニーガンに仲間を殺されてしまうリック。これを受けて、このままでは未来もなければ仲間の安全を確証もないと考え、救世主と全面戦争をすることを決意するのです。 それから、昔の力を徐々に取り戻して清掃人と交渉するなど、戦いに備えていきました。シーズン7のラストでは、ニーガンと対峙しても怖気付くことなく、逃げる敵を追いかけようとします。

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『ウォーキング・デッド』シーズン8でのリックの変化

シーズン8ではアレクサンドリアだけでなく、ヒルトップや王国のコミュニティの先頭に立ち、計画的に救世主に対して戦争を仕掛けるリック。しかし、シーズン1での仲間モラレスと再会するも、彼が救世主だとわかると戸惑います。そこに通りかかったダリルが、彼を問答無用で殺しました。 聖域には罪のない女子供や老人も住んでいることを知ったリックは、彼らに危害を与えないようにします。そのため、聖域にウォーカーを雪崩込ませて皆殺しにしようとしたダリルと意見が食い違うのです。 その頃から徐々にリックの命令に背き始める仲間。そんな彼らに戸惑っていた彼を、再びどん底に突き落としたのがカールの死です。

これによってリックはこれまでになく落ち込み、精神状態もまともではなくなります。そんな彼を、恋人であるミショーンが按じて支えます。悲しみに暮れていたリックでしたが、ニーガンに「息子が死んだのはお前のせいだ」と言われた事をきっかけに、またキレてしまいます。 ニーガンを見つけると、戦争など関係なく個人的に彼を殺しにいくのです。しかし、ニーガンをそこでも逃してしまいます。その間、彼は息子カールが自分に宛てた手紙、そしてニーガンに宛てた手紙について考えるのです。 カールの願いは、この戦争の終結と、人類の平和的共存でした。ニーガンの生きる世界を受け入れる、それはリックにとって容易い事ではありません。

そんな中、シーズン8のラストで再びニーガンと対峙したリックは、カールの名前を使って彼の動きを止めます。正々堂々と戦い、聞く耳を持ったニーガンに対してリックは、隙をついて彼の喉元を斬りつけます。 実際、全うに戦っていれば力の差でニーガンに負けていました。そこに亡き息子を利用した卑劣さも合間って、リックのとった行動は彼がもう昔のリックに戻れないことを意味しているようにも思えます。しかし、結局リックはカールの遺言通りにと、ニーガンを生かすことにします。 しかし、それもずっと牢獄の中に閉じ込めて、人々に過去を忘れさせないようなモニュメントの役割をさせるというのですから、偽善的です。カールは果たして、そのような形での共存を望んだのでしょうか。

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『ウォーキング・デッド』シーズン9でのリックのラスト

ニーガンとの出来事から一年弱後、リックは極めて心穏やかに過ごしていました。ニーガンという脅威が去ったからです。しかし、救世主の残党とのいざこざは絶えません。さらに、ニーガンを生かすことに反対しているマギーやダリルとも対峙することになります。 しかし、ダリルとはお互いに腹を割って話したことで、再び信頼関係を取り戻すことができます。そしてウォーカーの群がやってくると、彼は再び「仲間の命を守る」という基本の信念に基づいて、群をコミュニティから引き離そうとします。ただ、その際に致命傷を負ってしまうのです……。

出血多量で意識が朦朧とする中、彼の夢の中に現れるのはシェーンとハーシェル、そしてサシャでした。この三人は今日のリックにとって実は意味深い象徴的な存在とも言えます。シェーンは彼が初めて受けた裏切り(ローリもそうですが)、ハーシェルはこの世界で初めて自分に道徳と信条を教えてくれた人、そしてサシャは臆病な自分と違って仲間を救うために自己犠牲を払う事を厭わなかった存在でした。 この三人との対話で、リックは自分自身の軌跡を振り返ることになります。

思えば、シェーンの裏切り、ローリの死が彼の心を最初に砕いた出来事でした。そして、リックが敵に対して情を示すことをやめたのは、ハーシェルの死がきっかけです。彼はあの時、ガバナーにまだ交渉の余地があり、会話で問題を解決できると思っていました。 さらに遡れば、この世界で目を覚ました彼が最初にとった行動。それは、自分の家族を探すことでした。しかし、やっと見つけたローリは浮気をしていました。そこから、新たな恋に落ちるリックはどこかで自分の家族を再構築していたようにも思えます。しかし、ローリに続いてカールが死んだ事によって血縁の家族はこの世からいなくなってしまったのです。 しかし、遠のく意識の中彼が力を振り絞って守ろうとしていたもの。それが、自分の周りにいる新しい、そしてかけがいのない家族であることにリックは最後気づいたのです。そして、サシャがしたように彼らのために自分を犠牲にするのでした。

『ウォーキング・デッド』のテーマを体現した主人公リック

これまで全シーズンごとの、主人公リックの変化を追ってきました。時には善い人であり、モラルを守る。しかし、時には人の頚動脈を食いちぎって殺したり、敵にチャンスを与えずに殺す。そして、卑怯な手を使ってでも生き延びようとする。 だんだん嫌な奴になっていった、と言われているリックは、実は極限状態における人間の行動の象徴的存在であり、それを描くドラマ『ウォーキング・デッド』のテーマそのものなのです。 ただ、どんなリックでも我々が最初から応援してきたリックに変わりありません。彼が映画版で戻ってくる日を、待ち望んでいたいと思います。