『思い出のマーニー』原作と映画の違い【あらすじ・ネタバレあり】

2017年7月6日更新

療養のため海辺の田舎町に滞在することになった少女が体験した、ちょっと不思議な出来事を描いたスタジオジブリ製作・米林宏昌監督の長編アニメーション映画『思い出のマーニー』。その映画とジョーン・G・ロビンソンが手がけた原作児童文学作品との違いについて、まとめました。

映画『思い出のマーニー』原作との違い

スタジオジブリ、劇場用長編アニメーション20作品目の『思い出のマーニー』。今作には原作があるのですが、その原作と映画との違いをご紹介したいと思います。 まずは映画のあらすじをおさらいしておきましょう。

あらすじ

札幌に住む12歳の少女、杏奈。絵を描くのが好きな普通の女の子ですが、喘息を患い病気がちで、小さい頃に両親と祖母を亡くしたことなどから、周囲には溶け込めずにいました。そんなある夏、杏奈は喘息の療養のため、養母と離れ海辺の田舎町で過ごすことに。 そこで彼女は美しい湿地と、その先にぽつりと立つ古い洋館、「湿っ地屋敷」を見つけます。 「あのお館、知ってる気がする」と感じた彼女は好奇心もあってか、夜中に一人、ボートで湿っ地屋敷の裏口へ向かいます。屋敷に近づくと、無人のはずの館に明かりが灯り、そこには金色の長い髪に青い目の女の子が。女の子の名前はマーニー。杏奈とマーニーは仲良しになり、杏奈は夜ごと湿っ地屋敷を訪れるようになりますが、次第に不思議な出来事が起こるようになります……。

原作はイギリスの児童文学作品

『思い出のマーニー』原作は、イギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソン作の児童向けの同名児童文学。 挿絵は「くまのパディントン」でお馴染みのペギー・フォートナムのものです。1967年にイギリスで出版され、25万部を売り上げるヒットとなった他、BBCでテレビ化もされました。 日本では1980年に翻訳版が岩波少年文庫より出版。スタジオジブリによる映画化を受けて新訳版も出版されるなど、原作にも再び注目が集まりました。 では、早速映画版と原作のどこが違うのかご紹介していきましょう。

1.話の舞台となる場所が違う

原作の小説の舞台は、イギリス、ノーフォーク州の海辺にある架空の村リトル・バートン。 モデルとなっているのは、同州にあるBurnham Overyという村で、原作者ジョーン・G・ロビンソンは実際に夏をこの地で過ごしており、ここでの体験が、小説の元となっているとのことです。 映画『思い出のマーニー』は、物語の舞台を日本の北海道へと移しています。杏奈が普段住んでいるのは札幌、そして療養のため訪れる海辺の村は、北海道東部、釧路・根室・厚岸などをモデルとしています。 ジブリ作品が北海道を舞台としたのはこれが初めてだったそう。今まで避けてきた北海道をあえて選んだ理由は、空の色がイギリスに似ていることがポイントだったようです。 宮崎駿はずっと明るく澄み渡っている空を描きたいタイプであったので瀬戸内を舞台にする話しが出ていました。しかし、今作『思い出のマーニー』はイギリス特有の少し薄ぼんやりとした雰囲気のものにしたかったため、気候などが似ている北海道が選ばれたと、プロデューサーである西村義明はインタビューで語っています。 またノーフォーク州も北海道東部も、美しい湿原で知られる土地柄。映画版の湿地のモデルは厚岸にある藻散布沼。一部が海とつながっている汽水湖で、潮の満ち引きの大きな日には水底が現れるなど、原作のイメージにぴったりだったそう。

話の舞台を日本に移したとはいっても、そこは原作が持つ雰囲気を壊さぬよう、大事に配慮している印象です。 「湿っ地屋敷」の洋館をはじめ杏奈が身を寄せる親戚の家も、日本の田舎の家というよりは、どことなくヨーロッパを思わせる雰囲気です。

2.杏奈の出自が少し違う

物語の舞台をイギリスから日本へ移したため、登場人物達は日本人という設定に変更されています。 その中で杏奈は1/8だけ外国の血が入っており、目の色が「よく見ると、少しだけ青が入っている」女の子、ということに。 映画版では、この「自分だけ、他の人達と少し違う」ことが、杏奈が周囲に溶け込めず、自分のことが好きになれない理由の一つに加わっているようです。

3.マーニーが杏奈を置いて行ってしまう建物

物語の中で、嵐の夜、杏奈とマーニーはある建物へ二人で入り、そして何故かマーニーは杏奈を置いて去ってしまいます。 その建物は、原作では風車小屋となっています。実際にモデルとなった風車小屋が、今もイギリスに残っているそうです。映画版では、日本ではまず見かけることのない風車小屋ではなく、農作物や家畜の飼料を貯蔵するのに使われていた、古いサイロとなっています。

4.湿っ地屋敷に新しく引っ越してきた家族

原作では、湿っ地屋敷に新しく引っ越してきたリンジー一家は、リンジー夫妻と5人の兄弟。アンナはこの家族みんなと次第に打ち解けていきます。兄弟のうち、次女のプリシラがマーニーの日記を発見し、アンナをマーニーだと思い込みます。 映画版では、兄と妹の二人兄弟のよう。また、両親はほとんど登場しません。妹の彩香が、マーニーの日記を通して、杏奈と仲良くなって行きます。

5.杏奈の祖母が、娘(杏奈の母)を全寮制の学校に預けることになった理由

原作では戦争が起きたことが理由ですが、映画版では祖母自身が体調を崩し、サナトリウムで療養することになったためとされています。

6.無口な十一さん

映画版では、物語も終盤になってやっと一言しゃべる船頭の十一さん。原作ではもっと活躍し、もっとしゃべっています。そんな十一さんも観てみたかったような気がしますね!

7.親戚の大岩夫婦

杏奈の養母・頼子の親戚の大岩夫婦は映画版では杏奈を実の娘のようにかわいがるなど優しい夫婦として描かれています。しかし、原作ではあまり優しくありません。

8.杏奈とマーニーの交流の回数

映画では杏奈とマーニーの交流は夢の中も含めて4回ですが、原作では6回の交流後、ほぼ毎日一緒に過ごすなど頻繁に交流しています。

9.マーニーの日記の登場

映画版では、杏奈とマーニーが交流している途中でマーニーの日記が登場します。それに対して、原作ではマーニーとの別れの後に杏奈が日記の存在を知ることになります。

10.杏奈とマーニーの別れ

映画では物語の終盤で杏奈とマーニーが別れますが、原作では物語の中盤で2人は別れ、その後杏奈が帰宅するまでの物語に多くのページが割かれています。