『思い出のマーニー』を解説、考察!【マーニーの正体を徹底考察】

2017年7月12日更新

イギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンの児童文学を原作に、スタジオジブリ製作・米林宏昌監督の長編アニメーション映画『思い出のマーニー』。ぜんそくの療養のため、海辺の田舎町に滞在することになった杏奈が出会った、金髪で青い目の少女、マーニー。マーニーと、彼女が住む湿っ地屋敷には不思議なことがいろいろとありました。マーニーの正体とは一体?まとめてみました。

『思い出のマーニー』を考察・解説!

イギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学が原作の、2014年公開スタジオジブリ作品『思い出のマーニー』。 北海道を舞台に、喘息の療養のために海辺の田舎町で過ごすことになったアンナと、そこで出会った不思議な少女・マーニーの交流が描かれています。 この記事では今作の謎や疑問を考察、解説します。ネタバレを多く含むので『思い出のマーニー』を鑑賞後に記事をご覧いただくことをおすすめします。 では早速、『思い出のマーニー』の考察ポイントをおさらいしましょう。

謎1.杏奈と湿っ地屋敷のマーニーとの出会い

ある夏、ぜんそくの療養のため札幌から離れ海辺の田舎町へやってきた少女、杏奈。 彼女は絵を描くのが好きな女の子ですが、病気がちなことや小さい頃に両親と祖母を相次いで亡くしたことなどから周囲にはなじめず、心配ばかりの養母には苛立ちを感じていました。 親戚の大岩夫妻の家に滞在し海辺での暮らしを始めたある日、杏奈は美しい湿地と、その先にぽつりと立つ古い洋館、「湿っ地屋敷」を見つけます。 地元の人によれば、そこは長いこと誰も住んでいないとのこと。確かに建物は傷み庭は荒れ放題で、もう長いこと空き家になっているようでした。 しかしその後、杏奈は館の窓に明かりが灯っている夢を何度も見かけます。ついに小舟で館まで漕ぎ出した七夕まつりの夜、マーニーと出会うのです。館はきれいに整っていて、マーニーの母や使用人らしき人の姿もありました。 さて、この点ですが、誰も住んでいないはずの館にいるマーニー達は「幽霊か何かなのか」それとも、「杏奈の夢の中の話や妄想なのか」という説が鑑賞者のなかで広まっています。

謎2.マーニーと会うためのルール?

マーニーとすぐに仲良くなった杏奈は、マーニーに会いに湿っ地屋敷を訪れるようになりますが、彼女に会うためには必ず、夕暮れ時の満潮時に小舟で渡る必要があるようです。 昼間、干潮時の湿地を歩いて行っても、湿っ地屋敷は荒れた空き家のままです。 マーニーと会えた夜の杏奈はその後、道端の草むらの中で熟睡し倒れた状態で見つかります。 服は泥で汚れ、片方なくした靴は別の日に湿地のほとりで見つかります。やはり全て夢の中だけの出来事というわけではなく、少なくとも杏奈は湿地まで行き、何かを体験したようです。 杏奈は満潮になった湿地の湖を超えて、異界や、過去を訪れているのでしょうか?やはり杏奈が会ったマーニーは霊的な何かなのでしょうか?

謎3.十一(といち)の正体は何者?

杏奈が湿っ池屋敷に初めて来た時、どこか懐かしさを感じた彼女は靴を脱いで裸足で屋敷に向かいます。しかし、満ち潮になってしまったため帰れなくなってしまう。そんな時、どこからともなくボートをこぎながら現れたのが、十一(といち)という男です。 彼は、話す事なく動作で杏奈にボートに乗るように促し、岸まで運んでやります。彼は一体何者なのでしょう?

謎4.杏奈はマーニーの事忘れてしまう?

互いのことを知るため、質問を3つずつし合うことにした杏奈とマーニー。大岩夫妻との暮らしについて尋ねられたところ、杏奈はそれを思い出せなくなっていることに気づきます。ようやくぼんやりと思い出したところ、今度はマーニーが消えてしまいます。 また別の日、大岩夫妻の家でくつろいでいた杏奈は、マーニーのことをほとんど忘れかけていることに気づき、慌てます。この後、杏奈はしばらくマーニーとは会えなくなってしまいます。 杏奈が思い出せないとマーニーは現れることができない、ということでしょうか?

謎5.湿っ地屋敷から見つかった、マーニーの日記

昼間、歩いて湿っ地屋敷を訪れた杏奈。なんと屋敷は改装工事に入っており、そこには東京から来たという兄妹が引っ越してきていました。妹の彩香から、「あなた、マーニーでしょ」と言われ、古い日記を見せられる杏奈。そこには、杏奈が花売り娘として参加したパーティのことが書かれていました。 「マーニーは自分が空想で作り上げた人物」と思っていた杏奈。一方で、目の前にある実在する古い日記。これはどういうことなのでしょう?

謎6.サイロでの出来事

湿地に潮が満ちてきて、二人はマーニーが子供の頃とても怖い思いをしたという、丘の上のサイロを訪れることになりますが、その際マーニーの様子が時々おかしくなります。杏奈と一緒にいるのに、幼馴染の和彦に話しかけているような素振り。杏奈は夢うつつの中、マーニーが迎えに来た和彦と共に、杏奈を置いてサイロを去ってしまうのを見ます。 なぜ、マーニーは杏奈ではなく和彦に話しかけ、去っていってしまうのでしょう?

謎7.幼い頃に持っていた人形

夢から覚めた杏奈はサイロの中で一人ぼっち。「あなたまで、私を置いて行ってしまった」と、置いて行かれたことを悲しみ、泣きながら雨の中を走る杏奈。この時一瞬、まだ幼い杏奈が祖母を亡くした際のお葬式のシーンが映ります。杏奈が抱えているのは金髪の巻毛に水色ワンピースの、誰かによく似たお人形。 つまり、マーニーは人形の精か何かなのでしょうか……?

謎8.マーニーとの別れ

サイロから帰る途中に転んで気を失った杏奈。家に運ばれた時には高熱を出して寝込んでしまいます。夢の中で、なぜ自分を置いて去ったのかとマーニーを責める杏奈。 マーニーは、「そんなつもりじゃなかった。だって、あの時、あなたはあそこにいなかったのだもの」と言います。そして、「大好きな杏奈、自分はもう、ここからいなくならなきゃならない、あなたにさよならしなければならない、だから許してくれると言って」と請います。 杏奈はマーニーを許し、「あなたが好きだ、ずっと忘れない」と告げます。荒れていた湿地に光が射して、これがマーニーと会った最後になります。 しかし熱が冷め元気になった杏奈は、遊びに来た彩香に「マーニーのことをよく思い出せない」と話しています。 彩香は、日記が中に入っていたという、戸棚の中に隠されていた絵を持って来ていました。裏側には「to Marnie from Hisako」のサインが。その絵は、杏奈が時々湿地のほとりで会っていた、絵描きの久子さんが描いたものでした。

謎9.久子さんが語る、マーニーのこと

久子さんは子供の頃、湿っ地屋敷にも遊びに行ったことがあるマーニーの幼馴染で、その後のマーニーがたどった人生のこともよく知っていました。 札幌で和彦と結婚し、女の子をもうけたこと。しかし、和彦は早くに亡くなり、自分も体調を崩したマーニーは、一人娘を全寮制の学校に入れるしかなかったこと。 戻ってきた娘とは打ち解けることができず、娘は家出をし結婚。しかし数年後、娘夫婦は事故で亡くなってしまいます。マーニーは一人残された孫娘を引き取りますが、自身も重い病気にかかり、次の年には亡くなってしまった、それは今から10年ほど前のことだと久子さんは語ります。 両親が事故で亡くなり、祖母にも先立たれて、一人残された孫娘……これはなんだか、杏奈の境遇と重なる部分があるようです。偶然でしょうか?

謎10.養母が持って来た古い写真

療養が終わり、札幌に帰る杏奈を迎えに養母・頼子が会いに来ます。頼子は、古いアルバムを見ていたら出てきたという、セピア色の古い写真を取り出します。それは、もとは杏奈の祖母のもので、杏奈が頼子の家に来た時、ずっと手に握りしめていたものだと言います。写っていたのはなんと湿っ地屋敷。裏には、「わたしの大好きな家 マーニー」の文字が。 そう、やはり久子さんが話していた、過去に実際に湿っ地屋敷に住んでいた古い日記の持ち主だったマーニーは、杏奈の祖母だったのでした。

明らかになった事と、残された謎

杏奈が湿っ地屋敷を知っていた気でいたのは何故?

湿っ地屋敷のことは、幼い頃に祖母が遺した写真で見ていたから。

何故日記の中の出来事を杏奈は体験することができた?

娘夫婦を亡くし孫の杏奈を引き取った後、祖母は杏奈を寝かしつけながら、自分が子供の頃に湿っ地屋敷で近所の女の子と遊んだこと、和彦とサイロに行ったこと等を、杏奈に話していました。 当時まだ幼かった杏奈は、そのことをずっと忘れていました。けれど心の奥底では覚えていて、実際に湿っ地屋敷を見たことをきっかけに、眠っていた記憶が少しずつ夢に現れ始めたのではないでしょうか?

全ては杏奈が記憶をもとに空想して、夢で見たこと?

基本的に杏奈がマーニーと会って体験したことは、杏奈が祖母から聞いた話を元に出来上がっているようです。 サイロのシーンで、マーニーが急に杏奈ではなく和彦に話しかけ、彼と去ってしまったことも、これで説明がつきます。サイロへは女の子とではなく、和彦と行ったため、その話しか聞いていない杏奈には、マーニーと女の子(自分)とがサイロへ行く話は作り上げられなかったのではないでしょうか。 では、全てが記憶を元にした空想で、夢で見たものかというと、そこには謎も残ります。劇中のシーンでは、明らかに夢だと分かる描写と、よく分からない曖昧な描写が混じっています。 服が汚れている、靴をなくす等、実際に湿地までは行ったのだと分かる描写もある上、湿地で一人、ただ長時間空想に耽っていただけだとして、その後道端の草むらに倒れこんでしまうというのも、そうそう起こるとは考えにくいことです。 全部空想で夢なのか?それとも満潮の湖を舟で越えることで、杏奈は何か不思議な存在と出会っていたのか?実際にどうだったのかは、見る側の想像力にゆだねられているようです。

ミステリアスな存在、十一(といち)の正体

映画の最初の頃に杏奈を救った男、十一(といち)。彼は映画の終盤で再び、さやかと杏奈をボートに乗せて登場します。その時、彼女たちがマーニーについて話していると彼は初めて口を開くのでした。 「マーニー……青い窓の向こうに閉じ込められた少女。遠い昔の話しだ」 という十一の発言から、彼もマーニーの事を知っている事が伺えます。恐らく、自分も子供の頃に窓の向こうに閉じ込められているマーニーを見かけ、もう一度見ようと、それから大人になった今でもずっとあの湿地に通っていたのではないのでしょうか。そうならば、最初に杏奈を助けたときも何故湿地にいたのか説明がつきますね。

子供の頃のマーニーが湿っ地屋敷で遊んでいた女の子は誰?

テラスで踊ったり、パーティーに花売り娘として入り込んだり……当時のマーニーは、実際に誰か年の近い女の子と一緒に遊んでいたと考えられます。 劇中でははっきりとは示されませんが、登場人物の中から考えると、久子さんがその女の子に当たりそうです。

杏奈が「空想で」描いたマーニーの絵が、実際の姿と似ていたのは何故?

杏奈は湿地で出会ったマーニーの姿を、スケッチにします。それを見た久子さんは、「私が知っていた女の子に似ている」と話します。 実際には見たことのない、祖母の子供の頃の姿をスケッチを描くことができたのはなぜでしょう?どんな髪型や服だった等は祖母から聞いた話の中に入っていたのかもしれませんし、幼い頃持っていたお人形の姿が少し影響しているのかもしれません。 しかし、そんな小さい頃に夢うつつで聞いた話をもとに、「似てる」ものが描けるのか?……ということで、やはり杏奈は空想だけでなく、実際に過去の祖母マーニーに会ったのかも、という説も完全には捨て去れないのでした。

マーニーが夢の中で残した、杏奈への最後の言葉の意味

「大好きな杏奈、自分はもう、ここからいなくならなきゃならない、あなたにさよならしなければならない、だから許してくれると言って」……これは、サイロに杏奈を置き去りにしてしまった事と、自分はもう湿っ地屋敷から去ることを許して欲しいという意味にとれると同時に、幼い孫を独りぼっちにして先立つしかなかった祖母の、孫娘への許しを請う言葉ととってもそのまま通じます。 また杏奈の、「あなたを許すわ。あなたのことが大好き。」という言葉も、目の前にいるマーニーへの言葉であると同時に、祖母への言葉としても、意味は通じます。 そしてこのシーン以降からエンディングまでの杏奈の行動や表情を見ると、当初「許せない」と語っていた自身の過去のこと(両親、祖母の他界や養母とのこと)を、穏やかに受け入れ始めているように見えます。

考察まとめ:『思い出のマーニー』は傷ついた少女の再生の物語

両親と祖母の死によって傷ついた杏奈はマーニーと出会い、別れを経験することによって過去を受け入れ立ち直ります。そして、マーニーも自身の過去の後悔や過ちを杏奈に許してもらうことによって再生していきます。 『思い出のマーニー』は過去に傷ついた経験や過ちを犯し、後悔を持ち続ける少女たちの再生の物語であり、杏奈やマーニーに似た境遇の人々の心を癒し、希望を与えることでしょう。

『思い出のマーニー』と他のジブリ作品の関係を考察

『思い出のマーニー』には過去のジブリ作品と似ているシーンが存在します。今作を見た人々が過去のジブリ作品を思い出せるよう施しているのかもしれないですね。 久子が絵を描くシーンは『風立ちぬ』の里見菜穂子が絵を描いているシーンを彷彿されます。 千と千尋の神隠しのオープニングシーンもそれとなくにていますね。 再度『思い出のマーニー』を鑑賞して、どこのシーンがどのジブリ作品と似ているかを考えるのも楽しいですね。

『思い出のマーニー』を考察してみました

以上、『思い出のマーニー』の謎・疑問についての解説、考察をまとめてみました。 「マーニーとは一体誰なのか?」という問いは、映画のストーリーを引っ張る重要な要素の一つで、恐らく初見ではその謎解きを中心に見ることになるかと思います。 そして二回目以降、最初から「マーニーは杏奈の祖母なのだ」と分かっている状態で見ると、セリフの一つ一つがまた別の意味を持って、ストーリーが広がって行きます。『思い出のマーニー』は何度も見返したくなる、そんな映画なのです。