『思い出のマーニー』あらすじネタバレを解説・考察!マーニーの正体や壮絶な人生を徹底深掘り
2014年公開のスタジオ・ジブリ作品『思い出のマーニー』は、イギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学を原作としています。 本作では舞台を北海道に移し、ひと夏を海辺の田舎町で過ごすことになった杏奈と、彼女がそこで出会った不思議な少女・マーニーの交流が描かれています。 この記事では本作の謎や疑問を考察、解説していきましょう。 記事の性質上、物語の結末を含むネタバレがありますので、作品を未鑑賞の方、結末を知りたくない方はご注意ください!
『思い出のマーニー』簡単なあらすじ
喘息持ちの杏奈は親戚・大岩家のもとで療養することに。ある日「湿っ地屋敷」と呼ばれる空き家でマーニーという少女と出会います。 湖が満潮の夕暮れ時にしか会えないマーニーと仲良くなりますが、彼女は杏奈としか会えません。屋敷でマーニーの日記が発見され、マーニーの過去や杏奈との関係性が徐々に明らかになっていきます。
謎を追いながら本編をネタバレ解説
- なぜ杏奈は湿っ地屋敷に惹かれたのか
- マーニーと会うためにはルールがある?
- 十一(といち)の正体は何者?
- なぜ杏奈はマーニーのことを忘れた?
- 屋敷から見つかったマーニーの日記
- サイロでの恐ろしい出来事
- 幼い頃に持っていた人形
- マーニーは何者?夢なのか幽霊なのか
以下では映画のあらすじをネタバレありで解説していくとともに、その中で湧き上がる謎を整理します。各見出し最後の1行をクリックすれば答えが見られるようになっているので、疑問に共感できたらクリックしてみてください!
謎1. なぜ杏奈は湿っ地屋敷に惹かれたのか
療養のため札幌から離れ海辺の田舎町へやってきた少女、杏奈。 親戚の大岩夫妻の家に滞在し海辺での暮らしを始めたある日、杏奈は美しい湿地と、その先にぽつりと立つ古い洋館、「湿っ地屋敷(しめっちやしき)」を見つけます。 地元の人によれば、そこには長いこと誰も住んでいないとのこと。建物は傷み、庭は荒れ放題でしたが、杏奈はなぜかその洋館に強く惹かれます。 その後、杏奈は館の窓に明かりが灯っている夢を何度も見ます。そして七夕まつりの夜、彼女は屋敷に向けて舟を漕ぎ出し、マーニーと出会うのです。 なぜ杏奈は、こんなに強く不気味な館に惹かれたのでしょうか?
謎2. マーニーと会うためにはルールがある?
マーニーとすぐに仲良くなった杏奈は、マーニーに会いに湿っ地屋敷を訪れるようになりますが、彼女に会うためには必ず夕暮れ時の満潮時に小舟で渡る必要がありました。昼間、干潮時の湿地を歩いて行っても、湿っ地屋敷は荒れた空き家のままなのです。 またマーニーと会えた夜の杏奈はその後、道端の草むらの中で熟睡し倒れた状態で見つかります。しかし服は泥で汚れ、片方なくした靴は湿地のほとりで見つかりました。全て夢の中だけの出来事というわけではなく、少なくとも杏奈は湿地まで行き、何かを体験したようです。 マーニーと会っている時間は、夢と現実どちらなのでしょうか?また会うためにはなぜルールが必要なのでしょうか?
謎3. 十一(といち)の正体は何者?
杏奈が湿っ地屋敷に初めて来た時、どこか懐かしさを感じた彼女は靴を脱いで裸足で屋敷に向かいます。しかし満ち潮になってしまったため帰れなくなってしまいました。そこへ、どこからともなくボートをこぎながら現れたのが、十一(といち)という男です。 彼は話す事なく動作で杏奈にボートに乗るように促し、岸まで運びました。どうやら湿っ地屋敷の秘密を知っているようです。 ミステリアスな彼は一体何者なのでしょう?
謎4. なぜ杏奈はマーニーのことを忘れた?
互いのことを知るため、3つずつ質問をし合うことにした杏奈とマーニー。大岩夫妻との暮らしについて尋ねられた杏奈は、なぜかそれを思い出せなくなっていました。ようやくぼんやりと思い出したとき、今度はマーニーが消えてしまいます。 また別の日、大岩夫妻の家でくつろいでいた杏奈は、マーニーのことをほとんど忘れかけていることに気づき慌てます。この後しばらく、彼女はマーニーに会えなくなってしまうのでした。 なぜ杏奈はマーニーのことを忘れてしまうのでしょうか?
謎5. 湿っ地屋敷から見つかったマーニーの日記
昼間、歩いて湿っ地屋敷を訪れた杏奈。なんと屋敷は改装工事に入っており、そこには東京から来たという兄妹が引っ越してきていました。 妹の彩香から「あなた、マーニーでしょ」と言われ、古い日記を見せられる杏奈。そこには、杏奈が花売り娘として参加したパーティのことが書かれていました。 「マーニーは自分が空想で作り上げた人物」と思っていた杏奈。しかし目の前には彼女の日記が実在しています。 マーニーは空想上の存在ではなく、実在しているのでしょうか?
謎6. サイロでの恐ろしい出来事
湿地に潮が満ち、杏奈とマーニーは、マーニーが子供の頃とても怖い思いをしたという丘の上のサイロを訪れることになります。しかしその際、マーニーの様子が時々おかしくなってしまいます。 杏奈と一緒にいるのに、杏奈を幼馴染の和彦と呼ぶマーニー。杏奈は、マーニーが迎えに来た和彦と共に杏奈を置いてサイロを去ってしまうのを見ます。 なぜマーニーは杏奈ではなく和彦に話しかけ、杏奈を置いて去ってしまったのでしょう?
謎7. 幼い頃に持っていた人形
目が覚めると、杏奈はサイロの中で1人ぼっち。「あなたまで、私を置いて行ってしまった」と、マーニーに置いて行かれたことを悲しみ、泣きながら雨の中を走ります。 この時一瞬、まだ幼い杏奈が祖母を亡くした際のお葬式のシーンが映ります。杏奈が抱えているのは金髪の巻毛に水色ワンピースのお人形。 なぜ人形が、マーニーにそっくりなのでしょうか……?
謎8.マーニーは何者?夢なのか幽霊なのか
彩香が見つけた絵によってマーニーの正体が最後に明らかになります。夕暮れ時の湿っ地屋敷だけでなく、夢の中でも出会うマーニー。 結局大人になった杏奈の前に現れたマーニーは何者だったのでしょうか?
【解説】明らかになったことと残された謎
明らかになったこと
謎1.湿っ地屋敷
杏奈が湿っ地屋敷に惹かれたのは、幼い頃に祖母が遺した写真で見ていたから。 療養が終わり、札幌に帰る杏奈を養母・頼子が迎えに来たとき、頼子は、古いアルバムからセピア色の古い写真を取り出しました。 その写真は、杏奈が頼子の家に来たときずっと手に握りしめていたものだといいます。写っていたのはなんと湿っ地屋敷。裏には「わたしの大好きな家 マーニー」の文字がありました。
謎5.日記の意味
マーニーは祖母として、娘夫婦を亡くした孫の杏奈を引き取った後、杏奈を寝かしつけながら自分が幼い頃の話をきかせていました。湿っ地屋敷でパーティーがあったことや、近所の女の子と遊んだこと、和彦とサイロに行ったことなどです。 当時まだ幼かった杏奈は、そのことをずっと忘れていました。けれど心の奥底では覚えていて、実際に湿っ地屋敷を訪れたり日記を見たことをきっかけに、眠っていた記憶が少しずつ夢に現れ始めていたようです。
謎6.サイロでの出来事
サイロで遭難した際、マーニーは杏奈ではなく和彦と去っていってしまいました。 これは杏奈がマーニーの人生を追体験していたから。マーニーが実際にサイロで怯えていた際、助けてくれたのは和彦だったのです。
謎7.人形がマーニーに似ている理由
杏奈はお葬式などの回想シーンで、マーニーとよく似た金髪ロングの髪型と水色の洋服を着た人形を大事に持っていました。 実際には見たことがない祖母・マーニーの幼少期の姿は、幼いころに見ていた祖母の容姿と大事にしていた人形とがごっちゃになって杏奈の意識の中で作り上げられたのではないでしょうか。
謎8.マーニーは何者?
杏奈が出会ったマーニーは、幼い頃に祖母から聞いていた思い出の内容とマーニーの日記の記録をもとに作り上げた空想上の存在だったのです。 見た目は祖母の風貌と、杏奈が幼い頃に持っていた人形の姿とが混ざって作り上げられた姿だったのでした。
残された謎
マーニーは杏奈が想像した存在と考察しましたが、それではいくつか解決できない不可解な点・残された謎があります。
謎2.ルールの意味
マーニーに会うためにはいくつもルールがありました。マーニーが想像上の存在であるならルールは必要ないはずです。
謎4.なぜ忘れてしまうのか?
名前が思い出せず会えなくなる場面もありましたが、杏奈がマーニーを作り上げたならなぜ記憶がリセットされたのでしょうか。
杏奈の意識が作り上げただけではない?
杏奈がマーニーと体験した事柄の中には、杏奈が無意識に作り上げた「空想上の友達」だけでは説明できない、現実と夢が交錯したような体験も混ざっています。 マーニーに会うためにルールが必要だったり、マーニーの存在を忘れてしまったりと、ただ空想に耽っていただけとは考えにくい描写があるのです。 もしかすると杏奈の状況を心配したマーニーが、孫のために霊となって来てくれたのかもしれません。マーニーは本当に霊的な存在だったのかも。 どの可能性も否定できない以上、実際にどうだったのかは見る側の想像力にゆだねられています。
【解説】マーニーの人生・正体
幼少期
マーニーはイギリス人の父と、日本人の母の間に生まれました。しかし父は年に2回ほどしか帰ってこず、母も社交界の男性と浮気をしているよう。 両親に放ったらかしにされ、マーニーをいじめるばあやとねえやに囲まれながら、家の外になかなか出られない生活を送っていました。 マーニーの母が父とは別の男性と出かけるシーンから一説では浮気をしていたと言われており、父にも本国に妻子がいたとか。複雑な家庭環境だったようです。 しかしあるときパーティーで和彦と出会い、マーニーは救われていきました。
久子の正体
孤独なマーニーにも、わずかながら友人はいました。それが「花売り娘」です。 一緒にテラスで踊ったり、パーティーに花売り娘として入り込ませたり……孤独なマーニーにとって貴重な存在だったはずです。 劇中でははっきりとは示されませんが、久子さんがその女の子ではないでしょうか。
謎3.十一の正体
マーニーの日記には、「からかわれても何も言い返さない」という無口な少年が何度か登場していました。少年はおそらく、映画で最初に杏奈を救った十一(といち)ではないかと考えられます。 十一は終盤で「マーニー……青い窓の向こうに閉じ込められた少女。遠い昔の話しだ」と発言。マーニーのことを知っているようでした。 十一は原作設定では11番目に生まれた男の子という設定で、「ワンタメニー」と呼ばれています。意味は「one too many」、1人多く生まれてしまった「余りん坊」だと母から呼ばれてたのです。 恐らく、窓の向こうに閉じ込められているマーニーと仲間から疎外される自分とを重ねて親近感を持ち子供の頃に通い、大人になった今でもずっとあの湿地にいるのではないのでしょうか。
大人になってから
久子さんはその後のマーニーがたどった人生のこともよく知っていました。 札幌で和彦と結婚し、女の子をもうけたこと。しかし和彦は早くに亡くなり、自分も体調を崩したマーニーは、一人娘を全寮制の学校に入れるしかなかったこと。 戻ってきた娘とは打ち解けることができず、娘は家出して結婚。しかし数年後、娘夫婦は事故で亡くなってしまいます。マーニーは1人残された孫娘を引き取りますが、自身も重い病気にかかり、次の年には亡くなってしまいました。
マーニーが夢の中で残した杏奈への最後の言葉の意味
マーニーは杏奈との別れのとき、「大好きな杏奈、自分はもう、ここからいなくならなきゃならない、あなたにさよならしなければならない、だから許してくれるといって」という言葉を残しています。 ここで彼女が杏奈に許してほしいといっているのは、“サイロに杏奈を置き去りにしてしまったこと”と、“自分が湿っ地屋敷から去ること”のどちらの意味にも取ることができます。 さらに幼い孫娘をひとり遺してこの世を去った祖母の、彼女への謝罪としてもそのまま通じるのではないでしょうか。 そして杏奈の「あなたを許すわ。あなたのことが大好き。」という言葉も、目の前にいるマーニーへの言葉であると同時に、亡き祖母への言葉と考えることができます。 そしてこのシーンからエンディングまで、杏奈は当初「許せない」と語っていた自身の過去のことを、穏やかに受け入れ始めているようです。
考察まとめ:傷ついた少女の再生の物語
両親と祖母の死によって傷ついた杏奈はマーニーと出会い、初めてできた友達として楽しい時間を過ごしました。しかしそれらの出来事は、すべて杏奈が幼い頃に祖母から聞かされていた話を追体験したものだったのです。それでもマーニーと親友になったことで、杏奈の心の傷は癒えていきました。 そして、マーニーときちんと別れの言葉を交わし、「永遠に忘れない」と誓うことで、杏奈は過去を受け入れ立ち直ります。それは、彼女が両親や祖母に対してはできなかったこと、お別れを言うことを、マーニーに対してはできたからではないでしょうか。 『思い出のマーニー』は、過去に傷ついた経験や過ちを犯し、後悔を持ち続ける少女の再生の物語です。つらい別れを経験しても、それがのちの人生にいい影響を与えることもあると伝えているのです。
『思い出のマーニー』と他のジブリ作品の関係を考察
『思い出のマーニー』には過去のジブリ作品と似ているシーンが存在します。本作を見た人が過去のジブリ作品を思い出せるようにしているのかもしれないですね。 久子が絵を描くシーンは『風立ちぬ』の里見菜穂子が絵を描いているシーンを彷彿とさせます。『千と千尋の神隠し』のオープニングシーンも、なんとなく似ていますね。 また、湿地のなかにぽつんと佇む湿っ地屋敷は、『となりのトトロ』でサツキとメイの姉妹が住む、森の中の一軒家を思い起こさせます。 再度『思い出のマーニー』を鑑賞して、どこのシーンがどのジブリ作品と似ているかを考えるのも楽しいかもしれません。
『思い出のマーニー』を考察しながら見返してみよう!
『思い出のマーニー』の謎・疑問についての解説、考察をまとめてみました。 「マーニーとは一体誰なのか?」という問いは、映画のストーリーを引っ張る重要な要素の一つで、おそらく初見ではその謎解きを中心に見ることになるかと思います。 そして二回目以降、最初から「マーニーは杏奈の祖母なのだ」と分かっている状態で見ると、セリフの一つ一つがまた別の意味を持って、ストーリーが広がって行きます。『思い出のマーニー』は何度も見返したくなる、そんな映画なのです。