2023年1月9日更新

『思い出のマーニー』杏奈が問題児だけど心に刺さる!病気や目の色が青い理由を考察

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『思い出のマーニー』

スタジオジブリの『思い出のマーニー』(2014年)に登場する主人公・杏奈。過激な言動やひねくれた性格が原因で、一部では精神病を患っているのではとまで囁かれています。しかし一部の人にはどうしようもなく共感できてしまうのもまた事実。 この記事では杏奈の人格を紐解きながら、彼女の持つ魅力に迫っていきます。

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『思い出のマーニー』杏奈の基本情報

思い出のマーニー 杏奈
氏名 佐々木杏奈
年齢 12歳(中学1年生)
病気 喘息
その他 イギリス人の血が1/8だけ入っているため目が青い
声優 高月彩良

杏奈は中学1年生、12歳の女の子です。喘息の療養のため海辺の村へ来て、マーニーと出会うことになります。 無気力で自己肯定感の低い性格ですが、人に対して攻撃的な言動をとることもあり、周囲を困らせる一面もあるようです。

杏奈が和彦と間違えられたのはなぜ?

『思い出のマーニー』

サイロで杏奈が「和彦」と呼び間違えられたのは、マーニー自体がそもそも杏奈の記憶によって作り出された過去の存在だったからです。 杏奈は幼い頃聞いた祖母の話や日記によって、マーニーと和彦がかつて2人でサイロに来たことを知っていました。その記憶を杏奈の意識が再現したため、マーニーは杏奈のことを和彦と呼んだのだと考えられます。

杏奈が心の病気って本当?

思い出のマーニー

杏奈はその刺々しい言動や被害妄想と自己否定に囚われた性格などから、統合失調症やPTSD、あるいは境界性人格障害などの病気を患っているのではと囁かれているようです。 確かに作中で描写される杏奈の否定的な性格や自発性・意欲の低下した姿、またそれによる対人トラブルからはそのような病気と疑える余地はあります。しかし制作サイドはそういった設定を明言しておらず、そこまでの想定はしていなかったようです。 杏奈の性格や言動はあくまでも「心に傷を抱えた人物像」をイメージして作られたものであり、その結果、心の病気を患っているような要素が表れたものと考えるのが妥当ではないでしょうか。

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なぜクズと言われる?問題行動ベスト3

ジブリヒロインらしからぬ行動の数々が物議を醸している杏奈。まずは話題になった問題行動(?)を3つ紹介します。

3位:「メェメェうるさいヤギみたい」

『思い出のマーニー』

杏奈が列車のなかで自分を引き取って育ててくれている義母・頼子を思い出しながら放った言葉。自分を心配してくれる頼子に対しこんなにも否定的な発言をするなんて、ちょっと恩知らずですね。

2位:「似合うわけないじゃん!おせっかい」

療養先でお世話になっている大岩セツに「浴衣を貸してあげるよ」と言われた際に放った言葉。自分の面倒を見てくれる人が親切心で言ってくれたことなのに、辛辣な言葉を返すのでハラハラしてしまいますね。

1位:「太っちょ豚!」

『思い出のマーニー』

1つ年上の信子が杏奈のコンプレックスである青い目を「綺麗」と言ってきたときに放った言葉。相手は悪気なく褒めているだけなのに、直情的に怒り、あまつさえ相手の容姿を罵倒するのはあまりにもひどい対応ですね。

尖ってるけど共感できる4つの理由

杏奈への共感ポイント
  1. 人生が過酷すぎる
  2. 人と深く関わって傷つくのが怖い
  3. 恵まれた環境に馴染めない
  4. 最後はマーニーを“許す”

周囲の人々に対するひどい言動で、一部ファンのあいだでは「クズ」とまで言われてしまう杏奈。 しかしながら筆者は、そんな杏奈の言動にどうしようもなく共感できてしまいます。本当は寂しいのについ尖った発言をしてしまう。マーニーのような無償の愛をくれる存在を求めてしまう。 ここからは杏奈が愛されるキャラクターである4つの理由を解説していきます。

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①人生が過酷すぎる

『思い出のマーニー』

実は杏奈は事故で両親に先立たれ、親戚をたらい回しにされた過去があります。そのうえ引き取ってくれた祖母も亡くなってしまい、最終的には養子に出されてしまいました。 幼い頃に家族を亡くし、そのうえ親族にも煙たがられていた杏奈。この経験から彼女は「自分はいらない存在」と自己否定をすることに。これだけ多くの傷を抱えてしまえば、周囲の人が自分から離れていく存在だと感じ、攻撃的な態度を取るのも無理はないように思えます。

②人と深く関わって傷つくのが怖い

過去のトラウマから周囲にトゲトゲと当たり散らし、深く関わらないようにする杏奈。彼女はいずれ自分から離れていく人々と深い関係にならないことで、自分が傷付くことを防いでいるように思えます。 杏奈のように傷を負っていなくても人と深く関わることが怖い、他者が離れていくことが怖いという感情は多くのひとが持つものではないでしょうか。そんな気持ちを代弁するような杏奈の言動は、痛々しくも共感できるものに見えてしまいます。

③恵まれた環境に馴染めない

『思い出のマーニー』

これまで辛い経験を重ねて来た杏奈ですが、現在はやさしい義母と暮らしており、過去に比べればそれほど苦しい環境にはいないはずです。しかしそれを素直に受け入れられず、自身の被害妄想でどんどん自分を追い込み、周囲へ当たり散らしてしまうのが杏奈。 これはいずれ訪れる不幸や孤独に対する、杏奈なりの防御策なのかもしれません。常に最悪のことを考え幸せを素直に受け入れられない彼女の姿に、共感してしまう人々も多いのではないでしょうか。

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④最後はマーニーを“許す”

『思い出のマーニー』

周囲に攻撃的だった杏奈ですが、マーニーとの出会いで祖母の愛を再確認し、最後にはマーニーの愛を受け入れ「許してあげる。あなたが好き」と先立った祖母を許しています。 あまりにも不幸な境遇に傷付き、怒り、訪れた幸せも受け入れることができなかった杏奈。そんな彼女が成長して幸せを受け入れられるようになった姿に、自身の凝り固まった心がほぐされ、筆者も彼女と共に晴れやかに未来を見つめられるような気がしました。

杏奈がジブリらしくない性格になった理由は?

『思い出のマーニー』

米林監督は杏奈を「今までジブリにいなかったような……、あんまりスカッとした女の子じゃない」と語っています。そうなったのは原作の影響はもちろん、『わたしはわたしが嫌い』と言い切ってしまうようなネガティブで等身大な女の子を描くことに挑戦したからです。 孤独に逃げた女の子が、人と目を合わせて会話できるようになる。そんなささいな成長を丁寧に描くことに意味を見出した結果、杏奈というヒロインが生まれたようです。

声優:高月彩良

高月彩良

杏奈の声優を担当したのは女優として活躍する高月彩良です。多数のテレビドラマ・映画へ出演し、音楽活動もするなど多才さが際立ちます。 アニメ声優を担当したのは『思い出のマーニー』が初めてだったようですが、監督らは彼女を杏奈の声優に抜擢した理由の1つとして「問題を抱えているひとの声みたいに聞こえた」ことを挙げています。 制作サイドにはそんな声を持つ人が映画のなかで自分の心を開放していくことで、より深い感動を伝えたいという意図があったようです。

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『思い出のマーニー』杏奈は等身大な思春期の女の子だった

『思い出のマーニー』

一見問題を抱えた性格の悪い女の子に見える杏奈ですが、その実は過去の傷を抱えながら精一杯生きている等身大な思春期の女の子でした。 そのことを知ってから『思い出のマーニー』を見返すと、彼女の言動に共感する部分があるかもしれません。この機会に是非、本作を見直してみてはいかがでしょうか。