ジブリ映画『紅の豚』登場人物&声優一覧!大人の魅力あふれるキャラクターを演じたのは?
宮崎駿監督が掲げた「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のためのマンガ映画」というコンセプトのもと製作され、1992年7月に公開されたジブリ映画『紅の豚』。 主人公である豚のパイロット・ポルコをはじめとして、本作には魅力的なキャラクターが数多く登場します。そこでこの記事では、本作の登場人物&声優陣を一挙紹介!あわせて声優にまつわる小ネタも紹介していきます。
登場人物&声優一覧
登場人物&声優 | ポルコ・ロッソ役/森山周一郎 マダム・ジーナ役/加藤登紀子 フィオ・ピッコロ役/岡村明美 ドナルド・カーチス役/大塚明夫 ピッコロおやじ役/桂三枝(現:桂文枝) マンマユート・ボス役/上條恒彦 フェラーリン少佐役/稲垣雅之 |
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ここからは登場人物&声優ごとに、詳しく解説していきます!気になるキャラクターがいる場合は、ぜひ記事上部の目次を利用してくださいね。
ポルコ・ロッソ役/森山周一郎
主人公のポルコは豚の姿をしており、口ひげにサングラス、そしてトレンチコートが特徴的です。イタリア語で「紅の豚」を意味するポルコ・ロッソ(Porco Rosso)を名乗っていますが、本名はマルゴ・パゴット(Marco Pagot)といいます。 第一次大戦中にアドリア海のエースパイロットとして名を馳せるも、自分だけ戦争で生き残った罪悪感からか魔法をかけて豚になりました。 作中の時点では、空賊を殺さず撃墜する賞金稼ぎとして生活しています。イタリア空軍に所属していた退役軍人ですが、戦争ではないとの理由から空賊を殺すことはありません。愛機は赤く塗ったサボイアS.21試作戦闘飛行艇です。 豚の姿になった本当の理由やジーナとの恋愛の結末など、本作においてもっとも謎が多いキャラクターだといわれています。
森山周一郎
ポルコ・ロッソの声を演じたのは森山周一郎です。森山はもともと劇団出身の俳優で、渋い声質を買われて吹き替えの草創期から声優としても活躍。ジャン・ギャバンなど、主にハードボイルド系の俳優を多く担当しています。 宮崎駿監督は、森山がテリー・サバラスを吹き替えた『刑事コジャック』のファンだったことから、ポルコ・ロッソ役へ起用したそうです。 一方の森山は、宮崎監督からの電話でアニメ映画=子ども向けのマンガの話だと思い、にわかに顔が曇ったとか。そこをすかさず娘が「断っちゃダメ!!」と諌めて、ポルコ役を引き受けることになったそうです。 そんな森山ですが、共演した加藤登紀子が「(「いい奴は皆死ぬな」と言った森山の声を聞いて、)瞬間的に、私はジーナになれた」と語るほどのはまり役でした。2021年に、惜しまれつつも86歳で亡くなっています。
マダム・ジーナ役/加藤登紀子
本作のヒロインは、アドリア海の飛行艇乗りが1度は恋するというマドンナのマダム・ジーナ。ポルコ・ロッソとは幼なじみであり、「ホテル・アドリアーノ」の経営者でもある美女です。 古くから飛行機乗りと交流があるようで、空軍内部のみならず広い情報網を持っていることが伺えます。ジーナは飛行機乗りと3度の結婚歴がありますが、その3人全員と死別しました。
加藤登紀子
“飛行艇乗りの憧れ”ジーナの声を演じたのは、本作の主題歌も担当した加藤登紀子です。 声優ではなくシンガーソングライターで、1966年の『誰も誰も知らない』でデビュー。女優としても活動する一方で、ミリオンセラーを記録した『知床旅情』や『百万本のバラ』などのヒット作を生みました。 「飛ばねえ豚はただの豚だ」、「馬鹿っ!」という有名なやりとりは、加藤がもっとも苦労した場面だったそうです。「もっと、もっと怒って下さい」と宮崎監督からダメ出しが入り、36回もやり直したといいます。 加藤は『紅の豚』の主題歌を担当した縁で、2018年には高崎音楽祭で「ジブリソングを歌う」コンサートをプロデュース。夏木マリや中川翔子とともに出演しました。
フィオ・ピッコロ役/岡村明美
フィオ・ピッコロは、祖父が経営するミラノの飛行艇製造会社「ピッコロ社」の設計士。 戦時中、ポルコと同じ部隊に所属した父親からエースの逸話を聞かされたため、ポルコに憧れを抱いていました。サボイアの再設計を任せられる確かな技能を備えています。
岡村明美
岡村明美は『紅の豚』でデビューすると同時に、フィオ・ピッコロ役への抜擢で注目されました。 1969年生まれの岡村は、『紅の豚』製作時はマウスプロモーション付属養成所を出たばかりの新人。後に宮崎駿は「(岡村の)セリフのぶっきらぼうさがよかった」と語っています。 また宮崎は、収録で夜遅くなったときには岡村を車で送っていくほど気にかけていたとか。ところが宮崎はその後で道に迷ったらしく、後日岡村は音響監督に叱られてしまったそうです。 フィオ役以降も気の強い女性役を演じることが多く、アニメ・ゲーム・吹き替えなどで幅広く活躍。そのほかの出演作には、アニメ『ロミオの青い空』のビアンカ役や『ONE PIECE』のナミ役などがあります。
ドナルド・カーチス役/大塚明夫
空賊連合が用心棒として雇ったポルコのライバルであるドナルド・カーチスは、自らの名前と同じカーチス水上戦闘機を駆る傭兵パイロット。アリゾナ生まれのアメリカ人ですが、イタリア人の血を引く祖母を持つクォーターです。 美女とみれば口説かずにはいられない軽薄な性格をしており、フィオやジーナを次々と口説きました。パイロットとしてはとても優秀で、ポルコと渡り合える技術を有しています。
大塚明夫
ポルコと激戦を繰り広げたカーチスを演じるのは、独特の低い声質が特徴的な大塚明夫。 洋画の吹き替えへの出演が多く、スティーヴン・セガールは専属で担当しています。主演作のなかでは、ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズや、アニメ「ブラック・ジャック」シリーズなどが有名です。 またスタジオジブリの作品では『紅の豚』のほかに、『ハウルの動く城』の国王役も務めています。 日本を代表する声優の1人として幅広く活躍しており、2021年には「ルパン三世」シリーズの次元大介役に起用されて話題に。半世紀以上にわたり次元の声を演じた小林清志からバトンを渡され、「清志さんの想い、たしかに掴んで離さないよう精進します」と語っていました。
ピッコロおやじ役/桂三枝(現:桂文枝)
※画像左上の黒髪でチェックシャツを着た男性 ピッコロおやじはポルコの昔なじみであり、ミラノにある飛行機製造会社「ピッコロ社」の社長です。3人の息子がいますが、出稼ぎで家を離れているので、代わりに親戚の女性をかき集めて工場を経営しています。
桂三枝(現:桂文枝)
声優を担当したのは、「いらっしゃーい!」でおなじみの桂三枝こと6代目桂文枝。 過去には高畑勲監督の『じゃりン子チエ』にも、花井渉役で出演しています。また俳優としても『真田丸』や『小さな巨人』などに出演しているほか、監督・脚本・原作として『ゴルフ夜明け前』なども手がけました。 文枝が『紅の豚』に出演するよう計らったのは、ポルコ役を務めた森山周一郎だったそうです。森山が関西の番組に出演したとき、文枝から「どうしても吹き替えをやりたい」と相談されたことがきっかけでした。 そこで森山は宮崎監督と直接交渉。宮崎監督はピッコロの役を大幅に書き足して文枝の起用となったそうです。
マンマユート・ボス役/上條恒彦
※画像左から2番目のストライプ柄のスーツを着た男性 いつもポルコと小競り合いを続けているマンマユート団。そこのボスがマンマユート・ボスです。 一匹狼を気取りながらも空賊連合と手を組んだり、子どもに優しかったり、フィオにおだてられて調子に乗ったりと、なにかと人間臭い部分が魅力的なキャラクターです。
上條恒彦
マンマユート・ボスを演じたのは、歌手としてだけでなく、ドラマ『やすらぎの郷』や映画『千利休 本覺坊遺文』などで俳優としても有名な上條恒彦。 宮崎駿監督作品では、『もののけ姫』のゴンザや『千と千尋の神隠し』の父役(油屋の従業員)などを演じています。いずれも共通点として、どこか憎みきれない役というのが挙げられるでしょう。 2016年の『週刊ポスト』の記事によれば、マンマユート・ボスの役はほかに予定していた人物が駄目になったため上條に回ってきたとか。役作りについて厳しい指導はなく、「愉快にやればいいみたいな雰囲気」だったそうです。 そうして画面に向かって芝居をしていた上條がブースに目を向けると、すっ転んで笑っている宮崎監督の姿が。これを見て上条は、「ああ、これでいいんだ」と安心したといいます。
フェラーリン少佐役/稲垣雅之
ポルコの元戦友で、イタリア空軍で少佐を勤めるのがフェラーリン少佐。彼はポルコに軍に戻ってくるよう説得しつつも、軍からポルコを庇ってくれているという複雑な人物です。 実在のパイロットであるアルトゥーロ・フェラーリンがモデルとされていますが、劇中では実在したフェラーリンと同一人物であるかどうかは明言されていません。
稲垣雅之
声優を務めるのは稲垣雅之。声優としてテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマトIII』やOVA版『銀河英雄伝説』に参加しているほか、俳優として『劇場版 SPEC〜天〜』や『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜 スペシャル』などにも出演している人物です。 また稲垣はエンターテイナーを育成する「EXPG STUDIO」のインストラクターも務めています。ここで高島政伸や高橋克典、長澤まさみ、元AKB48メンバーなどを含む多数の一流芸能人を指導しており、その実績は業界トップクラスです。 さらに稲垣は、丹阿弥谷津子主演の舞台『人形の贈り物』などで演出家としても活躍。芸能活動ばかりでなく『褐色の光線 アクセル全開』や『事件の秘密はワンピース』といったミステリーの執筆でも才能を発揮しています。
バアちゃん役/関弘子
※画像左奥のスカーフをかぶった3人の女性 バアちゃんは、ポルコの愛機・サボイアS-21の改修にあたるピッコロ一族の女性たちです。ポルコとは昔からの知り合いで、彼のことを「ポルチェリーノ(ブタちゃん)」と呼んで可愛がっています。 その反面、ポルコを狙う秘密警察の行動を好奇心から観察するなど怖いもの知らず。サボイアの改修には、ひ孫に小遣いをあげたくて参加しました。
関弘子
バアちゃん役の声を務めたのは、劇団俳優座出身の女優・関弘子です。 1929年に東京でソプラノ歌手・関種子を母に生まれた関弘子は、自由学園を卒業後、劇団青年座の立ち上げにも参加。その後1950年代から2008年に亡くなるまで、舞台や映画、ドラマばかりでなく、朗読や語りの第一人者として長年活躍してきました。 スタジオジブリの作品では『魔女の宅急便』のバーサ役も務めています。
宮崎駿の転換点?『紅の豚』の後から声優起用が激減!
この記事では、ジブリ映画『紅の豚』に登場する個性的なキャラクターと演じた声優陣を紹介しました。 後にスタジオジブリの作品で、プロの声優をほとんど起用しなくなっていく宮崎駿監督。『紅の豚』の段階では、ヒロインのジーナを加藤登紀子が演じるなどすでに片鱗が見え隠れする一方で、まだまだ大塚明夫などの実力派声優も起用されています。 どうやら監督にとって本作は、過渡期の1本だったと推測できますね。声優ではない人物を起用して演出指導をする宮崎駿監督の力は、この頃から徐々に育まれていったのでしょう。