2019年8月1日更新

「ファンタスティック・ビースト」を手軽に深堀り!大人向けの深いテーマが隠されている?【黒い魔法使いの誕生まで】

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
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「ハリー・ポッター」のスピンオフ作品「ファンタスティック・ビースト」シリーズ。今回は、2作目「黒い魔法使いの誕生」までの内容を「ハリポタ」シリーズと比較しつつ、その深いテーマを考察していきます。

「ファンタスティック・ビースト」シリーズは大人向け?「ハリー・ポッター」シリーズとの繋がりからテーマを考察【ネタバレ注意】

ファンタスティック・ビースト
© Warner Bros. Pictures

映画「ハリー・ポッター」シリーズに登場する、ホグワーツ魔法魔術学校の教科書『幻の動物とその生息地』。この本の著者であるニュート・スキャマンダーが、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの主人公です。 「ファンタビ」は、「ハリポタ」と同じく魔法の世界を舞台にしていますが、ハリーたち活躍していた時代よりも70年ほど前の話が描かれています。 また、主人公や時代背景の違いから、「ハリー・ポッター」とは一風異なる、“大人向け”な深いテーマも感じられる作品です。 今回は、そんな「ファンタビ」のあらすじを振り返りながら、「ハリポタ」シリーズとの繋がりや、隠されたメッセージ性を深堀りしていきたいと思います。 ※この記事では、小説版「ハリー・ポッター」の内容や、「ファンタビ2」のネタバレを含んでいます。気を付けて読み進めてください。

【ネタバレ】「ファンタビ」あらすじは?ハリーが生まれるよりも前の魔法界を描く

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のあらすじ

1926年のアメリカでは人間界・魔法界との関係の悪化、さらに闇の魔法使いグリンデルバルドの脅威にさらされていました。 そんな中でアメリカにやってきたのが、イギリス出身の魔法動物学者のニュート・スキャマンダーです。 彼のトランクには、保護したたくさんの魔法動物が詰め込まれていましたが、そのうちの一匹が逃亡。その過程でノー・マジ(非魔法使い)であるジェイコブのトランクと取り違えた末、動物たちが街に放たれてしまいます。 一部始終を見ていた元闇払い(闇の魔法使いに対抗する魔法使い)であるティナは、妹のクイニー、さらにジェイコブも巻き込み、ニュートと共にいなくなった魔法動物を探しに行くことになるのです。

順調に魔法動物を回収していくニュートたちでしたが、ティナは、彼のスーツケースをアメリカ合衆国魔法議会に提出。 すると、街で多発する闇の魔法の首謀者だと断定され、ニュートとティナは死刑宣告されてしまいます。しかし、何とか2人は危機を脱出。クイニ―、ジェイコブと合流して、議会を後にしました。 そんな中、街ではかねてより被害があった、闇の魔法による事件が多発。闇の魔法の正体がオブスキュラス(魔法の力を無理に抑える少年少女の暴走)であると考えたニュートは、その力を宿すものを救いたいと考えます。 一方で、ティナの上司グレイブスはクリーデンスという少年に接触。グレイブスもまた、街で起こる事件がオブスキュラスの力によるものだと考え、独自にその力を持つものを探していたのです。 オブスキュラスの正体はクリーデンスでした。あることをキッカケに暴走した彼は、街中で破壊の限りを尽くします。そこへニュート達も駆けつけ、クリーデンス、そしてグレイブスとの三つ巴に。 結果的にクリーデンスは、駆けつけた闇払いたちによって消滅。そしてグレイブスの正体が、変装した犯罪者グリンデルバルドであることが分かり、彼は逮捕されました。 事件が収束したのち、ニュート達はノー・マジ(非魔法使い)のジェイコブと別れることに。また、目的を果たしたニュートもイギリスへと戻り、物語は幕を閉じました。

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』のあらすじ

アメリカが舞台だった「魔法使いの旅」の続編「黒い魔法使いの誕生」の主な舞台となるのはフランスのパリ。部分的にイギリスのホグワーツも登場します。 本作は、再びグリンデルバルドが脱獄するところから物語が始まります。 ニュートは、ロンドンで恩師ダンブルドアに再会。彼に打診され、クリーデンスやグリンデルバルドを追跡することに。そんな中、クイニ―とジェイコブがニュートの元を訪ねます。ジェイコブは、クイニ―との痴話喧嘩の末に別れ、ニュートとともにパリへ行くことに。

パリにはニュートより先に、クリーデンスの行方を追っていたティナがいました。ニュートとジェイコブは、彼女をピンチから救い出し、再会します。 一方、クリーデンスはナギニという女性とともに、サーカス団員として身を隠していました。彼らはクリーデンスの出自を探し求めていたのです。 また他方では、グリンデルバルドが自信の信奉者を集めて、勢力を拡大していました。ニュートたち、そしてイギリスの闇払いたちは、グリンデルバルドの集会に潜り込み偵察。しかし、襲い掛かってきた信奉者を闇払いが殺してしまい、その場は混乱に陥ります。 最終局面では、グリンデルバルドと闇払い、ニュート達だけがその場に残ることに。グリンデルバルドは、青い炎の円を出現させ、そこを通った者に死か永遠の服従かを選ばせるのです。彼の思想に共感したクイニ―は、炎をくぐり抜けてしまいます。 クイニ―とともにその場から立ち去ったグリンデルバルド。残った青い炎は巨大化し、パリの街を破壊していきます。「賢者の石」の設計者、ニコラス・フラメルの力もあって、何とか街は落ち着きを取り戻すのですが、ニュートやティナ、ジェイコブの心に立ち込めた暗雲は晴れませんでした。 場面は変わり、グリンデルバルドはクリーデンスに再会。彼は、クリーデンスの本名を継げます。その名は、アウレリウス・ダンブルドアというものでした……。

このように「ファンタスティック・ビースト」シリーズは、シリーズ全作を通して毎回違う都市が舞台となることが明きらかになっています。 そうなると3作目の舞台はどこになるのか。次の舞台としてグリンデルバルドが建てた監獄「ヌルメンガード」がドイツ風の名前であることから、ドイツが舞台にという噂があります。

「ハリー・ポッター」シリーズにも登場するあのキャラクターたちが

ダンブルドア ファンタビ ファンタスティックビースト
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「ハリー・ポッター」シリーズと共通の世界を描く「ファンタスティック・ビースト」シリーズ。本作には、「ハリポタ」シリーズで活躍するキャラクターたちの若かりし頃が描かれています。 「黒い魔法使いの誕生」では若かりし日のダンブルドアが登場。ニュートを困らせる様子からは、昔から彼がお茶目な人物だったことが分かります。また、マクゴナガル先生もホグワーツの教員として登場していました。 一番驚くのは、ナギニが人間の姿で登場していること。中華風のドレスに身を包んだ美女として描かれています。彼女は「血の呪い」によって、成長とともに動物に変わっていってしまう血族だったということが明かされました。 のちにヴォルデモート卿を名乗るトム・リドルは、「ファンタビ」で描かれる1920年代に誕生しています。そして本作の敵グリンデルバルドがダンブルドアに敗れるのは、1945年のことだと、小説版ではすでに明らかになっています。もしかしたら作中で、リドルとナギニの出会いが描かれるかもしれませんね。 さらに、主人公のニュート・スキャマンダーも、敵のグリンデルバルドも、すでに「ハリー・ポッター」に登場していました。グリンデルバルドは「死の秘宝」にて、牢屋にいる老いた姿が描かれています。ニュートは「アズカバンの囚人」にて、忍びの地図に名前だけ登場していました。

シリーズ共通の世界観!おなじみの呪文や魔法アイテムが多数登場

ファンタビ  ファンタスティック・ビースト ニュート
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「ファンタスティック・ビースト」シリーズにも、魅力的な魔法やアイテムが多数登場します。 「ファンタビ」で多用される呪文はオブリビエイトと姿くらまし(姿現し)。オブリビエイトは忘却の呪文で、魔法をかけた対象から部分的に記憶を奪い去ります。姿くらましは、瞬間移動のような魔法です。これらが多用されるのは、まだ魔法界と人間界の共立が難しい時代だったという背景があるからかもしれません。 また、「賢者の石」で登場したみぞの鏡や、ポートキーなどのアイテムも登場。みぞの鏡は、映った者の望みを現す鏡、ポートキーは、ある場所からある場所へ瞬間移動するための道具です。 呪文や魔法アイテムは「ハリー・ポッター」シリーズから、多くの人にとって憧れの対象でしたね。「魔法」によるファンタジーな世界観は、「ファンタビ」でもやはり見どころの一つとなっています。

同じ世界観ながら「ハリー・ポッター」シリーズより大人向け?深いテーマが魅力

主人公の違いが物語の方向性を変えた?

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』 エディ・レッドメイン
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「ファンタビ」は、「ハリー・ポッター」と同じく魔法の世界を描いていながら、どこか大人向けな深いテーマを感じさせる物語になっています。 理由の一つは、主人公ニュートがすでに成熟した大人であること。「ハリポタ」では、ハリーは11歳でホグワーツに入学し、年長者になるまでの成長が描かれました。しかし「ファンタビ」は、魔法界の存在ありきで物語が始まるため、“魔法の世界の素晴らしさ”はそこまで強調されないのです。 この作風が特に顕著に表れたのは、2作目「黒い魔法使いの誕生」です。1作目では個性豊かで魅力的な魔法動物たちの存在が、魔法界のファンタジックで鮮やかな世界観を表現してくれました。しかし2作目では、「謎のプリンス」や「死の秘宝」を思わせる、ややダークな作風に。 魔法という存在の華やかさは基礎にしつつ、より人間ドラマに寄った印象を受けます。主人公ニュートとティナ、クイニ―とジェイコブ、それぞれの恋愛模様や、彼らが抱える心の闇に焦点が当たることが多いのです。 主人公たちがすでに成熟した大人だからこそ、彼らの感情や人間性は直接的に語られることが少ないのかもしれません。それゆえ鑑賞者は劇中の描写や細かな言動から、彼らの真意や心の動きを読み取り、その分解釈の幅も広がるような作風になっています。

時代背景によって現実味を帯びたストーリーになっている?

「ファンタビ」1作目の舞台は、1926年。第一次世界大戦(1914年~1918年)と第二次世界大戦(1939年~1945年)の中間に位置する時代です。2005年、イギリスITVネットワークのインタビューでは、シリーズ物語と第二次世界大戦とのつながりについて言及されました。 原作者J.Kローリングは、インタビュアーに「ダンブルドアがグリンデルバルドを討ったことは、彼が第二次世界大戦の終戦に一役買ったことをほのめかしていますか」と尋ねられると、「意識的にほのめかしている」と答えているのです。 さらに他の多くのインタビューからも、彼女は意識的に、現実の世界(マグルの世界)と魔法の世界をリンクさせている事が分かります。このインタビューでは、「読者が“魔法の世界”をイメージするにあたって、私たち(マグル)の世界と魔法の世界を結びつけることで、本の信ぴょう性が増す」ということがその理由として挙げられていました。

「ハリー・ポッター」そして「ファンタスティック・ビースト」の世界が、現実の世界とリンクしていることで、読者や鑑賞者はより魔法の世界をリアルに感じることができます。その反面「ファンタビ」の時代背景においては、これから待ち受けている戦争の暗い影がより存在感を強めているのです。 「黒い魔法使いの誕生」では、グリンデルバルドが信奉者たちに“予知”を見せる場面があります。そこに映し出されたのは、第二次世界大戦を思わせる、マグルの世界の混乱でした。 「ファンタビ」は全5部作となる予定です。そして魔法界の歴史では、1945年にグリンデルバルドが敗北することになっているので、今後の続編はより重厚な内容になっていくかもしれません。 魔法の世界も人間の世界も、同じような問題を抱えたり、同じような危機に瀕したりする――。しかしそんな時に人々はどんな選択をするべきか、そんなメッセージが伝わってきます。

【考察】「黒い魔法使い」は誰を指しているのか

2作目のタイトルは『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』です。原題では、「グリンデルバルドの犯罪(The Crimes of Grindelwald)」となっているサブタイトルが、邦題では「黒い魔法使いの誕生」になっています。 日本版だけ違うストーリーになっているというわけではありませんが、邦題のサブタイトルは、今回の物語をとても上手く表しているのです。 「黒い魔法使い」が誰を指すか、パッと思いつくのはグリンデルバルドでしょう。

ヴォルデモート以前はグリンデルバルドが「史上最悪の魔法使い」

グリンデルバルド ファンタビ ファンタスティックビースト
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「ファンタビ」シリーズで、主人公ニュートたちの前に立ちはだかる、悪の魔法使いゲラート・グリンデルバルド。彼の名前は小説版「ハリポタ」で幾度か登場しており、映画版「死の秘宝」では老後の姿が描かれています。 グリンデルバルドは、ヴォルデモート卿の出現まで「歴史上もっとも危険な闇の魔法使いのリスト」のトップに君臨していました。青年期はダンブルドアと深い親交があり、彼をして秀才と言わしめる、確かな実力者だったのです。 前作で逮捕されたグリンデルバルドは脱獄し、再び活動し始めます。「黒い魔法使いの誕生」とは、グリンデルバルドが歴史に名を残す人物として、いっそう本格的な活動を始める、ということを「誕生」に例えたのではないでしょうか。

もう一人のダンブルドア

ハリー・ポッターと謎のプリンス ダンブルドア
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「ファンタビ」には、「ハリー・ポッター」シリーズに登場するアルバス・ダンブルドアが登場します。しかし、他にもダンブルドアの名を持つ人物が登場するのです。

「黒い魔法使いの誕生」では、ニュートやグリンデルバルドの活躍が描かれる一方で、クリーデンスが自らの出自を探し求めていました。孤児院で生まれ育った彼は、自分が何者か、なぜ魔法が使えるのか、謎のままだったのです。 物語の最後、グリンデルバルドはクリーデンスに再会し、彼の本名を告げます。その名は「アウレリウス・ダンブルドア」。 その名に誰しも驚いたことでしょう。クリーデンスが本当にダンブルドア家の血を継いでいるのかはわかりませんが、確かにダンブルドア家の象徴である不死鳥が、彼の前に姿を現しました。

「黒い魔法使いの誕生」というサブタイトルには、彼が闇の魔法使いの道を歩むことになる、という意味も込められているのではないでしょうか。

キャラクターたちがその後どうなるのか、明らかだからこそ相関関係に深みが生まれる

ファンタスティックビースト2 プレス画像
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映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズで描かれるのは、「ハリー・ポッター」シリーズよりも70年前の出来事です。 そのため、新しい物語ではあるものの、すでに「ハリポタ」に登場している歴史的事実になぞったストーリーになるはず。小説版「ハリポタ」ではニュートのその後が描かれていたり、グリンデルバルドの行く末も明らかになっていたりします。 しかし、だからと言って物語が面白味に欠けるかといえば、そうではありません。これから登場人物たちがどんな結末を迎えるか分かっているからこそ、彼らの人としての内面や、人間関係がどのように発展していくのかというところに、より重点的にフォーカスすることができるのです。 なおかつ、魔法を使うシーンも「ハリポタ」シリーズに負けず劣らず、ダイナミックかつ鮮やかに描写されています。ファンタジー作品としての見せどころは高いレベルで保持しながら、よりキャラクターたちの内面や、彼らの人間関係がドラマティックに描かれるのです。

「ファンタビ」シリーズは「ハリポタ」を超える重厚な人間ドラマが描かれる

今回は「ファンタスティック・ビースト」シリーズについて、「ハリポタ」シリーズとの関連を紹介しつつ、その魅力を考察してきました。 「ハリポタ」が少年もワクワクできる分かりやすいファンタジー作品だったのに対し、「ファンタスティック・ビースト」は大人の方が楽しめる内容かもしれません。時代背景や、登場人物の秘めた恋愛感情などを理解できた方が、作品の世界観によりのめり込むことができるからです。 「ハリー・ポッター」とともに育ってきた若い世代は、シリーズを追うごとに作品の深いテーマに気づき始めたことでしょう。「ファンタビ」では「ハリポタ」に勝るとも劣らない、重厚な人間ドラマを見ることができます。 2021年には「ファンタスティック・ビースト3」(仮)が公開予定です。まだまだ続く魔法の世界を、これからも楽しんでいきましょう!