『千と千尋の神隠し』ハクの正体は兄?ニギハヤミコハクヌシの由来って?5つの疑問を徹底解説
ジブリ映画に登場する男性キャラクターの中でも1、2を争う人気キャラクターのハク。今回はそんなハクの本名や正体、その後などなど気になる5つの疑問について解説していきます! 千尋との意外な関係性や、八つ裂きになったという恐ろしい都市伝説まで、その真相はいかに……? この記事は『千と千尋の神隠し』鑑賞者向けの記事となっているため、重要なネタバレが含まれます。ぜひ鑑賞後にお読みください!
まずはハクについておさらい
ハクは神様が訪れる「油屋(あぶらや)」で、強欲な魔女・湯婆婆のもと働いている謎の美少年です。見た目の年齢は12歳ぐらいで髪型はおかっぱ。純白の上着に水色の袴という、平安時代の少年の服装をしています。 突然油屋にやってきて、魔女でもある湯婆婆の弟子になりたいと申し出たハク。彼は湯婆婆に良いように使われていましたが、魔法のような力を使うことができたため、油屋に迷い込んだ千尋をもとの世界へ返すべく尽力します。
【疑問1】ハクは結局何者なの?
ハクの正体は「ニギハヤミコハクヌシ」
ハクは普段、平安時代の少年のような姿をしています。しかしその本来の姿は、龍神「ニギハヤミコハクヌシ」です。 千尋が以前住んでいた町に流れていたコハク川。その川の主だったニギハヤミコハクヌシは、まだ幼い千尋が川に落ちたときに、彼女の命を救っていました。千尋はその時にハクの本当の名前を知ったものの、成長して再会した時には彼のことを忘れていたのです。 ハクは湯婆婆の弟子になり、千尋と同じく名前を奪われています。そして、自分の本当の名前を思い出せなくなっていました。 しかし物語の終盤、銭婆の家から油屋へ戻る際に、千尋は白龍の姿を見てハクがコハク川の主だったことを思い出します。そしてハクも、自分の本当の名前「ニギハヤミコハクヌシ」を取り戻したのです。
ハクは千尋の兄という説も……?
一方で、ハクの正体は千尋の兄ではないかという説もあります。幼いころにコハク川で溺れかけた千尋を助けようとして、死んでしまった兄だというのです。 その根拠としてあげられるのは、エンディングの1シーン。ここでは川に流れている靴を拾い上げようとする手が描かれていますが、それが“千尋の手ではない”とされています。 確かに「千と千尋」の絵コンテ集を見てみると、それが誰の手かは明示されておらず、「子供の手」としか書かれていません。これが千尋の兄=つまりハクの手ではないかと言われているのです。 また千尋の母親が彼女に冷たいのも、息子の死の原因を作った千尋を無意識に憎んでいるからではないかと言われています。 さらに宮崎駿が主題歌として作詞した幻のテーマ曲『あの日の川で』には、「誰かのために生きている私、私のために生きてくれた誰か」という一節が出てきます。 この「誰かのために生きている私」はハク(千尋の兄)のことで、「私のために生きてくれた誰か」はハクのために命がけで銭婆のところへ行った千尋を指しているのだとか。 ほかにもいくつか根拠はありますが、どれも推測の域を出ません。なによりハクの正体はニギハヤミコハクヌシだと劇中ではっきりと示されているので、それとは矛盾する説になります。 「千尋を助けようとして死んだ兄が、ニギハヤミコハクヌシになった」とも考えられなくもないですが、そうなると死んだ人間が神様になるまでの時間にしては短すぎるのではないでしょうか。
【疑問2】なぜハクは千尋のことを知っていた?
いつも千尋を気にかけ、手助けしていたハク。千尋が異世界にやってきたときには、彼女が人間であることを隠したり、存在が消えそうになったときにそれを防いだり、湯婆婆のもとで働くためのアドバイスをしたりと、陰ながら千尋を支えます。 ではハクはなぜ千尋のことを知っていて、こんなにも優しくしてくれたのでしょうか。 前述した通り千尋は幼い頃にコハク川で溺れかけ、その川の主であるニギハヤミコハクヌシに命を助けられています。このニギハヤミコハクヌシこそ、ハクの本当の姿。そのため彼は、以前から千尋を知っていたのです。 湯婆婆に名前を奪われ、本当の自分を忘れてしまっていたハクでしたが、なぜか千尋の名前は覚えていました。千尋が自分と同じく湯婆婆に名前を奪われたことを知ったハクは、彼女が自分の本当の名前を忘れる前にもとの世界に帰そうと、その手助けをします。 そしてその行動が結果的に、ハクも自分の本当の名前を思い出すきっかけになったのです。2人の関係は恋愛のようにも見えますが、どちらかといえば常にハクが千尋を救う兄妹のような関係に近いのかもしれませんね。
【疑問3】ニギハヤミコハクヌシってなに?
ハクの名前の由来
ハクの本当の名前「ニギハヤミコハクヌシ」のモデルになったのは、日本の神話に登場する「ニギハヤヒ」という神様と思われます。 ハクの住処だったコハク川は、幼い千尋が溺れかけたくらいなので、きっと流れの早い川だったのでしょう。そのため「ハヤヒ」を「ハヤミ(速水)」に変えたのかもしれません。 由来となった「ニギハヤヒ」は、漢字で書くと『古事記』では「邇藝速日」で、『日本書紀』では「饒速日」となっています。 ハクの名前は公式には漢字で書かれていませんが、もし漢字にするなら「邇藝速水琥珀主」、もしくは「饒速水琥珀主」となるのではないでしょうか。
由来になった神
ではハクの名前のもとになった「ニギハヤヒ」とは、どんな神様なのでしょうか。『古事記』では、ニギハヤヒは大和地方(現在の奈良県)の豪族ナガスネヒコが主として奉る神として登場します。 あるとき神武天皇は、国を治めるためにふさわしい土地を探して、九州から大和地方にやって来ます。しかしナガスネヒコの抵抗にあい、なかなか統治できませんでした。 その後、神武天皇が再び軍を率いてナガスネヒコに打ち勝つと、ニギハヤヒは神武天皇に従うことを伝えたといいます。 『日本書紀』では、このときニギハヤヒはナガスネヒコを殺して、神武天皇に仕えるようになったともされています。
【疑問4】ハクはその後どうなったの?
ハクは八つ裂きにされてしまうのか
千尋がもとの世界に戻ったあと、ハクはどうなったのでしょうか。 これには「湯婆婆に八つ裂きにされた」という説があります。これは、ハクが千尋をもとの世界に戻すために湯婆婆に交換条件を願い出た時、「八つ裂きにされてもいいのか」と脅されていたことを根拠としているのでしょう。 しかし物語の終盤で、ハクは自分の本当の名前を思い出しました。そのため魔女の契約は効力を失って、彼は湯婆婆の呪縛から解放されたと考えられます。契約が消失したのなら、ハクは千尋と同じく自由になったのではないでしょうか。
ハクの最後の言葉にヒントが?
ハクは千尋をもとの世界への道まで送り届けた別れ際、「私は湯婆婆と話をつけて弟子をやめる。平気さ、ほんとの名を取り戻したから。元の世界に私も戻るよ」というセリフを残しています。 ということは、やはり前述の推察通り、本当の名前さえ取り戻せば湯婆婆との契約は効力を失うと、ハク自身もわかっていたことになります。 元の世界に戻るというのは、すでに埋め立てられてしまったコハク川には戻れないとしても、どこか別の川の神様になるのかもしれません。
【疑問5】幻のラストシーンがあるって本当?
幻のラストシーンが存在する?
『千と千尋の神隠し』には、幻のラストシーンがあると言われています。その内容は以下の通り。 湯婆婆たちのいる異世界から戻ってきた千尋。新居に向かっているときに、丘から引っ越し業者を見つけた母親が父親に「もう来ちゃってるじゃないの~」と愚痴をこぼします。 それから1人なにげなく新居の周りを歩いてると、短い橋のかかった小川があることに気づく千尋。橋から川を眺める千尋が一瞬なにかを悟ったような表情になり、この川がハクの新たな住処であることに気づいたような意味深なシーンで物語が終わります。 このようなシーンは本当にあったのでしょうか。
幻のラストシーンは都市伝説!
幻のラストシーンは公開初日、もしくは1週間のみ上映されたという話もあるようですが、これは現実にはかなり難しいでしょう。 なぜなら『千と千尋の神隠し』はフィルムで上映された作品だからです。フィルムは今のデジタル上映と違って、データを差し替えればOK、というわけにはいきません。 2時間の映画の場合、公開当時フィルム1本のプリント代は約135万円程度。「千と千尋」は全国300以上の映画館で上映されたので、それをすべて差し替える場合、4億円以上必要です。当時のジブリには、それほどの資金はありませんでした。 しかしこの話は、半分は本当でもあります。「幻のラストシーン」は絵コンテの段階までは存在していたのです。このことは作品の資料にも書いてあり、一部の人は知っている話でした。 2014年に、この話が一部誇張されてネット掲示板2ちゃんねるに投稿され、「千尋とハクの再会を観たい」という観客の願望も相まって、噂が広まっていったと考えられます。
声優を務めたのは入野自由
ハクの声は入野自由(いりのみゆ)が担当しています。入野は劇団ひまわりに4歳の時に入団し、子役タレントとして活躍していました。彼がハクを演じたのは13歳の時。オーディションで見事に役を勝ち取りました。 1997年の『逮捕しちゃうぞ』のショウ役で声優デビュー。そのほか代表作には「キングダム ハーツ」シリーズのソラ役や『ハイキュー!!』の菅原孝支役、『おそ松さん』の松野トド松役、『映画 聲の形』の石田将也役などがあります。
『千と千尋の神隠し』はハクの謎を紐解くことでもっと面白くなる!
どこを切り取っても魅力的で、何度観てもまた違った楽しさを発見できる『千と千尋の神隠し』。宮崎駿監督ならではの演出で、さまざまな見方を自由にできることが本作の魅力といっていいでしょう。 そこには都市伝説や幻のラストなどの噂も尽きませんが、それこそ本作が長年愛され続けている証拠。ハクというキャラクターも愛されているからこそ、いろいろな噂が出回るというもの。もう1度鑑賞して、新しい発見を楽しみたいですね!