2022年1月6日更新

『千と千尋の神隠し』湯婆婆の正体とは?銭婆との違いから名前を奪う理由まで徹底解説【声優は夏木マリ】

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『千と千尋の神隠し』

強力な魔力と権力で「油屋(あぶらや)」を支配する魔女・湯婆婆千尋の名前を奪い、自分の経営している油屋で仕事をさせるなど、『千と千尋の神隠し』の物語の鍵を握る重要な登場人物です。 湯婆婆は横暴で強欲な性格で、従業員たちにも常に高圧的な態度で接しています。一方で千尋の働きぶりにより客から砂金がもたらされると、従業員の前で千尋の努力と成果を認めるなど、上司として熱心な一面も。 千尋に仕事を通して世の中のさまざまな事を教えるキャラクターでもありますが、その正体は謎に包まれたまま。彼女が名前を奪う理由は何なのでしょうか? この記事では『千と千尋の神隠し』に登場する湯婆婆を深堀りしていきます。

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湯婆婆の正体は?カラスに変身する意味

千と千尋の神隠し

湯婆婆の正体は「油屋の経営者」であり「冷徹な魔女」です。 ジブリによると年齢に関する設定はなく「老婆」とだけ決められているそうです。ただコハク川がなくなったことを知っているということから、100歳は超えていると考えられるでしょう。 油屋が開いている時間は経営者として、従業員たちをこき使いながら客を接待しています。 気になるのが、明け方に黒いマントを羽織り烏(カラス)に変身してどこかへ飛び立つシーン。湯婆婆の顔をした湯バードとともに、油屋から姿を消します。弟子であるハクは湯婆婆のこの姿を把握しており、悪事をしているような怪しいやり取りも描かれています。 カラスの姿が湯婆婆の本当の正体という見方もあるようですが、劇中や監督の言葉でその答えは提示されていません。 実は湯婆婆がカラスに変身する設定には元ネタがあります。それは宮崎駿の愛読書だった児童文学「クラバート」。本作は主人公のクラバートがカラスになって魔法使いを目指す物語です。湯婆婆がカラスに変身するシーンは、元ネタとなった「クラバート」へのオマージュだったのですね。

湯婆婆と銭婆の違いは?夏木マリが銭婆の声優も担当

湯婆婆には双子の姉である銭婆がいます。見た目から声までまったく同じです。銭婆の声優も夏木マリが務めました。(上記画像が銭婆) 銭婆の性格は温和で優しく、千尋を励ますなど寛大で暖かい一面もあります。双子の姉妹で服装などもほとんど同じであるのに、2人は仲が悪く険悪な態度ばかり取っています。妹の湯婆婆は優れた姉に対して、コンプレックスを抱いているよう。 アニメ上では湯婆婆と銭婆の違いは性格で見極めるしかありませんが、『千と千尋の神隠し』で原画を担当した田中敦子が語るには、「湯婆婆は胸元にイボが1つ、銭婆は胸元にイボが4つ。」という設定上の違いがあるそうです。 宮崎駿は映画の製作発表会で、湯婆婆と銭婆は「働く現代人の象徴」だと語っています。家では銭婆のように穏やかな生活を送っている人も、会社ではストレスと向き合いながら湯婆婆のような厳しい上司として部下に接する一面もあるでしょう。 性格は違うけど“見た目が全く同じ”双子の魔法使いとして描くことで、働く人の心の分裂を表現したのかもしれません。

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『千と千尋の神隠し』で湯婆婆が名前を奪う理由

『千と千尋の神隠し』で、千尋は湯婆婆に名前を奪われ「千(せん)」にされてしまいました。同じようにハクも「ニギハヤミコハクヌシ」という本名を奪われたのち、油屋で働いています。 湯婆婆は魔法で名前を奪い、彼らのアイデンティティを失わせることで、個性を必要としない従順な従業員に育てようとしたのでしょう。ワンマン経営者といったところでしょうか。 しかし映画の絵コンテには、「ほとんどの従業員が偽名を使ったうえで名前を奪われている」との記録があります。つまり従業員のほとんどは湯婆婆の魔法で油屋で働いているわけではなく、自らの意思で働き続けているということ。これは日本の現代社会に通じるものがありそうです。 千尋は「荻野千尋」と書くところを「荻」の火を犬と書いたため、本当の名前は奪われていませんでした。そう考えると、劇中で千尋が意思を持って正しい道を探そうとしていた姿に納得できますね。

湯婆婆の正体を知るヒント

湯婆婆の名前の由来は?

湯婆婆の名前のモデルになったのは、湯湯婆(ゆたんぽ)だといわれています。中国で発明された「湯たんぽ」ですが、湯婆婆が劇中で坊に見せる愛情の温かさとどこか共通するものがありますね。

「油屋」のモデルとなったのは?

湯婆婆が経営する油屋の特定のモデルはないと宮崎駿が公言していました。しかし美術監督の武重洋二によると、道後温泉、日光東照宮、江戸東京たてもの園を参考に油屋の外装を描いていたそうです。度々『千と千尋の神隠し』のモデルとして取り上げられる台湾の九份は、ジブリが認めたロケ地ではありません。

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『千と千尋の神隠し』の名セリフメーカー

千と千尋の神隠し

横暴で強欲なキャラクターの湯婆婆ですが、心に響く素敵なセリフもたくさん残しています。 例えば「千尋というのかい?贅沢な名だねえ。今からお前の名前は千だ。」と言ったのは、千尋が湯婆婆と契約する序盤のシーン。「贅沢な名だねえ。」というセリフは、あまりにも有名ですね。 また千尋が対応した客から大量の砂金を貰い受けたときには、「千!よくやったね、大儲けだよ!ありゃあ名のある河の主だよ。みんなも千を見習いな!」と従業員たちの前で千尋を賞賛します。 今まで傲慢で口やかましい態度しか取らなかった湯婆婆が、経営者として雇用主としての親心を千尋に初めて見せました。この1件から千尋は油屋の従業員たちのあいだでも、一目置かれる存在となります。 またハクや息子であるから、千尋を元の世界に戻すように頼まれ、戸惑いながら「そう簡単にはいかないよ、世の中には決まりというものがあるんだ」と口にします。 まるで自分に言い聞かせるように言っているようにも聞こえますね。千尋を元の世界に戻すことに対して、葛藤している湯婆婆の心情が見て取れるセリフです。

あの名シーンは“かめはめ波”がモチーフになっていた!

千と千尋の神隠し

湯婆婆が登場する名シーンといえば、湯屋で暴れ始めたカオナシに向かって手のひらから光の玉を放出する場面。 「ドラゴンボール」のかめはめ波のような動きですが、絵コンテには「ユバーバ気をため、右手をひくや、光の球をつくり、はしっと送り出す(ドラゴンボール風)」と書かれいます。宮崎駿がかめはめ波をモチーフに、あのシーンを作り出したことが分かりますね。 またここで発せられる「みんなお退き!お客様とて許せぬ!」という湯婆婆のセリフもとても印象深いですね。

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湯婆婆の声優を担当しているのは、女優の夏木マリ

強烈なキャラクターである湯婆婆の声を担当しているのは夏木マリ。双子の姉・銭婆の声優も担当しています。同じ声で違うキャラクターを演じるという難しい1人2役を見事にこなし、それぞれのキャラクターを演じ分けました。 これまで豪快で強烈なキャラクターの女主人の役を演じることが多かった夏木マリだけに、今回は、まさにハマり役と言えるでしょう。 女優や歌手としての活動が目立つ彼女ですが、ゲームや外国映画の吹き替えなど声優としての活動も精力的に行っています。2010年には『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープが演じたミランダ役を、2017年にはディズニー映画『モアナと伝説の海』でタラおばあちゃんの日本語吹き替えに挑戦しました。 また2022年に幕開けとなる舞台版『千と千尋の神隠し』でも湯婆婆・銭婆役で出演することが決定しています。

『千と千尋の神隠し』湯婆婆はただの悪役じゃない!人間味のある人物だった

横暴で口やかましい湯婆婆も、自分の息子の坊には甘く、溺愛していました。もう赤ちゃんではないような年であるのに部屋に閉じ込め外に出さない、支配的な愛情を与える母親の顔がありました。 一方千尋たちに対しては傲慢な経営者でしたが、仕事の厳しさを教える雇用主としての親心も時折見せています。湯婆婆は、『千と千尋の神隠し』のなかで、さまざまな親心を見せてくれる存在です。