『千と千尋の神隠し』荻野千尋のモデルは?声優や宮崎駿のメッセージを徹底解説
“日本アニメ史上屈指の名作”との呼び声が高いジブリ映画『千と千尋の神隠し』。引っ越しの途中で思いがけず不思議な世界に迷い込んでしまった少女・千尋は、油屋で働くなかで戸惑いながらも成長していく魅力的な主人公です。 この記事では、『千と千尋の神隠し』の千尋について徹底解説!宮崎駿監督が千尋に込めたメッセージやモデルとなった人物を紹介し、彼女の魅力に迫ります。
『千と千尋の神隠し』萩野千尋の基本情報
本名 | 萩野千尋(おぎのちひろ) |
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年齢 | 10歳 |
誕生日 | 不明 |
声優 | 柊瑠美 |
ビジュアル
千尋の身体的特徴としては、10歳の少女のヒョロヒョロした手足といった、まだ頼りない体格をあげることができます。髪の毛は焦げ茶色で、普段はポニーテールにしています。 服装は、人間の世界にいるときは白地に黄緑色のラインが入ったTシャツ、桃色の半ズボン、白の靴下、黄色のスニーカーです。 油屋で働くようになった千尋は、世話係となったリンからおそろいのお仕着せを渡されます。この服は和風で、金太郎の腹掛けのような下着、水干と呼ばれる質素な脇あけの上衣に袴のセットです。
性格
千尋の性格は臆病で間が抜けているようですが、実は性根がすわっている一面も。リンは千尋のことをずばり「どんくさい」と言っていました。 彼女の臆病でドジな側面は物語の序盤から中盤にかけて描き出されます。油屋の世界に踏み入るとき母親にすがりついて怯えていたり、湯婆婆と契約して働くことが決まるまでビクビクしたりしているシーンが、その良い例です。 ところが物語が進むにつれて、千尋の素直で筋を通さずにはいられない、芯の強い性格が明らかになっていきます。彼女のこの性格を最も良く表しているのが、ハクの罪を清算するため銭婆を訪ねるシーンです。 自分を助けてくれたハクを助けるため、千尋は危険を顧みずハクが盗んだ魔法のはんこを銭婆のところに返しに行くと言います。彼女の勇気ある決断の背景には、恐ろしい魔女でも心を込めて謝罪すればハクを許してくれるに違いないと素直に信じる心があるのです。
千尋のモデルはプロデューサー・奥田誠治の娘
千尋のモデルとなったのは、宮崎駿監督の友人のひとりで、日本テレビにおける本作の製作担当であった奥田誠治の娘です。彼女の名前は千晶(ちあき)といい、当時の年齢は千尋と同じ10歳前後だったと言われています。 彼女が千尋のモデルとなった経緯は叶精二著『宮崎駿全書』など複数のメディアで取り上げられています。それによれば1999年8月に廃案になった企画の代案として、宮崎監督は「千晶の映画をやろうか」と提案したそうです。 完成した映画のなかに、宮崎監督とも親しかった千晶が実際に経験した出来事が印象的に取り入れられています。 終盤千尋が、「小さいころ川に落とした靴を拾おうとして、川に落ちたことがある」とハクに話すシーンがあります。この場面は、ある夏に千晶が宮崎監督の山小屋を訪れたとき、近くの川で靴を落としたエピソードに基づいているそうです。
千尋が名前の「荻」を書き間違えたのはわざとだった?
■千と千尋お得情報メモ 荻野千尋…と書いてあると思いきや、荻の字が間違っています!本来“火”と書くべきところが“犬”になっていますね。千尋さんは書き間違えただけなのか、わざと間違えたのか…気になるところですぅーー???? #千と千尋の神隠し #千 #せんちひ pic.twitter.com/64i5tN9SAQ
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) January 20, 2017
千尋が湯婆婆と契約を交わす場面、注意していないと見逃してしまうのですが、彼女は荻の「火」を「犬」に間違えて書いています。 彼女が自分の名前を書き間違えた理由は議論の的となっていますが、定説はありません。 わかりやすい説は、気が動転していたので書き間違えたのであろう、というものです。湯婆婆の魔力を見せつけられて縮み上がっているところに、契約書とペンを渡されていきなり署名しろと言われた千尋。机もなく床に這いつくばって名前を書いています。まだ小学生なので最初の字を書き損じてしまうことは合点がいきます。 これに対して、彼女が名前を書き間違えたのはわざとであるという都市伝説があります。絵コンテにある釜爺のセリフなどから、「正しい名前を書くと元の世界に帰還出来なくなる」と警告されていた、というのです。 とはいえ湯婆婆との契約については銭婆が「助けてあげたいけど、どうすることもできない」と言っており、書き間違えの影響はなかったと思われます。
宮崎駿が千尋の造形を通して伝えたいこと
実在する普通の少女をモデルにしたことで、『千と千尋の神隠し』は宮崎監督の現代っ子に向けたメッセージが強く打ち出された作品となりました。 『宮崎駿全書』などで紹介されている企画書で、『千と千尋の神隠し』は「10歳の女の子達のための映画」と位置づけられています。 千尋の身体がジブリ映画のほかのヒロインと違ってひ弱であるのは、現代っ子に関して宮崎監督が抱いているイメージの反映です。 『折り返し点』に収録されている企画書で宮崎監督は、現代の子どもたちは「生きることをうすぼんやりにしか感じられない」と指摘。「千尋のヒョロヒョロした手足や、簡単にはおもしろがりませんよゥというぶちゃむくれの表情」はそういった日常に生きる子どもたちの象徴だと言っています。 このような千尋を主人公に設定した理由は、正邪のあいまいな世の中で「修行し、友愛と献身を学び、知恵を発揮して生還する少女のものがたり」を描くことにあります。 宮崎監督の言葉によれば、美少女でない千尋がヒロインたる所以は、彼女がこのような世の中でも「食い尽くされない力」を秘めているからです。
千尋の声優を担当したのは女優・柊瑠美
千尋役の声を演じた柊瑠美(ひいらぎるみ)は1987年生まれ、東京都出身の女優です。 6歳で子役デビューを果たした柊は、1999年にNHK連続テレビ小説『すずらん』でヒロインの少女時代を演じて一躍有名になります。 『千と千尋の神隠し』が封切られた2001年7月20日は、彼女の14歳の誕生日のわずか12日前。この仕事は彼女にとって声優としての初仕事でもありました。 その後も女優として活躍するばかりでなく、ジブリ映画にも複数出演。『崖の上のポニョ』(2008年)では宗介がおもちゃの船で海に沈んだ町を進むなかで出会った、赤ちゃんを抱えた婦人役で、『コクリコ坂から』(2011年)ではコクリコ荘に下宿する美大生・広小路幸子(ひろこうじさちこ)役で声の出演を果たしています。
『千と千尋の神隠し』の千尋は現代っ子に向けたメッセージだった
この記事では『千と千尋の神隠し』のヒロイン・千尋について、宮崎駿監督自身の言葉やモデルとなった少女を紹介しつつ、その魅力に迫りました。 普通の少女をモデルにしたことと、初々しい子役の声の組みあわせが、千尋を現代っ子の琴線に触れる人気キャラとした要因と言えそうです。