2019年4月5日更新

『平成狸合戦ぽんぽこ』を深読み考察!気になる都市伝説・裏話6選【隠れキャラも登場】

平成狸合戦ぽんぽこ
© Studio Ghibli/Buena Vista Home Video

1994年に公開されたジブリ作品、『平成狸合戦ぽんぽこ』。人間たちに対抗する狸たちの姿をかわいく描いた作品のように思えますが、実は奥深いテーマがあったのです。今回は作品について紹介しながら、そのテーマを考察していきます。

奮闘する狸たちに心動かされるジブリ映画『平成狸合戦ぽんぽこ』

高畑勲監督の手により、1994年に公開された『平成狸合戦ぽんぽこ』。開発が進む多摩ニュータウンを舞台に、なんとかして開発を食い止めようと人間たちに立ち向かう狸たちの姿が、キュートかつユーモラスに描かれています。 奮闘する狸たちの姿には心を動かされ、子どもから大人まで楽しむことのできる本作。しかし、狸たちのかわいらしい姿の裏に見える、都市化問題について考えさせられた人も多かったはずです。今回は、実は奥深い作品の『平成狸合戦ぽんぽこ』のトリビアについて紹介しながら、そのテーマを考察します。

『平成狸合戦ぽんぽこ』のあらすじをおさらい

昭和40年代、多摩丘陵では狸たちが楽しく暮らしていました。その一方で、多摩丘陵には人間たちによる開発計画が迫っていたのです。開発による破壊を食い止めようと、狸たちは集会を開きました。その結果、狸たちの伝統である「化学(ばけがく)」を用いて人間たちと戦うことになったのです。 奮起した狸たちは古狸から化学を教わり、お化けや地蔵など様々なものに化けては人間の心を動かしたり驚かせたりしていました。なかなか全体としての開発を食い止められずにいる中、「大作戦」を決行するのですが……。

1.実は人間国宝などの豪華声優がキャラクターの声を演じている

毎回人気俳優や意外な人物が声優としてキャスティングされ、話題となるジブリ作品。本作も例外ではなく、豪華な声優陣が集結しているのです。 主人公の正吉は冷静で落ち着いた性格。狸たちの中心的な存在です。そんな彼を演じているのはタレントで俳優の野々村真。普段は明るくひょうきんな野々村ですが、本作ではその真剣な語りを聞くことができます。 他には、正吉の恋人の心優しい狸・おキヨを演じた石田ゆり子や、血気盛んな狸・権太を演じた泉谷しげるなど俳優として活躍する面々も。また、語りを担当したのは落語家の三代目古今亭志ん朝。さらに長老狸の鶴亀和尚を人間国宝でもある五代目柳家小さんが務めるなど、喋りのプロたちが集結しました。

登場キャラクター・声優キャストを一覧で紹介

2.舞台は多摩ニュータウン。あのジブリ映画との繋がりも!

本作の舞台となっているのは東京、多摩丘陵。森や川などの自然が豊かな土地で、狸たちが穏やかに暮らすにはもってこいの場所でした。 しかし、そこに迫るのが作中でも何度も登場する「多摩ニュータウン」の開発です。広大な土地を開発し、人間が住むための街を創ろうという計画ですが、これにより狸たちの住処は奪われてしまいます。これを防ぐため、狸たちは立ち上がったのでした。

ジブリ映画『耳をすませば』との繋がり

耳をすませば
©Studio Ghibli/BVHE/Photofest

実は、この多摩ニュータウンを舞台としたジブリ作品は本作だけではありません。爽やかな青春ストーリーとして人気を集める『耳をすませば』も、多摩ニュータウンを舞台に繰り広げられる物語なのです。 『耳をすませば』は『平成狸合戦ぽんぽこ』の後の物語。狸たちが妖怪大作戦を繰り広げた団地こそが雫の住んでいる団地であり、本作においては建設中だったコンビニを雫が利用しているシーンもあります。『耳をすませば』は本作の1年後に公開された作品なので、公開時期と合わせて考えても辻褄が合います。 また、『耳をすませば』の舞台となった街として知られているのが聖蹟桜ヶ丘。本作にも、この街が登場しているのです。作品中盤、三長老と玉三郎が線路を疾走し街に出るシーンでは、聖蹟桜ヶ丘駅の構内の様子や「が丘」の部分の標識を見ることができ、街の景色も作品終盤に登場しています。

開発は進んだものの、多摩地区は現在も自然が残る場所。一部の道路には「動物飛び出し注意」の標識が狸の絵とともに立っているようです。この2作品の舞台となったということも広く知られており、なんと「人間に化けた狸がいる」「開発で死んでしまった狸の幽霊が出る」というような都市伝説もあるんだとか。

3.ストーリーのモデルとなったのは伝説「阿波狸合戦」

実は、本作のストーリーには題材となった伝説がありました。それが「阿波狸合戦」です。江戸時代の終わりに阿波国(現在の徳島県)で起きたといわれる、狸たちによる戦いです。 ある日、狸の金長(きんちょう)が人間たちにいじめられているところを、染物屋の茂右衛門(もえもん)が助けました。その後金長は茂右衛門の家で奉公する少年に取り憑き、茂右衛門のもとに数々の幸福を呼び込みました。そして金長は一人前になるため、四国の総領狸の六右衛門(ろくえもん)に弟子入りします。 めきめきとその能力を伸ばした金長のことを、六右衛門はいつしか恐れるようになります。修行を終え、故郷へと帰る金長を六右衛門からの追手が襲いました。金長は逃げきったもののその仲間が殺され、金長は仇を討つべく故郷の狸たちと共に立ち上がったのでした。こうして起きたのが阿波狸合戦です。 『平成狸合戦ぽんぽこ』には六代目金長という年老いた狸が登場しますが、彼は金長の子孫という設定。本作以外にも1958年公開の映画『阿波狸変化騒動』など、阿波狸合戦を題材とした作品は存在しています。

4.狸たちの伝統、化け学とは?

本作に登場する「化け学」とは狸たちの間で伝統的に語られているもので、人間を驚かせたり見誤らせたりする技術全般のことです。作中では、これを身につけている動物は狐と一部の猫だけで、現代においてはこの技術を失っている並ダヌキも多いとされていました。 狸が得意とするのはお化けや妖怪に変身することや幻覚を与えることで、金長のように人間に取り憑くこともできます。また作中に登場する通り、オスの狸は金玉を広げ様々に変形させると言われています。 しかし高度な技術を必要とする場合や大がかりな幻術は大変体力を消耗します。長時間化けている場合は目の周りに「タヌキ隈」が出て、もとの姿に戻ってしまうとされており、中には力尽きて絶命してしまう狸もいるほどです。

5.ジブリの「隠れキャラ」が登場するシーンは?

本作の有名なトリビアの1つが、作中に様々な「隠れキャラ」が登場すること。それは作品中盤の「妖怪大作戦」の部分です。狸たちは人間を怖がらせて開発を食い止めようと、百鬼夜行に化けて夜の街に登場します。

そこに登場するのは『おもひでぽろぽろ』のタエ子、『となりのトトロ』のトトロ、『魔女の宅急便』のキキ、『紅の豚』のポルコ・ロッソなど。他の作品のファンでも楽しめる仕掛けになっているのです。皆さんは見つけることができたでしょうか。

6.『平成狸合戦ぽんぽこ』は戦争のメタファー?テーマを徹底考察

多摩丘陵が狸たちの抵抗むなしく開発され、多摩ニュータウンへと姿を変えていくさまを描いた本作。そのテーマは自然破壊だけなのでしょうか。

戦争、政治を描いているって本当?

実は、本作には隠れたメッセージがあるという噂があるのです。そのうちの1つが、戦争を描いた物語であるというもの。 狸たちは必死で人間たちに抵抗しますが、その様子が実は、第二次世界大戦中の日本とアメリカを描いていると言われているのです。狸たちの住む森がじわじわと開発され、成す術がなくなっていったように、アメリカは日本の周辺を包囲網で固めたり経済的に圧力をかけたりして、戦争が続けられない状況を作りました。 アメリカは日本を様々な面から追い込み、戦争を終わらせるよう追い詰めていったのです。本作の狸と人間との戦いをそれに重ねると、抵抗虚しく犠牲を出してしまった狸たちの様子が戦争中の日本と重なるようです。 もう1つが、政治を風刺した物語であるというもの。政治家のことを「狸親父」と皮肉ることがあります。本人たちは必死でもどこか滑稽な争いをしている狸たちが、醜い争いを続ける政治家を表していると言われているのです。 本作に登場する三長老は、公開当時政治を動かしていた三人の政治家をモデルにしているという都市伝説もあります。太三朗禿狸が大平正芳元総理を、六代目金長が三木武夫元総理を、隠神刑部が田中角栄総理(当時)を表しているのではないかと。言われてみるとなんだか顔が似ているような気もしますが……。 2つの説とも、ファンの間でささやかれる都市伝説のため、公式の見解・設定とは関係ありませんが、2つともどこか説得力のある話ですね。

『平成狸合戦ぽんぽこ』のテーマを考察【ネタバレ注意】

ここからの内容には、『平成狸合戦ぽんぽこ』の結末に関するネタバレが含まれています。

では、それら2つの隠れたテーマも合わせて考えると、本作の核心的なテーマはなんだったのでしょうか?私は「人間の傲慢さ」だったのではないかと考えます。 狸たちが住処である森を追われてしまったのは人間のエゴのためです。より住みよい場所を作るために、山野を切り開くというのは人間の都合のことですから。本作の題材となった実際の多摩丘陵の開発によると、自然との共生を目指した開発を図ったようですが、狸たちから住処の大部分を奪ったことに変わりはありません。 そして、作品の途中で狸たちは様々な作戦を立てては人間たちを化かします。しかし、人間たちはその多くのことについては深く考えもしません。妖怪大作戦にいたっては、何かのアトラクションだと思い込んで面白がっていました。

ここに見えるのは、狸たちの抵抗の滑稽さだけではありません。人間は自分たちにとって都合のよくないものの存在を、考えもしないのです。狸たちは必死に訴え、作品終盤には体当たりで抵抗しましたが、人間は彼らの苦しみを考えることすらしませんでした。 確かに人間は、発展を目指して自然を犠牲にすることがあります。必要なことだとはいえ、自然を全てコントロールするのはあまりに身勝手で傲慢ではないでしょうか。 作品終盤、人間に化けてなんとか溶け込んで暮らしている正吉の姿が見られます。そんな彼も、狸の仲間たちと出会った途端元の姿に戻り、楽しそうに遊んでいました。本作が人間としての生活も知る正吉の語りであることを考えると、彼は最も人間の傲慢さを知っている立場かもしれませんね。

かわいくも奥深いジブリの名作『平成狸合戦ぽんぽこ』

狸たちが様々な手を使って人間たちに立ち向かう『平成狸合戦ぽんぽこ』。失敗を恐れないその姿に、元気づけられた人も多いのではないでしょうか。 しかし本作の魅力は狸たちのかわいらしさだけではなく、考察の余地のあるストーリーや他の作品とのつながり、随所に隠されたテーマでもあるのです。ぜひ、細かい部分に注目して見てみてください。