『キングダム』信は死亡して生き返る?実在のモデルや将軍成り上がりの軌跡を解説
原泰久による漫画『キングダム』は、魅力的な登場人物と史実も絡めた重厚なストーリー、緻密な戦略が人気の中国の春秋戦国時代を描く作品です。信(しん)は、多くの武将が登場するこの物語の主人公として、ストーリーを大きく動かしていきます。 信の生意気だけどまっすぐな芯の強さ、そして実戦でめきめきと力をつけてのし上がっていく姿は爽快です。彼の魅力があったからこその『キングダム』人気ともいえるかもしれません。 今回は主人公、信の人物像や強さ、これまでの武功などを一挙に紹介します。彼の魅力にあらためて触れてみましょう。 ※この記事には、漫画『キングダム』のネタバレを含んでいます。未読の方はご注意ください。 ※ciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。
『キングダム』信のプロフィールを紹介
所属国 | 秦国 |
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所属隊 | 飛信隊 |
初登場 | 原作1巻1話 |
声優 | 森田成一 , 福井美樹(幼少期) |
実写キャスト | 山崎賢人 , 大西利空(幼少期) |
信は戦争で身寄りをなくした少年で、身分としては下僕でした。秦の片田舎で同じ境遇の漂(ひょう)と兄弟のように生きてきましたが、王宮に召し抱えられることになった漂が死んでしまったことをきっかけに贏政(えいせい)と出会います。 そしてこの出会いから信は大将軍への道を一歩ずつ歩み始めるのです。 たいした装備もないなか有名な将軍たちに一目置かれる活躍をみせる信には、格上の敵でさえも圧倒してしまう底の見えぬ力が備わっています。敵が強ければ強いほど、信自身もさらに限界を突破して強くなるのです。この天賦の才能が信の大きな魅力といえます。
信の成り上がりの歴史!大将軍になれるのか?
前述の通り、下僕だった信がとてつもない勢いで成り上がり、出世していくさまは、『キングダム』の大きな魅力の一つになっています。 ここからはそんな信の怒涛の出世の過程を主要エピソードとともに振り返っていきます。
初陣は一兵卒として参戦
王都奪還戦で活躍した信は平民としての地位を手にし、一兵卒として戦争に参加することになります。そこで信は「伍」と呼ばれる5人1組のチームを組んで戦うことになるのですが、その伍には後々まで信と共に活躍する羌瘣(きょうかい)の姿もありました。 信はここで敵将・麻鬼(まき)を撃破するなど大活躍。これにより信は大きく評価を上げ、その名を知らしめることになりました。
100人将となり王騎に飛信隊の名を授かる
前述した戦いで秦の優勢に貢献した功績から、信は伍長を飛ばし百人将へと出世。部下を率いる隊長としてこれからの戦いに参加することになります。 続く馬陽攻防編では、攻め込んできた趙に対して最後の六将・王騎が防衛軍を率いました。10万人を率いる総大将・王騎直々に信は「特殊100人部隊」の隊長として任務を言い渡され、「飛信隊」という隊の名前を与えられるのです。
正真正銘の千人将となるまで
馬陽攻防編で王騎が亡くなり1年が過ぎた頃、信は300将へと出世し、ライバルである王賁(おうほん)や蒙恬(もうてん)と切磋琢磨していました。そんなとき、李牧(りぼく)によって持ちかけられた秦趙同盟が成立し、秦は魏の山陽攻略を開始します。 廉頗(れんぱ)大将軍率いる魏軍との戦いのなか、廉頗四天王の輪虎(りんこ)により千人将が次々と暗殺される事件が起きました。このとき300将だった信と王賁、蒙恬の3人は急造の千人将に抜擢されることに。 信は輪虎を討ち破り、戦功第3位という大功を挙げました。この武功で、政から直接千人将への昇進を言い渡され、仮ではなく正真正銘の千人将となったのです。
羌瘣離脱のピンチを乗り越え3千人将に
千人将となった飛信隊ですが、軍師担当であり主戦力だった羌瘣が一時的に離脱したことで、降格の危機に陥ります。そこに現れたのが、軍師として戻ってきた河了貂(かりょうてん)です。信にとって家族のような彼女が軍師として加わり、飛信隊は再び勢いに乗り始めます。 その後、李牧が仕掛けた多国籍連合による合従軍が秦へと侵攻。苦戦を強いられた秦軍は飛信隊も含め疲弊しきっていました。決戦の地に政自ら乗り込み、指揮を執り、信や民たちを鼓舞します。 それに応えるように信も最後の力を振り絞り、李牧軍の最後の砦である武神・龐煖(ほうけん)を退けるのでした。この合従軍戦での功績を称えられ、信は3千人将へと昇格します。
著雍奪還に貢献し5千人将に
3千人将となった信は、その後王弟謀反編で成蟜(せいきょう)救出のために尽力し、まずは4千人将へと昇格します。ここで、尊敬する王騎が遺した矛を受け取り、以降の戦いで使うようになりました。 秦は次に魏の著雍(ちょよう)奪還を狙い、独立遊軍である飛信隊と王賁率いる玉鳳隊は援軍として参加することになります。両軍とも厳しい作戦をなんとか遂行し、信は魏火龍七師の1人である凱孟(がいもう)との一騎打ちで善戦。さらに同じく魏火龍七師の霊凰(れいおう)を討ち取りました。 著雍奪取成功の要となる武功を挙げた信は、王賁とともに5千人将へと登りつめたのでした。
ついに将軍に昇格!
陥落困難と言われる趙国の鄴(ぎょう)攻めに参加した信。難敵との戦いは総力戦となり、それは次第に秦の王翦(おうせん)と趙の李牧による知略戦に発展。直接的な戦闘のみならず、兵糧攻めなども交えた恐ろしい戦いが繰り広げられます。 そのなかで信は王騎から受け継いだ矛を手に大活躍!楊端和らと共に敵軍へ大打撃を与えたほか、敵将である岳嬰(がくえい)や趙峩龍(ちょうがりゅう)を討ち、さらに宿敵・龐煖まで撃破し大きな武功をあげることに成功しました。 この活躍により信は将軍へ昇格。さらに「将軍になるには姓を持つ必要がある」と言われ、信は姓を「李」にすると決めます。ここから信は「李信」と名乗ることになるのです。
信は死亡したのか?羌瘣の秘術で復活する?
629話にて信が死亡
宿敵である龐煖を撃破した信ですが、満身創痍の状態で力を使い果たし意識を失ってしまいます。動かなくなった信に仲間が駆け寄ると、なんと信の心臓は停止。彼はすべての力を出し切り絶命してしまったのです。 泣き叫び信の名前を呼ぶ仲間たち。飛信隊は李牧を追う必要がありましたがそれどころではなく、戦場は大きな混乱に陥ります。
羌瘣が蚩尤族に伝わる秘術を使い信を生き返らせる
倒れる信のそばで慟哭する河了貂。そんな彼女に声をかけ、信に近付いてきたのは羌瘣でした。彼女は意を決したように「私が助ける」とつぶやき、信の胸に手をあてます。 なんと彼女は蚩尤族に伝わる「死者を生き返らせる禁術」を使おうとしていたのです。羌瘣は集中し記憶の中にある、術の手順を踏んでいきます。すると信と意識が繋がり、気を失ってしまう羌瘣。彼女はそこで術の発動条件が「自身の寿命を半分捧げること」だと知ります。 しかし羌瘣は迷うことなく命を捧げると決意。ですがそれにも関わらず、信の意識は死の階段へ向かい進んでいきます。術は失敗に終わった、そう思われたとき信を引き留めたのは亡き親友の漂でした。信は漂との会話のなかで自身の夢をもう1度思い出し、ついに息を吹き返すことができたのです。
羌瘣の寿命は禁術を使ったことで半分に
羌瘣の禁術により息を吹き返した信。仲間たちは涙を流し喜びますが、その一方で心配なのは羌瘣の容態です。寿命を半分削り、余命僅かかと思われた羌瘣。 しかし蚩尤族は独自の呼吸法を極めており、本来であれば恐ろしく長命な民族だと発覚。つまり羌瘣はこの禁術により寿命を縮めたものの、一般的な人間と同程度の寿命になるだけで済んだのでした。
信の実在のモデル・李信とはどんな人物だったのか
信のモデルとなった人物は漫画の冒頭にも名前が登場する李信です。有名な武功としては紀元前226年。燕(えん)の王位継承者・丹(たん)が暗殺者をつかって政を暗殺しようとしました。信はこの政の命を狙った丹を討ち取ったといわれています。 李信はその後、楚の侵攻に抜擢されるものの大敗北を喫します。当時、敗北は粛清を意味していましたが、李信が咎められた記録は残っていません。さらに燕・代・斉の攻略にも中心的な武将の1人として加わり活躍されたといわれています。 大失敗の後も活躍の場を与えられていることを考えると、史実の政と信も厚い信頼関係があったのかもしれませんね。
最終的に信は死亡するのか?モデルの李信はどうなった?
信のモデルとなっているのは、春秋戦国時代に活躍した秦の李信将軍です。彼は将軍として大きな武功を打ち立てており、楚への侵攻では蒙恬と共に軍を指揮し楚軍に大勝。さらにそこから楚の首都を攻め立て、ここでも勝利を収めることに成功します。 しかしその後、楚の将軍である項燕(こうえん)から反撃を受けてしまい、なんと7人もの武将を失う大敗を喫してしまうのです。ですがここで罰せられることはなく、李信は生き延びのちの燕や代との戦争でも活躍を見せることになります。 また彼の子孫として、前漢の李広やその甥の李陵が史実に登場。ちなみに詩人として有名な李白も、一部の伝承では李信の子孫と言われているようです。
信は結婚するのか?
前述したように李信には子孫が存在しているため、生前は妻を迎え結婚していたと推測されます。しかしながら李信に関する資料は秦の滅亡と共にその多くが失われており、残された資料にも妻の情報などは明記されていませんでした。 果たして漫画のなかで李信は、誰と結ばれることになるのでしょうか。
羌瘣と結婚するのが有力
信の古くからの仲間として信頼関係を築いている羌瘣。彼女は信が命を落としたときに、自らの寿命を使い助けるなど、信を仲間以上の大切な存在として認識しています。 また羌瘣は自身の目標として2つのことを掲げているのですが、そのうちの1つは信と同様「大将軍になること」。そしてもう1つの目標はなんと「信の子を産むこと」。これを聞いた信は驚きを隠せませんでしたが、どうやらまんざらでもない様子。 その後も信への気持ちが伝わるような言動を繰り返す羌瘣ですが、彼女自身は戦いがひと段落するまで戦士として戦うと覚悟しているようです。戦いが終わりを迎えたとき、彼女は信への気持ちをはっきりと伝えるのでしょうか。
羌瘣以外の信の嫁候補は?
河了貂
信にとっての大切な存在として、忘れてはならないのが河了貂です。彼女は物語の最序盤、幼い時代から信とともに過ごしており、彼と非常に長い時間を共有。それこそ家族のように信と接しています。 しかし仲が良すぎるゆえ、信は彼女のことを「たった1人の妹みたいなもんだ」と表現。その一方、河了貂は自身の望みを聞かれ「信と一緒に幸せになりたい」と答えるなど、結婚願望を匂わせるような発言もしています。 現状羌瘣の対抗馬として、最も有力な存在は河了貂だと言えるでしょう。
陽
秦の王都で宮女として仕えている陽。明朗快活な彼女は政の子を身ごもり妻となる向(こう)の大親友です。そんな彼女は反乱軍が向を狙った際に、自らの命を挺して彼女を守ろうと奮闘。その際に彼女の命を救ったのが、何を隠そう信なのです。 信は彼女に「気合の入った宮女だな。下がってろ根性宮女」と告げ、どこか嬉しそうに微笑みます。そしてその顔を見て頬を赤らめる陽。どうやら彼女はここで信に惚れ込んでしまった様子。 信は将軍となり、その身分も高くなっていく男です。そんな彼が家柄のいい陽を妻に迎えても、それは何ら不思議なことではありません。
李信の史実上の子孫を紹介
李超(りちょう) | 李信の息子とされる人物 |
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李仲翔(りちゅうしょう) | 李超の息子とされる人物 |
李伯考(りはくこう) | 李仲翔の息子とされる人物 |
李尚(りしょう) | 李伯考の息子とされる人物 |
李広(りこう) | 李尚の息子とされる人物 |
李暠(りこう) | 李広の子孫とされる人物 |
李淵(りえん) | 李暠の子孫とされる人物 |
李信の子孫については『新唐書』という書物に記録が残っていると言われています。 それによると李信の息子は李超であり、のちに漢の大将軍に出世。彼は2人の子どもをもうけますが、そのうちの1人である李仲翔は武将として活躍。さらにその子どもである李伯考は、漢に設置された都の太守に任命されていたようです。 また李伯考の息子にあたる李尚は、漢の成紀県令という役職に就任。そしてその息子の李広は、李信の子孫のなかでも特に目覚ましい活躍を見せており、漢の「飛将軍」という異名で恐れられていたと言います。 さらに李広の子孫にあたる李暠は五胡十六国時代に、西涼という王朝を設立。そして記録に残る最後の子孫となる李淵は、なんと唐の始皇帝としてその名を馳せることになるのです。 しかしながらこれらの歴史が記された『新唐書』は、李信の時代から1,000年以上後に編纂されたと言われているもの。情報の信ぴょう性については少々疑いが持たれているようです。
信の強さはどれくらい?能力や強さを考察
信は飛信隊を与えられてからは次々と敵を討ち取っています。李牧軍の副官である慶舎(けいしゃ)を討ち取るシーンは信が着実に力をつけていることを感じさせてくれましたね。 武神・龐煖と信はこれまで何度も刀を交えていますが、いまだ決着がついていません。武神相手に生き残っている時点で信の実力と強運はたしかなものでしょう。 ただし、戦略に関してはまだまだこれからといったところ。また猪突猛進な性格がときに仲間内でのトラブルに発展して、評価を自ら下げてしまうようなところもあります。こういった部分も成長すると武将としての格が一気に上がりそうです。
実写映画のキャストは山崎賢人
大人気漫画『キングダム』の実写映画版第1弾が2019年4月に公開されました。主人公の信を演じるのは山崎賢人です。 2019年3月時点で山崎は24歳。序盤の信を演じるには幼さなが足りないとの意見がありましたが、製作発表記者会見のコメントによると撮影にむけて山崎はかなり身体を細くして戦災孤児として生きる信の華奢さを再現したそうです。
また、信には大将軍になる可能性を感じる殺陣も求められます。山崎は半年間かけてアクションと乗馬の特訓を受けたとのこと。
『キングダム』はまだ終わらない! 信の快進撃にこれからも期待
天下の大将軍への道を着実に歩んでいる主人公の信の軌跡を紹介しました。モデルとなった李信については、中華統一後の記録が残っていません。それだけに、『キングダム』の信がどんな道をたどって大志を叶えていくのか、今後の展開が楽しみですね。 戦場を経験する度にどんどん精悍な顔つきになっていく信が、これから見せてくれるであろうカリスマ的な活躍から目が離せません。