2021年12月28日更新

『千と千尋の神隠し』釜爺(かまじい)のモデルや正体について考察!湯婆婆や銭婆とはどんな関係?

『千と千尋の神隠し』釜爺

ジブリ映画『千と千尋の神隠し』には、現実世界とはまったく違った不思議な生き物がたくさん登場します。千尋が働くことになった油屋のボイラー担当・釜爺(かまじい)も、そんな不思議な存在の1人です。 千尋の成長を語るうえで欠かせない釜爺とは、いったい何者なのでしょうか。この記事では釜爺の正体やモデルとなった生き物、湯婆婆や銭婆との関係などをまとめて解説します!

釜爺ってどんな人物?性格や職業を解説

見た目や性格

千と千尋の神隠し

つるりとハゲた頭に濃い口ひげ、黒くて丸いサングラスをかけ、6本の細長い腕を持っている釜爺。その見た目はまるで蜘蛛のようです。6本の腕は自在に伸び、腕以外に緑色のズボンを履いた普通の足に見えるものが2本ついています。 一見すると頑固で厳しそうな老人であり、当初は湯屋へ迷い込んだ千尋に厳しい態度をとります。しかし千尋を邪険にせずかばって送り出したり、千尋が銭婆のもとへ行けるように切符を渡したりと、まるで本当の孫かのように世話を焼いてくれました。 その様子から、根はとても優しい人物であることがわかります。また釜爺は千尋の教育係になるリンと並んで、人間に対する差別意識を持っていないキャラクターでした。

湯屋での仕事

千と千尋の神隠し

釜爺は油屋のボイラー室で、石炭を運ぶススワタリたちを使ってお風呂の温度調整をしながら、自分の6本の腕を自在に操って薬湯を調合する仕事をしています。浴場からボイラー室に札が送られてきて、釜爺はその札に合わせた薬湯を送るのです。 八百万の神が訪れる油屋で、釜爺が調合するさまざまな薬湯は神々を癒したり、汚れを落としたりしていました。 千尋がはじめて油屋にやってきたときには、ススワタリの仕事を手伝おうとした千尋に対して「あんたも気まぐれに手ぇ出して、人の仕事を取っちゃならね。」と言っており、職人気質な人物であることがわかります。 釜爺の出自や年齢、油屋で働くようになった経緯などは明かされていませんが、40年前の使い残りの電車の切符を千尋に渡していることから、少なくとも40歳はゆうに超えており、また長きにわたってこの仕事をしているのだろうと推測できます。

釜爺の正体はいったい?湯婆婆や銭婆との関係

湯婆婆『千と千尋の神隠し』
© Studio Ghibli/Walt Disney Pictures/zetaimage

釜爺と湯婆婆

油屋の経営者である湯婆婆と釜爺が絡むシーンは、劇中には登場しません。しかし湯婆婆に「様」をつけていないことや、千尋にさまざまなアドバイスをしている様子などから、釜爺は湯婆婆について詳しく知っているとわかります。 また釜爺が任されているボイラー室は、油屋の要ともいえる場所です。そんな大切な役割を長年任されているこということは、湯婆婆と一定の信頼関係を築いているということでしょう。

釜爺と銭婆

釜爺は、湯婆婆のお姉さん(銭婆)のところへ行くと言い出した千尋に対して「銭婆の所へか?あの魔女は怖ぇーぞ」と言いつつも、銭婆のところへ行く方法を教えてくれました。この描写から、釜爺は銭婆についてもある程度知っているのだとわかります。 もしかすると釜爺は銭婆と交流があり、ハクに呪いをかけた経緯も知っているのかもしれません。釜爺と湯婆婆たち姉妹はどんな関係なのでしょうか?釜爺の過去が気になってきますね。

モデルは蜘蛛でなくザトウムシ?

『千と千尋の神隠し』釜爺

自在に伸びる6本の腕を持つ釜爺。その特徴的な姿からついつい蜘蛛を思い浮かべてしまいがちですが、モデルとなったのは実はザトウムシではないかと言われています。 ザトウムシは針金のような細く長い脚を持った虫で、蜘蛛に似ていますがまた別の虫です。長い脚で丸い胴体を支えて歩く姿が特徴的で、体全体のバランスや動き方が釜爺と似ています。 小さくて黒い目が控えめについているのが一般的なザトウムシの特徴。つぶらな黒い瞳は釜爺の黒いサングラス姿を連想させます。 ザトウムシはかつて目が無いと思われていた虫なので、そんなエピソードも昼夜問わず暗がりでサングラスを着用するという釜爺の設定に活かされたのかもしれません。

つい真似したくなる!釜爺の名セリフ

「手ぇ出すならしまいまでやれ」

『千と千尋の神隠し』ススワタリ(まっくろくろすけ)

ボイラー室にやってきた千尋は、釜爺の部下のススワタリの仕事を気まぐれで手伝ってしまいます。半端な気持ちで他人の仕事に手出しをした千尋を釜爺は一喝。仕事には責任が伴うという当たり前のことを思い出させてくれるセリフです。

「グッドラック」

千尋を孫だとかばった釜爺は、リンに千尋を預けます。湯婆婆のもとへ出向く千尋に、釜爺はひと言「グッドラック」と親指を立てて彼女を送り出しました。シンプルな言葉ですが、釜爺の優しさと温かさがひしひしと感じられるシーンです

「えーんがちょ、せい!えーんがちょ!」

ハクが吐き出した呪いの虫を踏み潰した千尋に、釜爺は「えんがちょ」をするよう言います。「えんがちょ」は親指と人差し指で作った輪を手刀で切ることで、穢れと縁を切るおまじない。実生活でも何かと使えそうですね。

「わからんか。愛だ、愛。」

龍の姿のまま目を覚まさないハク。千尋は、ハクが盗んできた魔女の契約印を銭婆に返して謝ればハクを救えるかもしれないと考え、銭婆のもとへ行くと言い出します。 その姿を見たリンは、まるで事情を把握できない様子。しかし釜爺は理解しており、「わからんか。愛だ、愛。」とさらりと言うのです。釜爺が人間の愛を理解していることがよくわかるシーンですね。 そして、ハクが目覚めた後にも釜爺は「いいなぁ、愛の力だなあ」と言っています。

釜爺の声優を務めたのは菅原文太

釜爺の声優を担当したのは、俳優としても活躍した菅原文太です。彼は1933年に生まれ、1956年にデビュー。 映画「仁義なき戦い」シリーズや「トラック野郎」シリーズなどで主演を務め、映画『太陽を盗んだ男』(1979年)では第3回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞しました。 ジブリ映画『ゲド戦記』(2006年)のハイタカ(ゲド)役や、細田守監督映画『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)でも声優を務めています。邦画史に残る名俳優ですが、2014年11月28日に81歳で永眠しました。 釜爺の声優には、鈴木敏夫プロデューサーが「愛というセリフをいやみなく言える人はこの人しかいない」と推薦したことで決定したそうです。

釜爺が見せるおじいちゃんのような優しさにほっこり

序盤で千尋に働くことの厳しさを説くにはじまり、終盤でも千尋の助けとなる活躍をみせた釜爺。ファンのあいだでは、「多忙な宮崎駿監督のこんなにたくさん腕があったら……という願望なのでは?」という説も噂されています。 『千と千尋の神隠し』公開時はすでに21世紀に突入していましたが、スタジオジブリではCGと併用して手書きのセル画でも作画を行なっていました。そのため宮崎駿は2本の腕が回らないほど忙しく、そこで彼の願望を形にした釜爺のようなキャラクターが生まれたのかもしれませんね。 謎多き愛されキャラ・釜爺は、これまでどんな人生を送ってきたのか。そんな想像をしながら『千と千尋の神隠し』を楽しんでみるのもおすすめです。