2021年8月5日更新

『猫の恩返し』の都市伝説を本気で検証!『耳をすませば』とのつながりを考察・解説してみた

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猫の恩返し

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『猫の恩返し』都市伝説を大解説!「耳すま」とのつながりを徹底考察

2002年公開、スタジオジブリ制作・森田宏幸監督による映画『猫の恩返し』。主人公の吉岡ハル役に池脇千鶴、袴田吉彦・山田孝之・濱田マリなどといった、個性派俳優らが声優を担当しました。 映画公開後、凝った設定が多いジブリ作品の中でも、特に変わった仕掛けがあると話題に。ジブリファンにはたまらない裏設定、『猫の恩返し』に関する都市伝説やトリビア、制作秘話を紹介します

あらすじ

平凡な日々を過ごす女子高生・吉岡ハルは、車に轢かれかけてた「猫の国」の王子、ルーンを助けた恩返しとして「猫の国」に招待されることに! 王子の妃候補にされるものの、猫の男爵・バロンらの力を借りつつ、元の世界への帰還を果たします。そんな冒険を通して少しだけ大人へと成長していくハルの姿を描きました。

『猫の恩返し』は『耳をすませば』のスピンオフ

耳をすませば

公開時に1番注目されたのは、「猫の事務所」の所長であるバロンやデブ猫のムタなど、どこか見覚えのあるキャラクターの存在と設定でした。 実は『猫の恩返し』には、『耳をすませば』で小説家を志していた主人公・月島雫が書いた物語だという裏設定があるのです。バロンは、映画『耳をすませば』に登場した猫男爵の人形バロンがモデルです。 つまり基本的に「続編を作らない」方針をとっていたジブリ史上、初のスピンオフ映画制作だったのでした。

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2作品で共通するキャラクター

①ムタ(ムーン)

猫の恩返し

バロンの仲間である「ムタ」は、『耳をすませば』で初登場した太った猫の名前の1つ。原田夕子の自宅近くに住む女の子が名付け親で、近所の子供たちにもその名で呼ばれていました。 ハルを猫の事務所へ導いた『猫の恩返し』では、かつて猫の国で悪事を働いた伝説の犯罪者の一面を持ち、本名はルナルド・ムーンと言います。 このムーンという名は、『耳をすませば』の天沢聖司が独自に付けていたものなので、雫は2つの名前を自分の世界とつなげて登場させたのでしょう。

②バロン

猫の恩返し

バロンは爵位の「男爵」という意味で、正式な名前はフンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵。『耳をすませば』では猫男爵の人形でしたが、『猫の恩返し』では事件を解決に導く「猫の事務所」の所長という設定です。 性格は冷静かつ女性に優しい王子様タイプで、ムタいわく“キザ”とのこと。元の世界に繋がる塔の頂上への階段を駆け上る際、ハルを軽々と抱き抱えて進んで行くシーンが印象的。 声優も『耳をすませば』では露口茂が務めていましたが、『猫の恩返し』では袴田吉彦に変更されています。監督の森田宏幸は袴田吉彦を起用することで、若々しいイメージにしたかったのだとか。『耳をすませば』でのバロンとは違うキャラクターであることを、印象付けたかったようです。

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クラスメイトのチカ

『耳をすませば』で月島雫の声を演じた本名陽子。彼女は『猫の恩返し』で、ハルのクラスメイト・チカの声を担当しました。チカは、ハルが大量の猫に追われながら学校に向かうシーンで登場します。 雫としての登場はありませんでしたが、このように雫の存在を再確認できるのはファンにとってはうれしい繋がりですね。

ヒロイン・吉岡ハルに込められた思い

ジブリらしくない?そこが魅力の女の子

主人公の吉岡ハルは、森田宏幸監督が強いこだわりを持って作り上げたキャラクターで、現代の女の子を投映したような性格に設定されています。 その場の空気とノリだけで重大な決断を下してしまい、後から大事件になって慌てるものの、何となくピンチを乗り越えていくごくごく普通の女子高生。キュートでどこか親近感のあるハルは、日常の流れに身を任せているようで、しなやかに現代を生きる女の子と重なって見えます。 つまり、従来のジブリ作品では少しずつ成長する主人公の様子が描かれることが多いですが、本作ではあえてその要素をなくし、等身大の女子高生を描いたのです。 さらに監督は、「成長するのは難しいし、できなくて当たり前。安易な成長ならしないほうが良い」との持論から、ハルが“あまり成長しない”ようにしたそうです。

月島雫との共通点

実は本作の主人公ハルと、設定上の原作者である月島雫には共通点があります。 『耳をすませば』の作中、当時中学生だった雫も周囲の意見に振り回され、悩んでいる等身大の10代の少女でした。その姿はハルと重なるものがあります。 ジブリ作品の女性主人公は、はっきりと自分の意見を持ち、困難に立ち向かっていくキャラクターが多いですが、この2人はそういった性格ではありませんでした。 『耳をすませば』をふまえてハルを見ると、「自分の時間を大切に生きる」ための小さな一歩を踏み出した雫が、その経験をヒロイン・ハルに込めたようにも感じられます。 そんな等身大なメッセージが視聴者の共感を得やすいことも、『猫の恩返し』の魅力のひとつです。

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夢を叶えた月島雫と天沢聖司がエンドロールに出演予定だった!?

耳をすませば

何とエンドロールには、成長した月島雫と天沢聖司らしき人物が登場し、試写会で拍手している映像が入る予定だった、という噂も存在します。 本作は『耳をすませば』の上映から7年後に公開されたため、当時15歳だった雫が22歳になり、作家デビューして発表した『猫の恩返し』が映画化。それを原作者の雫と留学から帰ってきた聖司が『耳をすませば』の世界線で見ている、劇中劇のような形で物語は終わりを迎えるというものです。 さらには吉岡ハルの母親のモデルは大人になった雫自身という噂も。どこまでが真実か不明ですが、こうして想像を膨らませるのも楽しみ方の1つかもしれませんね。

2つの都市伝説の真偽を検証

『猫の恩返し』には、いくつか巷でささやかれている都市伝説があります。ここでは、それらについて少し検証してみましょう。

①猫の事務所の時空が歪んでいる件

猫の恩返し

バロンが所長を務める「猫の事務所」は、建物自体が周囲のほかの家に比べて小さく、ドアもとても小さいのですが、中に入ってみると、人間のハルも動き回れるほど広いことがわかります。 このことから「猫の事務所は、時空が歪んでいるのでは?」という都市伝説がささやかれているのです。

この件については、監督の森田宏幸も認めています。どうやら「猫の事務所」のドアは、猫の世界と人間の世界という2つの世界をつないでいるため、時空が歪んでしまっているようです。

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②猫の国が死者の国らしい件

本作で登場する猫の国は「死者の国」である、という都市伝説もあります。 猫の国の元となっているのは、柊あおいによる原作マンガ『バロン〜猫の男爵〜』です。 映画でハルを「猫の事務所」に案内した白猫のユキは、原作ではハルがむかし飼っていた猫でした。しかしユキは交通事故で死んでしまいたのです。また同じく原作では、バロンやムタが「猫の国は永遠の命」、「自分の時間を生きられないやつの行く場所」と言っているシーンもあります。 これらのことから、“原作では”猫の国が死者の国とされているのは、ほぼ間違いなさそうです。しかしこの設定は重すぎるため、映画では明確には反映されていないと言っていいのではないでしょうか。

『猫の恩返し』誕生秘話 若手監督が抜擢された経緯とは

発端はテーマパーク!?宮崎駿はバロンとムタの探偵物を作ろうとしていた

猫の恩返し

全ての発端は、とある企業から「猫のモチーフでテーマパークのキャラクターを作って欲しい」と依頼されたことから始まりました。 既存のキャラを提案したところ、担当者が『耳をすませば』のムタを気に入り、「20分くらいのショートフィルムを作る」ということに。相談された宮崎駿は、バロンが主人公の”探偵もの”として、「名探偵バロンとムタのコンビが難事件を解決するミステリー冒険活劇」を構想し始めます。 そして『耳をすませば』の原作者・柊あおいが執筆を依頼され、原作『バロン―猫の男爵』が完成。ところが漫画は“探偵もの”ではなく、猫の国に迷い込んだ高校生が主人公の少女漫画となり、20分のショートフィルムには収まらない長編になってしまいました。 宮崎駿は、当初構想していたものとは違う方向性になってしまったことに加えて、『千と千尋の神隠し』制作中で多忙だったことから企画を若手に託します。その結果、森田宏幸監督の手で長編映画化されることになったのです。

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急遽抜擢された若手監督・森田宏幸が悩んだこと

猫の恩返し

宮崎駿を中心に企画された本作でしたが、当時、宮崎や鈴木敏夫プロデューサーは若手監督を育てたいと考えていたようです。そこで白羽の矢が立ったのが『となりの山田くん』で原画を担当していた森田宏幸。 若手監督だった森田は、『耳をすませば』のスピンオフという立ち位置に頭を悩ませたそうです。当時、『耳をすませば』の監督を務めた近藤喜文はすでに亡くなっており、ジブリ作品では前年に公開された『千と千尋の神隠し』が歴史的大ヒットを記録していました。 森田は『耳をすませば』から切り離した別の作品を作りたいと思いながらも、10代の女の子が主人公という共通点を切り離すことができなかったと言います。そこで、作品のテーマを「10代の女の子を励ますものにしよう」と決めました。 そうして吉岡ハルという主人公が生まれたのです。

『猫の恩返し』都市伝説を解説 「耳すま」と一緒に考察してみよう

さまざまな都市伝説がささやかれるのは、多くのジブリ作品に共通していることです。『猫の恩返し』もその例に漏れず、裏設定から原作をもとにした深読みまで、気になるポイントが多くありますね。 今回はその一部を検証してみましたが、さまざまな解釈があるのではないでしょうか。もう1度作品を見返して、自分なりに検証してみるのもいいかもしれませんね!