2025年4月17日更新

『君たちはどう生きるか』眞人(まひと)が後継者にならなかった理由は?石で怪我をした真意も考察

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ジブリ映画『君たちはどう生きるか』の主人公・眞人(まひと)。自分自身の胸の内を話す描写が少なく、「なぜ眞人がその行動をしたのか」と、観終わっても疑問が残った方もいるかもしれません。 そこで本記事では、眞人の自傷行為をした意図やナツコを助けに向かった理由、そして「後継者」を断った真意について考察していきます。 眞人の行動と内面を深く考察することで、宮崎駿が問いかける根源的なテーマがおのずと見えてくるはずです。

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『君たちはどう生きるか』の眞人(まひと)はどんな主人公?

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「君たちはどう生きるか」の主人公、牧眞人(まひと)は、火事によって母を失った少年。年齢は11歳、小学6年生です。明言はされていませんが、父の職業や戦時中も裕福だった点など共通点も多く、宮崎駿の少年時代がモデルではないかと言われています。 眞人は寡黙で自分の意志を主張しないタイプですが、「下の世界」での旅を通して行動力のある少年へと変化。前半はあどけない少年っぽさがありますが、後半は勇猛果敢に継母・ナツコを助けようとする姿もあり、外見も内面もイケメンキャラへと成長します。 眞人の人生を大きく変えたのが、母・ヒサコの死でした。しかしナツコの捜索中に「下の世界」でヒサコの子供時代・ヒミと再会を果たします。

『君たちはどう生きるか』主人公・まひとの声優は山時聡真

眞人の声を担当したのは、俳優の山時聡真(さんときそうま)です。公開当時は18歳でした。 映画『ゆずの葉ゆれて』(2016)で11歳の時に子役デビュー。その後『CUBE 一度入ったら、最後』(2021)や『死刑にいたる病』(2022)などに出演しています。 そして『君たちはどう生きるか』(2023)で、オーディションを経てジブリ作品の主役声優に大抜てきされたのです。自身はジブリファンであったものの、金曜ロードショーで楽しむレベルだったそう。思い入れが強すぎなかった分「(オーディションは)平常心で臨めたのかな」と振り返りました。 陰影のある眞人役を演じきった山時は、2025年夏公開の『蔵のある街』で満を持して映画初主演を果たします。

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【考察】石を使って自傷行為をしたのはなぜ?

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眞人が終盤で「僕の悪意のしるしです」と大叔父に語った、石を使った自傷行為の傷。なぜ眞人は自らを傷つけたのでしょうか。 表面的には、学校にいかない口実として自傷行為に走ったと見えます。転校先の生徒たちと馴染めず、目をつけられていたからです。 しかし自傷行為には別の理由もあったと考えます。それは「ナツコ」の存在です。当然、いきなり母となるナツコを拒否したい気持ちが一番にあるでしょう。そしてそんなナツコと愛し合う父・勝一への裏切りの気持ちも画面から見てとれます。 しかしその奥には、母とそっくりな顔であるナツコに眞人自身が惹かれている気持ちも潜んでいるのです。「母」のあり方が大きく変わった結果、眞人の心は耐えきれないほどの負担がかかり「自傷行為」になったのではないでしょうか。

【考察】新しい母親・ナツコを助けに石の世界に行ったのはなぜ?

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そもそもナツコが「石の世界」へ向かってしまった原因は「眞人の自傷行為」にありました。 自傷行為のあとナツコは体調を崩します。そしてベッドで再会した眞人に対して「ごめんなさいね、こんな傷をつけてしまって。お姉さまに申し訳ないわ」とつぶやきました。その後「石の世界」へ逃げ込むのです。 一方の眞人は偶然発見した、母・ヒサコが残した小説『君たちはどう生きるか』を読んで号泣します。原作小説は、主人公・コペルが自分の弱さと向き合い、周囲との関係を修復する物語が含まれているのです。 眞人は、ナツコを石の世界に向かわせてしまった自身の「罪」と向き合い、関係を修復しようと危険を顧みず旅に出た、と考えられます。

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【考察】眞人(まひと)が下の世界の後継者にならなかった理由

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大叔父の生み出した「下の世界」は悪意のない石で積み上げた理想的な世界です。しかし眞人は現実世界で悪意と向き合い、友人や家族と生きる意味をヒミとの旅で見出したのです。 一方でメタ的な視点で見ると、本作品は過去のジブリ作品のオマージュが満載であり、13個の積み上げた石はこれまでのジブリ作品と捉えられます。つまり大叔父は宮崎駿と考えられるのです。しかし前述した通り、眞人もまた宮崎駿であると考えると大きな矛盾が生まれます。 つまり、眞人側では「若者に過去の遺産に囚われず好きに生きてほしい」とする一方で、大叔父側では「今まで築き上げたものを継承したいが、それは押し付けに過ぎないのだ」と、相反する宮崎駿の葛藤を描いていると考えられるのです。

『君たちはどう生きるか』主人公・眞人(まひと)の考察まとめ

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『君たちはどう生きるか』(2023)の主人公・眞人の概要や考察を紹介しました。映画の後半はナツコと眞人、大叔父と眞人の2つが並行して進んでいくため、2つのテーマを分けて考えると理解が深まります。 『君たちはどう生きるか』は、眞人の成長物語です。眞人は口数こそ多くないものの、表情の変化や目線で彼の考えていることが考察できます。本記事を参考に、眞人の心の内を探ってみてください。