『もののけ姫』サンはなぜ捨てられた?謎多きヒロインの仮面の意味や人物像を徹底考察

1997年に公開された映画『もののけ姫』は、宮崎駿が監督を務めたスタジオジブリの作品です。人間と自然の対立と共生をテーマに、物語が繰り広げられます。 タイトルにもなっている「もののけ姫」とは、ヒロインのサンのこと。作中で最も重要なキャラクターの1人です。声を演じたのは、女優の石田ゆり子。 この記事ではそんなサンの基本情報を紹介した上で、劇中で語られなかった謎を検証します。 ※この記事は『もののけ姫』の重要なネタバレを含みます。 ※ciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。
『もののけ姫』サンのプロフィール

年齢 | 15歳 |
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名前の由来 | 三(3番目の姫の意) |
出身 | 不明 |
声優 | 石田ゆり子 |
タイトルにあるもののけ姫とはサンのこと。彼女は生贄として山犬に捧げられた少女で、そのまま山犬のモロの君に育てられました。山犬の娘としての自我が強く、森を破壊する人間を憎んでいます。 気性は荒く勇猛果敢。森とともに生き、森とともに死ぬという考えが根底にあり、森を守るために命を賭して戦います。身体能力や武器を使っての戦闘能力が高く、動物とも意思の疎通ができる、まさに森を代表するような存在です。
サンはなぜ捨てられた?人間を憎む理由とは

サンは犬神・モロの君に育てられた人間の少女。もとは人間が森を侵した際に、モロの君の牙を恐れた人間が生贄に差し出した赤ん坊でした。 彼女は自分のことを山犬だと思っており、シシ神の森を守護するモロの君やその子どもの山犬たちとともに森を侵す人間を襲撃します。 彼女はアシタカに対しても警戒心を抱いていますが、次第に心を許すようになります。 最後には「アシタカは好きだ。でも、人間を許すことはできない」とアシタカに好意は抱いたものの、人間への憎しみは消えませんでした。
【考察】サンの人物像は何を象徴している?描きたかったものとは

サンは犬神側の立場にいることから、一見すると自然を代表するように見えてしまいます。エボシ御前(人間)vsサン(自然)の二項対立のように見えますが、実は違うのです。 宮崎監督はインタビューにおいてサンは自然を代表した存在ではなく「現代に生きている人間が人間に対して感じている疑問を代表している」と述べています。つまりサンの人間の行動への憎しみというのは、人間の立場から発せられているのです。 現代の地球が抱える問題は、いずれも単純な善と悪では語れません。エボシ御前の行動もサンから見れば悪であったとしても、たたら場の人々から見れば善です。そういった複雑な現代において、人間が人間に対して抱いている疑問を象徴しているのがサンといえるでしょう。
【考察】サンの仮面のモチーフは縄文人に?お面の意味とは

宮崎駿は著書『出発点 1979~1996』「もののけ姫」の企画書で、サンについてこう記述しています。 「少女は類似を探すなら縄文文明のある種の土偶に似ていなくもない」(419〜421ページ) さらに宮崎は絵コンテやイメージボードで、サンの仮面を「土面」と呼んでいます。土面とは縄文時代後晩期の遺跡から多く出土される、粘土を人間の顔の形にして焼き上げた面です。 赤くて丸い土台に、目と口のような3つの穴があいたサンの面は、デザイン的にこの縄文時代の土面によく似ています。 縄文時代の土面は「精霊の降臨を乞い崇拝する」儀式の場でつけられる呪術性の強いアイテム。このような土面は『もののけ姫』で縄文人を象徴するスピリチュアルなシンボルとして採用されたと考えられます。 つまり、面をかぶったときのサンは自然と共生していた縄文人になりきっているのです。縄文人の姿でタタラ場を襲うサンの姿には、人間が自然を侵略することを否定する意味があるのかもしれません。
【考察】サンとアシタカは性的な関係を持っていた?洞窟シーンの真相

サンがアシタカを森の洞窟で看病しているとき、すでに2人は性的な関係にあったのではないか、という説がファンの間に存在します。 『もののけ姫』のプロデューサー・鈴木敏夫がこのシーンのコンテを見て、宮崎駿に「2人はこの時点でセックスしてますよね」とズバリ聞いたそうです。すると宮崎は珍しくこのことについては何も答えませんでした。 あとで鈴木が宮崎をさらに問い詰めたところ、「そんなの、わかりきってるじゃないですか!」という答えだったとか。これは性的なことに言及したくない宮崎監督の照れ隠しではないかと憶測されています。 さらに、添い寝をしていたサンの寝顔が幸せそうであり警戒心がないことを根拠にあげる人もいます。 決定的な情報はありませんが、図星である可能性が高い都市伝説のひとつです。
気になるアシタカとのその後は?

物語の最後にやはり人間を許すことはできなかったサンに、アシタカは「それでもいい。サンは森で、わたしはタタラ場で暮らそう。共に生きよう」と言いました。 共に同じ場所で暮らすことはなかった2人ですが、宮崎によるとしょっちゅう会っており、ずっと良い関係を続けていくのだそう。アシタカには苦難が待っていそうですが、その中でもサンとは幸せになっていて欲しいものですね。
【都市伝説】サンの母親はエボシ御前?

前述のように、サンには捨てられた過去があります。この説は、捨てたのがエボシ御前だったのではないかというもの。気の強そうな整った顔立ちや好戦的な性格が似ていることから、まことしやかに囁かれるようになりました。 サンの育ての親であるモロの君がエボシ御前を憎んでいたこと、エボシがタタラ場を襲ったサンを殺さなかったことが理由だと言われています。 宮崎駿監督などがインタビューで語っていることによれば、エボシ御前にはさらわれて遊女として売られた過去がある、という裏設定があります。このため彼女は同じような境遇の女性を集めてタタラ場を作ったのです。 サンが生まれた経緯は謎に包まれていますが、エボシ御前の過去から、彼女がサンを出産した可能性がもしかしたらあるかもしれません。
【都市伝説】サンの子孫はあの名作の主人公?

サンの子孫が他のジブリ作品のキャラクターだという説が存在しています。 その子孫というのは、『千と千尋の神隠し』の主人公・千尋です。彼女は荻野千尋というフルネームですが、湯婆婆に名前を奪われ「千」という名にされます。 この時に千尋は紙に自分の名前を書くのですが、実は違う字を書いているのです。「荻」の字の「火」の部分を「犬」と書いているのですが、自分の名前を書き間違えるとは考えにくい……。 そのためこの間違いはわざとだったのではないか、若しくはなにか意味があるのではないかと言った意見が唱えられています。そしてこれが隠されたメッセージとするなら、ジブリで「犬」と言えば、犬神に育てられたサン。つまり千尋はサンの子孫だったのだという説です。 「犬」の1文字だけの理由付けでは飛躍しすぎな考えのため、これも都市伝説の域を出ないと言えるでしょう。
サンの声優は女優の石田ゆり子が担当

ジブリヒロインの中でも抜きん出て男前なサンを演じたのは、女優の石田ゆり子です。演じた当時は27歳。石田自身は2022年に出演したラジオでも、作品が放送される度に「穴があったら入りたい」と感じていると語っており、アフレコ時から苦悩したことが伝わってきます。 慣れていない声優業ということもあって演技については賛否両論。ですが、その慣れていない感じが、山で育ち人の言葉に慣れていないサンに合っているとする意見もあります。
美しき「もののけ姫」サンは魅力的なヒロイン!

この記事ではサンに関する事実と謎を解説・考察しました。本編でサンについて語られていることは意外と少なかったですね。 『もののけ姫』はあくまでサンやアシタカたちの始まりを描いた作品と言え、我々にその先の想像を膨らませるような世界観を持っています。つまりサンはそれだけ魅力的なキャラクターということがわかりました。